○アダムの唄○
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#124 [紫陽花]
「あら、おはよう。おうちゃん起きてたの?」
父の趣味である観葉植物たちが立ち並ぶリビングを通過し、台所へと足を踏み込むと真紀の姿があった。
「はよ……。目、覚めちゃってさ。それよりなんか食べるもんある?」
だが、よく見れば真紀は赤いチェックのパジャマ姿。
真紀も今起きたばかりなのだろう。
そんな母に起きてすぐ食べ物を要求するなんて……。
央里は俯き、自分の食い意地にほとほと呆れた。
:08/08/24 23:40
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#125 [紫陽花]
「お腹すいたのね。何か作るわ」
「ん……。ありがと」
しばらく冷蔵庫を漁る真紀を見ていたが、
「なに見てんのよ……」
とドスの利いた声と共に睨まれた央里は、仕方なく衛の観葉植物たちに水をやることにした。
日曜の朝と言うこともあり、外から全く音がしない。
:08/08/24 23:41
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#126 [紫陽花]
たまに何か聞こえたかと思っても、台所からの真紀の鼻歌ぐらいのもので、心地良い静けさが央里の耳を包んでいた。
数分後、台所からは何かを炒めるような油の音と、食欲をそそる香ばしい匂いが。
「おうちゃーん!!出来たよ〜!!」
水やりをしていた手を止め、央里はいそいそと台所へ向かう。
:08/08/24 23:42
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#127 [紫陽花]
「……うまそっ!!」
央里の目に、テーブルの上に温かい湯気を出しながらも美味しそうな匂いを放っている目玉焼きと白ご飯が飛び込んできた。
「はい、ケチャップ」
央里は醤油派でもソース派でもなく、胡椒のたっぷりかかった目玉焼きにケチャップをかける派だった。
:08/08/24 23:42
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#128 [紫陽花]
「ありがと。いただきまーす」
テーブルに腰掛け目玉焼きを食べる央里の真ん前にコーヒーを持った真紀も座る。
「美味しい?」
「う、まい……よっ!!」
口いっぱいに白飯と目玉焼きを頬ばって、モゴモゴとしゃべる央里はまるでハムスター。
真紀自身も気付かない内に頬がゆるみ、榎久とそっくりなクリクリの目で温かく央里を見つめていた。
:08/08/24 23:43
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#129 [紫陽花]
その後も一心不乱に目玉焼きを食べていた央里だったが、しばらくして唐突に口を開いた。
「お袋さ、昨日の夜すげー悲しそうな顔してたけど……何で?」
「あら、母さんそんな顔してた〜?見間違いじゃないの〜?」
ケタケタと不自然なほど笑いながら真紀は答えた。
:08/08/24 23:44
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#130 [紫陽花]
だが、央里は黙ったまま真紀を見つめる。
心の中を探るように、切れ長の目を真っ直ぐに真紀に向けて。
「……このご時世に、自慢の愛息子が旅にでちゃうのよ?それも人類の未来を背中に背負った上での危険な旅に」
真紀の手にあるコーヒーの水面が揺れる。
微かに、震えているのだ。
「あなたが生まれた時から、いつかはこうなるって分かってた。でも……!!」
マグカップを勢いよく机に置き、そのまま両手で顔を覆った。
:08/08/24 23:45
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#131 [紫陽花]
:08/08/24 23:46
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#132 [紫陽花]
今にも消え入りそうな声で胸の内を話した真紀は、
いつもの威勢のいい真紀ではなく“母”であるがゆえに背負っている辛さを耐えている一人の人間だった。
きっと央里を不安にさせないように、この今にも全てを侵食していくような不安という暗闇を、押し込めてきたのだろう。
「お袋……」
「ごめんね。こんなこと言ったら不安になるのは央里なのにね……」
真紀は顔から両手をはなし、ぎこちない笑顔で央里を見る。
:08/08/24 23:48
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#133 [紫陽花]
「俺は大丈夫だから!!
それにそんなに心配しなくても俺、絶対帰ってくるし!!」
白い歯を見せてニカっと笑う央里。
「まったく、その自信家なところは誰に似たんだか……」
「お袋からの遺伝だよ!!」
:08/08/24 23:48
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