短編集
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#262 [我輩は匿名である]
あああああっっ

心配だ。

でも俺なんかが連絡していいものなのか…

あのマンションに行くのも気が引ける…


そんなことばっかが頭を駆け巡る。


様子のおかしい俺を見て隣でパンにかじり付いていた怜司が口を開く。

「……お前さぁ、朝から何ソワソワしてんの?携帯気にしてるみたいだけど、もしかしてまだあの子のこと引きずってんの?」

「ちょっ何馬鹿なこと言ってんだよ?!んな訳ねーだろ!!」

⏰:10/08/29 05:52 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#263 [我輩は匿名である]
寧ろ未那のことなんてすっかり忘れてたし!

「本当かよ?なーんか怪しいな」

「はあ?!つか、未那のことはこれで良かったって思ってる。気付くのが遅かったけどな」

「…?ま、早く飯食えよ次に遅れちまうぜ?じゃあ俺はあっちだから。またな〜」

「げっっ」

俺は急いで昼食を済ませ講義室へと向かった。

⏰:10/08/29 05:53 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#264 [我輩は匿名である]
「あー何か今日は疲れたなー」


今日最後の講義を終え、俺は机にぐてっと両手と顔を預けた。

その拍子に机の中から何か物が落ちてしまった。

何かと思い拾い上げると、それは先日友人から借りた慧弥さんが表紙の絵画雑誌だった。

「ああ、読み終わったんだった。返さなきゃな」

そう思った俺は友人の元へと向かった。

⏰:10/08/29 05:57 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#265 [我輩は匿名である]
「これ、さんきゅーな」

「おお!どうだった?」

「ああ、何かすげーよな。この人に惹かれて行くってゆーか、尊敬するってゆーか…」

「お前もそう思う?!!」

俺の言葉に友人は興奮したかのように身を乗り出した。

「やっぱ只のお坊ちゃんじゃないよな?周りは親の七光りだとか何だかんだ言ってる奴いるけど俺はこの人かなり努力したんじゃないかなぁって思う。同じ芸術でも音楽と絵画じゃ違いすぎるもんな!」

⏰:10/08/29 05:58 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#266 [我輩は匿名である]
うんうんと頷き、友人は満足げに語る。

しかし、俺にはまるでちんぷんかんぷんだった。

「え?どゆ意味?」




――――それから数時間後


俺の足取りは重かった。


………………………知らなかった。


慧弥さんが正真正銘のボンボンだったなんて……

⏰:10/08/29 05:59 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#267 [我輩は匿名である]
要約するとこうだ

雨宮川家は代々音楽家で、名家である。
慧弥さんのお爺様はその業界では名を知らぬ者はいないんじゃないかって言うぐらい有名な元世界トップの指揮者でお婆様は元トップモデル兼バレリーナ。
で、慧弥さんのお父様は………


ああ……、思い出しただけでも頭が痛い

お、俺はとんでもない人と知り合い?になっちまったのか!!?

し、しかもだ!

妻であるエリサさんもフランスでは有名な名家のお嬢様らしいじゃねーか!!

⏰:10/08/29 06:01 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#268 [我輩は匿名である]
"画家"の雨宮川慧弥を知らなかったまでは、まぁ目を瞑れるとしよう。

けど、世界的に有名な"雨宮川家"を知らないなんて、俺はとんだ世間知らず?!

"名家"の雨宮川慧弥を知らなかったとは言え、そんなお坊ちゃんに向かってあんなことやそんなことまで………

一気に血の気が引くのがわかる。

無礼過ぎるのにも程がある……

俺、今度こそあの人に顔向け出来ねぇよっ!!

どーしよ?!

うぇええ??!

どぉーすんだよおおおお〜〜〜〜〜

⏰:10/08/29 21:12 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#269 [我輩は匿名である]
その日の夜

慧弥さんから着信があった

少し迷ったけど、もち出られる筈もなく俺は放置した


次の日もその次の日も着信はあった

メールも一件だけあった

俺がこんな風になってるなんてまるで思ってもないような内容だった

…当たり前か。


『どうした?忙しいのか?とりあえず飯、さんきゅーな。連絡くれ』

⏰:10/08/29 21:21 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#270 [我輩は匿名である]
俺は少し罪悪感にかられた


…ごめん慧弥さん

俺、どう接したら良いのかわかんねーよ




―それから一週間が過ぎようとしていたある日の帰り道

大学から駅に向かっていると、不意にバイクに横切られあぶねーなと思っていたら目の前に止まりやがった。

俺は何だと不審に思っていると、そいつはメットを無造作に外した。

…見慣れた顔が、そこにあった。

⏰:10/08/29 21:24 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#271 [我輩は匿名である]
「よう、湊。元気そうじゃねぇか」

「……慧弥さん………」


そこにいる慧弥さんは、いつかの鬼の形相みたいな顔をしている訳でもなく、不気味に微笑んでいるだけだった。

それが、余計に怖い。


「話は後だ。乗れ」

そう言って俺にメットを投げ渡す

「でっでも」

「いいから」

⏰:10/08/29 21:26 📱:F906i 🆔:☆☆☆


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