...虹色Romance
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#1 [Loki弥]


音楽に関しては無知な私が
音楽を題材に綴る創作小説
お目汚し失礼します(*;ω人)

⏰:08/07/12 08:55 📱:SO903i 🆔:aIqUDW86


#2 [Loki弥]



朝。目覚ましの音で目を覚ます。
カーテンの隙間から覗いた光が眩しくて、俺は目を細めた。
電気を付けなくても光に満たされた部屋。気分良く起き上がると簡単に朝食を済ませ、ギターとリュックを持って家を出た。

それは初夏のことだった。

⏰:08/07/12 08:57 📱:SO903i 🆔:aIqUDW86


#3 [Loki弥]



外はジリジリと暑い太陽に照らされて、両足が動くことを拒否している。しかし、そんな身体に喝を入れて歩いた。
ついたのは公園。
まだ朝だというのに元気に遊ぶ子供達を尻目に、俺はベンチに腰かけた。

「あっちい」

座った椅子さえ、火のように熱かった。
きっと砂場も灼熱なのだろう。遊び回れる子供達を見て怪訝そうな表情になってしまう。

⏰:08/07/12 08:57 📱:SO903i 🆔:aIqUDW86


#4 [Loki弥]


ギターをケースから引っ張り出してチューニングする。それと同時にリュックから書き掛けの譜面を取り出した。

俺が此処でこんなことをしているのは、いまルームシェアしてる男が「やかましい」と怒るからだ。
自分は昼まで起きずに、夜は遊んでばかり。そんな奴に何を言われても従う気にはなりたくないが、仮にも年上だ。

⏰:08/07/12 08:58 📱:SO903i 🆔:aIqUDW86


#5 [Loki弥]



それと、もう一つ理由がある。
この公園に来たら必ず会える人がいるからだ。
その人はいつも娘を連れて公園に来る。つまり既婚者なわけだが、俺はそんなのは気にしない。
別に付き合いたいとかそういうワケじゃなくて、一種の目の保養である。
モデルばりの長い足に、黒くて長い髪。そして娘の方も彼女に似て可愛い。

⏰:08/07/12 09:08 📱:SO903i 🆔:aIqUDW86


#6 [Loki弥]



と、噂をすればその後ろ姿を確認出来た。いつものように彼女の娘は滑り台で遊んでいる。
俺も昔は良く公園に行ったなあ、なんて思いながらぼーっとギターを引いていた。
娘を見ていたから気付かなかったのだが、その女性がすぐ近くに来て俺に声を掛けた。

「あの」
「…え?」

俺は驚いて、ギターを引く手を止めた。

⏰:08/07/13 07:24 📱:SO903i 🆔:WiKNx/3k


#7 [Loki弥]



よもや話すことなんて一生無いだろうと思っていた。緊張のあまり相手の顔が見れない。

「いつも此処にいるの?」
「まあ…大抵は……」
「暑くない?」

そりゃあ、どう考えたって暑いに決まっている。しかし此処にいるのには理由があるから、仕方の無いことなんだ。

「…そうでも無いですよ」

俺は笑顔を作った。

⏰:08/07/13 07:32 📱:SO903i 🆔:WiKNx/3k


#8 [Loki弥]



しかし、思いがけず、彼女はこんな提案をする。

「良かったら、ウチでゆっくりしていく?」

断る理由は、何処にも無い。
俺は頷いて彼女とその娘について行った。
知らない人の家に入るなんて普通考えないことだが、暑さのせいで頭は機能しなかった。
まるで間男だなあ、と考える。自然と笑えた。

⏰:08/07/13 22:25 📱:SO903i 🆔:WiKNx/3k


#9 [Loki弥]


「実は昔、バンドやってたの」

家にお邪魔してから聞いた第一声は、それだった。
玄関先で言葉に反応し顔を上げた俺に、彼女は笑いかけた。

「へえ…人は見かけによらないんですね」

するりと口を突いて出る。
はっとするが、彼女は冗談っぽく笑ってみせた。

「どういう意味よ」
「う、あの、おしとやかそうなので」

⏰:08/07/14 22:58 📱:SO903i 🆔:rPWC8.HQ


#10 [Loki弥]


