「好き」と言いたい。2
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#100 [あんみつ]
 

ブーブーブー

ズボンのポケットの中の携帯が震えた。

――――――――
10/7 16:35
From 佐古 泉
Sub 無題

一緒に帰りませんか?
昇降口で待ってます。
――――――――

メールを見て携帯をポケットに戻し、俺は立ち上がった。

.

⏰:09/08/09 08:54 📱:D904i 🆔:wmR599IM


#101 [あんみつ]
――――――――


下駄箱にもたれて佐古は待っていた。

「……悪い」

俺が言うと、佐古は力なく笑った。

佐古といると俺は、すべてを見透かされているような気分になる時がある。

「帰りましょうか」

俺たちは並んで歩き始めた。

.

⏰:09/08/09 09:12 📱:D904i 🆔:wmR599IM


#102 [あんみつ]
 

俺たちはぎこちない。

もうずいぶん前から。

二人の間に流れる空気が、以前のそれとは違うことをお互いによく分かってる。

けどお互いに何も言わなかった。

時々一緒に帰って、たわいもない話をする。

そんな日々が続いていた。

原因が俺にあるのは痛いぐらい分かってる。

けど、もうどうすればいいのか分からない。

分かってるのは……もうダメなんだろうなってこと。

.

⏰:09/08/09 09:14 📱:D904i 🆔:wmR599IM


#103 [あんみつ]
 

(……あ)

昇降口を出ると、前の方にねこの後ろ姿が見えた。

ねこの隣には、誰もいない。

夕日に照らされるその背中を、俺は目を細めて見つめた。

小さくて、どこか寂しげなその背中に、俺は駆け寄りたい衝動にかられた。

.

⏰:09/08/09 09:16 📱:D904i 🆔:wmR599IM


#104 [あんみつ]
 

ねこを突き放したのは俺。

それがお互いのためだと思ったから。

けど……

ねこは今独りだ。

昔からこんな時、自ら駆け寄ってねこの隣を歩くのが俺の役目だった。

……今の俺にそんな資格はない。
.

⏰:09/08/09 09:18 📱:D904i 🆔:wmR599IM


#105 [あんみつ]
 
俺の隣には佐古。

ねこを突き放したのは俺。

俺は佐古の彼氏。

ねこと俺は……幼なじみ。

……そうだろ?

なぁ、ねこ。

.

⏰:09/08/09 09:20 📱:D904i 🆔:wmR599IM


#106 [あんみつ]
 

俺はぎゅっと手を握りしめた。

爪が手のひらに食い込んで、小さな痛みが走る。

我に返った俺は、隣に佐古がいないことに気づいた。

少し後ろを振り返ると、佐古が立ち止まっている。

「……佐古?」

呼びかけに答えず、じっと俺を見る佐古。

その目は今にも泣きそうだった。
.

⏰:09/08/09 09:22 📱:D904i 🆔:wmR599IM


#107 [あんみつ]
 
それに気付いたのに、俺は足はその場から動かない。

風が吹いて佐古の髪がなびく。

「……別れてください」

その風に乗せて、吐き出すように佐古は言った。

.

⏰:09/08/09 09:23 📱:D904i 🆔:wmR599IM


#108 [あんみつ]
――――――――


いつか、こんな日が来るんじゃないかって思ってた。


「別れてください」

何も言わない俺に、佐古はもう一度言った。

さっきまでの泣きそうな目じゃない。

真剣な目で俺を見る。
.

⏰:09/08/09 09:24 📱:D904i 🆔:wmR599IM


#109 [あんみつ]
 
……あぁ、もう終わりなんだ。

「健二先輩が悪いんじゃない……私が弱かっただけ」

そう言うと佐古は、少し目を伏せた。

「佐古……ごめん」

俺はそれだけ言うのが精一杯だった。

「ちょっとー!謝らないでくださいよ!振ったの私なんですから」

佐古は笑いながら近づいてきて、俺の腕を叩く。
.

