冷たい彼女〔続編〕
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#201 [ゆーちん]
「久しぶりー。」
ちょっと気まずそうに笑った剛さん。
「こちらどうぞ。」
カウンター席に座った佐奈と剛さん。
「この前はごめん。初対面なのに、俺すげぇ格好だったよな。忘れてね。」
そう笑った剛さんの今日の服装は、なんともカッコイイ。
:09/02/03 21:18 :SH901iC :HYcai0m6
#202 [ゆーちん]
お洒落なスニーカー、ズボン、Tシャツ、アクセサリー、キャップ。
佐奈にお似合いの彼氏だ。
この前のタンクトップにパンツ一枚姿は見なかった事にしよう。
凜にも忘れるように言わないと。
:09/02/03 21:19 :SH901iC :HYcai0m6
#203 [ゆーちん]
「何にしますか?」
オーダーを取り、俺はこの前佐奈と話した時のようにわざわざカウンター席の近くで作業した。
「心くん。」
剛さんが俺を呼ぶ。
「はい。」
「今度マジで何かおごるね。」
「いや、お気遣いなく!」
:09/02/03 21:19 :SH901iC :HYcai0m6
#204 [ゆーちん]
凜のように大人な対応をした俺。
ちょっと成長したでしょ?
「いやー、でもやっぱ迷惑かけたし。今日来たのも心くんが暇な日聞きに来たんだよ。」
:09/02/03 21:23 :SH901iC :HYcai0m6
#205 [ゆーちん]
マジっすか?
やっぱり大学生はすごいね。
有言実行かぁ…カッコイイですね、剛さん。
「本当にいいんっすか?」
:09/02/03 21:24 :SH901iC :HYcai0m6
#206 [ゆーちん]
成長したと思ったけど、やっぱりまだまだ甘えちゃう年頃。
いや、ただ単にいやしい奴なのかも。
でもおごりって響きは魅力的だしさ…。
それに、なにより剛さんともっと仲良くなりたいって思った。
:09/02/03 21:25 :SH901iC :HYcai0m6
#207 [ゆーちん]
ファッションセンスや佐奈にはもちろん、俺たちまでへの優しさ。
人として、男としてカッコイイじゃん。
何か…憧れる。
「もちろん。心くん、いつなら暇?」
店内に飾っていたカレンダーを見て、覚えている限りのバイトが休みの日を告げた。
:09/02/03 21:25 :SH901iC :HYcai0m6
#208 [ゆーちん]
剛さんは携帯電話のカレンダーを見て確認している。
「OK。あとは凜ちゃんの都合聞かないとね。」
「凜ちゃんってバイトしてんのー?」
佐奈ちゃんの質問に俺は『していない。』と答えた。
:09/02/03 21:30 :SH901iC :HYcai0m6
#209 [ゆーちん]
凜の家は金持ちで、親から毎月有り余るほどのお金が振り込まれているらしい。
バイトなんかしなくても、凜は好きなように過ごせる。
羨ましい事だよな。
凜はどう思ってるのかは、わかんないけど…。
:09/02/03 21:31 :SH901iC :HYcai0m6
#210 [ゆーちん]
「んじゃ、また行ける日わかったら連絡してよ。調整して、行ける日が合えば飯に行こうな。」
「はい!ありがとうございます!」
約束を交わしたところで、二人のラーメンが出来上がった。
何だかんだで食べ終わった佐奈たちは、またねと言って仲良く帰って行った。
:09/02/03 21:32 :SH901iC :HYcai0m6
#211 [ゆーちん]
佐奈、今日は1杯しか食べなかった。
調子でも悪いのかな?
あ、もしかして剛さんの前だからぶりっ子してるとか?
