WHITE★CANDY
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#101 [ぎぶそん]
「雨宮、これ解けるか?」
先輩が、違う参考書の四沢問題のページを開いて、私に示してきた。

「えっとー…答えはAかな?」

「うん、正解!
大変よくできました!」

笑顔で私の頭を撫でる先輩。

⏰:09/01/18 17:54 📱:SH705i 🆔:ta6MnWi2


#102 [ぎぶそん]
「…。」

先輩のそのしぐさに、一瞬言葉を失った。

「先輩、やっぱり受験って大変ですか?!」

「んー、まあそれなりに!」

先輩が、動かしていた手を離す。

⏰:09/01/18 18:01 📱:SH705i 🆔:ta6MnWi2


#103 [ぎぶそん]
「そうだ!今度一緒に図書室で、勉強会をやらないか?」

「私はいいですけど…、
私、先輩の邪魔になりません?」

「可愛い後輩が隣にいる方が、俺もやる気出るし!」

先輩が、和らげに微笑む。

⏰:09/01/19 14:30 📱:SH705i 🆔:i.Bivc7o


#104 [ぎぶそん]
その日の夜―

「お父さんは、お母さんのどこに惹かれたの!?」

夕飯の準備をしながら、父に質問をする。
父とこういった話をするのは、普段全くない。

「母さんはなー、何と言うか、たんぽぽみたいな人だったなあ。」

「…どういう意味?」

⏰:09/01/20 20:46 📱:SH705i 🆔:3P45rEZ2


#105 [ぎぶそん]
「薔薇やガーベラのような華麗さはないけれど、
雑草と共存しながら、慎ましく道幅にひっそりと咲くような…
よく見てみると、綺麗な花をつけていて、確かな魅力を持っているんだ。」

「ふぅん。」

それがお父さんなりの、愛した人の見方なんだ―

⏰:09/01/20 20:53 📱:SH705i 🆔:3P45rEZ2


#106 [ぎぶそん]
数日後、私は約束どおり秀先輩と、放課後図書室で一緒に勉強することになった。

静まり返った室内で、黙々と明日提出の課題に取り組む。

隣の先輩は、何やら数学を解いていた。

⏰:09/01/21 05:25 📱:SH705i 🆔:NQBrsBvY


#107 [ぎぶそん]
(秀ちゃん秀ちゃん、ここの問題教えて!)

