WHITE★CANDY
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#1 [ぎぶそん]
皆さん初めまして。

シングルファーザーの父親と娘を取り巻く、様々な日常を描いた(つもりの)ストーリー。

上手く書けないかも知れませんが、よろしくお願い致しますm(__)m

⏰:09/01/13 09:43 📱:SH705i 🆔:zU0rc2Fg


#2 [ぎぶそん]
Chapter01
「私の父親」

⏰:09/01/13 09:46 📱:SH705i 🆔:zU0rc2Fg


#3 [我輩は匿名である]
頑張ってね

⏰:09/01/13 09:49 📱:F703i 🆔:4HUE4Uhc


#4 [ぎぶそん]
「ねぇ、お父さん?」

「どうした?真希。」

「どうして、私の家にはお母さんがいないの?」

「そんなことはないぞ。
母さんはな、いつもお空の上から、真希のこと見守ってくれているんだぞ。」

「本当に?」

「ああ、本当に。」

⏰:09/01/13 09:54 📱:SH705i 🆔:zU0rc2Fg


#5 [ぎぶそん]


遠い昔の記憶。
確かあれは、私が幼稚園の時だったっけ。

あれから十年以上が経ち、私も現在は高校二年生となった。

朝、家を出て学校を行くまでの間、晴れの日は欠かさず空を見る。

快晴よりは、幾つもの雲がゆったりと泳いでいる方が、私は好きだ。

「行ってきます、お母さん。」

空に、手をかざした。

⏰:09/01/13 10:03 📱:SH705i 🆔:zU0rc2Fg


#6 [ぎぶそん]
我輩は匿名であるさん

さっそくの閲覧、有り難うございます!(^^)
これから更新に頑張りたいと思いますm(__)m

⏰:09/01/13 10:07 📱:SH705i 🆔:zU0rc2Fg


#7 [ぎぶそん]
雨宮真希、17歳。

私には物心ついた時から、母親という存在がいない。

私を産んですぐ、お母さんは交通事故で亡くなったらしい。

幼い頃は母親がいないのを寂しく感じていたが、今ではもうそれも慣れてきた。

父親が男手一つで、私を育ててくれている。
だから、全然不幸せとかは感じない。

⏰:09/01/13 10:19 📱:SH705i 🆔:zU0rc2Fg


#8 [ぎぶそん]
「真希、おはよ!」

「…はよ。」

教室に入って、席に座るや否や、クラスメートの女子が、私の元に近寄ってくる。

彼女の名前は、長谷部エリ。
一年の時も同じクラスで、いつも行動を共にしていた。

私が学校で、一番親しくしている人物。

⏰:09/01/13 10:30 📱:SH705i 🆔:zU0rc2Fg


#9 [ぎぶそん]