慌てて答えると、彼女はくすくすと笑った。
これで、俺に声を掛けた理由が分かった気がする。

「奈央も、音楽が好きなのよ。ねえ、奈央」

玩具で遊んでいた娘が、こくりと頷く。この子は奈央…というらしい。奈央は、年の頃が3か4歳くらいに見える。
俺と視線がかち合うと、奈央はにこーっと笑った。

⏰:08/07/17 17:53 📱:SO903i 🆔:0ik61wVE


#11 [Loki弥]


話を進めていくと、女性の名前は彩音というらしい。彩音さんはどうやらボーカルのパートと作詞をしていて、リーダー的存在だったようだ。

「みんな社会人になってからは、なかなか仕事が忙しくて。途中でやめちゃったわ」
「そうなんですか」

そのあと俺は茶をもらって、彩音さんの家を後にした。

⏰:08/07/18 07:17 📱:SO903i 🆔:F0L4lMAw


#12 [Loki弥]


次の日も、俺はリュックとギターを持って公園に来た。今日も部屋で寝てるアイツは怒るし、暑い。
しかしその日は、違ったものが見えた。

「…奈央?」

娘の姿は見つけた。
しかし彩音さんの姿が見つからない。
俺は近付くと、ブランコに乗っている奈央に声をかけた。

⏰:08/07/18 19:23 📱:SO903i 🆔:F0L4lMAw


#13 [Loki弥]


「奈央ちゃん、どした?」
「あ、おにいちゃ」

俺のことを覚えていたらしい奈央は、俺を見てぱあっと顔を輝かせた。
やはり、近くに彩音さんの姿は無い。
俺は二つ並んだブランコの、空いてる方に座った。

「ねぇ、遊んで!」
「遊、ぶ…?彩音さんは?」

いつもなら、彼女が遊んでやっていた。

⏰:08/07/18 20:22 📱:SO903i 🆔:F0L4lMAw


#14 [Loki弥]


その質問に対しては、奈央はただ首を横に振るだけだった。
家に彩音さんは居るのだろうか、それとも何処かへ出掛けて…?
送り届けようかとも思ったが、奈央は公園から出ようとはしなかった。

「ジュース飲むか?」
「うん!」

日陰のベンチに座らせて、自動販売機でジュースを買う。勿論炭酸とかじゃなくて、果物だけの。

⏰:08/07/18 20:37 📱:SO903i 🆔:F0L4lMAw


#15 [Loki弥]



セミの声がやかましかった。
一週間で死んでしまうと知りつつも、その鳴き声だけは好きになれなかった。
汗が額に浮く。

「なぁ奈央ー」
「なにー?」
「帰らねぇ?」
「帰らない!」

断固として言い張る。何があったのか、見当もつかない。
むしろこれは、何かあったと見ていいだろう。

⏰:08/07/18 22:40 📱:SO903i 🆔:F0L4lMAw


#16 [Loki弥]



叱られて家出(?)したとか、彩音さんが仕事なのに勝手に出て来たとか、そんなことがあるに違いない。
俺は嫌がる奈央の手を引いて、彩音さんの家を目指した。

家の前の曲がり角に隠れ、様子をうかがう。
奈央が何だかハラハラしているようだった。

するとすぐに、玄関が開いた。

⏰:08/07/18 22:46 📱:SO903i 🆔:F0L4lMAw


#17 [Loki弥]


「あ……れ?」

家から出て来たのは、いま部屋で寝ている筈のルームシェアしている男、京次郎だった。
続いて、少し不機嫌そうな彩音さん。
彩音さんは京次郎のことを見送りもせず扉を閉めた。

「……どういうことだ…?」

一瞬にして考えが駆け巡った。

⏰:08/07/19 07:50 📱:SO903i 🆔:QpHO/PrU


#18 [Loki弥]


きっと遊びの激しいアイツのことだ、彩音さんをタラシ込んでいるに違いない。
帰路について近付いてきた京次郎を思いっきり引っ張る。

「うわっ」
「おい京次郎!お前こんなトコで何してんだよ!」

京次郎は一瞬よろけたものの、踏ん張って倒れはしなかった。

「……お前こそなんで此処にいんの」

⏰:08/07/19 07:56 📱:SO903i 🆔:QpHO/PrU


#19 [Loki弥]


怪訝そうな表情になる京次郎。

「まさかつけて来たんじゃないだろうな?」
「んなことするかよ!この子送りに来たんだよ」

そう言って奈央を指差す。
京次郎はますます分からないといった顔をした。
俺だって分かって無い。
奈央はなんだか京次郎に怯えていて、俺の後ろに引っ込んだ。

⏰:08/07/19 08:09 📱:SO903i 🆔:QpHO/PrU


#20 [Loki弥]


