○アダムの唄○
最新 最初 🆕
#139 [紫陽花]
央里も学校では遠巻きに扱われ、一人疎外感を感じるときがあった。

馬鹿みたいに群れるのが嫌いなだけで、人と喋るのは嫌いじゃない。

むしろ好きな方。

ただ、人が怖いだけなのだ。

相手が心の中で自分をどんな風に思っているのか。

自分は嫌われているんじゃないのか?

そんな誰しも心に秘める他人への恐れが、央里にはとても巨大な壁のように感じられていた。

⏰:08/08/24 23:55 📱:F905i 🆔:wNVjWFuo


#140 [紫陽花]
「俺が一人でいるのは、お前と似たよーな理由だよ」

そんな針鼠のような外側にトゲを持つ央里の心は、自分と傳は似たもの同士だと思っていた。

だからアダムの話も信じたし、傳が倒れたときは大きな責任が重くのしかかってきたのだ。

⏰:08/08/24 23:56 📱:F905i 🆔:wNVjWFuo


#141 [紫陽花]
「はやく元気になれよ!!ちゃちゃっとイヴを探して安全になろーぜ」

央里はちょびちょびとお粥を食べている傳にピースサインを送る。

「…………」

傳はコクリと肯くだけ。

それだけで満足したかのように、央里はお盆と傳を残して部屋から出て行った。

⏰:08/08/24 23:57 📱:F905i 🆔:wNVjWFuo


#142 [紫陽花]
――――――………

――――………

夏も終わりに近づき、刺すような日差しが少しだけ柔らかくなった8月中旬。

ようやく出発の日が決まった。

⏰:08/08/26 23:49 📱:F905i 🆔:wRVlfP.Q


#143 [紫陽花]
時刻は9時13分。
央里、傳の二人は玄関で最終チェックを受けていた。

「おうちゃん!!ハンカチ、ちり紙持った!?」

「…………」

「傳君!!“アダムの唄”持ったかい?」

「…………はい」

必要以上に世話を焼く二人。

何かしてないと落ち着かない、そういったかんじだ。

⏰:08/08/26 23:50 📱:F905i 🆔:wRVlfP.Q


#144 [紫陽花]
白のTシャツにジーパンの央里の手荷物は、今はいているジーパンの中の携帯と財布のみ。


ボタンをあけた紺に白の細いボーダー柄のシャツを着た傳も同じ様に、スーツケースのような大きな荷物は持っていない。

かわりに小さな白地に緑のロゴの入ったエナメルバックを肩から下げているだけだった。

「なぁ、本当にこれだけでいいのかよ?」

⏰:08/08/26 23:52 📱:F905i 🆔:wRVlfP.Q


#145 [紫陽花]
荷物はできるだけ少ない方がいいだろうが、さすがの央里もこの少なさには焦りを隠せなかった。

「大丈夫。これ見せればみんな協力してくれる……」


傳はエナメルバックを指差す。
エナメルの中身は間違いなく“アダムの唄”。

「……はぁ?」

央里ひ信じられないとでも言うように首を傾げた。

⏰:08/08/28 23:28 📱:F905i 🆔:kt91UOxg


#146 [紫陽花]
「さぁさぁ、二人とも時間だ」
だが、そのことにそれ以上ふれることなく、衛が出発を促した。

「じゃあ、さくさくっとイヴ見つけて帰ってくるから」

央里は衛、榎久を見た後真紀をゆっくりと見てからピースサインを向ける。

真紀の瞳には今にもあふれ出しそうなほどの涙が。

⏰:08/08/28 23:29 📱:F905i 🆔:kt91UOxg


#147 [紫陽花]
だが、その滴で自分の頬を濡らさぬよう精一杯の笑顔を作り

「いってらっしゃい」

とだけ言った。


「傳兄ちゃんも気をつけてね!!」

両手でガッツポーズを作り榎久はエールを傳に送る。

「ありがと……」

照れくさそうに左手で鼻を擦りながら傳も笑顔で答えた。

⏰:08/08/28 23:30 📱:F905i 🆔:kt91UOxg


#148 [紫陽花]
「疲れたらすぐに帰っておいで。おまえたちの家は此処なんだから」

「おう!!じゃあ、いってきまーす!!!」

元気よく玄関の扉を開けると、澄み切った青空が広がっている。

空も央里たちを応援するかのように眩しく煌めく。

こうして運命を背負った二人は“イヴ”を探すという運命の歯車を回し始めた。

⏰:08/08/28 23:32 📱:F905i 🆔:kt91UOxg


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194