「雨宮真希ってさー、愛想悪いよね。」

「うん、何か冷たい。」

私の第一印象は、良く思われないことの方が多い。

口数が少なく、あまり笑わないことが原因だろう。

長身に細身のこの"モデル体型"の見た目が、さらに同性から『気取っている』と、反感を呼ぶ。

⏰:09/01/13 10:41 📱:SH705i 🆔:zU0rc2Fg


#10 [ぎぶそん]
そんな中、今目の前にいるエリだけは、初めて会った時から、私にちょっかいを出してきた。

私とは身長差が10センチ以上あり、全体的に小柄なのが特徴。

ショートヘアに外ハネの髪型が、彼女の陽気な性格を際立たせる。

制服のスカートは、規定の長さよりいつも短く、進路指導の先生にしょっちゅう叱られている。

⏰:09/01/13 10:48 📱:SH705i 🆔:zU0rc2Fg


#11 [ぎぶそん]
「ねぇ、商店街の中に、新しくクレープ屋さんがオープンしたんだって。
今日の放課後行かない?」

「うん。」

「やっりぃ〜!
じゃあ、元基と優平も誘っておくね!」

チャイムが鳴り、エリが自分の席に戻る。

こんな風に、いつも彼女の提案から、私たちの行動内容が決まる。

⏰:09/01/13 10:55 📱:SH705i 🆔:zU0rc2Fg


#12 [ぎぶそん]
少し静かになった教室で、朝のホームルームが始まるのを待つ。
担任は、いつも数分遅れてやって来る。

その間、私は窓の外の景色を見るのが日課だ。

ガラッ―

教室のドアを勢いよく開ける音に、目をやった。

そこにいるのは、中年で小太りな担任とは対象的な、30代位の背の高い男だった。

⏰:09/01/13 11:22 📱:SH705i 🆔:zU0rc2Fg


#13 [ぎぶそん]
教室の中にいる全員がその男に目を向け、一斉に辺りがシーンとなる。

「真希、弁当。」

沈黙を破ったのは、男のその一言だった。

男はクマの絵柄のついた黄色い弁当袋を、目の前に差し出す。

雨宮城、37歳。
私の父親であり、この世にいる唯一の家族。

⏰:09/01/13 11:30 📱:SH705i 🆔:zU0rc2Fg


#14 [ぎぶそん]
窓側の席から離れ、ゆっくりとドア前の父の所まで歩く。

朝、カバンに入れたと思っていた弁当を受け取る。

二人の間に会話はないまま、父は去っていった。

恥ずかしい…―

教室の皆の無言の視線が、見えない針となって、私の体中に刺してくる。

⏰:09/01/13 11:39 📱:SH705i 🆔:zU0rc2Fg


#15 [ぎぶそん]
「いいなー、私もあんなカッコイイお父さんが良かったー。」

「俺も真希の親父、見たかったなー。」

放課後。
エリと男子二人の四人になって、下校している。

一人は、羽田元基。
隣のクラスにいる、エリの彼氏。

⏰:09/01/13 11:46 📱:SH705i 🆔:zU0rc2Fg


#16 [ぎぶそん]
「…ああいう非常識な所があって、時々まいるよ。」

「真希のこと、まだまだ可愛いんだって!
大事にされてる証拠!」

「そうそう、俺なんて三人兄弟の末っ子だから、どうでもいいように扱われてるし!」

元基が、げらげらと笑う。
明るいエリに相当する、おちゃらけた人物。

⏰:09/01/13 11:55 📱:SH705i 🆔:zU0rc2Fg


#17 [ぎぶそん]
「優平も、俺ん家の母ちゃん見たことあるよな?」

「ああ。」

もう一人は、桜井優平。
私たち三人とは、クラスがだいぶ離れている。

成績は常に学年トップであり、落ち着きがあり、物静かな少年である。

⏰:09/01/14 18:23 📱:SH705i 🆔:E1ThpYqg


#18 [ぎぶそん]
私たち四人は、一年の時は皆同じクラスにいた。

元基と優平は、同じサッカー部に所属していることからつるみ始め、
エリと元基が交際するようになってから、四人で遊びに出かけたり、よく一緒にいるようになった。

二年になって、クラスがバラバラになっても、こうして変わらず集まっている。

⏰:09/01/14 18:31 📱:SH705i 🆔:E1ThpYqg


#19 [ぎぶそん]
「んー!美味しー!」

「うん、うめぇ!」

クレープ屋さんでイスに座り、それぞれ注文したメニューを頬張る。

「真希、ほら私のも食べてみて?」

「うん。」

エリが選んだ種類のクレープを、少し食べる。
苺の甘酸っぱさが、クリームとチョコレートと混ざり合い、口の中に広がる。

⏰:09/01/14 18:40 📱:SH705i 🆔:E1ThpYqg


#20 [ぎぶそん]
「たまにはいいよなぁ、こういうのも。」

「うん、ちょっと割高だけど。」

クレープを食べ終え店を出ると、エリと元基が商店街の中をはしゃぐ。

それを後ろから、私と優平が黙ってついて行く。

私たちは、いつもこんな感じだ。
賑やかな男女と、大人しい男女の組み合わせ。

⏰:09/01/14 18:56 📱:SH705i 🆔:E1ThpYqg


#21 [ぎぶそん]
それから私たちは、商店街を抜けてすぐ近所にある、小さな公園へと足を運んだ。

キリンの形をした滑り台があることから、子供たちの間では"キリン公園"と呼ばれている。

私たち四人も、幼少時代に戻ったかのように、商店街を通った時は、ついでにここへとやって来る。

⏰:09/01/14 19:11 📱:SH705i 🆔:E1ThpYqg


#22 [ぎぶそん]
「ねぇ、靴飛ばししようよ!」

「一番遠くまで飛ばせた奴の言うことを、皆が聞くこと!」

エリと元基の提案で、四人がそれぞれブランコに立った。

私も勢いをつける為、皆に倣(なら)って力強く漕ぐ。
夕日に向かって、右足のローファーを蹴り投げた。

⏰:09/01/14 19:17 📱:SH705i 🆔:E1ThpYqg


#23 [ぎぶそん]
「元基と優平がいい勝負じゃない!?」

「エリ下手くそだな!全然靴飛んでないじゃん!」

私たちは、片足のまま自分の靴がある向かった。

エリのはすぐ近くにあり、私のはそれより少し遠くだった。

男性陣が、僅差のようで、元基が急いで片足で歩み寄り、勝敗を判定する。

「優平のが一番飛んでる!この勝負、優平の勝ち!」

⏰:09/01/14 19:24 📱:SH705i 🆔:E1ThpYqg


#24 [ぎぶそん]
「さあ優平!何でも願いをどうぞ!」

元基が優平の分の靴まで拾い、彼の元まで駆け寄る。

「えぇ!?何だろうな…。」

優平は一番になったことをあまり喜ばず、遠慮がちであった。

控えめな彼が、私たちにどんな用件を告げるのだろう。
私は少し、ワクワクしてきた。

⏰:09/01/14 19:31 📱:SH705i 🆔:E1ThpYqg


#25 [ぎぶそん]
「そうだなー…。」

優平が、ひたすら考えている仕草をする。

「もう少し口数減らしてとかは、無理だから!」

「それは私も!」

元基とエリが、自虐で笑う。

⏰:09/01/14 19:38 📱:SH705i 🆔:E1ThpYqg


#26 [ぎぶそん]
「じゃあ…皆これから、卒業して離れ離れになっても、社会人になって何十年経っても、変ったりするなよ?!」

優平が、口を開いた。

その要求は意外でもあり、私たちをいつも少し離れた距離から見守ってくれている、彼らしくもあった。

「そんなんでいいのかよ!俺、頭悪いまま大人になったら、ちょっと危ないと思う!」

「うん分かった!
私、今のままのエレガントな女性になるね!(笑)」

「えっ…。」

「ちょっと何よ、その顔はー!」

エリと元基の夫婦漫才を、私と優平は笑った。

⏰:09/01/14 19:51 📱:SH705i 🆔:E1ThpYqg


#27 [ぎぶそん]
「私たち、それぞれどんな大人になってるんだろうね?」

「あー俺、まだ進路とか全然決めてねー。」

「優平は、大学に進学だよね?」

「うん、とりあえず。」

公園を後にし、住宅街を歩く。

四人分の縦に伸びた陰が、横一列に並んでいる。

⏰:09/01/14 19:59 📱:SH705i 🆔:E1ThpYqg


#28 [ぎぶそん]
「真希はー?」

エリが、今度は私に問い掛ける。

「まだ考え中…。」

「急には決められないよねー。
でも、卒業してバラバラになっても、皆こうして時々集まったりしようね!」

エリの言葉に、皆が頷いた。
今日の夕焼けは、一段と綺麗に見えた。

⏰:09/01/14 20:04 📱:SH705i 🆔:E1ThpYqg


#29 [ぎぶそん]
「ただいま。」

夜―
居間でテレビを観ていると、会社員の父が帰宅した。

「お父さん、今日の朝、何あれ。」

「何って、お前が弁当忘れて行くから、届けに行ったんだろ。」

父がカバンをテーブルに置き、ネクタイを緩める。

「皆、絶対笑ってる。
せめて職員室に行って、担任に渡してよ。」

⏰:09/01/14 20:15 📱:SH705i 🆔:E1ThpYqg


#30 [ぎぶそん]
「いいじゃないか別に。
娘が学校でどんな風にしてるかは、親は気になる所なんだぞ。」

父がイスに座り、私が家に帰ってから作ったチャーハンをぱくつく。

「恥ずかしい…。」

私も同様にイスに座り、夕飯を始める。

⏰:09/01/14 20:22 📱:SH705i 🆔:E1ThpYqg


#31 [ぎぶそん]
小学校の時もそうだった。
運動会の徒競走で、私の出番になるとグラウンドに乱入して応援したり、放課後はよく車で迎えに来ていたりしていた。

中学の時は、文化祭で私が劇の主役に抜擢されると、ご近所にそれをわざわざ報告したりしていた。

一人娘が大事なのは分かるが、過保護な部分が見受けられる。

高校生にもなると、さすがにそれも少々煩わしくなる。

⏰:09/01/14 20:34 📱:SH705i 🆔:E1ThpYqg


#32 [ぎぶそん]
翌日―

昼休み、私は学校の屋上に一人で上がり、中央に寝転んだ。

春のぽかぽか陽気が全身に降り注いで、実に気持ち良い。

自分の視界に広がる無数の雲が、スムーズに移動する。

物事もこれ位、楽にいけばいいのに。

⏰:09/01/14 20:44 📱:SH705i 🆔:E1ThpYqg


#33 [ぎぶそん]
「よっ。」

途中で空と雲だけの視野に、優平の顔が映った。

「びっくりした。」

私は体を起こした。

「さっき、真希の姿が見えたから、後つけてきた。」

彼は私の隣に、同じように寝転んだ。

⏰:09/01/14 20:50 📱:SH705i 🆔:E1ThpYqg


#34 [ぎぶそん]
「あー、このまま寝ちゃいそー。」

「うん。」

「次の授業、何?」

「化学。そっちは?」

「国語。」

お互い、上を向いたまま会話をする。

⏰:09/01/14 20:53 📱:SH705i 🆔:E1ThpYqg


#35 [ぎぶそん]
「ねぇ、天国ってあると思う?」

「んー…、まあ、あるんじゃないの?」

「私のお母さんは、今頃この空の中で、何をしてるんだろうって思うんだ。」

「そっか。」

⏰:09/01/14 20:59 📱:SH705i 🆔:E1ThpYqg


#36 [ぎぶそん]
「お母さんは今の私と変わらない年齢の時に、お父さんと出会ってる訳だけど、
私もいずれ、誰かに恋をしたりするのかな。」

「んー、それが人間の永遠のテーマだからなー。」

空に、様々な疑問を放つ。

⏰:09/01/14 21:04 📱:SH705i 🆔:E1ThpYqg


#37 [ぎぶそん]
中学の時、見知らぬ同級生や先輩に、告白を受けたことがあった。

私には恋愛の「好き」という感情が、まだよく理解できない。

そのうち、一人の男性に対して、恋焦がれる時が来るのだろうか?

お母さんは、お父さんを好きになって、良かったと思ってる?―

⏰:09/01/14 21:08 📱:SH705i 🆔:E1ThpYqg


#38 [ぎぶそん]
「旅行!?」

「そう!夏休み皆で行こうよ!」

放課後―
エリが机の上に、旅行のパンフレットを広げている。

「優平ん家、熱海に別荘持ってるんだってー。」

優平は、この辺では有名な資産家の息子だった。

⏰:09/01/14 21:30 📱:SH705i 🆔:E1ThpYqg


#39 [ぎぶそん]
「お父さん、許してくれるかな…。」

一番のネックが、頭に浮かぶ。
これまで父の元を離れた遠出は、した経験がない。

「大丈夫って!
優平ん家が雇ってる運転手さんが、車出してくれるって!

あれだったら、私からも説得するし!」

「うん。」

⏰:09/01/14 21:36 📱:SH705i 🆔:E1ThpYqg


#40 [ぎぶそん]
「ダーメ。ダメダメ。ダ・メ。」

「…。」

夜、帰宅した父にさっそく旅行の話を持ち出すと、
予想通りの反応が返ってきた。

「付き添いの大人の人もいるし、全然危なくないって。
それに、私ももう17だよ?」

「父さんも一緒ならOKだ。」

「…そんな恥ずかしい真似、出来ないよ。」

⏰:09/01/14 22:39 📱:SH705i 🆔:E1ThpYqg


#41 [ぎぶそん]
「もういい。お父さんが何と言おうと、旅行には行くからね。

薄毛を気にしてるお父さんなんか、知らないっ。」

私はそう言い残すと、自分の部屋に篭った。

「ちょ、真希、洗面台の棚に隠してあった育毛剤見たなぁ!?」

うるさい、うるさい。
お父さんは、私を束縛し過ぎる―

⏰:09/01/14 22:52 📱:SH705i 🆔:E1ThpYqg


#42 [ぎぶそん]
エリ、元基、優平は、私が初めて心から気を許している友達。

口にはしなくとも、私は三人のことを大切に思っている。

そんな三人との、初めての旅行。
行きたくない理由なんて、これ一つもない。

⏰:09/01/14 22:59 📱:SH705i 🆔:E1ThpYqg


#43 [ぎぶそん]


「雨宮さん、一緒にお弁当食べよー。」

「…うん。」

高校に入学して数日後、昼食の時間に、エリが私に声を掛けてきた。

これが私たちの、最初のやり取り。

「雨宮さんのお弁当、美味しそー!」

「お父さんが作ってるんだ。」

「へぇ、自慢のお父さんだね。」

⏰:09/01/14 23:05 📱:SH705i 🆔:E1ThpYqg


#44 [ぎぶそん]
エリは、人懐っこく、よく笑う。
そんな女の子であった。

今までずっと、特別親しい友人がいなかった私も、エリと一緒に過ごすことで、友達がいるとう楽しさを覚えた。

それから、一年の二学期。
エリからの告白で、彼女と元基は付き合うようになった。

⏰:09/01/14 23:14 📱:SH705i 🆔:E1ThpYqg


#45 [ぎぶそん]
元基と親しい間柄の優平も一緒になって、四人で沢山の思い出を作った。

それは、ある日の放課後だった。

「元基、部活は?」

「ん、課題の再提出が終わんねー。」

教室に忘れ物を取りに戻ると、一人元基が一枚のプリントにせっせと取り組んでいた。

⏰:09/01/14 23:23 📱:SH705i 🆔:E1ThpYqg


#46 [ぎぶそん]
「…優平の分を、写せば良かったじゃん。」

彼の前の席に座り、私は思ったことを口にした。

「…友達を利用するなんて、そんなこと出来るかよ。」

彼が、歯を出してニカッと笑う。

決して賢くはないが、いい奴に違いないと確信した。
エリの彼氏であり、自分の男友達が、元基で良かったと思った。

⏰:09/01/14 23:28 📱:SH705i 🆔:E1ThpYqg


#47 [ぎぶそん]
そして、優平。

「真希、何してるの?」

今日の昼休みの時みたいに、私が一人で過ごしていると、ひょっこり現れてくれる。

殻に閉じこもりやすい私。
そんな私を、何かと気にかけてくれているのだろう。

あまり喋らない者同士、彼とは、同じ波長が漂っているのを感じる。

⏰:09/01/14 23:37 📱:SH705i 🆔:E1ThpYqg


#48 [ぎぶそん]
*感想板を作成しました
m(__)m

良かったら遊びに来て下さい!(^O^)/

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4172/

おやすみなさい(v_v)