⏰:09/08/09 09:27 📱:D904i 🆔:wmR599IM


#110 [あんみつ]
 
そして、言い終わると同時に、俺の腕を叩いていた手を力なくおろした。

「……最後に、もう一度だけ聞いてもいいですか?」

俺を見上げて佐古が言う。

「……なに?」

精一杯の優しさを込めて俺は聞いた。

「健二先輩にとっての一番って誰ですか?」

.

⏰:09/08/09 09:28 📱:D904i 🆔:wmR599IM


#111 [あんみつ]
 

……一番?

俺にとっての一番?

佐古のでも洋平のでも

ねこにとっての一番でなく。

俺の……

俺にとっての一番は……


.

⏰:09/08/09 09:36 📱:D904i 🆔:wmR599IM


#112 [あんみつ]
 




『健二!』




.

⏰:09/08/09 09:37 📱:D904i 🆔:wmR599IM


#113 [あんみつ]
 

「……あ」

その瞬間気付いた。

誰にとってのでもない、俺にとっての一番を考えた時、真っ先に頭に浮かんだのは……ねこの顔だった。

「やっと気付きましたか?」

そんな俺の心を見透かしたかのように佐古が言う。

頷く俺を見て佐古は微笑んだ。
.

⏰:09/08/09 09:38 📱:D904i 🆔:wmR599IM


#114 [あんみつ]
 
「……私きっと、根宮先輩の隣にいる健二先輩を好きになったんです。根宮先輩の隣にいる健二先輩が、一番かっこよかった」

独り言のように言って、佐古は再び俺の腕を叩く。

「今ならまだ近くにいるはずですよ!」

「……佐古」

叩きながら佐古はうつむいた。
.

⏰:09/08/09 09:40 📱:D904i 🆔:wmR599IM


#115 [あんみつ]
 
「だからっ……早く……」

小さくなる佐古の声。

力が弱くなる佐古の手。

「っ……早く行って!!」

最後に佐古は、力強く俺を押した。

.

⏰:09/08/09 09:43 📱:D904i 🆔:wmR599IM


#116 [あんみつ]
 

……最後まで傷つけてばかりで、ごめん。

けど、佐古と付き合って見つけたものはたくさんあった。

だから……


「ありがとう」

そう言って俺は走り出した。

後ろは振り向かなかった。

.

⏰:09/08/09 09:44 📱:D904i 🆔:wmR599IM


#117 [あんみつ]
――――――――


ずっと、ずっと一緒にいた。

絶対に失したくない、大切な存在。

これからもずっと、ずっと変わらないと思ってた。


.

⏰:09/08/09 11:27 📱:D904i 🆔:wmR599IM


#118 [あんみつ]
 


俺は走った。

何度もねこと歩いた学校から家までの道を。

郵便局の角を曲がって、庭に大型犬のいる家の前を通り過ぎる。

通い慣れた道。

あの背中を探して、走った。


.

⏰:09/08/09 11:29 📱:D904i 🆔:wmR599IM


#119 [あんみつ]
 

『健二には……関係ない!』


『……ごめん、ね』


『佐古さん大事にしてあげなよ!』


ねこの声が表情が、頭に浮かんでは消える。

.

⏰:09/08/09 11:30 📱:D904i 🆔:wmR599IM


#120 [あんみつ]
 


なんで気付かなかったんだろう。

あの時も、あの時も、昔からずっと。

俺の一番は、ねこだった。

考えてみれば簡単なこと。

俺にはねこ以外いないのに。

ねこの存在だけで、世界はこんなに違うのに。


.

⏰:09/08/09 11:31 📱:D904i 🆔:wmR599IM


#121 [あんみつ]
 

ねこの家の前に着いて、一か八かでチャイムを押してみる。

が、案の定返事はない。

そりゃそうだ。

俺の足なら、ねこが家に着く前に追いついたはずなんだ。

「……はぁ……くそっ」

(……どこ行ったんだよ)

俺は息を休める暇もなくまた走り出した。


.

⏰:09/08/09 11:33 📱:D904i 🆔:wmR599IM


#122 [あんみつ]
 


『……私もだよ!』


『ばーかっ!』


『はぁ!?何、猫目って!』

.

