闇の中の光
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#577 [ゆーちん]
誰かと新年をカウントダウンするなんて、生まれて初めてだった。
だけど年明け早々のSEXは、別に珍しい事じゃない。
萌子だって、1月1日の午前中から援交してた事もあるから。
でも…援交のSEXとは比べ物になんないよ。
てゆーか、比べちゃいけない。
あんな素敵な愛ある行為を。
:09/01/20 21:27 :SH901iC :F4H0SjdY
#578 [ゆーちん]
年が明けるとお互い目を見合わせ、笑いあった。
しばらくすると哲夫からのキスが降って来たので、そのままベットで1つになった。
服を着なくても平気なくらい温かい部屋のおかげで、下着のままベットの中で眠った。
目が覚めたのは昼過ぎで、とてものんびりとした元旦だった。
:09/01/20 21:29 :SH901iC :F4H0SjdY
#579 [ゆーちん]
今日、明日、明後日と集会は休み。
明々後日の集会で、哲夫は『明日、この間の仕返しに行く。』と発表するらしい。
つまり1月5日、この前の惨劇のお返しをしに行くってわけだ。
女子は留守番。
私は、家で哲夫の無事を祈るしかないって訳だ。
:09/01/20 21:30 :SH901iC :F4H0SjdY
#580 [ゆーちん]
「餅が食いてぇ。」
哲夫が誰かに電話をしていたと思えば、数分後にはインターホンが鳴る。
「お待たせしました!」
お餅が届く。
チームの新人は新年早々、哲夫に動かされてちょっぴり可哀相だと思ったけど、一緒になってお餅を食べる私も同罪だ。
:09/01/20 21:31 :SH901iC :F4H0SjdY
#581 [ゆーちん]
何をする訳もなく、部屋でゴロゴロとテレビを見たりゲームをしたり、お腹が空けば二人で買い物に行く。
相手を可愛いと思えばキスをするし、愛おしいと思えばSEXをする。
そんなお正月も矢のように過ぎて、今年初めての集会の時間を迎えた。
:09/01/20 21:32 :SH901iC :F4H0SjdY
#582 [ゆーちん]
襲撃されてから初めて顔を出す集会。
そこは、いつもと変わらない賑やかさと明るさが溢れていた。
「シホちゃーん!」
誰かが私を呼びながら近付いて来る。
顔を見なくても、もう声だけでわかるんだ。
私の、仲間だから。
:09/01/20 21:33 :SH901iC :F4H0SjdY
#583 [ゆーちん]
「のんちゃん。」
「あけおめ!今年も仲良くしようね〜。」
いつもと変わらない笑顔がそこにはあった。
まるで、あの日の惨劇なんて最初っから無かったかのような笑顔。
「のんちゃん…体、だいじょ‥」
「気にしないで!ただの打撲だし。心配かけてごめんね。」
:09/01/20 21:34 :SH901iC :F4H0SjdY
#584 [ゆーちん]
心配する私をよそに、明るい表情のままののんちゃん。
「私の方こそ本当ごめんなさい。私のせいで、のんちゃん…」
「あぁー、シホちゃん、そういうの無し無し。誰のせいでもないよ。現に私は超元気なわけだし、結果オーライじゃん?」
:09/01/20 21:35 :SH901iC :F4H0SjdY
#585 [ゆーちん]
「でも…」
「本当に大丈夫だから。あんなの一々気にしてたら、これからやってけないよ?だからほら、笑って!」
終始笑顔ののんちゃんにつられ、少しだけの笑顔が浮かんだ私。
本当に許してもらっていいのだろうか。
:09/01/20 21:36 :SH901iC :F4H0SjdY
#586 [ゆーちん]
なんだか納得いかない気もするけど、話はそのまま流れてしまい、場内に康孝の声が広がった。