そういえば、奈央を帰さなきゃいけない。
京次郎にそこにいろよ、と言っておいて彩音さんの家のチャイムを押した。

「はい……あ、」

明らかに不機嫌そうだった彩音さんだが、俺の顔を見た途端表情を戻す。

「わざわざ奈央を連れて来てくれたの?」
「ひとりで居たので」

⏰:08/07/20 15:34 📱:SO903i 🆔:NPkBMLNs


#21 [Loki弥]


彩音さんは奈央を引き寄せると、頭を撫でてやった。
この様子だと、別に叱られていたわけではなさそうだ。…やっぱりアイツが何か…
あまり考えが及ばないうちに、彩音さんは角の前に居る京次郎に気付いたらしい。また表情がむっとしたものに変わる。

「あの、彩音さん…アイツと知り合い?」

彩音さんは声を潜めて、知り合いというか、と始めた。

⏰:08/07/20 15:42 📱:SO903i 🆔:NPkBMLNs


#22 [Loki弥]


「あの人、君の友達?」
「え、あの、いまルームシェアしてる奴です」
「そう……」

彩音さんは更に小声で言う。

「アイツ、やっぱり遊んでばっかりなんでしょ?」

記憶を堀り返せば、寝てるか遊んでるかだった気がする。俺は迷いもせず頷いた。

⏰:08/07/21 07:16 📱:SO903i 🆔:xefjfxCc


#23 [Loki弥]


「やっぱり……あの不良みたいな頭とか見てたらそんな感じよね」
「京次郎、なんで此処に来てたんですか?」

失礼になるかもしれないが、この際気になることは聞いておこう。
彩音さんは奈央に部屋に帰るよう言い、俺に視線を戻した。

「実は、うちの妹がアイツと付き合ってるらしいの」

⏰:08/07/21 07:21 📱:SO903i 🆔:xefjfxCc


#24 [Loki弥]


とりあえず俺は目が点になる。
京次郎の奴、彼女居るなんて一言も言わねぇじゃんか。

「妹は…結婚したいなんて言うけど、私は反対なのよ」
「そう…なんですか」
「それでつい言い合いになっちゃってね」

だから、奈央は怖がって出て行ってしまったのか。
それにしても、結婚?

⏰:08/07/21 07:27 📱:SO903i 🆔:xefjfxCc


#25 [Loki弥]


あんなチャラチャラした奴が結婚だなんて、想像しただけで可笑しい。
まずタキシードが似合わん。

「それより、いいの?あの人帰っちゃってるわよ」
「え?ああっ!京次郎!」

振り返ると、奴の背中しか見えない。俺は彩音さんに軽く別れの挨拶をして、後を追った。

⏰:08/07/21 07:30 📱:SO903i 🆔:xefjfxCc


#26 [Loki弥]


俺はギターの重さに負けそうになりながら、京次郎を追い掛けた。

「ちょ、京次郎!」
「なんだよ」
「なんで先帰るんだよっ」

俺はちゃんとそこに居ろって言ったはずだ。
京次郎はふてくされた顔で言う。

「そんなに暇じゃねぇんだよ。今日もそんなに寝てねぇし。さっさと帰りてぇの」

⏰:08/07/21 08:27 📱:SO903i 🆔:xefjfxCc


#27 [Loki弥]


「また遊んでたんだろ」
「遊んでばっかじゃねぇぜ、バイトもするし」

それに遊ぶっつっても男友達とだよ、と京次郎は付け足した。
どうだか。
それにしても、彩音さんの妹さんとは、何処で知り合ったんだろう。彩音さんみたいな清楚な人の妹なんだから、絶対京次郎とは合わない。
不思議なこともあるもんだ。

⏰:08/07/21 09:02 📱:SO903i 🆔:xefjfxCc


#28 [Loki弥]


「それよりさ」

話題を打ちきって、京次郎がずいっと俺に顔を寄せた。

「なんでお前、沙耶の姉貴と仲良いわけ?」
「沙耶…?」

たぶん、彩音さんの妹のことだろう。
思い至ると、京次郎はジト目でこっちを見た。

⏰:08/07/21 11:37 📱:SO903i 🆔:xefjfxCc


#29 [Loki弥]