⏰:09/01/15 00:20 📱:SH705i 🆔:w6Z68F9w


#49 [ぎぶそん]
「真希、そろそろ帰らなくていいのー?」

「うん、いい。」

放課後、エリと繁華街にあるゲームセンターに何時間も入り浸る。
この頃、毎日のように来ている。

「門限守らなくて大丈夫なの?
お父さん、心配してるかもよ?」

「いい。」

ひたすら、画面のゲームに夢中になる。

⏰:09/01/15 13:16 📱:SH705i 🆔:w6Z68F9w


#50 [ぎぶそん]
夜9時過ぎ―

「おい真希、こんな時間まで、最近どこをほっつき回ってるんだ。
ケータイも電源切ってて繋がらないし。」

「…。」

家に戻り、既に帰宅している父に咎められても、無言のまま部屋まで駆けていく。

旅行の件以来、口を聞いていない。

⏰:09/01/15 13:22 📱:SH705i 🆔:w6Z68F9w


#51 [ぎぶそん]
「雨宮さんっ。」

数日後の休み時間、移動教室で廊下を歩いていると、後ろから誰かに肩を叩かれた。

振り返ると、女子の三人組がそこにいた。
確か、優平と同じクラスの子たちだ。

声を掛けた一人の子は、走ったことによって、まだ息を切らしている。

「今週の日曜日、暇?」

「え!?まあ予定ないけど…。」

⏰:09/01/15 17:11 📱:SH705i 🆔:w6Z68F9w


#52 [ぎぶそん]
「良かったら、私たちと遊ばない!?」

「へっ!?」

行くか行かないか考える前に、何故?と思った。
彼女たちとは、まともに口を聞いたことがない。

「私たちね、雨宮さんみたいな綺麗な人と、いつも仲良くなりたいなって思ってて。
皆、雨宮さんに憧れてるんだよ?」

「は、はぁ…。」

悪い気はしなかったが、少し照れた。

⏰:09/01/15 17:17 📱:SH705i 🆔:w6Z68F9w


#53 [ぎぶそん]
特に用事もないのに断るのも失礼と思ったので、私は彼女たちと遊ぶことにした。

普段、エリ以外の女の子と休日にどこか出かけるということがないから、日曜日は接し方に戸惑うだろう。

次の授業を受けている間、新しい友達が出来るかもしれないという嬉しさに駆られた。

⏰:09/01/15 17:26 📱:SH705i 🆔:w6Z68F9w


#54 [ぎぶそん]
その日の夜。

「真希。真ー希ー。真希ちゃーん。」

「…。」

部屋のドア越しに、父が何度も声を掛ける。

「おーい。そろそろ口を聞いてくれー。」

⏰:09/01/15 17:57 📱:SH705i 🆔:w6Z68F9w


#55 [ぎぶそん]
「…旅行。」

「え?」

「旅行、行ってもいいよね?」

「…。」

父が、急に静かになる。
反対という気持ちは、変わっていないようだ。

「お父さんの分からず屋っ。」

⏰:09/01/15 18:52 📱:SH705i 🆔:w6Z68F9w


#56 [ぎぶそん]
「嫌い、お父さんなんか。」

「待ってくれ真希〜。
母さんを失った父さんは、お前まで失いたくないんだよー。」

父が、執拗にドアをノックする。

「…うるさい…。」

私は、簡単にいなくなったりしない。
私って、そんなに信用できない?―

⏰:09/01/15 20:41 📱:SH705i 🆔:w6Z68F9w


#57 [ぎぶそん]
これまで父には、極力、迷惑を掛けないように生きてきたつもりだ。

父は母さんを失くした悲しみを堪え、私を養ってきてくれたのだから。

でも…―
私だって、皆と同じように気兼ねなく遊んだり、楽しい思い出を沢山作りたい。

それなりに、青春を謳歌したい。

⏰:09/01/15 20:59 📱:SH705i 🆔:w6Z68F9w


#58 [ぎぶそん]
日曜日―

街中に立ってある銅像の前で、三人組を待つ。
張り切って、約束の時間より20分も早く着いてしまった。

「うわぁ!雨宮さん、私服も可愛いー!」

予定時刻を数分過ぎた後、三人組が揃ってやって来るのが、数メートル先から見えた。

竹下さんという、三人の中のリーダー的存在の子が、私を見つけると、急いで走ってきた。

⏰:09/01/15 21:31 📱:SH705i 🆔:w6Z68F9w


#59 [ぎぶそん]
私たちはまず、映画館に行った。

三人が私の好みに合わせてくれると言ったので、ゾンビを取り扱った内容の映画を観た。

「雨宮さんの趣味って、個性的だね、アハハ…。」

「で、でも!なかなか楽しかったね!」

館内を出た後、三人が様々な感想を述べる。

⏰:09/01/16 17:15 📱:SH705i 🆔:enD1izvA


#60 [ぎぶそん]
その後は、街をぷらぷらして目についた雑貨屋さんやブティック店を見て回り、気に入ったものがあれば購入したりした。

「んー。甘い。」

「雨宮さん、私のも食べてみて!」

一通り買い物を終えると、アイスクリーム屋さんに入った。

吉田さんという子が、私に自分のものを勧める。
以前、エリも同じようなことをしてくれたな、と思い出した。

同性同士ではしゃぐ楽しさが、だんだんと分かってきた。

⏰:09/01/16 17:31 📱:SH705i 🆔:enD1izvA


#61 [ぎぶそん]
「すっかり暗くなっちゃったねー!
雨宮さん、まだ帰らなくていい?」

時計の針は、8時を過ぎた所である。
家の門限は、とっくに過ぎていた。

「うん、大丈夫。」

私は今日も、父に無断で遅く帰ることを決めた。

「そう!じゃあ最後に、とっておきの場所に連れていってあげる!」

⏰:09/01/16 18:16 📱:SH705i 🆔:enD1izvA


#62 [ぎぶそん]
三人に誘導されるがまま、歩き続ける。

「…ここは?」

数十分後、町外れにある、廃墟されたビルに到着した。
薄暗く、薄気味悪い。

「ここはねー、私たちの秘密の!
誰も来ることはないから、ここで包み隠さず、色んな話をするの!
ガールズトークって奴ね!」

⏰:09/01/16 19:24 📱:SH705i 🆔:enD1izvA


#63 [ぎぶそん]
「ねぇ、雨宮さん?」

竹下さんが、じりじりと近づく。
その表情は、さっきまでの明るさを失っている。

「桜井くんとは、付き合ってる訳じゃないよね…?」

「…え…!?」

⏰:09/01/16 19:59 📱:SH705i 🆔:enD1izvA


#64 [ぎぶそん]
「優平とは、ただの友達だけど…。」

「…。」

私の返答に、竹下さんは何も反応しない。
シーンとその場が静まる。

ドンッ―

数分して、竹下さんが突然私の体を突き飛ばす。

「痛っ…。」

私は、その衝撃で尻餅をついてしまった。

⏰:09/01/16 20:57 📱:SH705i 🆔:enD1izvA


#65 [ぎぶそん]
「…あんたさえいなければ…あんたさえいなくなれば、桜井くんは振り向いてくれるかも知れないのに。」

取り乱す竹下さん。
残りの二人は、宥める気配もなく、黙ってそれを見ている。

「あんたは邪魔な存在なのよ!」

彼女らが今日、私を誘った理由を理解した。
私のことを、ずっと恨んでいたのだ。

⏰:09/01/16 21:04 📱:SH705i 🆔:enD1izvA


#66 [ぎぶそん]
「皆、出て来て。」

竹下さんの合図で、今まで隠れていたと思われる、ガラの悪そうな男たちがぞろぞろと登場する。

「雨宮さん、彼氏いないんでしょ?
私が紹介してあげるね。
ここにいる中から、好きなの選んでいいよ。」

竹下さんが、不気味な笑みを浮かべる。

⏰:09/01/16 22:24 📱:SH705i 🆔:enD1izvA


#67 [ぎぶそん]
「へぇ、なかなか可愛いじゃん。」

「ねぇ、俺らといいことしようよ?」

図体のデカい男と、金髪の男が近づく。

金髪の男が、私の左手首を掴む。

「離して…っ!」

私はその手を振り払い、パーカーのポケットから、携帯電話を取り出した。

⏰:09/01/16 22:29 📱:SH705i 🆔:enD1izvA


#68 [ぎぶそん]
「もしもし、エリ?…あっ!」

エリに助けを呼ぼうとするが、金髪の男に携帯電話をすぐに取り上げられた。

「なーにしてんの?
さあ、俺らと遊ぶよ?」

ニヤニヤと笑う金髪の男。

怖い…―

⏰:09/01/16 22:33 📱:SH705i 🆔:enD1izvA


#69 [ぎぶそん]
「あっ!あれ何だろう?」

私は建物の中の、遠くを指差した。

私のそのしぐさで、男たちが一斉に指差さす方を確認する。

私はその隙に、その場を勢いよく走り出した。

古典的なやり方が、結構容易に通用した。

⏰:09/01/16 22:38 📱:SH705i 🆔:enD1izvA


#70 [ぎぶそん]
廃墟ビルから出て、ひたすら一直線に走り続ける私。
徒競走には少し、自信があった。

「待てー!」

後ろから、男たちが追ってくる。

とりあえず、人気の多い所に―

⏰:09/01/16 22:43 📱:SH705i 🆔:enD1izvA


#71 [ぎぶそん]
「あっ…!」

足がそろそろ疲れ切ってしまいそうな時に、私はつまづいてしまった。

遂に、追っていた男たちとの距離はなくなってしまった。

「雨宮さん、逃げるなんてひどいわね。
せっかく私たち、今日誘ってあげたのに。」

私を取り囲む男たちの中心に、竹下さんが腕組みをして仁王立ちをする。

⏰:09/01/16 22:49 📱:SH705i 🆔:enD1izvA


#72 [ぎぶそん]
「…私が消えたとしても、優平はあなたを好きになったりなんかしない!」

私は地面に倒れたまま、竹下さんの目を見て言った。

「何ですって!
皆、好きにやっちゃっていいよ!」

私のその一言は、彼女の怒りの導火線に触れてしまった。

もうダメだ…―

⏰:09/01/16 22:54 📱:SH705i 🆔:enD1izvA


#73 [ぎぶそん]
全力で走った後で、立ち上がる気力は残っていなかった。

そして、恐怖に立ち向かう勇気もなかった。

お父さん、ごめんなさい。
きちんと門限を守っておけば、こんなことにならなくて済んだのに―

だんだんと、意識が遠退いていく。

帰りたい、お父さんが待ってる家に―

⏰:09/01/16 23:00 📱:SH705i 🆔:enD1izvA


#74 [ぎぶそん]
「ちょーっと待ったー!」

頭の奥の方で、聞き慣れた声がする。

「ああ?何だテメーは!?」

一人の男が、その人に向かって威圧する。

「俺は、今そこで倒れている子の父親だ。」

お、お父さん…!?―

私は、うっすらと目を開けてみた。
ラフな格好をした父の姿が、そこにはあった。

⏰:09/01/16 23:08 📱:SH705i 🆔:enD1izvA


#75 [ぎぶそん]
「げっ、親父かよ…。」

「おい、警察沙汰になる前にズラかろーぜ。」

男たちはこぞって、その場を走り去っていった。

「真希っ。大丈夫!?」

エリが私の元に駆け寄り、私の体を抱える。

「…エリ?どうしてここが分かったの…?」

「最近、この辺の廃墟ビルで、不良軍団が何やらしてるって聞いたから、もしかしたらって…。」

⏰:09/01/16 23:18 📱:SH705i 🆔:enD1izvA


#76 [ぎぶそん]
「ちょっと!真希に何てことすんのよ!
この責任は、みっちり取ってもらうからね!」

エリが、竹下さんたち三人に向かって怒鳴る。

三人は、オロオロとし始め、今にも泣きそうだった。

「ま、待ってエリ…。
そんなに三人を責めないで…。」

⏰:09/01/16 23:22 📱:SH705i 🆔:enD1izvA


#77 [ぎぶそん]
「例え私を陥れる為の芝居だったとしても、今日一日、凄く楽しかったよ…。」

「真希…。」

嘘ではなかった。

交友関係が少ない私としては、エリ以外の女の子と遊ぶのが、
非常に新鮮で、新しい自分とまた出会えた気持ちになった。

⏰:09/01/16 23:29 📱:SH705i 🆔:enD1izvA


#78 [ぎぶそん]
「ごめんなさい…雨宮さん…。」

三人が私に謝りながら、声を上げて泣き出す。

「今度真希を誘う時は、私の許可が必要だからね!」
エリが、きつく三人に言う。

「うん、うん…。」

ふう、これで一件落着…―

長い休日が、終わろうとしていた。

⏰:09/01/16 23:35 📱:SH705i 🆔:enD1izvA


#79 [ぎぶそん]


