○アダムの唄○
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#59 [紫陽花]
「まあね。央里、この本に手を当てて……」

「お、おう」

不安げな表情で央里は右手を本に添えた。
すると、古びた本から無数の光の泡が飛び出し二人の周りを覆っていく。

「な……!!」

ニヤニヤ顔のスーツの男もこの時ばかりは驚愕の表情を表した。

小さなピンポン球のような泡から、ソフトボール大の泡まで、様々な形の泡が本から溢れ出す。
もう央里たちの姿は見えないほどに泡は彼らを包み込んだ。

⏰:08/08/04 23:57 📱:F905i 🆔:FvnuzxKY


#60 [紫陽花]
その中心部あたりから傳の声が響きわたった。

「ばいばいネイクの使者さん。言っとくけど、僕は君達を絶対に止めるから……」

その声には先ほどまでの興味のなさそうなものとは違い、覇気のある意志を固めた力強さを思わせる。

そして、ヒュッと風が吹いたと思うと二人を包んでいた泡たちはシャボン玉のように風に吹かれ空へと消えた。

泡がなくなった後の場所には二人が立っているわけでもなく、夕焼けに照らされるアスファルトだけが残っていた。

⏰:08/08/04 23:58 📱:F905i 🆔:FvnuzxKY


#61 [紫陽花]
――――――………

―――――……

「おいッッッ!!お前はマジシャンか!?てか、ここどこだよ!?」

「もう、騒がしいなぁ。君が逃げたいって言ったから僕は手を貸しただけなのに……ここは君んちの近くさ……」

「それに普通、本から泡が出てくるか!?何の仕掛けがあんだよ?」

「あれは普通の本じゃないんだよ……」

⏰:08/08/06 20:38 📱:F905i 🆔:Zot1GjyU


#62 [紫陽花]
体に付いた小さな泡たちを片手で払いのけながら央里は口をとがらせた。

二人が口論になりかけたところで傳が「後で詳しく説明するから……」と、うなだれながら言ったのでその場は治まった。

「……分かったよ。絶対あの本のにタネを教えてもらうからな!!それとアイツから逃げられたことには、感謝してるから……」

央里の頬は照れからなのか、夕日のせいなのか、少し紅くなっていた。

⏰:08/08/06 20:40 📱:F905i 🆔:Zot1GjyU


#63 [紫陽花]
「そりゃ良かった……」

傳も少し垂れた目で央里に笑いかけた。

「じゃあ、俺帰るし」

央里は足下にあった鞄を肩にひっかけ周りを見渡す。

“本当に家の近くだ……アレ?俺アイツに家の場所教えたっけ?アレ?”

⏰:08/08/06 20:40 📱:F905i 🆔:Zot1GjyU


#64 [紫陽花]
央里の頭上にハテナマークが飛び交う。
ソレを見ていた傳は少し口元を緩ませ、すかさず一言付け加えた。

「僕、今日から真紀さんと衛さんの家にお世話になるから…「はぁぁぁああああ!?」

静かな夕暮れの中央里の叫び声だけがこだました。

衛とは央里の父である。
傳が真紀と衛の名前を口に出したことにも驚いたが、それ以上に“お世話になるから”の言葉に反応を見せた。

⏰:08/08/06 20:42 📱:F905i 🆔:Zot1GjyU


#65 [紫陽花]
「おまッッッ!!なんで!?」
「そんなに僕と居られるのが嬉しいの?」
「そーじゃなくて!!俺んちに泊まるのかよ!?」
「うん」
「はぁああ!?訳わかんね!!」

央里は両手を頭に当て自分の髪の毛をグシャグシャに引っ掻き回した。
まるで悪い夢でも見ているように。

⏰:08/08/06 20:44 📱:F905i 🆔:Zot1GjyU


#66 [紫陽花]
「別にいいじゃん。これの秘密知りたいんでしょ……?」

傳は鞄の中からチラリと覗くアダムの唄を指差す。

「ま、まぁ」

「じゃあ、立ち話もなんだし帰ろうか……」

「お、おう」

すっかり傳のペースにはまってしまった央里は渋々、傳を家へと案内した。

⏰:08/08/06 20:45 📱:F905i 🆔:Zot1GjyU


#67 [紫陽花]
―――――――………

―――――………

「はい、はい。その通りでございます。すいません。本当に申し訳ありません」

ある薄暗い廃屋の中で黒スーツの男は携帯の向こう側の相手に謝罪の言葉を並べていた。
額にはうっすら汗。
スーツの男は最後まで相手に敬意を払いながら電話を切った。

「もう私に“次”は無いみたいですね……」

スーツの男は廃屋の窓から、沈みかける夕日を見てつぶやいた。

⏰:08/08/06 20:46 📱:F905i 🆔:Zot1GjyU


#68 [紫陽花]



3頁
《真実という現実》


⏰:08/08/06 20:48 📱:F905i 🆔:Zot1GjyU


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