⏰:09/08/09 11:35 📱:D904i 🆔:wmR599IM


#123 [あんみつ]
 

いろんなねこを思い出すのは簡単だった。

泣きそうな顔。

怒った顔。

笑った顔。

すべてがびっくりするぐらいしっかり、俺の中に焼き付いている。


.

⏰:09/08/09 11:36 📱:D904i 🆔:wmR599IM


#124 [あんみつ]
 


大切な幼なじみだった。

ずっと変わらないと思ってた。

……けど、違った。


.

⏰:09/08/09 11:37 📱:D904i 🆔:wmR599IM


#125 [あんみつ]
 



『健二!』



.

⏰:09/08/09 11:38 📱:D904i 🆔:wmR599IM


#126 [あんみつ]
 

どうしても手放したくなくて、逃げて。

傷つけて、傷ついて。

突き放して、立ち止まって、迷って。

……それでも、最後にはねこに辿り着く。

俺にとってねこは……

たった一人の大切な女の子。

ねこの隣にいたいんだ。

ねこに隣にいてほしいんだ。

.

⏰:09/08/09 11:39 📱:D904i 🆔:wmR599IM


#127 [あんみつ]
 

周りの人を傷つけて、遠回りをしてやっと気付いた。

そんなどうしようもない俺を、ねこはまだ見捨てないでくれるだろうか?

ねこにとって俺は、ただの幼なじみだろうか?

……不安はたくさんある。

けど、もう……

……この足は止まらない。


.

⏰:09/08/09 11:40 📱:D904i 🆔:wmR599IM


#128 [あんみつ]
 

「……はぁ……はぁ」

俺は、公園の前に立っている。

ちょうど三ヶ月前の七夕の日、ねこと花火をした公園。

隅にあるブランコに、見慣れていたはずの姿があった。

ずいぶん久しぶりな気がする。

俺は深く息を吸って、吐いた。

「……ねこ!」

そして、呼んだ。

.

⏰:09/08/09 11:42 📱:D904i 🆔:wmR599IM


#129 [あんみつ]
 




今、君に

「好き」と言いたい。




.

⏰:09/08/09 11:43 📱:D904i 🆔:wmR599IM


#130 [あんみつ]
23話目の健二目線やっと終わりました!

放置していてすみません

次の24話目はねこ目線に戻ります
そして多分、次が最終話になります!

⏰:09/08/09 11:47 📱:D904i 🆔:wmR599IM


#131 [れいちゅん]
ふわエx

ちょっとーぅトe
めっちゃいいとこで終わってるしcホ
今日の午前中に更新}してほしいなっ(・ω・)_

わがままゆってごめんよケ
れいちゅん早く読みたいの(^ω^)
更新待ってるからあとちょっと頑張ってx

⏰:09/08/10 08:59 📱:W65T 🆔:AZ/6/cWU


#132 [あんみつ]
れいちゅんさん

読んでくれてありがとうございます
午前中には無理でしたが、今から最終話更新します(´ω`)!
よかったら感想板の方にも来て下さい

⏰:09/08/10 14:42 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#133 [あんみつ]
24、「好き」と言いたい。


夢の中で、健二とくだらない話をして笑い合った。

話の内容は覚えてないけど、本当にくだらない話だったと思う。

けど、話の内容なんかより、健二が笑ってくれることが嬉しかった。

一緒にいることが、嬉しかったんだ。

.

⏰:09/08/10 14:43 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#134 [あんみつ]
――――――――


健二のいない日々は、着実に過ぎていった。

近所でも学校でも、びっくりするぐらい会うことはない。

……こうやって離れていくのかな。

なんて、考えると胸が痛んだ。


.

⏰:09/08/10 14:44 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#135 [あんみつ]
 


十月初め、昇降口を出ると秋を感じさせる風が吹いていた。

少しだけ肌寒さを感じて、腕まくりしていた長袖を伸ばす。

(……帰ろ)

校門を出て、いつもは右に行くところをまっすぐ進む。

なんとなく、気分を変えたかった。
.