途中で、室内にいた女の先輩が秀先輩に小声で近付き、分からない所を聞きにくる場面があった。

ひそひそとやり取りをする二人。

優しく問題を解説する先輩を見て、生徒会長に選ばれるだけあって、人望が熱い人だと思った。

⏰:09/01/21 18:26 📱:SH705i 🆔:NQBrsBvY


#108 [ぎぶそん]
外の景色が暗くなった所で勉強会を終了し、帰り道を先輩と二人で歩く。

「雨宮は、進路は決まったか?」

「いえ、まだ全然…。」

「まあ俺も、二年の終わり頃に決めたから、そんなに焦らなくて大丈夫!」

先輩が私の歩幅に合わせて、ゆっくり歩いてくれた。

⏰:09/01/21 18:33 📱:SH705i 🆔:NQBrsBvY


#109 [ぎぶそん]
「あ、そうだ…。」

一本道の途中にあった自販機の前で、先輩が立ち止まった。

カバンから財布を取り出し、飲み物を買う先輩。

「はいっ。今日付き添ってくれたお礼。」

「え?」

先輩が、たった今買ったばかりのオレンジジュースを私に差し出した。

⏰:09/01/21 19:02 📱:SH705i 🆔:NQBrsBvY


#110 [ぎぶそん]
「じゃあ、俺ん家すぐそこだから…気をつけて帰れよ!」

「あ、はい!」

先輩が笑顔で、"バイバイ"と手を振る。

先輩の大きな背中を、私は見えなくなるまで見ていた。

⏰:09/01/21 19:11 📱:SH705i 🆔:NQBrsBvY


#111 [ぎぶそん]
次の日―

「…さん!雨宮さん!」

朝のホームルームが終わって、席に着いたままポーッとしていると、誰かに呼ばれているのに気がついた。

「あ、ごめんなさい…ってますちゃん!何?何か用?」

そこには、クラスメートの男子がいた。

⏰:09/01/21 19:20 📱:SH705i 🆔:NQBrsBvY


#112 [ぎぶそん]
増山光太。
通称 ますちゃん。

野球部に所属している、イガ栗頭の小柄な少年。

一年の時も同じクラスで、当時は元基がよくからかっていた。

天然ボケな性格なので、やられキャラかつ愛されキャラな人物である。

⏰:09/01/21 19:31 📱:SH705i 🆔:NQBrsBvY


#113 [ぎぶそん]
「何か用?じゃなくて、英語係の仕事。」

私とますちゃんは、クラスで同じ係を担当している。

ますちゃんの机の上には、今日提出となっている、クラスの人数分のノートが重なっていた。

「あっ、ごめん。
一人でさせちゃって。」

「まあ、とりあえず雨宮さん半分持って。
職員室まで運ぶよ。」

⏰:09/01/21 20:05 📱:SH705i 🆔:NQBrsBvY


#114 [ぎぶそん]
「二人ともご苦労様。」

職員室に入り、英語を担当する女の先生に、二人でクラス分の課題を渡した。

教室まで再び戻ろうと職員室を出る途中で、誰かに肩を叩かれた。

「雨宮、おはよう!」

「秀先輩…!」

秀先輩と私は、ちょうど職員室を入れ違いになったようだ。

⏰:09/01/21 20:32 📱:SH705i 🆔:NQBrsBvY


#115 [ぎぶそん]
昼休み―

「雨宮さん、最近物思いに耽ってるねー。」

教室前のベランダに一人出て空を眺めていると、ますちゃんが近くに寄って声を掛けてきた。

「…ますちゃんは、今恋してるの?」

私は彼の目を見て言った。

「えぇ!唐突な質問だね!
あいにく、僕にはそういうのに縁がないよ…。」

⏰:09/01/21 20:41 📱:SH705i 🆔:NQBrsBvY


#116 [ぎぶそん]
「…私、今まで恋愛とかよく分からなかったんだけど、もう高二にもなるし、危機感感じた方がいいのかなって。」

エリと元基の仲睦まじい姿や、女子たちが集まってする恋愛についてのトーク、
そして、現に自分の母親は、今の私と変わらない年齢の時に、お父さんと恋に落ちてた。

私たちの年代は、恋愛に興味津々であって、恋愛というものを学び取る頃。

特に感心も持たない私って、変なのかな?―

⏰:09/01/21 20:50 📱:SH705i 🆔:NQBrsBvY


#117 [ぎぶそん]
「んーっ、俺は恋ってしようと思って出来るものじゃないと思うな!
雨宮さんも、実際そうじゃない!?」

「うん、うんっ。」

へたれキャラなますちゃんの言葉に、思わず頷く。

「恋する機会ってね、誰の前でも現れてくれると思う。
でも、それは本当に突然の出来事なんだ。
だから雨宮さんも、焦らなくていいと思うよ!」

⏰:09/01/21 20:58 📱:SH705i 🆔:NQBrsBvY


#118 [ぎぶそん]
放課後―

屋上に来て大の字にねっころがり、ゆっくりと考え事を始める。
私の好きな時間。

空はだんだんと、夕焼け色に差し掛かる所だ。

今日は昼休みのますちゃんの台詞が、心地よく響いている。

無理に恋愛を求める必要は、今の私にはないと感じた。

⏰:09/01/21 21:11 📱:SH705i 🆔:NQBrsBvY


#119 [ぎぶそん]
「お母さんは、お父さんのどこが良かったの…?」

空にいるであろう母に問い掛ける。

無言の返事が空に反映するだけだが、こんな風に語りかけるのは、私の幼い頃からの習慣だ。

私は父親としての雨宮城はよく知っているが、男としての雨宮城は全く分からない。

きっと、お母さんにとって、父には何かグッとくる所があったのだろう。
だから、こうして私が生まれた。

⏰:09/01/21 21:20 📱:SH705i 🆔:NQBrsBvY


#120 [ぎぶそん]
「お父さんね、お母さんのこと、たんぽぽみたいな人って言ってたよ。」

そして、質問だけじゃなく、報告をするのも欠かさない。

最近お父さんがこんなことをしたとか、今こんなことを私は思っているとか。

天国という所はどんな場所であるのか、若しくは天国という所が存在してるのかすら不明だけれど、
母は私の話をどこかで聞いてくれていると信じている。

⏰:09/01/21 21:30 📱:SH705i 🆔:NQBrsBvY


#121 [ぎぶそん]
「私も、愛されるならお父さんみたいな人がいいなあ…。」

母が亡くなってもう十年以上が経つのに、今でも同じ愛情を母に抱く父。

一人の人を思い続けるのって、簡単に出来そうで、以外と難しいのではないだろうか。

その善し悪しは人それぞれだけど、真実の愛というものは、ランダムに歩いて見つかるものとは思えない。

⏰:09/01/22 00:27 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#122 [ぎぶそん]
運命の人―
もしいるとするならば、もう既に出会っているのかな?

「えっとー、私の知り合いの男の子と言ったら、ますちゃんに、福内くんに箕輪くん…
うーん、皆そんな風に思えない…。」

17歳でそんな決断に至るのは、到底早いか―

⏰:09/01/22 00:42 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#123 [ぎぶそん]
「…あっ!」

私は一人の存在を思い出した。

寺岡秀一郎先輩。

彼は私から見ても、素敵な人だと思う。
誰に対しても優しくて、頼りがいがあって、勉強熱心で。

恋人にするなら、文句なしの人だろう。

⏰:09/01/22 00:48 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#124 [ぎぶそん]
「もし秀先輩を好きになったら、これから先どんな風になるんだろう…?」

未知なる世界のことを考えると、トクトクと胸が高鳴る。

その時だった。

「真ー希っ。」

仰向けに寝ていた私の前に、誰かがニョキッと顔を出してきた。

⏰:09/01/22 01:00 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#125 [ぎぶそん]
「わっ!…って優平!?」

いつかの昼休みの時と同様、その相手は優平だった。

私は思わず、体を起こした。
ここまでのシチュエーションは、この間と全く一緒。

「アハハ、これで二回目だね、びっくりさせたの!
真希のこと探してたんだ。
…はいこれ、借りてた本。」

彼が私に、二週間位前に貸した小説を差し出す。

「これを届ける為にわざわざ屋上まで来たの?
別にいつでも良かったのに。」

⏰:09/01/22 01:16 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#126 [ぎぶそん]
「んー…真希って何か気になるんだよな!」