「膝、派手に擦りむいちゃったなー。
帰ったら消毒だな。」

父が私をおんぶをしながら、家まで帰宅する。


「お父さん、心配かけてごめんなさい…。」

「おっ、今日はやけに素直だな!」

「お父さんこそ、全然怒らないね。」

⏰:09/01/16 23:40 📱:SH705i 🆔:enD1izvA


#80 [ぎぶそん]
「母さんもなー、学生の時、今日みたいに女子から恨みを買われてたなー。」

「へぇ、どうして?」

「そりゃ、父さん絡みだろー。」

「…自分で言わないでよ…。」

「ハハハ。
まあ、母さんは同性から妬まれやすかったな。
男子の注目の的だったし。」

⏰:09/01/16 23:45 📱:SH705i 🆔:enD1izvA


#81 [ぎぶそん]
「…竹下さんたちのこと、学校に言ったりしたらダメだよ?」

「はいはい、お嬢様。
やっぱ、そういうところが母さんに似てるな!

母さんも、いつも『あの人たちを責めたりしないで』って、最後に言ってたわー。」

「…。」

⏰:09/01/16 23:50 📱:SH705i 🆔:enD1izvA


#82 [ぎぶそん]
「…お父さん。」

「何だ?」

「…今日こんなことがあったし、旅行はもう行っちゃだよね。」

本当は一人だけ行けないのは寂しいが、父をこれ以上不安にさせたくないので、諦めることにした。

⏰:09/01/16 23:55 📱:SH705i 🆔:enD1izvA


#83 [ぎぶそん]
「…エリちゃんって、お前と比べて随分ちっちゃいのに、パワフルな子だよな。」

「え?うん。」

「彼女、『お父さん、真希が危ないかもです』って、真っ先に俺んとこに連絡してくれたんだぞ?

その後はー、めぼしい所を駆けずり回って。」

「うん…。」

私の為に必死になってくれたエリを思うと、胸がキュッと締め付けられる。

⏰:09/01/17 00:00 📱:SH705i 🆔:6QbR1UbY


#84 [ぎぶそん]
「…向こうに行ったら、一日一回は連絡すること!」

「えっ?」

「友達との旅行、楽しんで行ってこい!」

「お父さん…。ありがとう…。」

背中越しに、遂に父の承諾を得た。

⏰:09/01/17 00:04 📱:SH705i 🆔:6QbR1UbY


#85 [ぎぶそん]
「お父さん!」

「何だ?まだ何か不満があるのか?」

「さっき、私のピンチに駆け付けてきた時の姿…かっこよかったよ。」

父の首に回してる両腕を、ギュッと更に力を入れる。
目をつむり、父の背中に顔をうずめる。

お父さんの匂い、安心するな―

⏰:09/01/17 00:09 📱:SH705i 🆔:6QbR1UbY


#86 [ぎぶそん]
真希、真希ってうるさくて、
いつまでも幼い子供みたいに私を扱う所が、時々"ウザい"と感じる。

でも、いざという時は私の気持ちを一番に解ってくれるんだ。

男手一つで、ここまで育てるの、大変だったよね…?

いつもありがとう、お父さん。

―Chapter01 END.―

⏰:09/01/17 00:19 📱:SH705i 🆔:6QbR1UbY


#87 [ぎぶそん]
Chapter02
「恋という感情」

⏰:09/01/17 11:57 📱:SH705i 🆔:6QbR1UbY


#88 [ぎぶそん]
「真希、どっか転んだのかそれ。珍しいな。」

「え、うん。」

数日後の学校―

優平には、竹下さんたちとの出来事を言っていない。
もし私が告げたりすれば、彼は彼女らを、これから軽蔑の眼差しで見ることになるだろう。

⏰:09/01/17 12:03 📱:SH705i 🆔:6QbR1UbY


#89 [ぎぶそん]
「雨宮さーん!
一緒に購買行こう!」

教室のドアの前で、数人の女子が私を呼ぶ。

「お前、竹下たちと仲良いんだ?」

「うん。じゃあ、またね優平。」

あの日以来、竹下さんたちとは、穏和な関係を築けている。

⏰:09/01/17 16:42 📱:SH705i 🆔:6QbR1UbY


#90 [かほ]
おもしろいです
更新たのしみです!!

⏰:09/01/17 16:44 📱:D903iTV 🆔:86aXJrCk


#91 [ぎぶそん]
かほさん☆

ありがとうございます(^o^)
毎日は更新するつもりです(>_<)/!!

⏰:09/01/17 16:50 📱:SH705i 🆔:6QbR1UbY


#92 [ぎぶそん]
「雨宮さん、私桜井くんのことは諦めるから!」

「えっ。うん。」

「自分でも分かってたの、桜井くんは遠い存在だって。」

購買でお菓子を選んでいる時、竹下さんにこんなことを言われた。

⏰:09/01/17 16:55 📱:SH705i 🆔:6QbR1UbY


#93 [ぎぶそん]
優平は、成績優秀・スポーツ万能・容姿端麗ということもあって、女子からそこそこの人気があるそうな。

中には抑えられない気持ちを、告白という形で告げた者もいるという。

恋か―

私にはまだ、よく分からない感情だ。

私もいつかこないだの竹下さんみたいに、
一人の人を思う余りに、
自分自身を狂わしてしまうほどの心に、出会ってしまうのだろうか。

⏰:09/01/17 17:06 📱:SH705i 🆔:6QbR1UbY


#94 [ぎぶそん]
放課後―

「ねぇ、エリ。」

「ん?」

「人を好きになるって、どんな感じ?」

「何々ー!?真希、気になる人でも出来たのー!?」

教室の前のベランダに出て、私はエリに質問をしてみた。

⏰:09/01/17 18:47 📱:SH705i 🆔:6QbR1UbY


#95 [ぎぶそん]
「そうじゃないんだけど、どうして男の人がたくさんいる中で、エリは元基を好きになったのかなーって。」

グラウンドを眺めると、元基と優平が、サッカー部の練習に明け暮れていた。

「んー!
例えば、真希はメロンパンが好きでしょ?
人を好きになるなんて、それと一緒よ!」

「へ!?それだったら私、お父さんやエリにも恋してることになるよ?」

⏰:09/01/17 18:54 📱:SH705i 🆔:6QbR1UbY


#96 [ぎぶそん]
「んーっとね、メロンパンを食べてる時、すっごく幸せでしょ?

これが異性の間で言うと、『会話してるだけで楽しい』って気持ちかな?

でも、二日三日経って『そろそろ食べたいなー』って思ったんだけど、メロンパンは売り切れてて…
『ああ、早く食べたい、早く食べたい』って。
あんパンやカレーパンには目もくれず!

これが異性の間で言う、『会いたい』って気持ち!これが恋よ!」

⏰:09/01/17 19:04 📱:SH705i 🆔:6QbR1UbY


#97 [ぎぶそん]
「よく分かんないけど…好きな人とメロンパンは似てるんだね?」

「ん、んー…?
まあ、真希にもその内、理解する時が来るって!」

「うん。」

恋ってきっと、楽しいんだろうな…―

得意げなエリの顔を見て、何となくそう思った。

⏰:09/01/17 20:00 📱:SH705i 🆔:6QbR1UbY


#98 [ぎぶそん]
数日後。
放課後、私は学校のすぐ近くにある本屋に来ていた。

「…雨宮!?」

「…秀先輩!」

参考書を物色していると、中学の時の一つ上の先輩に偶然会った。

⏰:09/01/17 20:14 📱:SH705i 🆔:6QbR1UbY


#99 [ぎぶそん]
寺岡秀一郎先輩。
現在、私の学校で生徒会長を務めている。

180センチの高身長に、爽やかな見た目。
掛けている眼鏡が、知的な印象を与える。

中学の時、委員会で一緒になったことがきっかけで、学校ですれ違えば、話す程度の仲になっていた。

⏰:09/01/17 20:23 📱:SH705i 🆔:6QbR1UbY


#100 [ぎぶそん]
「秀先輩、それT大の試験問題じゃあ…!」

先輩が手にしている本を指差して、私は言った。

「ん?ああ、とりあえず今年受験してみようかなって。」

「とりあえず、って言えるレベルじゃないですよ!」

知り合いの先輩は、日本一の大学に挑もうとしていた。

⏰:09/01/17 23:47 📱:SH705i 🆔:6QbR1UbY


#101 [ぎぶそん]
「雨宮、これ解けるか?」
先輩が、違う参考書の四沢問題のページを開いて、私に示してきた。

「えっとー…答えはAかな?」

「うん、正解!
大変よくできました!」

笑顔で私の頭を撫でる先輩。

⏰:09/01/18 17:54 📱:SH705i 🆔:ta6MnWi2


#102 [ぎぶそん]
「…。」

先輩のそのしぐさに、一瞬言葉を失った。

「先輩、やっぱり受験って大変ですか?!」

「んー、まあそれなりに!」

先輩が、動かしていた手を離す。

⏰:09/01/18 18:01 📱:SH705i 🆔:ta6MnWi2


#103 [ぎぶそん]
「そうだ!今度一緒に図書室で、勉強会をやらないか?」

「私はいいですけど…、
私、先輩の邪魔になりません?」

「可愛い後輩が隣にいる方が、俺もやる気出るし!」

先輩が、和らげに微笑む。

⏰:09/01/19 14:30 📱:SH705i 🆔:i.Bivc7o


#104 [ぎぶそん]
その日の夜―

「お父さんは、お母さんのどこに惹かれたの!?」

夕飯の準備をしながら、父に質問をする。
父とこういった話をするのは、普段全くない。

「母さんはなー、何と言うか、たんぽぽみたいな人だったなあ。」

「…どういう意味?」

⏰:09/01/20 20:46 📱:SH705i 🆔:3P45rEZ2


#105 [ぎぶそん]
「薔薇やガーベラのような華麗さはないけれど、
雑草と共存しながら、慎ましく道幅にひっそりと咲くような…
よく見てみると、綺麗な花をつけていて、確かな魅力を持っているんだ。」