何だかんだ言って、あいつも女の子なんだなぁ〜。
「江森、何笑ってんだ?」
:09/02/03 21:32 :SH901iC :HYcai0m6
#212 [ゆーちん]
マスターが俺の顔を不思議そうに覗き込んでいた。
「えっ、俺、笑ってました?」
「前にもこんな事あったよな。お前やっぱどっか悪いのか?だったら無理すんじゃねぇぞ?」
「アハハ…大丈夫っすよ。すみません。」
:09/02/03 21:35 :SH901iC :HYcai0m6
#213 [ゆーちん]
そのあとは、きちんと気を引き締めて仕事に取り組んだ。
めり張りは付けないとね。
無我夢中で働いていると、あっという間に上がる時間。
「お疲れ様でした!」
:09/02/03 21:36 :SH901iC :HYcai0m6
#214 [ゆーちん]
店を飛び出し、凜のマンションまで急いだ。
息を切らしながら、インターホンを鳴らす。
「はい。」
「俺。」
:09/02/03 21:36 :SH901iC :HYcai0m6
#215 [ゆーちん]
合い鍵を使わなくても、こうやってインターホン鳴らして入る事を覚えた俺。
つーか普通、こっちが常識だよな。
合い鍵使っていきなり行くのも非常識っていうか…。
島にいた頃は、プライバシーだのマナーだの、そんなの全然考えなかったから、本島に通うようになって改めて気付かされる事ばっか。
:09/02/03 21:37 :SH901iC :HYcai0m6
#216 [ゆーちん]
何が普通で、何が普通じゃないのか。
なかなか難しいよ。
鍵が開き、中に入る。
「どちら様?」
意地悪く笑う凜が出迎えてくれた。
「俺様。」
「つまんない。」
「ウケると思ったんだけどな。」
:09/02/03 21:37 :SH901iC :HYcai0m6
#217 [ゆーちん]
『まだまだ笑いのセンス低いね。』と言った凜は、ソファーに座る。
俺も凜の隣に座った。
「凜ちゃんさ、いつ暇?」
「何いきなり。」
「佐奈と剛さんが今日バイト先に来てくれて、マジでこの前のお詫びにご馳走してくれるんだって。」
:09/02/03 21:38 :SH901iC :HYcai0m6
#218 [ゆーちん]
「本当に?」
「うん。だから俺のバイトが休みの日と凜ちゃんの暇な日を合わせて、剛さんに連絡しないといけないの。」
そういう事か、と納得しながら凜はスケジュール帳を開き、自分の予定と俺のバイトの休みを照らし合わせていった。
:09/02/03 21:39 :SH901iC :HYcai0m6
#219 [ゆーちん]
「この日とこの日なら開いてる。ほら、心もその日は休みだし。」
凜は自分のスケジュール帳と俺のシフト表を指差しながら俺に言ってくれた。
「本当だ。んじゃさっそく剛さんに連絡入れとくねー。」
:09/02/03 21:42 :SH901iC :HYcai0m6
#220 [ゆーちん]
さっき佐奈から送って来てもらっていた剛さんのメールアドレスに、俺と凜の都合のいい日を書いて送信した。
「まさか本当に連れてってくれるなんてねー。優しい人だね、剛さん。」
「だよねー。服装も超カッコイイんだよ?こないだはタンクにパンツ一枚だったけど。」
:09/02/03 21:43 :SH901iC :HYcai0m6
#221 [ゆーちん]
「あぁ、そういえば。」
「あの姿は忘れてって剛さん言ってたよ。」
「でもあの姿の剛さんは印象深いしなぁ。」
「…それもそうだね。」
そんな話をしていると剛さんから返事が来た。
自分の都合と俺たちの都合を上手く調節してくれて、来週会う事になった。
:09/02/03 21:44 :SH901iC :HYcai0m6
#222 [ゆーちん]
凜はさっそくスケジュール帳に書き込んでいた。
俺も忘れないようシフト表に【剛さん】と書いておいた。
「時間とか場所はまた改めて連絡くれるって。」
「わかった。」
また1つ、夏休みのお楽しみが増えた。
:09/02/03 21:44 :SH901iC :HYcai0m6
#223 [ゆーちん]
夏休みはバイト尽くしだけど、もちろん遊びも忘れない。
竜や大輝、他にも同じクラスの奴や島の奴らとも夏を満喫した。
待ちに待った剛さんとの食事会が近付くにつれ、俺のココロが弾んでいく。
:09/02/04 17:48 :SH901iC :LN85bOO.
#224 [ゆーちん]
「それって恋じゃない?」
「え?」
紅茶を飲みながら凜は言った。
「剛さんに惚れた?」
「…そうなのかも。」
「どっか行っちゃえ。」
:09/02/04 17:48 :SH901iC :LN85bOO.
#225 [ゆーちん]
バイト前に凜の部屋に立ち寄った俺。
こうやって冗談言い合って笑い合う時間が幸せだし、日頃のバイト疲れを癒してくれた。
:09/02/04 17:49 :SH901iC :LN85bOO.
#226 [ゆーちん]
「ねぇ。」
「はい。」
「バイトまでまだ時間あるよね?」
全然余裕。
バイトの何時間も前から凜の部屋に転がり込むからね。
「あるよ。」
「ちょっと買い物付き合って。」
:09/02/04 17:53 :SH901iC :LN85bOO.
#227 [ゆーちん]
紅茶を飲み終えた凜は、サッと化粧直しをし、出掛ける準備を始めた。
「どこ行くの?」
「繁華街。明後日、千夏と遊ぶんだけど、千夏もうすぐ誕生日でしょ?だからプレゼント買いたくて。」
「あぁー、そういえば夏生まれだっけ。」
:09/02/04 17:53 :SH901iC :LN85bOO.
#228 [ゆーちん]
同じ島で15年間一緒に育ってきた。
だから誕生日もなんとなくなら覚えてる。
学校の行事として誕生日を祝ったことはあるけど、個人的には祝ってあげたことなんかない。
:09/02/04 17:58 :SH901iC :LN85bOO.