「え?」

「何かあったら、一人でしょい込んでないで、俺やエリらに言うこと!
全然頼ってくれて構わないから!」

「うん。」

私っていつも、そんな風に見えてた?
妙な心配をかけさせていたのなら、ごめんなさい―

⏰:09/01/22 01:31 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#127 [ぎぶそん]
「じゃあ俺、今から部活だから。」

「うん。本、ありがとね。」

ここに来て数分も経たない内に、彼は去っていった。

そういえば、優平も一応、今までに出会った男の子の内の一人に違いない。

それでも、彼もますちゃんたち同様、"運命の人"からは除外か。

私たちは、異性ということを忘れるくらい、ずっと友達として付き合ってきたのだから―

⏰:09/01/22 01:41 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#128 [ぎぶそん]
その後、私も教室に戻り、エリと下校することになった。

「あっ、そうだ!
一つ言い忘れてた。」

「何?」

「恋はねー、甘いばかりじゃないの!
メロンパンをかじった時、苦いと思う時もある。」

「そんなことってあるの?」

ベーカリー屋が見えてきた所で、エリがいつかの例え話の続きをしてきた。

甘くないメロンパンなんて、聞いたことがないよ―

⏰:09/01/22 12:30 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#129 [ぎぶそん]
「楽しいことばかりじゃないってこと!
嫌なことや辛いこともそれなりにあるのよ。」

「へぇ、そうなんだ。
じゃあ、エリは何が楽しいと思えなかった?」

「付き合う前、元基が他の女の子と喋ってる時、いい気はしなかったかなぁ。
ま、ヤキモチって奴よ。」

「ふぅん。」

ヤキモチか。
恋をしてる特徴の一つかな―

⏰:09/01/22 12:38 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#130 [ぎぶそん]
数日後―

「昨日のお笑い番組観た!?」

「うん、面白かったねー。」

朝のホームルームが終わって、私はますちゃんと、職員室までクラス分の英語のノートを持って行っていた。

彼と思いついた話題を提供しあいながら、廊下を歩く。

⏰:09/01/22 14:50 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#131 [ぎぶそん]
職員室がある一階まで、階段を降りている時だった。

「あっ…。」

ある光景が目に入ったので、ふと立ち止まった。

「どうかした、雨宮さん?」

秀先輩と女の先輩が、こちらとは反対に、階段を上ってきていた。

⏰:09/01/22 15:27 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#132 [ぎぶそん]
数秒して、秀先輩もこちらに気づいた。

「おう、雨宮!
最近よく会うな!」

先輩が手の平で礼のポーズをしながら、いつもと変わらない笑顔を見せる。

隣の女の人は、さっきまで楽しそうな顔をしていたが、先輩がこちらに挨拶を始めた途端、無表情になった。

この女の先輩、見たことがある。
確か、副生徒会長の人―

⏰:09/01/22 15:38 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#133 [ぎぶそん]
「…あの二人、デキてるって噂、本当かなー。
生徒会カップルって奴かぁ!」

二人とすれ違った所で、ますちゃんが隣でひそひそと話す。

「女の人の名前、何だっけ?」

「本条まどか先輩!
優等生っぽいよね。」

本条先輩。
一瞬、私を睨んだのは気のせいではない気がする。

二人の関係は知らないけれど、彼女は秀先輩のこと、好きなんだろうな―

⏰:09/01/22 15:53 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#134 [ぎぶそん]
「…雨宮さんが最近、恋愛についてやたら知ろうとしてるのは、もしかしてあの生徒会長さんが気になるとか?」

「へっ?」

私より身長が低いますちゃんが、訝しい目つきでこっちを見上げながら、私に問いただす。

「…あの人のこと、好きなの?」

⏰:09/01/22 16:03 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#135 [ぎぶそん]
「…違うよ、ますちゃん。」

私はその場で、ピタリと立ち止まった。

「え?」

彼のくりくりとした丸い目が、更に大きく丸みを帯びる。

「私、さっきヤキモチを妬かなかった。」

いつもそう。

秀先輩が、他の女の人と一緒にいても話してても、私は特に何も感情を抱かない。

⏰:09/01/22 16:11 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#136 [ぎぶそん]
秀先輩は、素敵な人だと思う。

笑顔は似合うし、体全体からいつも誠実さが滲み出てていて、悪い噂は一つも聞かない。

恋人にするなら、文句なしの相手だと思う。

でも…、だからと言って、それが「恋」に対する「好き」と繋がるとは限らないんだね―

⏰:09/01/22 17:18 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#137 [ぎぶそん]
夜になって、家でテレビを観ながら、父の帰りを待っていた。

今日の夕飯は私の担当だけど、父からメールで「何もしなくていい」という指示を受けた。

8時過ぎ頃、ドアの開く音が聞こえた。

「よーし、今日はラーメンでも食べに行くかー。」

ネクタイを緩めながら、父が言う。

「うん。」

月に二度は、こうして外食をすることがある。

⏰:09/01/22 17:58 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#138 [ぎぶそん]
父と歩いて、近所にある小さなラーメン屋さんに向かう。

「おっ!城くんに真希ちゃん、久しいね!」

店に入ると、顔なじみである店長の保(たもつ)おじさんが、暖かく私たちを迎える。

店自体はこじんまりとしているが、ラーメンの味や店内のアットホームな感じが、会社員や中高年の人たちに好評で、常連客が後を絶えない。

私も、小さい時からよく父にここに連れて来てもらっていた。

⏰:09/01/22 18:09 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#139 [ぎぶそん]
「真希ちゃん、大きくなる度に、べっぴんさんになっていくねぇ!
うちのせがれの、嫁さんにならんかい!?」