「まさかお前、人妻を…」
「ちっがう!」

それは、俺の方が先に考えたことだ。
否定すると京次郎は笑った。

「としたら、娘の方か…なかなか特殊な性癖をお持ちで」
「アホ!お前じゃねーんだからそんな変なこと考えねぇよ!」
「へー」

嫌味も交えたつもりだったが、京次郎は軽く流した。

⏰:08/07/21 16:41 📱:SO903i 🆔:xefjfxCc


#30 [Loki弥]


そのまま二人して部屋に帰ったのだが、何も話が聞けないまま京次郎は寝てしまった。
はらいせとばかりにギターを引くが、起きない。

(ホントに疲れてんだな…まったく、どんだけ遊び回ってんだ)

窓から入る風は熱風で暑苦しい。
俺はギターを片付けると、京次郎の横に転がって寝た。俺も夜はバイトがある。

⏰:08/07/21 17:39 📱:SO903i 🆔:xefjfxCc


#31 [Loki弥]


目が覚めると、京次郎はもう出掛けていた。
バイトなのか、また遊び回ってるのか…あるいは、もっと別のことか。それは判らないが、時刻は既に19時をさしていた。

「やっべ、遅れる」

身の回りを片付けて、部屋を出ようとした。
そこで気付くのだが、着ていなかった筈の布団を俺は着ていたようだ。

⏰:08/07/21 20:52 📱:SO903i 🆔:xefjfxCc


#32 [Loki弥]


(……こんな所は優しいのに)

ますますアイツのことが分からなくなった。
アイツは自分の素性を一切話さない。何処か田舎から出て来たのかとか、地元の奴だとか、そんなのも知らない。
ましてや、沙耶さんとどんな付き合いをしているかなんて。

「………」

俺は無言で部屋を出た。

⏰:08/07/21 20:55 📱:SO903i 🆔:xefjfxCc


#33 [Loki弥]


チャリをとばしてバイト先に向かう。
だんだんと道も暗くなって、街灯がうっすらつき始めた。

「……?」

公園に、誰かいる。
それも小さい影。
まさかと思い目を凝らすと、やはりそれは。

「奈央…?」

⏰:08/07/21 21:21 📱:SO903i 🆔:xefjfxCc


#34 [Loki弥]


駆け寄ると、奈央はジャングルジムに寄りかかっていた。

「奈央ちゃん」

声を掛けると、奈央はぱっとこっちを向いた。そして安堵したように顔を明るくする。

「また…ひとり?」
「うん」

とりあえず、バイトは遅れる。これは時間からして決定項だった。

⏰:08/07/21 23:08 📱:SO903i 🆔:xefjfxCc


#35 [Loki弥]


もしかしたら京次郎がまた行ってるのかも、と話を聞いてみると、今度は沙耶さんと言い合いをしているらしい。

「奈央ちゃんも困るよな」
「怖いおかーさん嫌い」
「…そうだよな……」

うちの親は、俺がガキの頃に離婚した。その頃は毎日口喧嘩が絶えなくて、怖かったことを覚えている。
たぶん、そんな感じなのだろう。

⏰:08/07/22 06:56 📱:SO903i 🆔:JKtyHCzs


#36 [Loki弥]


うん、このままじゃいかんよな。
奈央にとっても、彩音さんにとっても…京次郎にとっても。

「今日はとりあえず、おうちに帰りな」
「えー、いやあ」

自転車を突きながら、また俺は彩音さんの家に向かった。
…静かだ。
きっと言い合いは終わったのだろう。

「…ほら、奈央ちゃん」

⏰:08/07/24 17:22 📱:SO903i 🆔:5THbKbSA


#37 [Loki弥]


渋々家に帰る奈央。
俺はバイト先に欠席の連絡をし、自転車を飛ばした。

(……アイツが行きそうなとこって、何処だろ…)

月が徐々に高い位置に昇って来る。俺は目的地もなくやみくもに漕いだ。
見つかる可能性の方が低いというのに、路地や裏道も入って。

(……あ)

い、た。

⏰:08/07/24 17:35 📱:SO903i 🆔:5THbKbSA


#38 [Loki弥]


隠れて様子視るとか、そんな状況じゃなかった。
道の角を曲がった瞬間、京次郎と目が合った。

「あ、の…京じろ…」
「うわぁぁあっ!」

京次郎は驚いて、背負っていたものを隠そうとした。…いや、無理だよそんな大きいの。
…それって……ギターケース?

