○アダムの唄○
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#112 [紫陽花]
その声の主は朝の光を拒絶するように左腕で両目を塞ぐ。
そして数秒もしない内にまた規則正しい寝息が始まった。
「ったく、部屋が余ってないからって何で傳と同じ部屋で寝なきゃなんねーんだよ……」
そう言うと央里は体を起こし、欠伸を一つこぼしてからまだ眠っている傳を跨いで部屋を後にしたのだった。
:08/08/19 00:02
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#113 [紫陽花]
部屋を出た央里は、よれよれのTシャツにダボダボの短パン姿で洗面所へと向かった。
蛇口をひねり水を出す。
蛇口から流れる水に手を添えれば、形のつかめない液体が柔らかい抵抗を手に与え、寝起きの火照った央里の体温を冷ましていく。
水をすくい、眠気眼を洗い流すと靄が取れたように央里の頭はスッキリと活動し始めた。
「運命ねぇ……」
前髪に水滴の付いた鏡に映る自分を見ながら、またも呟く央里。
:08/08/19 23:35
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#114 [紫陽花]
――――――………
――――………
「央里。これは現実であり同時に真実でもあるんだ……」
「分かったよ!!
現実だって事は分かった。
でもさ、俺は何をしたらいいわけ?てゆーか、何かしなくちゃいけないわけ?」
眉間にしわを寄せ全てがかんに障り、気に入らないとでも言うように、ぶっきらぼうに央里は言い返す。
:08/08/19 23:37
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#115 [紫陽花]
「落ち着け央里。今から、これからのことを説明してやる」
またも衛が宥めるように言った。
その姿はまるで怒り狂った牛を抑える闘牛士。
「お前は何もしなくていいんだ。お前が存在するだけで運命は常に変化し続ける」
:08/08/19 23:38
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#116 [紫陽花]
“運命を変える才”ってのはアダムの能力の中でも一番力のある才と言われていてな。
アダム自身も、自分の強大な力のことはよく理解できていたらしく、その力が暴走して多くの運命の歯車が狂いださないように特別な封印を施した。
その封印とは“運命を変える才”を使うには『イヴ』を理解し、共にいるという条件を満たしたときにのみ発動できるというものだ。
このことは“アダムの唄”にも記してあるから、まず間違いはない。
:08/08/19 23:41
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#117 [紫陽花]
「イヴって?」
眉間に寄せていた皺をより一層深くして、央里は問う。
「イヴってのは、アダムと一緒に地球に降り立った人間……と、されているんだけど詳しいことは“アダムの唄”にも明記されていない…ん……だ」
申し訳なさそうな声を出して、央里のイヴへの疑問の答えを導き出してくれたのは榎久だった。
:08/08/19 23:44
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#118 [紫陽花]
「なるほど。まさに未知の生物って奴ね。……なぁ、さっきから聞こうと思ってんだけど榎久は何でそんなにこの話について詳しいんだ?」
「ほぇッッッ?」
榎久はいきなり話題を降られたことでビクッと肩を揺らした。
クリクリの目をさらに驚きに丸める。
:08/08/19 23:45
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#119 [紫陽花]
「えっとね、“アダムの唄”のこととかは学校で習ってるんだ。小学校の時からずっと」
「あれ?でも俺習ってないよ?今初めて聞いたし」
「兄ちゃんはほら……
この話の当事者だから、先生達も兄ちゃんが分別のある年になるまで秘密にしとこうって言ってたよ」
「分別、ねぇ……普通こんな大切なこと秘密にするか?」
央里は呆れたように首を横に振る。
:08/08/22 01:00
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#120 [紫陽花]
「仕方ないよ。“運命を変える才”を持つのは世界で兄ちゃんだけだし、何より未来を変える救世主だからね!!」
榎久は目を輝かせ、兄である央里のことを誇らしげに言う。
「はぁ……
で、親父と榎久の話からすれば、俺はイヴってやつを探せばいいのか?そうしたら地球滅亡の運命は変わるんだろ?」
「そうだ。少なくとも、今までの研究ではそれが一番確率の高い地球滅亡の回避方法だと言われている」
:08/08/22 01:02
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#121 [紫陽花]
衛は間髪入れずに央里の意見を肯定する。
まるで央里がその答えにたどり着くのを待っていたかのように素早い応答。
「そこでだ!!準備が出来次第、央里は傳君と共に旅にでてもらう」
「はぁぁぁああ!?」
「すいません、お茶を注いでいただけますか?」
驚きを隠せず目を丸める央里とは対照的に、傳は真紀にお茶を要求するほど落ち着き払っていた。
:08/08/22 01:04
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