【コラボ企画】秋のラノベ祭り投下スレ【withイラスト板】
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#146 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
だが、ディスプレイを見つめる俺のテンションは素晴らしく低い。
これからゲームをするというのに、気分は滅入る一方だった。
少なくとも、俺はこのゲームをしたい訳ではない。
しなければならないのだ。

今や世界最大の人気を誇るロールプレイングゲーム。
バーチャルワールド専用オンラインゲームソフト。
『カオス・オブ・ドリームズ』
通称、COD。
俺はダウンロード済みで用無しとなったソフトを手に取り、溜め息を吐く。
世界中にいる他のユーザーと仲間になって魔物を討伐したり、時には敵としてプレイヤー同士が戦ったりなど、やりこむ要素はかなり濃い。

⏰:08/11/03 15:59 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#147 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
だが、そんなものには少しの興奮も抱いていない。
俺は楽しむためにゲームをやっているのではない。
もう一度溜め息を落とした俺はソフトを乱暴に放り投げ、パソコンの横の写真に視線を送った。
父と姉。
写真立てに行儀良く収まっている二人の笑顔。
bbs1.ryne.jp/d.php/illust/1144/19
この写真を撮るとき、俺は記念撮影でもないのにと恥ずかしがって断った。
海斗も一緒に写ればいいのにと、俺を肘で突いた姉の姿が目に浮かぶ。
「父さん…姉ちゃん…」
二人の元気な姿は五ヶ月前に失われてしまった。

⏰:08/11/03 16:00 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#148 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
一人暮らしをしていた俺に母からの突然の電話。
意識不明の重体。
検査結果は異常無し。
外傷は無く、眠ったまま目を覚まさないのだと聞かされた。
俺は呆然として受話器を耳に押し付けていた。
血の気と共に、世界の色が失われていくのがわかった。
教えられた病院に着くと、力無く今にも倒れそうな母が待っていてくれた。
頼りなく病室に案内された俺が見たのは、あまりにも信じがたい現実だった。

⏰:08/11/03 16:01 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#149 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
俺は徹底的に原因を探した。
原因不明なんて、納得出来る訳がない。
異常無しなんて、納得出来る訳がない。
俺は二人の行動をごみ箱に捨てたゴミの中身からご飯のメニューの材料に至るまで、完璧に調べあげた。
そして一つの共通点を見つけることに成功した。
意識不明になる数分前までバーチャルワールドをプレイしていた事実が発覚したのだ。

⏰:08/11/03 16:02 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#150 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
父はバーチャルワールド制作会社の社員で、オンラインゲームのイベント管理やバグの対処などをしていた。
姉も父のサポート役として会社に勤めていたのでプレイしていた理由も頷ける。
俺はバーチャルワールドに原因があると睨んだ。
それも、二人共やっていた同じゲーム、カオスオブドリームズに。
信憑性は極めて低い。
たかがゲームだ。
だが、手掛かりはこれしかない。
やらなければならない。
真実を突き止めるのだ、俺が。

⏰:08/11/03 16:03 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#151 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
密かな決意を胸に、俺はバーチャルワールドに入る準備をする。
パソコンに回線を接続して、ブラックカラーのヘルメットを被る。
マウスでゲームを起動させると、俺の意識は薄れていった。

バーチャルワールド作動。
ログイン完了。
ようこそ、バーチャルワールドへ。

ユーザーデータ確認。
プレイデータ読み込み完了。
ようこそ、カオスオブドリームズの世界へ。

⏰:08/11/03 16:03 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#152 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
何度目かのログイン。
リアルと僅かに違う奇妙な感覚にも、もう慣れた。

カイトがゆっくりと目を開ければ、そこにはすでに見慣れた町並みが広がっていた。
マップの最南端に位置するフィズの街だ。
この街には背の高い建物は少なく、城もない。
特徴的なのは建物と建物の間に隙間がないことくらいだろうか。
網目のように建築物が連なっている。

「遅いじゃねーか、カイト」

不意に名前を呼ばれ、カイトは辺りを見渡す暇もなくやけに大きい声の持ち主を目で追う。

⏰:08/11/03 16:04 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#153 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「ガイア、ラルティス…。もう来てたのか」

辿り着いた視線の先には十七歳ほどの少年とも言える青年が二人いた。
背に黒い刀身に赤いオーラを放つ剥き出しの太い両刃刀を背負ったガイアと呼ばれた黒服の青年は、不機嫌そうに近付いてきた。
その隣には白い装束に身を包んだ同じくらいの青年が石の階段に座り込んで微笑んでいる。
その青年の腰には白い鞘から綺麗に伸びる細身の片刃刀が収まっていた。

⏰:08/11/03 16:04 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#154 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「もう来てたのかじゃねーよ。遅刻だ馬鹿野郎。いつまで待たせる気だ」

腕を組んで明らかに不機嫌オーラを出すガイアに、すまないと小さく謝った。

「お陰でこんな野郎と何時間も一緒にいる羽目になったじゃねーか」

皮肉を言われてる当の本人であるラルティスは、微かに眉を寄せただけでガイアの傍まで近寄った。

「何時間って、たったの十五分だろう?それに、君も遅刻して来たよね」

「五分遅刻しただけでうるさい奴だな!二十分遅刻してきたカイトに比べれば可愛いもんだ」

食ってかかるガイアを横目に見つつ、ラルティスはカイトに視線を向けた。

⏰:08/11/03 16:05 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#155 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「遅刻は遅刻だ。それよりカイト、僕もこんな奴と一緒にいるのは好きじゃないんだ。早くデータ確認して発とう」

頷いたカイトは片手を肩の高さまで上げ、小さく「データ呼び出し」と呟いた。
するとすぐに手の前に半透明で緑色の画面がいくつか重なって表示された。

「シンクロ率86%か。まぁ問題ないだろう」

ステータス画面を一瞥して呟く。
シンクロ率はバーチャルワールドでの動き安さのようなものだ。
低ければ動きは鈍く、高ければ素早くなる。
体調などで日によってシンクロ率は左右されるので確認は欠かせない。
シンクロ率が低い日は倒され易くなるので無理は出来ないからだ。

⏰:08/11/03 16:06 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


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