「はーい、注目!みんな、あけおめ。まずはテッちゃんから挨拶と報告がありまーす。」
続いて哲夫の声が響く。
:09/01/20 21:36 :SH901iC :F4H0SjdY
#587 [ゆーちん]
「あけましておめでとうございまーす。今年もよろしくっつう事で、さっそくみんなに報告。この前の仕返し、明日行くつもりだから、いつもの時間にここ集合。女子と新人はついて来んじゃねぇぞ?はい、以上。」
「つーわけだ!わかったか?」
:09/01/20 21:37 :SH901iC :F4H0SjdY
#588 [ゆーちん]
康孝の付け足した問いに、みんなが返事を返した。
いつもより、気合い入ってる返事。
隣にいたのんちゃんや、他の女の子も、返事に力が入ってた。
:09/01/20 21:39 :SH901iC :F4H0SjdY
#589 [ゆーちん]
「うちらのかたき、哲夫さんに取って来てもらわなきゃね!」
のんちゃんが笑って言った。
「…うん。」
複雑なの、心の中が。
仲間が私の過ちを許してくれたり、好きな人が誰かを殴りに行ったり、元カレが敵だったり、もうすぐ萌子に戻らなきゃいけなくなったり。
色んな感情が混ざりあった私の頬を、冷たい風が撫でてった。
:09/01/20 21:40 :SH901iC :F4H0SjdY
#590 [ゆーちん]
早めの解散で、のんちゃん達とは明後日会おうねと笑顔で別れた。
哲夫の肩に抱かれながら、夜道を歩く。
「綺麗だね、星。」
「冬の夜空が1番だな。」
歩きながら二人で見上げた綺麗な夜空。
:09/01/20 21:41 :SH901iC :F4H0SjdY
#591 [ゆーちん]
何が引き金だったと言う訳ではなく、突然、私の目から涙が零れた。
「…ねぇ。」
「んー?…っつか何泣いてんだよ!」
慌てて立ち止まった哲夫。
涙でぼやけて、その驚いた哲夫の顔が上手く見えないよ。
:09/01/21 10:39 :SH901iC :FXDa00ZA
#592 [ゆーちん]
「哲夫に…伝えたい事…まだまだ、いっぱい…ある。」
「あぁ?何言ってんだよ。つーか泣くな。」
「でも…何から話せばいいのか…わかんないし…上手く話せない…かもしんないし…」
「今でも全然上手く話せてないぞ。ほら、もう泣くな。」
:09/01/21 10:43 :SH901iC :FXDa00ZA
#593 [ゆーちん]
泣きじゃくる私の涙を、笑いながら拭き取る哲夫。
思わず抱き着いてしまった。
「おいおい。そういう可愛い事は家に帰ってからしろよな。」
「…ごめ…なさい。」
「帰ろ。話ならゆっくり聞いてやるから。まだまだ夜は長いぞぉー。」
:09/01/21 10:45 :SH901iC :FXDa00ZA
#594 [ゆーちん]
結局、家に帰ってから、何も伝えらんなかった。
翌日、哲夫が出掛けるまでたくさん時間はあったのに何も言えずに、見送った。
「いってらっしゃい。」
「いってきます。」
笑顔の哲夫。
キスをもらってから送り出した。
:09/01/21 10:47 :SH901iC :FXDa00ZA
#595 [ゆーちん]
家で一人ぼっち。
私はベットに潜り、哲夫の匂いを抱きしめた。
好きで、好きで、こんなに人を好きになれるなんてまだ信じらんない。
今頃、哲夫は怒ってるのかな。
誰かを殴ってるのかな。
願わくば、哲夫の笑った顔だけを見ていきたい。
これから先、ずっとずっと。
:09/01/21 14:22 :SH901iC :FXDa00ZA
#596 [ゆーちん]
気が付くと哲夫が隣で眠っていた。
私、いつのまに寝ちゃったんだろう。
隣に哲夫がいる事実に、思わず涙が浮かんだ。
無事でよかった。
だけど顔には数ヵ所に傷。