「ふぅん。」

それがお父さんなりの、愛した人の見方なんだ―

⏰:09/01/20 20:53 📱:SH705i 🆔:3P45rEZ2


#106 [ぎぶそん]
数日後、私は約束どおり秀先輩と、放課後図書室で一緒に勉強することになった。

静まり返った室内で、黙々と明日提出の課題に取り組む。

隣の先輩は、何やら数学を解いていた。

⏰:09/01/21 05:25 📱:SH705i 🆔:NQBrsBvY


#107 [ぎぶそん]
(秀ちゃん秀ちゃん、ここの問題教えて!)

途中で、室内にいた女の先輩が秀先輩に小声で近付き、分からない所を聞きにくる場面があった。

ひそひそとやり取りをする二人。

優しく問題を解説する先輩を見て、生徒会長に選ばれるだけあって、人望が熱い人だと思った。

⏰:09/01/21 18:26 📱:SH705i 🆔:NQBrsBvY


#108 [ぎぶそん]
外の景色が暗くなった所で勉強会を終了し、帰り道を先輩と二人で歩く。

「雨宮は、進路は決まったか?」

「いえ、まだ全然…。」

「まあ俺も、二年の終わり頃に決めたから、そんなに焦らなくて大丈夫!」

先輩が私の歩幅に合わせて、ゆっくり歩いてくれた。

⏰:09/01/21 18:33 📱:SH705i 🆔:NQBrsBvY


#109 [ぎぶそん]
「あ、そうだ…。」

一本道の途中にあった自販機の前で、先輩が立ち止まった。

カバンから財布を取り出し、飲み物を買う先輩。

「はいっ。今日付き添ってくれたお礼。」

「え?」

先輩が、たった今買ったばかりのオレンジジュースを私に差し出した。

⏰:09/01/21 19:02 📱:SH705i 🆔:NQBrsBvY


#110 [ぎぶそん]
「じゃあ、俺ん家すぐそこだから…気をつけて帰れよ!」

「あ、はい!」

先輩が笑顔で、"バイバイ"と手を振る。

先輩の大きな背中を、私は見えなくなるまで見ていた。

⏰:09/01/21 19:11 📱:SH705i 🆔:NQBrsBvY


#111 [ぎぶそん]
次の日―

「…さん!雨宮さん!」

朝のホームルームが終わって、席に着いたままポーッとしていると、誰かに呼ばれているのに気がついた。

「あ、ごめんなさい…ってますちゃん!何?何か用?」

そこには、クラスメートの男子がいた。

⏰:09/01/21 19:20 📱:SH705i 🆔:NQBrsBvY


#112 [ぎぶそん]
増山光太。
通称 ますちゃん。

野球部に所属している、イガ栗頭の小柄な少年。

一年の時も同じクラスで、当時は元基がよくからかっていた。

天然ボケな性格なので、やられキャラかつ愛されキャラな人物である。

⏰:09/01/21 19:31 📱:SH705i 🆔:NQBrsBvY


#113 [ぎぶそん]
「何か用?じゃなくて、英語係の仕事。」

私とますちゃんは、クラスで同じ係を担当している。

ますちゃんの机の上には、今日提出となっている、クラスの人数分のノートが重なっていた。

「あっ、ごめん。
一人でさせちゃって。」

「まあ、とりあえず雨宮さん半分持って。
職員室まで運ぶよ。」

⏰:09/01/21 20:05 📱:SH705i 🆔:NQBrsBvY


#114 [ぎぶそん]
「二人ともご苦労様。」

職員室に入り、英語を担当する女の先生に、二人でクラス分の課題を渡した。

教室まで再び戻ろうと職員室を出る途中で、誰かに肩を叩かれた。

「雨宮、おはよう!」

「秀先輩…!」

秀先輩と私は、ちょうど職員室を入れ違いになったようだ。

⏰:09/01/21 20:32 📱:SH705i 🆔:NQBrsBvY


#115 [ぎぶそん]
昼休み―

「雨宮さん、最近物思いに耽ってるねー。」

教室前のベランダに一人出て空を眺めていると、ますちゃんが近くに寄って声を掛けてきた。

「…ますちゃんは、今恋してるの?」

私は彼の目を見て言った。

「えぇ!唐突な質問だね!
あいにく、僕にはそういうのに縁がないよ…。」

⏰:09/01/21 20:41 📱:SH705i 🆔:NQBrsBvY


#116 [ぎぶそん]
「…私、今まで恋愛とかよく分からなかったんだけど、もう高二にもなるし、危機感感じた方がいいのかなって。」

エリと元基の仲睦まじい姿や、女子たちが集まってする恋愛についてのトーク、
そして、現に自分の母親は、今の私と変わらない年齢の時に、お父さんと恋に落ちてた。

私たちの年代は、恋愛に興味津々であって、恋愛というものを学び取る頃。

特に感心も持たない私って、変なのかな?―

⏰:09/01/21 20:50 📱:SH705i 🆔:NQBrsBvY


#117 [ぎぶそん]
「んーっ、俺は恋ってしようと思って出来るものじゃないと思うな!
雨宮さんも、実際そうじゃない!?」

「うん、うんっ。」

へたれキャラなますちゃんの言葉に、思わず頷く。

「恋する機会ってね、誰の前でも現れてくれると思う。
でも、それは本当に突然の出来事なんだ。
だから雨宮さんも、焦らなくていいと思うよ!」

⏰:09/01/21 20:58 📱:SH705i 🆔:NQBrsBvY


#118 [ぎぶそん]
放課後―

屋上に来て大の字にねっころがり、ゆっくりと考え事を始める。
私の好きな時間。

空はだんだんと、夕焼け色に差し掛かる所だ。

今日は昼休みのますちゃんの台詞が、心地よく響いている。

無理に恋愛を求める必要は、今の私にはないと感じた。

⏰:09/01/21 21:11 📱:SH705i 🆔:NQBrsBvY


#119 [ぎぶそん]
「お母さんは、お父さんのどこが良かったの…?」

空にいるであろう母に問い掛ける。

無言の返事が空に反映するだけだが、こんな風に語りかけるのは、私の幼い頃からの習慣だ。

私は父親としての雨宮城はよく知っているが、男としての雨宮城は全く分からない。

きっと、お母さんにとって、父には何かグッとくる所があったのだろう。
だから、こうして私が生まれた。

⏰:09/01/21 21:20 📱:SH705i 🆔:NQBrsBvY


#120 [ぎぶそん]
「お父さんね、お母さんのこと、たんぽぽみたいな人って言ってたよ。」

そして、質問だけじゃなく、報告をするのも欠かさない。

最近お父さんがこんなことをしたとか、今こんなことを私は思っているとか。

天国という所はどんな場所であるのか、若しくは天国という所が存在してるのかすら不明だけれど、
母は私の話をどこかで聞いてくれていると信じている。

⏰:09/01/21 21:30 📱:SH705i 🆔:NQBrsBvY


#121 [ぎぶそん]
「私も、愛されるならお父さんみたいな人がいいなあ…。」

母が亡くなってもう十年以上が経つのに、今でも同じ愛情を母に抱く父。

一人の人を思い続けるのって、簡単に出来そうで、以外と難しいのではないだろうか。

その善し悪しは人それぞれだけど、真実の愛というものは、ランダムに歩いて見つかるものとは思えない。

⏰:09/01/22 00:27 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#122 [ぎぶそん]
運命の人―
もしいるとするならば、もう既に出会っているのかな?

「えっとー、私の知り合いの男の子と言ったら、ますちゃんに、福内くんに箕輪くん…
うーん、皆そんな風に思えない…。」

17歳でそんな決断に至るのは、到底早いか―

⏰:09/01/22 00:42 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#123 [ぎぶそん]
「…あっ!」

私は一人の存在を思い出した。

寺岡秀一郎先輩。

彼は私から見ても、素敵な人だと思う。
誰に対しても優しくて、頼りがいがあって、勉強熱心で。

恋人にするなら、文句なしの人だろう。

⏰:09/01/22 00:48 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#124 [ぎぶそん]
「もし秀先輩を好きになったら、これから先どんな風になるんだろう…?」

未知なる世界のことを考えると、トクトクと胸が高鳴る。

その時だった。

「真ー希っ。」

仰向けに寝ていた私の前に、誰かがニョキッと顔を出してきた。

⏰:09/01/22 01:00 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#125 [ぎぶそん]
「わっ!…って優平!?」

いつかの昼休みの時と同様、その相手は優平だった。

私は思わず、体を起こした。
ここまでのシチュエーションは、この間と全く一緒。

「アハハ、これで二回目だね、びっくりさせたの!
真希のこと探してたんだ。
…はいこれ、借りてた本。」

彼が私に、二週間位前に貸した小説を差し出す。

「これを届ける為にわざわざ屋上まで来たの?
別にいつでも良かったのに。」

⏰:09/01/22 01:16 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#126 [ぎぶそん]
「んー…真希って何か気になるんだよな!」

「え?」

「何かあったら、一人でしょい込んでないで、俺やエリらに言うこと!
全然頼ってくれて構わないから!」

「うん。」

私っていつも、そんな風に見えてた?
妙な心配をかけさせていたのなら、ごめんなさい―

⏰:09/01/22 01:31 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#127 [ぎぶそん]
「じゃあ俺、今から部活だから。」