⏰:09/08/10 14:45 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#136 [あんみつ]
 
細い路地を抜け階段を上がると、一気に視界が開けた。

そこは、夏祭りのあった川原。

あの時の賑わいとは打って変わって、今は静かだ。

風、水、草木、自然の音がすんなりと私の耳に入ってくる。

ぼんやりと川を見ていると、私と同じ階段から老夫婦が上がってきた。
.

⏰:09/08/10 14:45 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#137 [あんみつ]
 
おじいさんは柴系の犬を連れていて、おばあさんは寄り添うようにして歩く。

「こんにちは」

挨拶されて、私も笑顔で返した。

二人と一匹は、私が行こうとするのとは逆の方向に歩いて行った。

なんだか微笑ましい。

私も歩き始めた。


.

⏰:09/08/10 14:46 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#138 [あんみつ]
 


あの日、夜空に咲く花に祈った。

私の選んだ言葉が、行動が、進む道が、間違っていませんように。

その願いはきっと、叶わなかった。

どうしたって私は……

健二のことが好きだった。

昔からずっと、私にとっての一番は健二だった。

.

⏰:09/08/10 14:47 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#139 [あんみつ]
 

たくさん遠回りした今なら分かる。

健二しかいない。

健二がいないだけで私の世界は色褪せるの。

健二の隣にいたい。

健二に隣にいてほしい。


.

⏰:09/08/10 14:49 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#140 [あんみつ]
 

気付いたら近所の公園に来ていた。

隅にあるブランコに座る。

ちょうど三カ月前の七夕の日。

健二と花火をした公園。

……健二に「好き」と言おうとした公園。

あの時「好き」と言っていたら、なにか変わっていたのかな?

.

⏰:09/08/10 14:50 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#141 [あんみつ]
 




『ねこ!』




.

⏰:09/08/10 14:51 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#142 [あんみつ]
 

健二の声が聞こえた気がした。

思い出して、想っては視界が滲む。

「……っ……ひっ」



……ねぇ、健二。


好きだよ。


大好きだよ。

.

⏰:09/08/10 14:52 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#143 [あんみつ]
 


周りを見たら健二がいる気がして、目を閉じたら瞼の裏に健二がうつる。

眠ろうとすると健二の声が、頭の中でこだまする。

そのたびに、好きの気持ちが大きくなっていく。


.

⏰:09/08/10 14:53 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#144 [あんみつ]
 

……健二。


ねぇ、健二。


好きだよ。


苦しいよ。


「好き」と言えないのは、苦しいよ。


隣にいられないのは、苦しいよ。

.

⏰:09/08/10 14:54 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#145 [あんみつ]
 


「っ……けん……じ」

涙が落ちて、スカートに小さな染みを作った。


.

⏰:09/08/10 14:55 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#146 [あんみつ]
 


『十六年の付き合いなめんなよ』


『これやるよ、たこ』


『いつまで泣いてんだよ!』


健二の言葉が、表情が、頭の中に浮かんでは消える。


.

⏰:09/08/10 14:56 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#147 [あんみつ]
 


『俺……ねこには幸せになってほしいって思ってるから』


『ほら、行くぞ』



『ねこ!』


.

⏰:09/08/10 14:58 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#148 [あんみつ]
 


健二……

……好き。


止められない。


溢れ出す。


私、健二に「好き」と言いたい。


.

⏰:09/08/10 14:59 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#149 [あんみつ]
 


どうしても手放したくなくて、逃げて。

傷付けて、傷付いて。

追い掛けて、立ち止まって、迷って。

……それでも最後には君に辿り着く。


.

⏰:09/08/10 15:03 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#150 [あんみつ]
 




今、君に

「好き」と言いたい。




.

⏰:09/08/10 15:03 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#151 [あんみつ]
 


「……ねこ!」


健二の声が、聞こえた気がした。

低くて優しい、健二の声。

それは私の中に、心地良い余韻を残す。

私は目を閉じて、その心地良さに身をゆだねる。


.

⏰:09/08/10 15:04 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#152 [あんみつ]
 


……ザッ……ザッ

砂のこすれる音がした。

それはだんだんと私に近付いてきて、止まった。



「……ねこ」


.

