○アダムの唄○
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#104 [紫陽花]
目を大きく見開き、半ば叫ぶように声を荒げた央里とは反対に、この部屋にいる央里以外の全ての者が静かに俯いた。

「兄ちゃん……今のところ、この本の予言は外れたことがないんだよ。だから、外れる可能性は……すごく低い」

榎久はそれだけ言うと、キュッと唇を結び、クリクリのかわいい目を伏せて静かに俯いた。

⏰:08/08/15 21:34 📱:F905i 🆔:.7hhoXCo


#105 [紫陽花]
「榎久……なぁ親父。なんとかなんねーのかよ!?このまま死ぬなんて俺、嫌だぜ!!」

叫び声と共に、バンっと両拳で机を叩いた音が響く。

央里は自分の中に収まりきらない苛立ち、不安を外へ投げだそうとしたのだろう。


いきなりに突きつけられた世界滅亡の話は彼にとって信じがたいものだった。

だが“アダムの唄”の不思議な移動能力や、記された予言を目の当たりにした央里には完全に否定することは不可能だったのだ。

⏰:08/08/15 23:46 📱:F905i 🆔:.7hhoXCo


#106 [紫陽花]
「央里……お前の才は何だったか覚えてるな?」

衛はゆっくりと央里を宥めるように穏やかに語りかけた。

「俺の才は……運、命を変え……る」

「そうだ。この揺るぎない運命を変えることが出来るのはお前だけなんだ!!!」

衛も真紀も榎久も傳も突き刺すように央里を見つめる。

⏰:08/08/15 23:47 📱:F905i 🆔:.7hhoXCo


#107 [紫陽花]
まるで何か巨大な力に祈りを捧げるように、すがりつくように視点を一点にあわせる。

「そんなこと言われたって……」

周りに聞こえるか聞こえないかギリギリの音量で央里は呟いた。

“自分にはできない”

“運命を変えるなんて……”

「央里。これは現実であり同時に真実でもあるんだ……」

小さいながらもハッキリと芯のある声で傳は、言った。

⏰:08/08/15 23:48 📱:F905i 🆔:.7hhoXCo


#108 [紫陽花]







“宇峰 央里”という人物の運命の歯車はこの日から壊れてだして、いや、動き出していたのかもしれない。

⏰:08/08/15 23:49 📱:F905i 🆔:.7hhoXCo


#109 [紫陽花]



4頁
《そして旅立ち》


⏰:08/08/18 23:58 📱:F905i 🆔:TWD9QkBw


#110 [紫陽花]
「運命ねぇ……」

時刻は6時48分。

央里はベッドの上で枕元の時計をのぞき込みながら呟いた。

今日は日曜日ということで学校は休みなのだが、毎日の習慣というものは恐ろしく、央里はいつもの起床時間に目が覚めてしまっていた。

昼間の焼き付けるような太陽の光とはうって変わって、カーテンから溢れ出す早朝の太陽は、寝起きの央里の目を優しく刺激する。

⏰:08/08/18 23:59 📱:F905i 🆔:TWD9QkBw


#111 [紫陽花]
時計をみた後で仰向けの体勢へと体を傾けた央里は、そのままの体制で左手だけを伸ばし、一気にカーテンを開けた。


カシャっとレールの擦れる金属音を残し、露わになった窓からは目もくらむような眩しい朝日が部屋に差し込む。

「ちょ、央里。眩…し……い」

その後まもなくベッドの一段下、すなわち床からうめき声が。

⏰:08/08/19 00:01 📱:F905i 🆔:h9DiIFH6


#112 [紫陽花]
その声の主は朝の光を拒絶するように左腕で両目を塞ぐ。
そして数秒もしない内にまた規則正しい寝息が始まった。

「ったく、部屋が余ってないからって何で傳と同じ部屋で寝なきゃなんねーんだよ……」

そう言うと央里は体を起こし、欠伸を一つこぼしてからまだ眠っている傳を跨いで部屋を後にしたのだった。

⏰:08/08/19 00:02 📱:F905i 🆔:h9DiIFH6


#113 [紫陽花]
部屋を出た央里は、よれよれのTシャツにダボダボの短パン姿で洗面所へと向かった。

蛇口をひねり水を出す。

蛇口から流れる水に手を添えれば、形のつかめない液体が柔らかい抵抗を手に与え、寝起きの火照った央里の体温を冷ましていく。

水をすくい、眠気眼を洗い流すと靄が取れたように央里の頭はスッキリと活動し始めた。

「運命ねぇ……」

前髪に水滴の付いた鏡に映る自分を見ながら、またも呟く央里。

⏰:08/08/19 23:35 📱:F905i 🆔:h9DiIFH6


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