カウンター越しに、ラーメンを作る保おじさんと冗談混じりの話をする。

「真希は父さんと結婚するんだよな!?」

横から割り込む父。

「…気持ち悪い…。」

「…!!ちっちゃい頃はよく言ってくれてたのに…。」

⏰:09/01/22 20:07 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#140 [ぎぶそん]
「ハハハ。城くんの親バカぶりには敵いませんなぁ!」

ゲラゲラと笑いながら、保おじさんが私たちの前に、二人分のラーメンを出す。

「でも真希ちゃん、俺は城くんは、立派な父親だと思うぞぉ!?

仕事と家庭を両立させて、真希ちゃんをここまで大きく育て上げたんだから!」

「うん…。」

保おじさんの言葉に何も返さず、父はただひたすら麺を啜っていた。

⏰:09/01/22 21:17 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#141 [ぎぶそん]
「有難うございましたー!」

ラーメンを食べ終え勘定を済ませると、店員さんの威勢のいい声に包まれながら、店を後にする。

「はー、食った食ったー。
よーし、今から公園行こう!」

「は!?」

「いいからいいから!
昔みたいに遊ぶぞ!」

店の前で、子供のようにはしゃぐ父。
―お酒は飲んではいないはず…。

⏰:09/01/22 22:03 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#142 [ぎぶそん]
父の無邪気さに根負けし、家から数十メートル先にある公園にやって来た。

住宅街の中にひっそりとある、小さな公園である。

二人で、息が合わさったかのように、ブランコに乗った。

「ついこの間まで、真希も砂遊びに夢中になってたと思うのになぁ!
時間が経つのは早いもんだな!」

「うん。」

キーコ、キーコとブランコの揺れる音だけが、夜の閑静な住宅街に響き渡る。

⏰:09/01/22 22:23 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#143 [ぎぶそん]
「…真希は将来、どんなお婿さんを連れて来るんだろうなぁ?」

「その前に、恋愛が出来るのかどうかが問題だよね。」

「今、学校で気になる人とかいないのか?」

「んー…、うん。」

⏰:09/01/22 22:32 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#144 [ぎぶそん]
「あっ、お父さんと正反対な人ならいるよ。」

「んん!?それはかっこよくなくて、運動オンチで、勉強が出来ない男か!?」
「ううん。落ち着きがあって、賢くて、大人な人ー。」

クスクスと笑う私。

こうして父をからかうのが、私たちの間では時々交わされるやり取りになっている。

⏰:09/01/22 22:42 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#145 [ぎぶそん]
「真希。」

「…何?」

「父さんはな、いつまでも真希には自分だけの娘でいてほしいが、父親こそ娘の幸せを願わなくちゃな。

現に父さんと母さんも、若い内に籍を入れたし。」

「…うん?」

⏰:09/01/22 22:48 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#146 [ぎぶそん]
「父さんは、真希が『この人!』って決めたのなら、文句は言わないから!」

「うん。」

「真希、母さんがいなくて、寂しい思いばかりさせてごめんな。

でも、決して母さんは責めないでやってくれ。
そのかわり、父さんは思う存分責めていいから。

真希、絶対に幸せになれよ!って、まだ高校生にこんな話は早いか。」

「お父さん…。」

⏰:09/01/22 22:55 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#147 [ぎぶそん]
「よーし、そろそろ帰るか。
ドラマが始まる。」

腕時計で時間を確認した父が、ブランコから降りる。
「今日はお月様が真ん丸だなぁ。」

夜空にある、黄金の物体を指を指す父。

「うんっ。」

今日はいい夢が見れそうだ―

⏰:09/01/22 23:32 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#148 [ぎぶそん]
それから家までの道のりを、父の一歩後ろから歩く私。

父の広い背中に、これまでの苦労と努力と、たくましさを感じた。

「…結婚するなら、お父さんみたいな人かな…。」

「ん?何か言ったかー!?」

「なーんでもない。」

お父さん、私、絶対幸せになる―

⏰:09/01/22 23:34 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#149 [Gibson]
*名前を気分でローマ字にさせて頂きますm(__)m

今日は寝ます☆
もしよろしければ、こちらに遊びに来て下さい\^ヮ^/
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4172/

