【コラボ企画】秋のラノベ祭り投下スレ【withイラスト板】
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#102 [紫陽花→渚坂 さいめ]
チラチラとドラゴンが逃げていないかを気にする少年を無視して、青年は左手に持っていたお玉を少年の目の前に突き出して問う。
「名前?オイラに名前なんて……。オイラはただの、しがないドラゴン使いですから」
困ったように笑う少年を見ながら青年は腕を組み、小さく“そうか”と呟いた。
「名が無いのならば、私がつけてやろう!!そうだなぁ……」
「うぇ!?そんな、オイラに名前なんてもったいないです!!」
慌ててあたふたと手を動かし、精一杯の遠慮を見せたものの、青年の思考は止まることを知らない。
:08/11/03 14:55 :F905i :WY17HTaw
#103 [紫陽花→渚坂 さいめ]
「うーむ……レイン……よし!!今日からお前の名は『ブルー・レインウェル』だ!!」
“ブルー”とはお前の瞳の色から、“レインウェル”は『レイン』つまり、雨のように全てのモノを洗い流せるように、という意味だ。
そう言い切った後、青年は満足そうに鼻を鳴らす。
「ブルー・レインウェル……」
「なんだ、雨は嫌いか?」
自分に与えられた名前を噛みしめるように呟く少年に対し、不服でもあるのか、と言いたさげに青年は眉をひそめる。
:08/11/03 14:56 :F905i :WY17HTaw
#104 [紫陽花→渚坂 さいめ]
「い、いや!!雨は嫌いじゃないです。むしろ好きです!!」
「ならばレインよ、受け取るがいい。我ながら素晴らしいネーミングセンスだ」
またも満足げに鼻を鳴らし、青年は微笑んだ。
そして、最後に一言。
「神である俺様が名を与えたんだからな!!その名に恥じぬように生きるのだぞ」
「はい!!……って、え?」
:08/11/03 14:57 :F905i :WY17HTaw
#105 [紫陽花→渚坂 さいめ]
勢いよく返事をしたレインだったが、一つ彼の頭には疑問が生まれた。
「あなたって神様なんですか?」
「うむ。言ってなかったか?」
たとえドラゴンが轟こうとも、不死鳥が舞おうとも、神がこの地に降りたったというのは前代未聞の事態。
:08/11/03 14:57 :F905i :WY17HTaw
#106 [紫陽花→渚坂 さいめ]
「うぇ!!初めて神様見ちゃった……」
レインは碧い瞳をより一層大きく見開き、エプロン姿の青年を食い入るように見つめる。
「そう驚くでない。神などそこら辺にゴロゴロいる」
青年はフンと鼻を鳴らして、そっぽを向く。
「さて、無断で神界を抜けてきたからギードルの奴が怒って迎えにくるだろうな……」
曇り空を見上げフーっとため息吐き、お玉で頭を掻く青年の表情はその若さに似つかわしくないほど疲れ切ったものだった。
神とはそれほど神経を浪費する役割なのだろう。
:08/11/03 14:58 :F905i :WY17HTaw
#107 [紫陽花→渚坂 さいめ]
「あの、ギードルとは……?」
差し出がましくないように、言葉を選びながらレインは恐る恐る『神』に問う。
「あぁ、俺の秘書だ。まだ学生なんだが、なかなかキレる奴でな。ほら 生意気にもう俺の居場所を見つけやがった」
青年は曇り空の一点を見つめる。つられてレインも空を仰ぐ。
と、同時に雲の切れ間から人影が。
人影はどんどん高度を下げ、先程まで肉眼では確認できなかった格好や容姿も理解できるほどに近づいてきた。
:08/11/03 14:58 :F905i :WY17HTaw
#108 [紫陽花→渚坂 さいめ]
そして黒い学生服の下に着込んだトレーナーのフードを揺らしながら、青年の秘書役であるギードルはこの地に降り立った。
「神様ここにいらしたのですか!!すぐにお戻りください!!城が城が……!!」
ギードルは蒼白な顔をして青年に話しかける。
レインの存在も気付かないほど焦っている様子を見ると、余程の緊急事態なのだろう。
「落ち着け。なにがあったのだ?」
青年はギードルの肩をつかみ、揺さぶるようにして詳細を問う。
:08/11/03 14:59 :F905i :WY17HTaw
#109 [紫陽花→渚坂 さいめ]
「申し上げます……城が賊に襲われました。怪我人はおりませんが、神界の安定を司る宝玉“亜神の命”が盗まれました」
それだけ言うと下唇をギリギリと噛み、目を伏せた。
「なるほど、お前が焦るのも無理はない。亜神の命を盗むとは……小賢しい賊め。で、その賊の行方は?」
青年はギードルの肩から手を離し、そのまま右手を顎の下に持っていく。
まるで探偵のようなポーズで考え込む姿は、少なくともレインの目に立派な大人の姿に見えた。
:08/11/03 15:00 :F905i :WY17HTaw
#110 [紫陽花→渚坂 さいめ]
「正確な位置は掴めませんが、居合わせた燕弥(エンビ)に賊の臭いを覚えさせました」
「よし、でかした。燕弥!!そこに隠れているのだろう?出てこい」
そう言って青年はギードルに向かって叫ぶ。
「あぁーもう!!分かってるよ」
青年が叫ぶのと同時にギードルの後ろからひょっこりと少年が飛び出した。
背格好こそレインと変わらないものの、彼の目は少しつり上がり額に小さな傷。
燕弥 [jpg/36KB]
:08/11/03 15:02 :F905i :WY17HTaw
#111 [紫陽花→渚坂 さいめ]
「何!?ギードルと賊を追いかければいいの!?」
腕を組み、ギードルを顎で指しながら青年と話す燕弥。
態度こそ大きいものの、それを青年が許しているところを見てみれば、互いの信頼が厚いと言うことだろう。
二人の会話を聞きながらレインはそんなことを考えていた。
「いや、お前はここにいるレインと行ってもらう」
:08/11/03 15:02 :F905i :WY17HTaw
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