「…京次郎、バンドやってんの?」

⏰:08/07/24 19:00 📱:SO903i 🆔:5THbKbSA


#39 [Loki弥]


聞くと、京次郎はうっと言葉に詰まる。が、すぐに諦めたように溜め息をついた。

「…えぇっと……」

言葉を繋げようとすると、突然誰かがドン!と京次郎の背中を叩いた。

「どーしたの京次郎」
「……沙耶…、いってぇな」

其処にいたのは、綺麗な女性。

⏰:08/07/24 19:14 📱:SO903i 🆔:5THbKbSA


#40 [Loki弥]


彩音さんのようなおしとやかなイメージではない。少しツリ目でキツそうな顔立ちだが、それが綺麗さを引き立てている感じ。

「……弟サン?」
「ちっげえよ、ルームシェアしてる奴」

沙耶さんもギターケースを持っていた。ということはつまり、二人は同じバンドと考えた方がいいだろうか。
なんとなく、京次郎と雰囲気が似ている気がした。

⏰:08/07/24 19:22 📱:SO903i 🆔:5THbKbSA


#41 [Loki弥]


「…もしかして、バンドしてるの隠してたの?」
「まあな…つかお前、今日バイトって言ってたじゃん」
「誰のせいだと思ってんだよ」

ぶっちゃけると、これは自分が一方的にしたことだ。だから京次郎に四の五の言える立場じゃない。…が、言わせてもらいたい時くらい、ある。

「……俺のせーなの?」
「そだよ、もう」

悪態をつく。
と、沙耶さんが笑った。

⏰:08/07/24 19:37 📱:SO903i 🆔:5THbKbSA


#42 [Loki弥]


「仲良しなんだね、アンタら」
「「はぁあ?」」

思わず、二人してすっとんきょうな声が出た。
沙耶さんは続ける。

「アンタたちって兄弟みたいじゃん。あたしは姉貴と最近仲良く無いけど…いいなあって思って」

ああ、彩音さんのことを言ってるのか。
なんだか気まずい気がする。

⏰:08/07/24 19:48 📱:SO903i 🆔:5THbKbSA


#43 [Loki弥]


「あー、こいつ彩音サンのこと知ってんぜ」

京次郎が言う。
沙耶さんは、ああ、と何か思いついたようだった。

「姉貴が言ってた男の子って、君のことだったんだ。ふーん、確かに京次郎より何倍も良い子そうだし…素直そうねぇ」
「…へ?」
「なんだよ、沙耶。俺じゃ不満なのかよ」

沙耶さんは冗談よ、と京次郎をバンバン叩いた。

⏰:08/07/24 19:52 📱:SO903i 🆔:5THbKbSA


#44 [Loki弥]


それにしても、彩音さんは俺のこと何て言ってたんだろう。
…そうだ、彩音さんのことも聞いておかないと。

「あの、沙耶さん。…彩音さんは…」
「ん?ああ、君にも迷惑かけてるからね。…うちの姉貴、離婚してるの。その人が京次郎に似てて、嫌なんだって」

沙耶さんが、寂しそうに笑ったような気がした。
…なるほど、それで。

⏰:08/07/24 19:58 📱:SO903i 🆔:5THbKbSA


#45 [Loki弥]


俺は思いっきり京次郎の方に振り向いた。

「なあ、お前は沙耶さん裏切ったりなんかしないよな!絶対幸せにするよな!」
「はっ…?ま、まあ…」

少し照れながら、京次郎は言う。
沙耶さんは目をパチパチさせた。

「じゃあいいじゃんか。京次郎はその人みたいにならないって俺が保証してやるよ!」

我ながら、無茶苦茶なことを言うと思う。

⏰:08/07/24 23:01 📱:SO903i 🆔:5THbKbSA


#46 [Loki弥]


それに、俺に出来ることなのかもよく判らない。
俺はそれだけ言うと、思いっきりUターンした。

「ちょ、何処行くんだよ!」
「まあまあ、京次郎。ほっときなって」
「…沙耶………」

遠くなっていく俺の背中を見ながら、沙耶さんは京次郎の肩にぽん、と手を置いた。

「あの子、アンタのことちゃんと判ってくれてるみたいね」

⏰:08/07/25 18:49 📱:SO903i 🆔:Y9mGPUc2


#47 [わをん◇◇]
(´∀`∩)↑age↑

⏰:23/01/01 20:40 📱:Android 🆔:2rUS2lJ.


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