⏰:09/08/10 15:05 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#153 [あんみつ]
 


再び聞こえた声に、私はゆっくりと目を開いた。

そして、顔を上げる。



「……健……二」


.

⏰:09/08/10 15:06 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#154 [あんみつ]
 


目の前には、健二がいた。

ブランコに座る私を、優しい目で見下ろしている。

額は汗ばんで、短い前髪が少し張り付いていた。

.

⏰:09/08/10 15:07 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#155 [あんみつ]
 

「……やっと見つけた」

言いながら健二はもう片方のブランコに腰を下ろす。

(……なんで)

訳の分からない私は、ただただ健二の姿を目で追う。

健二は袖で額の汗を拭うと、私の方を向いた。

夕日のせいか暑いのか、健二の頬は赤く火照って見える。
.

⏰:09/08/10 15:09 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#156 [あんみつ]
 
……なんだかずいぶん久しぶりな気がする。

こうして向かい合うの。

健二の目は真剣で、私は目を離せなかった。

その目に吸い込まれるような気さえした。

「……俺」

健二が口を開いた。



「……佐古と、別れた」


.

⏰:09/08/10 15:10 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#157 [あんみつ]
 


……え


何?


今、なんて……


……別れた?


なんで?


本当に?


.

⏰:09/08/10 15:11 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#158 [あんみつ]
 


声が出ない。

聞きたいことはたくさんあるのに。

「……気付いたんだ」

健二は続ける。

(……何に)

風が吹いた。

砂埃が舞って、私は思わず目を閉じる。
.

⏰:09/08/10 15:12 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#159 [あんみつ]
 
カシャンッ

ブランコが揺れた。

風が止んで、私は目を開ける。

そして気付いた。

ブランコが揺れたのは風のせいじゃない。

目の前には、私を覆うように夕日を背に立つ健二。

健二の両手は、私の座るブランコの鎖を握っている。
.

⏰:09/08/10 15:13 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#160 [あんみつ]
 
同時にもう一つのことに気付く。

健二の頬が赤いのは、夕日のせいでも、きっと暑いからでもない。

それは……


.

⏰:09/08/10 15:14 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#161 [あんみつ]
 


健二の口が動いた。

私にはまるでスローモーションのように見えた。



「俺は……





……ねこが好きだ」

.

⏰:09/08/10 15:15 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#162 [あんみつ]
 


 好 き だ



そう聞こえた。


.

⏰:09/08/10 15:16 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#163 [あんみつ]
 


「……佐古とは別れたばっかだし、俺は……ねこを突き放した。けど……」

健二が言葉を詰まらせる。

一度息を吐いて、意を決したようにまた口を開いた。

「……俺の一番はねこなんだ」


.

⏰:09/08/10 16:25 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#164 [あんみつ]
 


嘘じゃない。

聞き間違えでもない。

健二の真っ赤な顔が、真剣な目が言ってる。


喉が熱い。

胸が震える。

……あぁ、夢じゃない。

自分の頬を涙がつたうのが分かった。


.

⏰:09/08/10 16:26 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#165 [あんみつ]
 

「幼なじみとしてじゃない……一人の女の子として、俺の隣にいてほしい。……好きなんだ」

言い切って健二は、不安の入り交じった、だけど愛おしそうな目で私を見つめる。



『一人の女の子として』


幼なじみとしてじゃない。

.

⏰:09/08/10 16:28 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#166 [あんみつ]
 


……私も健二に、ずっと言いたかった言葉がある。


ずっと言いたかった。


ずっと伝えたかった。


健二に聞いてほしかった言葉がある。


.

⏰:09/08/10 16:29 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#167 [あんみつ]
 


「……健……二」

声が上手く出ない。

「ん?」

そんな私を健二は、十六年間ずっと変わらない優しい瞳で見つめる。


.

⏰:09/08/10 16:30 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#168 [あんみつ]
 


あの七夕の日。

あの日、言えなかった言葉。

ずっと、言いたかった言葉。


.