また明日更新します(^^)q

⏰:09/01/22 23:47 📱:SH705i 🆔:NxZoRz9Q


#150 [Gibson]
それは6月の、梅雨の時期真っ只中のことでだった。

「…38度4分。
完全に熱だな。」

「…。」

朝起きると、すさまじいほどの体の怠さを感じた。

「今日は学校、休みだな。」

寝ている私の額に、手を当てる父。

⏰:09/01/23 13:03 📱:SH705i 🆔:xMFSml2U


#151 [Gibson]
「…はあ、心配だな。
こりゃ、一人にさせられないわー。」

「何言ってるの。
仕事に穴開けるなんてダメだよ!?
私なら大丈夫だから、今日は薬飲んでずっと家で寝ておく。」

私は出来る限り、平気な風に振る舞った。

「ごめんな、真希…。」

⏰:09/01/23 13:07 📱:SH705i 🆔:xMFSml2U


#152 [Gibson]
カチカチカチ…―

壁掛け時計の、規則正しく刻む音だけが室内で聞こえる。

私は瞼を閉じて、ひたすら眠り込む体制になっている。

先程、エリから欠席を心配するようなメールが届いていた。

⏰:09/01/23 13:21 📱:SH705i 🆔:xMFSml2U


#153 [Gibson]
熱を出したのは、記憶では中学一年が最後だった。

小学校低学年の時は、体調が悪くなったら、父が仕事を休んで病院に連れていってくれたり、看病してくれたりしていた。

父の実家は、遠く離れた県外にある。
だから私は、祖父や祖母に会ったことは、二・三度くらいしかない。

頼りになるべき肉親がそばにいなくても、父は近所の人も全く当てにしなかった。

なるべく、親としての役割を果たしたかったのだろう。

⏰:09/01/23 13:34 📱:SH705i 🆔:xMFSml2U


#154 [Gibson]
小さい時は病気の時に付き添ってくれる有り難みに気がつかなかったが、
大きくなるにつれて、次第に申し訳なく感じた。

会社の人に、悪いように思われたりしていないかとか、会社を首になったりしたらどうしようとか。

それからは意識して、健康管理には心を配ってるつもりであった。

しかし、今回はちょっとした自分の不注意で、高熱を発生させてしまった。

でも大丈夫だ。
私も一人でいても特に不自由ない年齢になったから。

⏰:09/01/23 13:47 📱:SH705i 🆔:xMFSml2U


#155 [Gibson]
「…お母さん、今自分を悪く思ってる?…」

窓の外に目をやり、梅雨の最中の、灰色のじめじめとした景色に向かって問い掛ける。

―そばにいてあげられなくて、ごめんなさい―

病気になる度に、そんな言葉を何度も叫ばれているような気持ちになる。

「…お父さんもお母さんも、全然悪くないよ…。」

⏰:09/01/23 14:02 📱:SH705i 🆔:xMFSml2U


#156 [Gibson]
ピンポーン、ピンポーン―

「…ん…。」

ずっと寝ていたが、夕方近く家の呼び鈴の音で目を覚ました。

ベッドから起き上がり、Tシャツにジャージと部屋着の格好のままで、玄関のドアを開けてみた。

⏰:09/01/23 14:09 📱:SH705i 🆔:xMFSml2U


#157 [Gibson]
「…えっ…!」

そこにいたのは、男友達の優平だった。

「エリから休んでるって聞いて。
皆で押しかけるのも迷惑だろうからって、俺が代表して見舞いに来た。」

いつも学校で見ている優平が、そっくりそのまま家の前にいる。

突然の訪問に、私は驚きを隠せなかった。

とりあえず、彼を家に入れた。

⏰:09/01/23 14:16 📱:SH705i 🆔:xMFSml2U


#158 [Gibson]
初めて上がった私の家に、若干キョロキョロと辺りを見渡す優平。

「真希が熱なんて珍しいな。
はい、これ今日配られたプリント類。」

「ありがと。」

彼に差し出されたものを、受け取る私。

「今日ちゃんと食べた?」

「んー…ううん。」

⏰:09/01/23 14:27 📱:SH705i 🆔:xMFSml2U


#159 [Gibson]
「じゃあ、今からこれ剥いてあげるから。台所借りていい?」

彼が右手に握りしめている、スーパーの袋を掲げる。

いくつかの赤く丸々とした球体が、かわいらしく透けて見えていた。

そして、彼は袋を一旦キッチンの上に置くと、「とりあえずゆっくり寝てて」と言いながら、後ろから私の背中を押す。

⏰:09/01/24 00:57 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#160 [Gibson]
私は誘導されるがまま、リビングのソファーに横になることにした。

我が家はダイニングキッチンの造りになっているので、彼からも自分からも、目の届きやすい位置にいることになる。

「優平、今日の部活は?」

「早くに上がって来た。」

壮快に切れるりんごの音を挟みながら、彼と会話をする。

⏰:09/01/24 01:18 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#161 [Gibson]
サッカー部の練習は、いつも暗くなるまでやっていると聞いている。

きっと彼は、今日は私の見舞いの為に途中で切り上げてきたのだろう。

申し訳ないという思いに駆られようとした時、

「エリは料理出来ないし、元基の元気さは病人にとっちゃ、かえって煩わしいだけだし。
だから俺が来た。」

と、彼が私の気持ちを察したかのように、細かい訳を冗談混じりに話してくれた。

玄関の前で言っていた"代表"の意味を、そこで理解した。

⏰:09/01/24 02:01 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#162 [Gibson]
細かく切ったりんごを乗せた皿を持ち、彼が寝てる私の目の前に、しゃがみ込んできた。

「はい、どうぞ。」

上体を起こし、彼に差し出されたフォークで一つずつ口に入れる。

痛くて渇いた喉に、りんごの水分が程よく吸収される。

⏰:09/01/24 04:06 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#163 [Gibson]
「…今みたいに、病気になった時は大変そうだな。」

ついさっきまで看病なしで過ごしていた私を、彼が気の毒そうな眼差しで見つめる。

その綺麗な瞳が、ほんの微かに湿り気を帯びる。

「別に何ともないよ。」

無表情のまま、次のりんごを口に運んだ。

何故、自分が人に冷めた印象をよく持たれるか、一番理解できる瞬間だ。

⏰:09/01/24 04:34 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#164 [Gibson]
「…さっきの言葉、気に障ったのならごめん。

