○アダムの唄○
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#168 [紫陽花]
「紅(クレナイ)……」

「僕の名前を覚えていてくれたんですね。光栄です」

紅と呼ばれた赤スーツの男は軽く会釈をして微笑む。

けれど、目が笑っていない。

「傳の隣にいるのが央里君でしょうか?初めまして紅といいます。あなたを殺すために参上いたしました」

一瞬耳を疑いたくなるような言葉をサラリと言ってのけた。

⏰:08/09/05 22:43 📱:F905i 🆔:uLrgapLA


#169 [紫陽花]
「……はぁ?」

この男は物腰の柔らかそうな口調で自分を殺すという。

傳はネイクの使者だと言っていたが、今までの黒スーツの奴とは明らかにオーラが違う。

黒の奴らは感情をむき出しにして真っ直ぐに央里をねらった。

だが、この男はすぐに殺そうとはせず、むしろ余裕をもって央里に接近してくる。

⏰:08/09/06 23:15 📱:F905i 🆔:gpGf0D62


#170 [紫陽花]
“お前ごとき、すぐに殺せる”
とでも言っているように。


紅が央里とにらみ合っている間、傳はどうやってこの状況を回避するかを考えていた。

ちらりと央里を見てみても、自分を殺しに来たと言われたのにも関わらず、それほど焦ってはいないようだ。

⏰:08/09/06 23:16 📱:F905i 🆔:gpGf0D62


#171 [紫陽花]
半年ほど前の、まだ肌寒さの残る春のはじまりに傳は紅と一戦交えたことがあった。

その時は真っ正面から戦いを挑んだのだが、アダムの唄を使って逃げる暇もなく何発も礫を体にくらい、傳は紅にかすり傷一つ負わすことが出来なかった。

痛みと殺されるという恐怖で傳の意識が朦朧とする中、紅はある提案を傳に持ちかけた。

⏰:08/09/06 23:17 📱:F905i 🆔:gpGf0D62


#172 [紫陽花]
「これからお前が探しに行く『宇峰 央里』と接触するな。そうすればお前は殺さない」

「…………」

無言のまま紅を睨む。
その行為は紅の提案を拒絶するということでもある。

「なるほど……。でもまぁ今回は貴方のその強気な態度に免じて見逃しましょう。けれど、次あったときは……」

そう言い残して紅はゆっくりと傳に背を向け立ち去った。

⏰:08/09/06 23:19 📱:F905i 🆔:gpGf0D62


#173 [紫陽花]
今思い出してもあの時の恐怖感が体を駆けめぐる。

傳は一種のトラウマのようなものを紅に感じていた。

「傳君。あのときの約束、覚えてますよね?今ならまだ許します。央里君を置いてここから去りなさい。忠告はここまでです」

紅は腕を組み《最後》の忠告をした。

⏰:08/09/09 00:04 📱:F905i 🆔:j46ZM4TM


#174 [紫陽花]
「……………」

だが傳は前と同じで、拒絶を表すように紅を睨むだけ。

しばらく沈黙が続いた。

「またも私は傳君からのよい返事を聞けないのですね。残念です……」

諦めたように組んでいた腕をほどき、そのまま右手を胸ポケットに滑らす。

ポケットから取り出したのは小さな10センチほどのナイフ。

⏰:08/09/09 00:05 📱:F905i 🆔:j46ZM4TM


#175 [紫陽花]
そのナイフは、この森の中のわずかな日の光を自らに集め、ギラギラと鈍い光を放つ。

そして紅はその刀身を傳の首筋にピタリと当てた。

このまま一気にナイフをスライドさせれば、傳の首は痛いだけではすまされない事態に陥るだろう。

傳の瞳が恐怖にゆがむ。

⏰:08/09/09 00:07 📱:F905i 🆔:j46ZM4TM


#176 [紫陽花]
「おっと、央里君も死にたくなかったら動かないで下さいよ」

紅は、必ずこの場から傳を助け出そうとするであろう央里も“殺す”という脅しをかけて動けないようにする。

「さようなら、傳君……」

手に持ったナイフを手前にスライドする……
と、その瞬間、急に投げ込まれた何かが紅のこめかみに命中した。

「なっ……石!?」

⏰:08/09/09 00:08 📱:F905i 🆔:j46ZM4TM


#177 [紫陽花]
瞬時に紅は央里を見る。

だが、央里は一歩も動いていないし、むしろ突然視界に入ってきた石に驚いていた。

「傳君……。仲間がもう一人居たんですね。それは予想してませんでしたよ」

眉をつり上げ、悔しそうに言い放つその言葉に、今度は傳が疑問の表情を作る。

「傳君の仲間でもないんですか……?」

そう言った直後、今度は紅の顔が怒りに変わっていく。

⏰:08/09/09 00:10 📱:F905i 🆔:j46ZM4TM


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