○アダムの唄○
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#41 [紫陽花]
一方、席に着いた瞬間からありきたりな質問を投げかけられている傳はどうしようもない苛立ちを感じていた。
傳は席の周りをぐるりと生徒に囲まれ、まったく身動きがとれない。

「野胡瀬君アドレス教えて!!」
「傳って呼んでいいか?」
「野胡瀬、部活は何に入る?」

そんな質問に傳は

「あぁ……」
「うん……」
「別に……」

と、単文かつ素っ気なく答えていく。

⏰:08/08/01 23:51 📱:F905i 🆔:csJNuxtY


#42 [紫陽花]
「や〜ん。野胡瀬君ってクール!!でもそこがカッコイイー!!!」

決してしゃべりが上手いわけでも愛想を振りまいているわけでもないのに、一部の女子の間で早くもファンクラブができそうなほど、野胡瀬 傳という人物はたった何分間かでこのクラスの人々を魅了した。


たった一人、央里を除いては。

⏰:08/08/01 23:53 📱:F905i 🆔:csJNuxtY


#43 [紫陽花]
央里は一時の好奇心で群がるのはあまり好きではない。
そのため傳の周りに群をなす女子や、傳にいろいろと質問を投げかける男子の中に央里の姿はなかった。

「なぁ。あの端の席でぼーっとしてる奴、だれ……?」

傳は隣にいた女子に問う。

ちょっとした人だかりの出来ているこの場で、野次馬精神も見せずに物思いに耽ってるなんて珍しい奴だ。

⏰:08/08/01 23:54 📱:F905i 🆔:csJNuxtY


#44 [紫陽花]
「あぁ〜、宇峰君ね。端にいるのは宇峰 央里君よ。彼、1人が好きみたい」

“宇峰央里……うみね……おうり……!!!!”

次の瞬間、まるで何かを思い出したような、驚きの表情へと傳の顔は一変した。

「アイツが……!!」

これまでクラスの生徒からの質問さえも無関心に返事をしていた傳が初めて見せた驚きと好奇心の目に、質問を受けた女子は目を見張る。

⏰:08/08/01 23:56 📱:F905i 🆔:csJNuxtY


#45 [紫陽花]
「なに?知り合いとか?」
「……いや、違う。」

やはり生徒からの質問に素っ気なく答える傳を見て、女子は
「そう、なの?」と言い残して疑問の残る頭のまま友達の元へ去っていった。

「アイツがアダムの……」

小さく漏らした傳の声と、不敵に笑う彼の口元に誰一人として気付く者はいなかった。

⏰:08/08/01 23:57 📱:F905i 🆔:csJNuxtY


#46 [紫陽花]
――――――…………

―――――………

「で、何でお前が横にいるわけ?」

央里は嫌みったらしそうに視線を右に振る。

「別にいいじゃん……帰る方向が一緒なだけだよ……」

揺れる電車の中、央里の右隣には今日転校して来た傳の姿があった。

どうやら央里と傳の家の方向が一緒らしく、偶然同じ車両に乗り合わせることになったのだ。

⏰:08/08/01 23:58 📱:F905i 🆔:csJNuxtY


#47 [紫陽花]
「ただでさえ帰宅ラッシュで人が多いってのに……転校生まで一緒かよ」

央里は吊革に右手を乗せ、ぶら下がるような形で愚痴をこぼす。

「……着いたみたいだけど」

電車は央里の住む町へと停車した。
ドアが開いた瞬間、冷房の効いた車内へ一気に手を伸ばす熱風は、外と中の気温差を十分に体感させる。
そして、央里と傳は隣に並ぶ形で駅の外へと出た。

⏰:08/08/03 01:47 📱:F905i 🆔:zJcFs6SU


#48 [紫陽花]
「ねぇ、ちょっと聞きたいんだけど……」

「なんだよ、たった一日でクラスの人気者になった転校生」

大きな道路沿いを歩いていたときに傳は央里に話しかけた。

「そーいう言い方やめてよ……君の『央里』って名前、誰がつけた……?」

傳は興味深そうに問う。

⏰:08/08/03 01:48 📱:F905i 🆔:zJcFs6SU


#49 [紫陽花]
「名前?たしか親父がつけたって言ってたよーな……」

眉間にしわを寄せて考え込む央里の隣で、傳が小さく

「やっぱり……」

と言った。もちろん央里には聞き取れないほどの小声で。

「あとさ、女の子から聞いたんだけどあんた一人が好きなわけ……?」

⏰:08/08/03 01:49 📱:F905i 🆔:zJcFs6SU


#50 [紫陽花]
「はぁ!?何でお前にそんなこと言わなきゃ「見つけた……」

央里と傳が口論していると、背後から聞き覚えのある冷たい声がした。

「おまえ!!」

央里の表情が一気に固くなる。
そう、背後から声をかけたのは昨日央里の命を狙った、黒スーツの男だった。

⏰:08/08/03 01:50 📱:F905i 🆔:zJcFs6SU


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