「うん。本、ありがとね。」

ここに来て数分も経たない内に、彼は去っていった。

そういえば、優平も一応、今までに出会った男の子の内の一人に違いない。

それでも、彼もますちゃんたち同様、"運命の人"からは除外か。

私たちは、異性ということを忘れるくらい、ずっと友達として付き合ってきたのだから―

⏰:09/01/22 01:41 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#128 [ぎぶそん]
その後、私も教室に戻り、エリと下校することになった。

「あっ、そうだ!
一つ言い忘れてた。」

「何?」

「恋はねー、甘いばかりじゃないの!
メロンパンをかじった時、苦いと思う時もある。」

「そんなことってあるの?」

ベーカリー屋が見えてきた所で、エリがいつかの例え話の続きをしてきた。

甘くないメロンパンなんて、聞いたことがないよ―

⏰:09/01/22 12:30 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#129 [ぎぶそん]
「楽しいことばかりじゃないってこと!
嫌なことや辛いこともそれなりにあるのよ。」

「へぇ、そうなんだ。
じゃあ、エリは何が楽しいと思えなかった?」

「付き合う前、元基が他の女の子と喋ってる時、いい気はしなかったかなぁ。
ま、ヤキモチって奴よ。」

「ふぅん。」

ヤキモチか。
恋をしてる特徴の一つかな―

⏰:09/01/22 12:38 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#130 [ぎぶそん]
数日後―

「昨日のお笑い番組観た!?」

「うん、面白かったねー。」

朝のホームルームが終わって、私はますちゃんと、職員室までクラス分の英語のノートを持って行っていた。

彼と思いついた話題を提供しあいながら、廊下を歩く。

⏰:09/01/22 14:50 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#131 [ぎぶそん]
職員室がある一階まで、階段を降りている時だった。

「あっ…。」

ある光景が目に入ったので、ふと立ち止まった。

「どうかした、雨宮さん?」

秀先輩と女の先輩が、こちらとは反対に、階段を上ってきていた。

⏰:09/01/22 15:27 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#132 [ぎぶそん]
数秒して、秀先輩もこちらに気づいた。

「おう、雨宮!
最近よく会うな!」

先輩が手の平で礼のポーズをしながら、いつもと変わらない笑顔を見せる。

隣の女の人は、さっきまで楽しそうな顔をしていたが、先輩がこちらに挨拶を始めた途端、無表情になった。

この女の先輩、見たことがある。
確か、副生徒会長の人―

⏰:09/01/22 15:38 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#133 [ぎぶそん]
「…あの二人、デキてるって噂、本当かなー。
生徒会カップルって奴かぁ!」

二人とすれ違った所で、ますちゃんが隣でひそひそと話す。

「女の人の名前、何だっけ?」

「本条まどか先輩!
優等生っぽいよね。」

本条先輩。
一瞬、私を睨んだのは気のせいではない気がする。

二人の関係は知らないけれど、彼女は秀先輩のこと、好きなんだろうな―

⏰:09/01/22 15:53 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#134 [ぎぶそん]
「…雨宮さんが最近、恋愛についてやたら知ろうとしてるのは、もしかしてあの生徒会長さんが気になるとか?」

「へっ?」

私より身長が低いますちゃんが、訝しい目つきでこっちを見上げながら、私に問いただす。

「…あの人のこと、好きなの?」

⏰:09/01/22 16:03 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#135 [ぎぶそん]
「…違うよ、ますちゃん。」

私はその場で、ピタリと立ち止まった。

「え?」

彼のくりくりとした丸い目が、更に大きく丸みを帯びる。

「私、さっきヤキモチを妬かなかった。」

いつもそう。

秀先輩が、他の女の人と一緒にいても話してても、私は特に何も感情を抱かない。

⏰:09/01/22 16:11 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#136 [ぎぶそん]
秀先輩は、素敵な人だと思う。

笑顔は似合うし、体全体からいつも誠実さが滲み出てていて、悪い噂は一つも聞かない。

恋人にするなら、文句なしの相手だと思う。

でも…、だからと言って、それが「恋」に対する「好き」と繋がるとは限らないんだね―

⏰:09/01/22 17:18 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#137 [ぎぶそん]
夜になって、家でテレビを観ながら、父の帰りを待っていた。

今日の夕飯は私の担当だけど、父からメールで「何もしなくていい」という指示を受けた。

8時過ぎ頃、ドアの開く音が聞こえた。

「よーし、今日はラーメンでも食べに行くかー。」

ネクタイを緩めながら、父が言う。

「うん。」

月に二度は、こうして外食をすることがある。

⏰:09/01/22 17:58 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#138 [ぎぶそん]
父と歩いて、近所にある小さなラーメン屋さんに向かう。

「おっ!城くんに真希ちゃん、久しいね!」

店に入ると、顔なじみである店長の保(たもつ)おじさんが、暖かく私たちを迎える。

店自体はこじんまりとしているが、ラーメンの味や店内のアットホームな感じが、会社員や中高年の人たちに好評で、常連客が後を絶えない。

私も、小さい時からよく父にここに連れて来てもらっていた。

⏰:09/01/22 18:09 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#139 [ぎぶそん]
「真希ちゃん、大きくなる度に、べっぴんさんになっていくねぇ!
うちのせがれの、嫁さんにならんかい!?」

カウンター越しに、ラーメンを作る保おじさんと冗談混じりの話をする。

「真希は父さんと結婚するんだよな!?」

横から割り込む父。

「…気持ち悪い…。」

「…!!ちっちゃい頃はよく言ってくれてたのに…。」

⏰:09/01/22 20:07 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#140 [ぎぶそん]
「ハハハ。城くんの親バカぶりには敵いませんなぁ!」

ゲラゲラと笑いながら、保おじさんが私たちの前に、二人分のラーメンを出す。

「でも真希ちゃん、俺は城くんは、立派な父親だと思うぞぉ!?

仕事と家庭を両立させて、真希ちゃんをここまで大きく育て上げたんだから!」

「うん…。」

保おじさんの言葉に何も返さず、父はただひたすら麺を啜っていた。

⏰:09/01/22 21:17 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#141 [ぎぶそん]
「有難うございましたー!」

ラーメンを食べ終え勘定を済ませると、店員さんの威勢のいい声に包まれながら、店を後にする。

「はー、食った食ったー。
よーし、今から公園行こう!」

「は!?」

「いいからいいから!
昔みたいに遊ぶぞ!」

店の前で、子供のようにはしゃぐ父。
―お酒は飲んではいないはず…。

⏰:09/01/22 22:03 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#142 [ぎぶそん]
父の無邪気さに根負けし、家から数十メートル先にある公園にやって来た。

住宅街の中にひっそりとある、小さな公園である。

二人で、息が合わさったかのように、ブランコに乗った。

「ついこの間まで、真希も砂遊びに夢中になってたと思うのになぁ!
時間が経つのは早いもんだな!」

「うん。」

キーコ、キーコとブランコの揺れる音だけが、夜の閑静な住宅街に響き渡る。

⏰:09/01/22 22:23 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#143 [ぎぶそん]
「…真希は将来、どんなお婿さんを連れて来るんだろうなぁ?」

「その前に、恋愛が出来るのかどうかが問題だよね。」

「今、学校で気になる人とかいないのか?」

「んー…、うん。」

⏰:09/01/22 22:32 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#144 [ぎぶそん]
「あっ、お父さんと正反対な人ならいるよ。」

「んん!?それはかっこよくなくて、運動オンチで、勉強が出来ない男か!?」
「ううん。落ち着きがあって、賢くて、大人な人ー。」

クスクスと笑う私。

こうして父をからかうのが、私たちの間では時々交わされるやり取りになっている。

⏰:09/01/22 22:42 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#145 [ぎぶそん]
「真希。」

「…何?」

「父さんはな、いつまでも真希には自分だけの娘でいてほしいが、父親こそ娘の幸せを願わなくちゃな。

現に父さんと母さんも、若い内に籍を入れたし。」

「…うん?」

⏰:09/01/22 22:48 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#146 [ぎぶそん]
「父さんは、真希が『この人!』って決めたのなら、文句は言わないから!」

「うん。」

「真希、母さんがいなくて、寂しい思いばかりさせてごめんな。

でも、決して母さんは責めないでやってくれ。
そのかわり、父さんは思う存分責めていいから。

真希、絶対に幸せになれよ!って、まだ高校生にこんな話は早いか。」

「お父さん…。」

⏰:09/01/22 22:55 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#147 [ぎぶそん]
「よーし、そろそろ帰るか。
ドラマが始まる。」

腕時計で時間を確認した父が、ブランコから降りる。
「今日はお月様が真ん丸だなぁ。」

夜空にある、黄金の物体を指を指す父。

「うんっ。」

今日はいい夢が見れそうだ―

⏰:09/01/22 23:32 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#148 [ぎぶそん]
それから家までの道のりを、父の一歩後ろから歩く私。

父の広い背中に、これまでの苦労と努力と、たくましさを感じた。

「…結婚するなら、お父さんみたいな人かな…。」

「ん?何か言ったかー!?」

「なーんでもない。」

お父さん、私、絶対幸せになる―

⏰:09/01/22 23:34 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#149 [Gibson]
*名前を気分でローマ字にさせて頂きますm(__)m

今日は寝ます☆
もしよろしければ、こちらに遊びに来て下さい\^ヮ^/
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4172/

また明日更新します(^^)q

⏰:09/01/22 23:47 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#150 [Gibson]
それは6月の、梅雨の時期真っ只中のことでだった。