⏰:09/08/10 16:31 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#169 [あんみつ]
 


「……好き」

健二が目を見開くのが分かった。

そんな健二に、私はもう一度言う。

「私も……健二が好き。ずっと……ずっと、好きだった」

言い終わったと同時に、視界が揺れた。
.

⏰:09/08/10 16:32 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#170 [あんみつ]
 

健二が、ブランコの鎖ごと私を抱き締める。

健二の体温を感じる。

涙が溢れた。


.

⏰:09/08/10 16:32 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#171 [あんみつ]
 


やっと、やっと言えた。


夢じゃない。


夢じゃないんだ。


健二も私を……


.

⏰:09/08/10 16:33 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#172 [あんみつ]
 


「っ……ひっ……健……二」

「……うん」

「……大好き」

「俺も」

健二が、さらに強く私を抱き締める。

私も健二の背中に手を回した。


.

⏰:09/08/10 16:34 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#173 [あんみつ]
 


ずっと、言いたかった言葉。

もう何度でも言うよ。

何度言っても足りないぐらい、健二のことが好きだから。


.

⏰:09/08/10 16:35 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#174 [あんみつ]
 




何度でも、君に


「好き」と言いたい。




.

⏰:09/08/10 16:36 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#175 [あんみつ]
 


「好き」と言いたい。




.

⏰:09/08/10 16:37 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#176 [あんみつ]


以上で「好き」と言いたい。完結です

書き始めたのが約2年前……
途中長い間放置していたにも関わらず読んで下さった方々、本当にありがとうございます

⏰:09/08/10 16:46 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#177 [あんみつ]


読んで下さった方、何か一言でも残してもらえると嬉しいです

感想板
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/2685/


またちょっとした番外編や新作を書けたらと思うので、その時はよろしくお願いします!

⏰:09/08/10 16:53 📱:D904i 🆔:Jifnc1vs


#178 [*紫陽花*]
感動

⏰:09/08/17 16:35 📱:N02A 🆔:oWQYCCuc


#179 [あんみつ]


紫陽花さんありがとうございます

期間だいぶあいてしまいましたが番外編を更新していきたいと思います
またよろしくお願いします

⏰:09/12/28 10:12 📱:D904i 🆔:pyY4bziI


#180 [あんみつ]
 


あれは確か、小学三年生の時。


まだ俺だけが「ねこ」と呼んでいた時の話。


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⏰:09/12/28 10:17 📱:D904i 🆔:pyY4bziI


#181 [あんみつ]
 


俺が「ねこ」と呼ぶのを聞いて、ねこと同じクラスだった男子一人が真似して呼び始めた。

それが始まり。

あっと言う間に「ねこ」という呼び名は浸透していった。

しかし、その時の俺はそれがとても不愉快で、つまらなかった。
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⏰:09/12/28 10:19 📱:D904i 🆔:pyY4bziI


#182 [あんみつ]
 
自分だけがねこを「ねこ」と呼ぶ。

その特別な感じが良かったのに。

まぁ今思えばただのやきもちなんだけど。

それからしばらくの間、俺はねこを「ねこ」と呼ばなかった。


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⏰:09/12/28 11:22 📱:D904i 🆔:pyY4bziI


#183 [あんみつ]
 


 **another story**
   **健二**


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⏰:09/12/28 11:22 📱:D904i 🆔:pyY4bziI


#184 [あんみつ]
 


「たこって呼んでたよね」

コンビニを出て、マフラーを直しながらねこが言った。

「は?何の話?」

俺はコンビニ袋を左手に持ち替えながら聞く。

「急に思い出したんだけどさ。小三ぐらいの時。健二、私のことたこって呼んでたよね」
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⏰:09/12/28 11:23 📱:D904i 🆔:pyY4bziI


#185 [あんみつ]
 
(……あぁ)


何という偶然。

つい先日、俺も同じことを思い出したばっかりだ。


けど、あまりその話に触れて欲しくない俺は、何も知らないふりをして言う。

「そうだっけ?」
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⏰:09/12/28 11:24 📱:D904i 🆔:pyY4bziI