でも俺、真希の家庭環境を不幸せだとか思ったことは一度もないよ。

家のことはいつも、生き生きとした表情で話してくれるし。」

彼が軽やかな手先で、りんごの欠片を一つ摘んだ。

父のことはいつも、「うざい」「恥ずかしい」などの表現で紹介しているつもりだったが、
それが愛情と信頼の裏返しだということを、
今ここにいる彼は読み取っていてくれていたらしい。

⏰:09/01/24 05:26 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#165 [Gibson]
その次に彼は皿をテーブルの上に置き、腰を上げた。

リビングの隅に向かい、棚の上に飾ってある、白い写真立てを手に取る。

幼稚園の頃、父とラベンダー畑に行った時の瞬間が収められている。

一面紫の花に囲まれて嬉しそうな私を、満面の笑みで抱き抱えている父。

⏰:09/01/24 06:48 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#166 [Gibson]
「…真希は本当に、大事に育てられてきたんだなぁ。」

写真の中の二人に向かって、彼が微笑む。

「俺ん家って無駄に広くてさ、形式や建前気にして、何か全体的によそよそしいんだよね。

親や兄弟より、使用人と多く接してきた気がする。」

ハハハ、と目を細めて笑う優平であったが、寂しさを押し隠すような、そんな表情にしか見えなかった。

⏰:09/01/24 13:25 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#167 [Gibson]
優平の父は、歴代が設立した会社の社長を務めており、桜井家は由緒正しい家柄だという噂を、ちょくちょく耳にしたことがある。

彼が私やエリらを家に一度も招かないのは、そんな部分に対して、自分と距離を感じて欲しくないからであろう。

繊細さ故、彼も何か思う部分があったということを、今日ここで初めて知った。

⏰:09/01/24 13:45 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#168 [Gibson]
「あっ、俺さっきから病人の前で喋り過ぎだよな。
これじゃ元基のこと、悪く言えないわ。」

写真立てを元の位置に戻し、再びこちらに来て屈む。

「早く良くなれよ。」

優平が、私の左手を両手で取る。
その手のひんやりとした感触が、熱を冷ましてくれるようで心地よかった。

⏰:09/01/24 13:58 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#169 [Gibson]
「俺、お前の母さんの分まで、ずっとそばにいてやるから。」

「え…?うん…。」

「俺、いなくなったりしないから。」

「うん、うん…。」

彼の真摯な姿勢と眼差しが、私の心一点を射る。

その雄々しい態度に、彼もまた一人の男の子だということを、改めて認識する。

⏰:09/01/24 14:18 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#170 [Gibson]
安心感から、目を閉じもう一度眠ろうとする私。

優平はその名の通り、心優しい少年である。

クラスの委員長には、真っ先に選ばれるタイプで、
周りの世話を焼いたり、統率をするのが上手な人間だ。

でも、今私に注いでくれてる温かさが、義理な人情とは別物であってほしいと、独占欲に似た感情で願った。

⏰:09/01/24 14:32 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#171 [Gibson]
次に目を覚ましたのは、夜の8時前だった。

「…。」

直ぐさま視界に映った優平は、右手は私の手を握ったまま、ソファーにもたれ掛かって寝ていた。

寝息一つも聞こえないほど、静かに眠っている。

⏰:09/01/24 16:08 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#172 [Gibson]
髪は耳に掛けられるほどの長さで、艶がいい。
睫毛も長くて、女の子みたいだ。

彼のファンだと総称している子たちは、陰で彼を「王子」と呼んでいるとか。

今こんなに至近距離で、私が彼の眠りを見届けていると知ったら、彼女たち、どう思うかな。

⏰:09/01/24 16:19 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#173 [Gibson]
トクン、トクン、トクン―

自分の心臓が、熱を増して徐にリズムを奏でる。

全身の怠さなら、二度ほどの睡眠で十分なくなっている。

何だろう、この感じ―

優平、今日はわざわざ私の為に来てくれて、ありがとう。
目を閉じた彼に、微笑みを返した。

⏰:09/01/24 16:36 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#174 [Gibson]
ピクリとも動かない彼を、まじまじと目を動かして観察する私。

ドサッ。

その途中、大きな物音がしたので、不意を突かれたと同時に、音のする方向に目を向けた。

そこには、慌ただしく血相を変えた父の姿が。

彼の真下には、スーパーの袋が落ちている。

「高校生での男女不純交際禁止ー!!」

⏰:09/01/24 16:50 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#175 [Gibson]
父の大声で、優平も何事かと飛び起きた。
その後、二人で事の経緯を説明する。

「ごめんごめん。君が桜井くんか。話なら真希からよく聞いているよ。」

彼の存在が分かると、すぐに落ち着きを取り戻した父。
この楽観的な性格が、少し羨ましい。

「すみません、見舞いのつもりが、いつの間にか寝てしまって…。」

⏰:09/01/24 17:51 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#176 [Gibson]
「お父さん、真希のお母さんに挨拶してもいいですか?」

「ん!?おう。」

父が彼を、母の仏壇がある、和室へと案内する。
私も、二人の後ろを着いて歩く。

和室に入ると、仏壇の前で正座をし、深々と一礼をする優平。

お母さん、私にはこの人がいるから大丈夫だよ―

成長しきった男の子の背中を、ずっと見ていた。

⏰:09/01/24 18:24 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#177 [Gibson]
次の日になると体温も平熱を取り戻し、通常どおり学校に通う。