「…38度4分。
完全に熱だな。」

「…。」

朝起きると、すさまじいほどの体の怠さを感じた。

「今日は学校、休みだな。」

寝ている私の額に、手を当てる父。

⏰:09/01/23 13:03 📱:SH705i 🆔:xMFSml2U


#151 [Gibson]
「…はあ、心配だな。
こりゃ、一人にさせられないわー。」

「何言ってるの。
仕事に穴開けるなんてダメだよ!?
私なら大丈夫だから、今日は薬飲んでずっと家で寝ておく。」

私は出来る限り、平気な風に振る舞った。

「ごめんな、真希…。」

⏰:09/01/23 13:07 📱:SH705i 🆔:xMFSml2U


#152 [Gibson]
カチカチカチ…―

壁掛け時計の、規則正しく刻む音だけが室内で聞こえる。

私は瞼を閉じて、ひたすら眠り込む体制になっている。

先程、エリから欠席を心配するようなメールが届いていた。

⏰:09/01/23 13:21 📱:SH705i 🆔:xMFSml2U


#153 [Gibson]
熱を出したのは、記憶では中学一年が最後だった。

小学校低学年の時は、体調が悪くなったら、父が仕事を休んで病院に連れていってくれたり、看病してくれたりしていた。

父の実家は、遠く離れた県外にある。
だから私は、祖父や祖母に会ったことは、二・三度くらいしかない。

頼りになるべき肉親がそばにいなくても、父は近所の人も全く当てにしなかった。

なるべく、親としての役割を果たしたかったのだろう。

⏰:09/01/23 13:34 📱:SH705i 🆔:xMFSml2U


#154 [Gibson]
小さい時は病気の時に付き添ってくれる有り難みに気がつかなかったが、
大きくなるにつれて、次第に申し訳なく感じた。

会社の人に、悪いように思われたりしていないかとか、会社を首になったりしたらどうしようとか。

それからは意識して、健康管理には心を配ってるつもりであった。

しかし、今回はちょっとした自分の不注意で、高熱を発生させてしまった。

でも大丈夫だ。
私も一人でいても特に不自由ない年齢になったから。

⏰:09/01/23 13:47 📱:SH705i 🆔:xMFSml2U


#155 [Gibson]
「…お母さん、今自分を悪く思ってる?…」

窓の外に目をやり、梅雨の最中の、灰色のじめじめとした景色に向かって問い掛ける。

―そばにいてあげられなくて、ごめんなさい―

病気になる度に、そんな言葉を何度も叫ばれているような気持ちになる。

「…お父さんもお母さんも、全然悪くないよ…。」

⏰:09/01/23 14:02 📱:SH705i 🆔:xMFSml2U


#156 [Gibson]
ピンポーン、ピンポーン―

「…ん…。」

ずっと寝ていたが、夕方近く家の呼び鈴の音で目を覚ました。

ベッドから起き上がり、Tシャツにジャージと部屋着の格好のままで、玄関のドアを開けてみた。

⏰:09/01/23 14:09 📱:SH705i 🆔:xMFSml2U


#157 [Gibson]
「…えっ…!」

そこにいたのは、男友達の優平だった。

「エリから休んでるって聞いて。
皆で押しかけるのも迷惑だろうからって、俺が代表して見舞いに来た。」

いつも学校で見ている優平が、そっくりそのまま家の前にいる。

突然の訪問に、私は驚きを隠せなかった。

とりあえず、彼を家に入れた。

⏰:09/01/23 14:16 📱:SH705i 🆔:xMFSml2U


#158 [Gibson]
初めて上がった私の家に、若干キョロキョロと辺りを見渡す優平。

「真希が熱なんて珍しいな。
はい、これ今日配られたプリント類。」

「ありがと。」

彼に差し出されたものを、受け取る私。

「今日ちゃんと食べた?」

「んー…ううん。」

⏰:09/01/23 14:27 📱:SH705i 🆔:xMFSml2U


#159 [Gibson]
「じゃあ、今からこれ剥いてあげるから。台所借りていい?」

彼が右手に握りしめている、スーパーの袋を掲げる。

いくつかの赤く丸々とした球体が、かわいらしく透けて見えていた。

そして、彼は袋を一旦キッチンの上に置くと、「とりあえずゆっくり寝てて」と言いながら、後ろから私の背中を押す。

⏰:09/01/24 00:57 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#160 [Gibson]
私は誘導されるがまま、リビングのソファーに横になることにした。

我が家はダイニングキッチンの造りになっているので、彼からも自分からも、目の届きやすい位置にいることになる。

「優平、今日の部活は?」

「早くに上がって来た。」

壮快に切れるりんごの音を挟みながら、彼と会話をする。

⏰:09/01/24 01:18 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#161 [Gibson]
サッカー部の練習は、いつも暗くなるまでやっていると聞いている。

きっと彼は、今日は私の見舞いの為に途中で切り上げてきたのだろう。

申し訳ないという思いに駆られようとした時、

「エリは料理出来ないし、元基の元気さは病人にとっちゃ、かえって煩わしいだけだし。
だから俺が来た。」

と、彼が私の気持ちを察したかのように、細かい訳を冗談混じりに話してくれた。

玄関の前で言っていた"代表"の意味を、そこで理解した。

⏰:09/01/24 02:01 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#162 [Gibson]
細かく切ったりんごを乗せた皿を持ち、彼が寝てる私の目の前に、しゃがみ込んできた。

「はい、どうぞ。」

上体を起こし、彼に差し出されたフォークで一つずつ口に入れる。

痛くて渇いた喉に、りんごの水分が程よく吸収される。

⏰:09/01/24 04:06 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#163 [Gibson]
「…今みたいに、病気になった時は大変そうだな。」

ついさっきまで看病なしで過ごしていた私を、彼が気の毒そうな眼差しで見つめる。

その綺麗な瞳が、ほんの微かに湿り気を帯びる。

「別に何ともないよ。」

無表情のまま、次のりんごを口に運んだ。

何故、自分が人に冷めた印象をよく持たれるか、一番理解できる瞬間だ。

⏰:09/01/24 04:34 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#164 [Gibson]
「…さっきの言葉、気に障ったのならごめん。

でも俺、真希の家庭環境を不幸せだとか思ったことは一度もないよ。

家のことはいつも、生き生きとした表情で話してくれるし。」

彼が軽やかな手先で、りんごの欠片を一つ摘んだ。

父のことはいつも、「うざい」「恥ずかしい」などの表現で紹介しているつもりだったが、
それが愛情と信頼の裏返しだということを、
今ここにいる彼は読み取っていてくれていたらしい。

⏰:09/01/24 05:26 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#165 [Gibson]
その次に彼は皿をテーブルの上に置き、腰を上げた。

リビングの隅に向かい、棚の上に飾ってある、白い写真立てを手に取る。

幼稚園の頃、父とラベンダー畑に行った時の瞬間が収められている。

一面紫の花に囲まれて嬉しそうな私を、満面の笑みで抱き抱えている父。

⏰:09/01/24 06:48 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#166 [Gibson]
「…真希は本当に、大事に育てられてきたんだなぁ。」

写真の中の二人に向かって、彼が微笑む。

「俺ん家って無駄に広くてさ、形式や建前気にして、何か全体的によそよそしいんだよね。

親や兄弟より、使用人と多く接してきた気がする。」

ハハハ、と目を細めて笑う優平であったが、寂しさを押し隠すような、そんな表情にしか見えなかった。

⏰:09/01/24 13:25 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#167 [Gibson]
優平の父は、歴代が設立した会社の社長を務めており、桜井家は由緒正しい家柄だという噂を、ちょくちょく耳にしたことがある。

彼が私やエリらを家に一度も招かないのは、そんな部分に対して、自分と距離を感じて欲しくないからであろう。

繊細さ故、彼も何か思う部分があったということを、今日ここで初めて知った。

⏰:09/01/24 13:45 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#168 [Gibson]
「あっ、俺さっきから病人の前で喋り過ぎだよな。
これじゃ元基のこと、悪く言えないわ。」

写真立てを元の位置に戻し、再びこちらに来て屈む。

「早く良くなれよ。」

優平が、私の左手を両手で取る。
その手のひんやりとした感触が、熱を冷ましてくれるようで心地よかった。

⏰:09/01/24 13:58 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#169 [Gibson]
「俺、お前の母さんの分まで、ずっとそばにいてやるから。」

「え…?うん…。」

「俺、いなくなったりしないから。」

「うん、うん…。」

彼の真摯な姿勢と眼差しが、私の心一点を射る。

その雄々しい態度に、彼もまた一人の男の子だということを、改めて認識する。

⏰:09/01/24 14:18 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#170 [Gibson]
安心感から、目を閉じもう一度眠ろうとする私。

優平はその名の通り、心優しい少年である。

クラスの委員長には、真っ先に選ばれるタイプで、
周りの世話を焼いたり、統率をするのが上手な人間だ。

でも、今私に注いでくれてる温かさが、義理な人情とは別物であってほしいと、独占欲に似た感情で願った。

⏰:09/01/24 14:32 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#171 [Gibson]
次に目を覚ましたのは、夜の8時前だった。

「…。」

直ぐさま視界に映った優平は、右手は私の手を握ったまま、ソファーにもたれ掛かって寝ていた。

寝息一つも聞こえないほど、静かに眠っている。

⏰:09/01/24 16:08 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#172 [Gibson]
髪は耳に掛けられるほどの長さで、艶がいい。
睫毛も長くて、女の子みたいだ。

彼のファンだと総称している子たちは、陰で彼を「王子」と呼んでいるとか。

今こんなに至近距離で、私が彼の眠りを見届けていると知ったら、彼女たち、どう思うかな。

⏰:09/01/24 16:19 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#173 [Gibson]
トクン、トクン、トクン―

自分の心臓が、熱を増して徐にリズムを奏でる。

全身の怠さなら、二度ほどの睡眠で十分なくなっている。

何だろう、この感じ―

優平、今日はわざわざ私の為に来てくれて、ありがとう。
目を閉じた彼に、微笑みを返した。

⏰:09/01/24 16:36 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#174 [Gibson]
ピクリとも動かない彼を、まじまじと目を動かして観察する私。

ドサッ。

その途中、大きな物音がしたので、不意を突かれたと同時に、音のする方向に目を向けた。

そこには、慌ただしく血相を変えた父の姿が。

彼の真下には、スーパーの袋が落ちている。

「高校生での男女不純交際禁止ー!!」

⏰:09/01/24 16:50 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#175 [Gibson]
父の大声で、優平も何事かと飛び起きた。
その後、二人で事の経緯を説明する。

「ごめんごめん。君が桜井くんか。話なら真希からよく聞いているよ。」

彼の存在が分かると、すぐに落ち着きを取り戻した父。
この楽観的な性格が、少し羨ましい。

「すみません、見舞いのつもりが、いつの間にか寝てしまって…。」

⏰:09/01/24 17:51 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#176 [Gibson]
「お父さん、真希のお母さんに挨拶してもいいですか?」