#186 [あんみつ]
 
俺の言葉に、ねこはつまらなさそうな顔をした。

「ん」

そんなねこに、俺は空いた右手を差し出す。

ねこは一瞬きょとんとした後、へへっと笑いながら自分の左手でそれを握った。


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⏰:09/12/28 11:25 📱:D904i 🆔:pyY4bziI


#187 [あんみつ]
────────



今日はクリスマスイブ。

世のカップルはイルミネーションなんか見に行ったりするのだろうが、俺たちは違う。

昔からクリスマスイブは、ねこの家でケーキを食べていた。
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⏰:09/12/28 13:30 📱:D904i 🆔:pyY4bziI


#188 [あんみつ]
 
親が両方仕事をしていて留守がちな俺は、ねこの家にお邪魔してねこのお母さんの手作りケーキを頂く。

まぁ高校に入ってからは、コンビニのケーキですまされているが。

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⏰:09/12/28 13:31 📱:D904i 🆔:pyY4bziI


#189 [あんみつ]
 

付き合い始めても、やっぱり昔からの習慣は残っていて、どちらからともなく今年も自然とこうなった。

これからねこの家に戻って、コンビニで買ったケーキを食べる。


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⏰:09/12/28 13:32 📱:D904i 🆔:pyY4bziI


#190 [あんみつ]
────────



本当はしっかり覚えてる。

あの日もこんな寒いクリスマスイブだった。


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⏰:09/12/29 11:27 📱:D904i 🆔:WP3anL/6


#191 [あんみつ]
 


「なんでたこって呼ぶの」

ねこの家でケーキを食べて自分の家に帰る途中、ねこが追いかけて来て言った。

俺は自分の中のもやもやした気持ちを言葉にできずに黙り込んだ。

ねこは涙をためた目で俺を見る。
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⏰:09/12/29 11:28 📱:D904i 🆔:WP3anL/6


#192 [あんみつ]
 
今まで俺がたこって呼んでも大して怒りもしなかったのに。

本当は嫌だったのだろう。

そんなねこを見て、俺は口を開いた。

「……だって……みんなねこって呼ぶから」
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⏰:09/12/29 11:29 📱:D904i 🆔:WP3anL/6


#193 [あんみつ]
 
やっとの思いで言った言葉に、ねこはきょとんとした顔をする。

そして言った。

「みんな、健二の真似してるだけでしょ?」

ねこは当たり前のように言った。


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⏰:09/12/29 11:30 📱:D904i 🆔:WP3anL/6


#194 [あんみつ]
 


自分でも分かってた。

一番にねこと呼び始めたのは俺だってこと。

それは変わらないってこと。

けど、なんか納得いかなかった。


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⏰:09/12/29 11:31 📱:D904i 🆔:WP3anL/6


#195 [あんみつ]
 


なのに、ねこの口から聞くとなぜだかそれはすんなりと俺の中に入ってくる。

そして俺を安心させた。

俺たちは何も変わらないんだって。



俺が再びねこと呼んだ時、ねこはとびきり嬉しそうな顔をした。


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⏰:09/12/29 11:32 📱:D904i 🆔:WP3anL/6


#196 [我輩は匿名である]
頑張ってください@

⏰:10/01/11 23:10 📱:PC 🆔:pngj2pIo


#197 [我輩は匿名である]
放置wwwwwwwwww

⏰:10/02/04 23:10 📱:PC 🆔:PSHSLYLs


#198 [まりな]
書いてください

⏰:10/02/05 12:18 📱:SH904i 🆔:GMSPJghQ


#199 [あんみつ]


放置すいません
続き書きます!!

⏰:10/02/10 18:53 📱:P08A3 🆔:L4.CeHsM


#200 [あんみつ]
────────



「はぁー寒かった」

部屋に入るとねこは一番に暖房をつけた。

「ミルクティーでいい?」

「あぁ」

俺の返事を聞くと、マフラーだけをはずしてねこは一階に降りていった。
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⏰:10/02/10 18:54 📱:P08A3 🆔:L4.CeHsM


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