「…日本史の教科書忘れた…。」

休み時間に次の授業の準備をしていると、忘れ物をしていることに気づいた。

元基に借りるか、と思ったが、確か彼のクラスは地歴科目は世界史コースだ。

優平の所は日本史コースだったことを思い出し、少しクラスが離れているが、彼から借りることにした。

⏰:09/01/24 18:42 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#178 [Gibson]
違うクラスを訪ねる時は、いつも入りづらい空気が漂ってる気がする。

開いているドアから、教室内を覗いてみる。
席に座っている優平が、彼の元に来た女の子に、勉強を教えていた。

「…。」

「あ、真希!
もう熱下がったか?」

私の気配に気づくと、彼がいつもの笑顔で声をかけてきた。

⏰:09/01/24 18:54 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#179 [Gibson]
「あっ、竹下さん!
日本史の教科書持ってる?」

優平を無視し、たまたま近くを通りがかった竹下さんの元に行った。

何やってるんだろう、私…―

予定とは異なり、教科書は竹下さんから借りることになった。

⏰:09/01/24 21:30 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#180 [Gibson]
次の授業が始まり、教壇に立つ先生が、頭の血管が切れそうな位、熱く生徒たちに教える。

その言葉も上の空で、先程の自分の行動を思い返す。

優平に悪いことをしてしまった、という気持ちの他に、言葉に表せない何かがある。

昨日から、彼の安心しきった寝顔が焼きついたままだ。

昨日の彼の訪問は、少なくとも私にとって、特別な時間と呼べていた。

⏰:09/01/24 22:23 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#181 [Gibson]
昼食時間、弁当を食べながら、エリにこの胸のわだかまりを打ち明けてみることにした。

「ま、真希…!それって…!」

目を大きく見開き、あんぐりとした口で固まったままのエリ。

「何!?何なの?」と、私は話の続きを催促した。

「ううん、何でもない!
まあ、答えはいつも自分の中にあるから!」

私の気持ちとは裏腹に、彼女は言葉を濁した。

⏰:09/01/24 22:49 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#182 [Gibson]
「でも、真希のお父さんと優平って似てるよねー!
いつも子供の世話するみたいに、『真希、真希』ってさー!
真希ももうちっちゃくないのに。」

ケラケラと笑うエリ。

「…。」

言われてみればそうかも―

⏰:09/01/24 22:58 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#183 [Gibson]
掃除時間も、午後の授業の時も、エリが言った台詞の続きを考えていた。

そして放課後。
パンクしそうな頭を一旦冷やす為、ジュースを買うことにした。

自販機に向かい廊下を歩いていると、後ろから誰かに腕をぐいと引っ張られた。

「あ…、もしかして怒ってる?
昨日は結局、中途半端な見舞いしちゃったから。」

優平だった。

⏰:09/01/24 23:07 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#184 [Gibson]
「…今日、一緒に帰ろ。」
彼の言葉をまたもや無視し、私はこんなことを言った。
私から何かを誘うのは、今までなかった。