「ん!?おう。」

父が彼を、母の仏壇がある、和室へと案内する。
私も、二人の後ろを着いて歩く。

和室に入ると、仏壇の前で正座をし、深々と一礼をする優平。

お母さん、私にはこの人がいるから大丈夫だよ―

成長しきった男の子の背中を、ずっと見ていた。

⏰:09/01/24 18:24 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#177 [Gibson]
次の日になると体温も平熱を取り戻し、通常どおり学校に通う。

「…日本史の教科書忘れた…。」

休み時間に次の授業の準備をしていると、忘れ物をしていることに気づいた。

元基に借りるか、と思ったが、確か彼のクラスは地歴科目は世界史コースだ。

優平の所は日本史コースだったことを思い出し、少しクラスが離れているが、彼から借りることにした。

⏰:09/01/24 18:42 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#178 [Gibson]
違うクラスを訪ねる時は、いつも入りづらい空気が漂ってる気がする。

開いているドアから、教室内を覗いてみる。
席に座っている優平が、彼の元に来た女の子に、勉強を教えていた。

「…。」

「あ、真希!
もう熱下がったか?」

私の気配に気づくと、彼がいつもの笑顔で声をかけてきた。

⏰:09/01/24 18:54 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#179 [Gibson]
「あっ、竹下さん!
日本史の教科書持ってる?」

優平を無視し、たまたま近くを通りがかった竹下さんの元に行った。

何やってるんだろう、私…―

予定とは異なり、教科書は竹下さんから借りることになった。

⏰:09/01/24 21:30 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#180 [Gibson]
次の授業が始まり、教壇に立つ先生が、頭の血管が切れそうな位、熱く生徒たちに教える。

その言葉も上の空で、先程の自分の行動を思い返す。

優平に悪いことをしてしまった、という気持ちの他に、言葉に表せない何かがある。

昨日から、彼の安心しきった寝顔が焼きついたままだ。

昨日の彼の訪問は、少なくとも私にとって、特別な時間と呼べていた。

⏰:09/01/24 22:23 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#181 [Gibson]
昼食時間、弁当を食べながら、エリにこの胸のわだかまりを打ち明けてみることにした。

「ま、真希…!それって…!」

目を大きく見開き、あんぐりとした口で固まったままのエリ。

「何!?何なの?」と、私は話の続きを催促した。

「ううん、何でもない!
まあ、答えはいつも自分の中にあるから!」

私の気持ちとは裏腹に、彼女は言葉を濁した。

⏰:09/01/24 22:49 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#182 [Gibson]
「でも、真希のお父さんと優平って似てるよねー!
いつも子供の世話するみたいに、『真希、真希』ってさー!
真希ももうちっちゃくないのに。」

ケラケラと笑うエリ。

「…。」

言われてみればそうかも―

⏰:09/01/24 22:58 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#183 [Gibson]
掃除時間も、午後の授業の時も、エリが言った台詞の続きを考えていた。

そして放課後。
パンクしそうな頭を一旦冷やす為、ジュースを買うことにした。

自販機に向かい廊下を歩いていると、後ろから誰かに腕をぐいと引っ張られた。

「あ…、もしかして怒ってる?
昨日は結局、中途半端な見舞いしちゃったから。」

優平だった。

⏰:09/01/24 23:07 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#184 [Gibson]
「…今日、一緒に帰ろ。」
彼の言葉をまたもや無視し、私はこんなことを言った。
私から何かを誘うのは、今までなかった。

「ん!?いいけど、俺部活で遅くなるよ?」

「平気、待ってる。」

⏰:09/01/24 23:18 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#185 [Gibson]
今日は図書館で勉強するから、門限より少し遅くなると父に連絡を入れておいた。

校門の前で、ひたすら優平を待つ。
次第に辺りがどんどんと暗くなる。

「答え、答え…。」

彼が来るまでに、見つけようと頑張ってみる。

「うーん…。やっぱりわかんないや…。」

⏰:09/01/25 02:33 📱:SH705i 🆔:arpSz.qI


#186 [Gibson]
「お待たせ。」

8時過ぎ、息を切らしながら、部活を終えた優平が現れた。

彼はいつもは、同じ部活仲間の元基と帰宅しているとのことだが、今日は二人で帰りたいと私が要求した。

親しい間柄ではあるが、慣れないシチュエーションに、新鮮味を覚える。

⏰:09/01/25 02:39 📱:SH705i 🆔:arpSz.qI


#187 [Gibson]
同じ帰り道の、小洒落た大通りを歩く。
ぽつぽつと立つ街灯のオレンジが、淡く街を照らす。

沈黙の雰囲気の中、私たちの目の前を、小さな女の子を母親が手を引いて歩いていた。

通り過ぎる瞬間、「お兄ちゃん、ばいばい。」と、女の子が優平に手を振った。
「おう。」と、手を振って返す優平。
ちらりと見た横顔は、混じり気のない笑顔をしていた。

⏰:09/01/25 02:51 📱:SH705i 🆔:arpSz.qI


#188 [Gibson]
トクン、トクン、トクン―

昨日、彼の寝顔を見た後と、同じ鼓動が押し寄せる。

『恋する機会ってね、誰の前でも現れてくれると思う。
でも、それは本当に突然の出来事なんだ。』

以前、ますちゃんがこんなことを言っていたのを、突然思い出した。

…―

⏰:09/01/25 03:04 📱:SH705i 🆔:arpSz.qI


#189 [Gibson]
「そういえば、今日誘ったのって何か用事あったからとか?
もしかして、嫌な事でもあった!?」

優平が、不思議そうな心配そうな顔をして言う。

「えっ…。えっと…。」

私、何であの時、一緒に帰ろうって言ったんだろう。
何か、気がついたら言葉が出てた―

⏰:09/01/25 03:13 📱:SH705i 🆔:arpSz.qI


#190 [Gibson]
『「会いたい」って気持ち!これが恋よ!』

エリが前に言ってた台詞が、脳裏に反響する。

私は、優平と話がしたかった。
私は、優平の笑顔が見たかった。
私は、優平に会いたかった。

口には出さずとも、頭の中では、色んな欲望が交錯しているのを隠せなかった。

トクン、トクン、トクン…―

⏰:09/01/25 03:23 📱:SH705i 🆔:arpSz.qI


#191 [Gibson]
ふと歩く先に、ベーカリー屋が見えた。

店の前で立ち止まり、店内を見渡す私。
閉店間際とあってか、ほとんどの種類のパンが売り切れてた。

2・3個まで残っている、好物のメロンパンを眺める。

「どうした?」と、優平が尋ねてきた。

⏰:09/01/25 03:33 📱:SH705i 🆔:arpSz.qI


#192 [Gibson]
「…優平って、メロンパンに似てるよね。」

「へ!?」

「時々苦いの。」

「何だそれ?」

私はキョトンとしている彼の目を見て、この上なく微笑んだ。
父にも見せたことがない、とびきりの笑顔を見せたと思う。

⏰:09/01/25 03:37 📱:SH705i 🆔:arpSz.qI


#193 [Gibson]
恋という感情。
それは、一言でも四百字の原稿でも、上手く表現しきれないもの。

…そうなんじゃないかな?

そして、その答えや結論は人それぞれ。

雨宮真希、17歳。
これから私なりの恋愛論というものを、ゆっくりと見つけていきます。

…少し前の自分よりは、見つかりそうな気がします。

Chapter02 END.―

⏰:09/01/25 03:49 📱:SH705i 🆔:arpSz.qI


#194 [Gibson]
Chapter03
「居候」

⏰:09/01/26 00:05 📱:SH705i 🆔:keS1jVx2


#195 [Gibson]
青葉が生い茂り、カラッと晴れた天候が続く。

帰路の坂道を上りながら、滴り落ちる汗をハンカチで拭う。
夏の日射しが、容赦なく全身をうだらせる。

7月初旬。
後一ヶ月も経たない内に、夏休みが始まる。

今年は一体、どんな思い出が作れるかな―

⏰:09/01/26 00:15 📱:SH705i 🆔:keS1jVx2


#196 [Gibson]
学校から帰宅すると、玄関先にダンボールが2・3箱積まれてるのに気づく。

父が珍しく通販でも頼んだのかなと、特に気に止めなかった。

次に廊下を歩くと、今度はドアの隙間から、リビングの明かりが漏れていた。

父がつけっぱなしのまま、会社に行ったのだろうか。
無用心だ。

⏰:09/01/26 00:32 📱:SH705i 🆔:keS1jVx2


#197 [Gibson]
リビングに近づいてみると、明かりだけではなく何か音も聞こえる。
おかしさと不自然さが、今日の家には漂う。

慎重にドアを開けて、恐る恐る室内に入ってみる。

そこには見たことのない20代位の若い男が、TVゲームをしていた。

この辺は住宅地が密集している。
新手の空き巣だろうか!?

恐怖で頭の中が混乱する。

⏰:09/01/26 00:45 📱:SH705i 🆔:keS1jVx2


#198 [Gibson]
その時、空の空き缶が入った袋に、無意識に当たって軽く蹴ってしまった。

その音で、男が私の気配に気づく。
しまった、と思った。

「あ、おかえり!」

自分の家であるかのように、馴れ馴れしく挨拶する男。
その上、屈託のない表情をしている。

「…どっ、泥棒!!」

何をされるか分からない、ぶるぶると震える全身。

⏰:09/01/26 01:02 📱:SH705i 🆔:keS1jVx2


#199 [Gibson]
「ただいまー!
おっ真希、今日は早いな。」

スーパーの袋を両手いっぱいに掲げた父が、そこでタイミング良く帰宅してきた。

そういえば今日の朝、有給休暇が取れたって言っていたのを、寝ぼけたままの頭で聞いたような。

「お父さん、変な男が家に…!」

我が家でくつろぐ男を指差す。

⏰:09/01/26 01:16 📱:SH705i 🆔:keS1jVx2


#200 [Gibson]


「…と言うことで、しばらくウチで預かることになった、古沢東吾くんだ!

ハハハ、驚かせてすまん。
知らせるのは、真希が帰ってからにしようと思って。」

「よろしく、真希ちゃん!
何も盗ったりしないから!」

さっきの私の取り戻し様が可笑しかったのか、二人がげらげらと笑う。

父と二人暮らしだった家に、突然降ったように現れた居候。
これからどうなるのやら…―

⏰:09/01/26 01:32 📱:SH705i 🆔:keS1jVx2


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