見てて痛々しかった。
:09/01/21 14:23 :SH901iC :FXDa00ZA
#597 [ゆーちん]
「…シホ。」
小さく囁いた哲夫。
「ごめん、起こした?」
「ううん。おはよう。」
「おはよう。ていうか…おかえり。」
「ただいま。」
笑ってる哲夫を見て、浮かんでいた涙は零れてしまった。
:09/01/21 14:24 :SH901iC :FXDa00ZA
#598 [ゆーちん]
「情緒不安定だな、お前。」
「ごめ…なさ…」
「謝んなくていいっつうの。それより消毒して。ズキズキして熟睡できねぇ。」
「あ、うん。」
涙を拭いて、薬箱を取りに向かった。
:09/01/21 14:25 :SH901iC :FXDa00ZA
#599 [ゆーちん]
薬箱の中には、私が以前買って来た薬が入っていた。
シホになって初めて1人で外に出た時、コンビニで買ったんだっけ。
哲夫が熱出して、助けたくて、じっとしてらんなくて…今思えば、きっとあの時から、私は哲夫を好きだったんだ。
:09/01/21 16:15 :SH901iC :FXDa00ZA
#600 [ゆーちん]
「いってぇ!」
「…我慢して。」
「もうちょっと優しくしてよ。」
「優しくしてるよ?」
「殴られるより消毒のが痛いし。」
哲夫は誰かを殴った?
…って、そんな事聞くのはタブーだよね。
:09/01/21 16:16 :SH901iC :FXDa00ZA
#601 [ゆーちん]
「シホ。」
「ん?」
「あの男…萌子に伝えてくれって頭下げに来た。」
心臓が波打った。
あの男って、宗太郎の事だよね。
「…何?」
「萌子がまだ好きだ、ってさ。」
:09/01/21 22:07 :SH901iC :FXDa00ZA
#602 [ゆーちん]
何、それ。
宗太郎、頭おかしいよ。
萌子のどこが好きなの。
嘘だ。
萌子をまだ好きでいてくれてるなんて嘘だよ。
「地元じゃ騒ぎになってるらしい。警察には届けてねぇみたいだけど…萌子を心配してる人もいるんだ。」
:09/01/21 22:07 :SH901iC :FXDa00ZA
#603 [ゆーちん]
「シホ…じゃねぇや。萌子。急かすつもりなんか無かったけど、近々戦ってこいよ。俺も戦ったんだ。次は萌子の番じゃねぇか?」
自信がないとか、まだ恐いとか、そんな甘い事を言ってる場合じゃないって思った。
:09/01/21 22:08 :SH901iC :FXDa00ZA
#604 [ゆーちん]
「前にも言ったけど、俺が味方だから心配なんかいらねぇぞ。萌子がずっと我慢してきた不満を正直に親に伝えろ。勝っても負けても、俺がいる。仲間もいる。帰ってくる家だってある。」
そんな嬉しい事言われちゃ涙腺が緩んじゃう。
でもね、私もう泣かない。
:09/01/21 22:09 :SH901iC :FXDa00ZA
#605 [ゆーちん]
泣いてる場合じゃないもん。
「明日、戻る。萌子に。」
「そ。」
「だから、それまではシホでいたい。」
「おうよ。」
「哲夫の事、信じていいんだよね?」
「当たり前だっつーの。」
「ありがとう。」
:09/01/21 22:10 :SH901iC :FXDa00ZA
#606 [ゆーちん]
誰かの為じゃなく、自分の為に戦わなきゃいけないんだ。
人生60年だとして、残り43年。
まだまだやりたい事がたくさんある。
やりたいって純粋に願ってしまう。
希望とか勇気を学べて、本当によかったよ。
一度死んで、よかった。
シホになれて、本当によかった。
:09/01/21 22:10 :SH901iC :FXDa00ZA
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