「ん!?いいけど、俺部活で遅くなるよ?」

「平気、待ってる。」

⏰:09/01/24 23:18 📱:SH705i 🆔:rMw4yosg


#185 [Gibson]
今日は図書館で勉強するから、門限より少し遅くなると父に連絡を入れておいた。

校門の前で、ひたすら優平を待つ。
次第に辺りがどんどんと暗くなる。

「答え、答え…。」

彼が来るまでに、見つけようと頑張ってみる。

「うーん…。やっぱりわかんないや…。」

⏰:09/01/25 02:33 📱:SH705i 🆔:arpSz.qI


#186 [Gibson]
「お待たせ。」

8時過ぎ、息を切らしながら、部活を終えた優平が現れた。

彼はいつもは、同じ部活仲間の元基と帰宅しているとのことだが、今日は二人で帰りたいと私が要求した。

親しい間柄ではあるが、慣れないシチュエーションに、新鮮味を覚える。

⏰:09/01/25 02:39 📱:SH705i 🆔:arpSz.qI


#187 [Gibson]
同じ帰り道の、小洒落た大通りを歩く。
ぽつぽつと立つ街灯のオレンジが、淡く街を照らす。

沈黙の雰囲気の中、私たちの目の前を、小さな女の子を母親が手を引いて歩いていた。

通り過ぎる瞬間、「お兄ちゃん、ばいばい。」と、女の子が優平に手を振った。
「おう。」と、手を振って返す優平。
ちらりと見た横顔は、混じり気のない笑顔をしていた。

⏰:09/01/25 02:51 📱:SH705i 🆔:arpSz.qI


#188 [Gibson]
トクン、トクン、トクン―

昨日、彼の寝顔を見た後と、同じ鼓動が押し寄せる。

『恋する機会ってね、誰の前でも現れてくれると思う。
でも、それは本当に突然の出来事なんだ。』

以前、ますちゃんがこんなことを言っていたのを、突然思い出した。

…―

⏰:09/01/25 03:04 📱:SH705i 🆔:arpSz.qI


#189 [Gibson]
「そういえば、今日誘ったのって何か用事あったからとか?
もしかして、嫌な事でもあった!?」

優平が、不思議そうな心配そうな顔をして言う。

「えっ…。えっと…。」

私、何であの時、一緒に帰ろうって言ったんだろう。
何か、気がついたら言葉が出てた―

⏰:09/01/25 03:13 📱:SH705i 🆔:arpSz.qI


#190 [Gibson]
『「会いたい」って気持ち!これが恋よ!』

エリが前に言ってた台詞が、脳裏に反響する。

私は、優平と話がしたかった。
私は、優平の笑顔が見たかった。
私は、優平に会いたかった。

口には出さずとも、頭の中では、色んな欲望が交錯しているのを隠せなかった。

トクン、トクン、トクン…―

⏰:09/01/25 03:23 📱:SH705i 🆔:arpSz.qI


#191 [Gibson]
ふと歩く先に、ベーカリー屋が見えた。

店の前で立ち止まり、店内を見渡す私。
閉店間際とあってか、ほとんどの種類のパンが売り切れてた。

2・3個まで残っている、好物のメロンパンを眺める。

「どうした?」と、優平が尋ねてきた。

⏰:09/01/25 03:33 📱:SH705i 🆔:arpSz.qI


#192 [Gibson]
「…優平って、メロンパンに似てるよね。」

「へ!?」

「時々苦いの。」

「何だそれ?」

私はキョトンとしている彼の目を見て、この上なく微笑んだ。
父にも見せたことがない、とびきりの笑顔を見せたと思う。

⏰:09/01/25 03:37 📱:SH705i 🆔:arpSz.qI


#193 [Gibson]
恋という感情。
それは、一言でも四百字の原稿でも、上手く表現しきれないもの。

…そうなんじゃないかな?

そして、その答えや結論は人それぞれ。

雨宮真希、17歳。
これから私なりの恋愛論というものを、ゆっくりと見つけていきます。

…少し前の自分よりは、見つかりそうな気がします。

Chapter02 END.―

⏰:09/01/25 03:49 📱:SH705i 🆔:arpSz.qI


#194 [Gibson]
Chapter03
「居候」

⏰:09/01/26 00:05 📱:SH705i 🆔:keS1jVx2


#195 [Gibson]
青葉が生い茂り、カラッと晴れた天候が続く。

帰路の坂道を上りながら、滴り落ちる汗をハンカチで拭う。
夏の日射しが、容赦なく全身をうだらせる。

7月初旬。
後一ヶ月も経たない内に、夏休みが始まる。

今年は一体、どんな思い出が作れるかな―

⏰:09/01/26 00:15 📱:SH705i 🆔:keS1jVx2


#196 [Gibson]
学校から帰宅すると、玄関先にダンボールが2・3箱積まれてるのに気づく。

父が珍しく通販でも頼んだのかなと、特に気に止めなかった。

次に廊下を歩くと、今度はドアの隙間から、リビングの明かりが漏れていた。

父がつけっぱなしのまま、会社に行ったのだろうか。
無用心だ。

⏰:09/01/26 00:32 📱:SH705i 🆔:keS1jVx2


#197 [Gibson]
リビングに近づいてみると、明かりだけではなく何か音も聞こえる。
おかしさと不自然さが、今日の家には漂う。

慎重にドアを開けて、恐る恐る室内に入ってみる。

そこには見たことのない20代位の若い男が、TVゲームをしていた。

この辺は住宅地が密集している。
新手の空き巣だろうか!?

恐怖で頭の中が混乱する。

⏰:09/01/26 00:45 📱:SH705i 🆔:keS1jVx2


#198 [Gibson]
その時、空の空き缶が入った袋に、無意識に当たって軽く蹴ってしまった。

その音で、男が私の気配に気づく。
しまった、と思った。

「あ、おかえり!」

自分の家であるかのように、馴れ馴れしく挨拶する男。
その上、屈託のない表情をしている。

「…どっ、泥棒!!」

何をされるか分からない、ぶるぶると震える全身。

⏰:09/01/26 01:02 📱:SH705i 🆔:keS1jVx2


#199 [Gibson]
「ただいまー!
おっ真希、今日は早いな。」

スーパーの袋を両手いっぱいに掲げた父が、そこでタイミング良く帰宅してきた。

そういえば今日の朝、有給休暇が取れたって言っていたのを、寝ぼけたままの頭で聞いたような。

「お父さん、変な男が家に…!」

我が家でくつろぐ男を指差す。

⏰:09/01/26 01:16 📱:SH705i 🆔:keS1jVx2


#200 [Gibson]


「…と言うことで、しばらくウチで預かることになった、古沢東吾くんだ!

ハハハ、驚かせてすまん。
知らせるのは、真希が帰ってからにしようと思って。」

「よろしく、真希ちゃん!
何も盗ったりしないから!」

さっきの私の取り戻し様が可笑しかったのか、二人がげらげらと笑う。

父と二人暮らしだった家に、突然降ったように現れた居候。
これからどうなるのやら…―

⏰:09/01/26 01:32 📱:SH705i 🆔:keS1jVx2


#201 [Gibson]
父の話によると、同じ会社に、海外で生計を立てるのを長年夢としていた人がいて、そして今日、夫妻で異国の地に旅立った。

非常にお世話になった先輩らしいので、率先して一人息子さんの面倒を、自分が引き受けたらしい。

そんなことで、今日から一緒に住むことになった東吾さんは、私立大学の一年生。

薄い顔に、茶髪の短い髪。
へらへらとした表情が、きっと賑やかな人だと想像させる。

⏰:09/01/26 01:50 📱:SH705i 🆔:keS1jVx2


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