#229 [ゆーちん]
「よし、俺も何かプレゼントをあげよう!」
と、俺の決意を口に出したところで、凜の支度が終わった。
可愛いワンピースがよく似合う。
:09/02/04 18:00 :SH901iC :LN85bOO.
#230 [ゆーちん]
涼しそうな格好。
あんまり肌とか見せないで欲しいんだけど…まぁ凜ちゃんが好きなファッションに文句は言えないもんね。
「戸締まりして。」
「はーい。」
:09/02/04 18:00 :SH901iC :LN85bOO.
#231 [ゆーちん]
二人は慣れた手つきで戸締まりを済ませ、繁華街へと繰り出した。
暑い。
夏の日差しは容赦なく俺らを照らす。
「いや?」
暑いから繋ぎたくないかな、とダメ元で手を差し出すと、凜は何も言わず繋いでくれた。
:09/02/04 18:01 :SH901iC :LN85bOO.
#232 [ゆーちん]
「フフッ。」
「何笑ってんの。暑さで頭おかしくなった?」
「ワッハッハーッ!」
「フッ。壊れた。」
:09/02/04 18:02 :SH901iC :LN85bOO.
#233 [ゆーちん]
太陽が、凜の笑顔が、凜の手の平が、俺のココロをどんどん熱くしていく。
暑いのはいやだけど、夏は楽しい事だらけ。
夏は全然きらいじゃないよ。
:09/02/04 18:02 :SH901iC :LN85bOO.
#234 [ゆーちん]
額に汗が滲み始めた頃、涼しい店内に入った。
汗がサッと引く。
「生き返る〜。」
クーラーの冷たさが、ほてった体を落ち着かせてくれた。
広い店内を見ながら、あれでもないこれでもないと誕生日プレゼントを探す。
:09/02/04 18:05 :SH901iC :LN85bOO.
#235 [ゆーちん]
途中、主旨から脱線して、『心これ似合うかもよ?』と俺の顔にサングラスや帽子を合わせてはしゃぐ凜が、たまらなく可愛いかった。
「あ、これなんか可愛いし千夏に似合いそう!」
いきなり凜が見つけたのは夏らしい水色の花のピアス。
しばらく悩んではいたが、結局ピアスに決定した。
:09/02/04 18:05 :SH901iC :LN85bOO.
#236 [ゆーちん]
「んじゃ、俺はこれプレゼントするわ!」
女の子の好きなものはよくわからないから、凜が選んだピアスによく似た花が付いているネックレスを選んだ。
「え、それにするの?」
「うん。変かな?」
:09/02/04 18:15 :SH901iC :LN85bOO.
#237 [ゆーちん]
「変とかじゃないけど…」
凜が目を伏せた。
あれ?
俺、何かマズイ事でも言った?
明らかに様子が変わり、千夏のプレゼントより、凜の方が気になってしまう。
:09/02/04 18:16 :SH901iC :LN85bOO.
#238 [ゆーちん]
「凜ちゃん、ごめん。俺なんか変な事言った?」
「変な事っていうか…」
「何?言って。」
:09/02/04 18:16 :SH901iC :LN85bOO.
#239 [ゆーちん]
俺は、鈍感な性格だから。
俺は、女心のわからない男だから。
「…私が、やだ。」
「え?凛ちゃんが?やっぱこのネックレスじゃセンス悪い?」
「違う。そうじゃなくって…」
:09/02/04 18:17 :SH901iC :LN85bOO.
#240 [ゆーちん]
俺は…凛のヤキモチになかなか気づけなかった。
困った顔の凛。
困った顔の俺。
困った困ったで睨めっこしてる場合じゃないんだよ。
「そういうアクセサリーとか、他の女の子にあげないで。」
:09/02/04 18:19 :SH901iC :LN85bOO.
#241 [ゆーちん]
小さな声で凛が呟いた。
「え?」
「ヤキモチ妬いちゃう…千夏に。」
「誰が?」
聞かなくてもわかるのに、俺ってば鈍感で女心のわからない奴で…ちょっと意地悪だから。
:09/02/04 18:20 :SH901iC :LN85bOO.
#242 [ゆーちん]
「私が!もう、何でわかんないのかな?」
ごめん、凛ちゃん。
何となくわかってんだけど、凛ちゃんが照れてる姿なんか滅多に見ないから、すっげー可愛く思えてさ。
:09/02/04 18:20 :SH901iC :LN85bOO.
#243 [ゆーちん]
「じゃあ、これならいい?」
ネックレスの変わりに、見つけ出したのは入浴剤。
「これなら消耗品だし、ね?」
:09/02/04 18:21 :SH901iC :LN85bOO.
#244 [ゆーちん]
凛は急に恥ずかしくなったのか、俺の腕を掴んで、耳元で『心、ムカつく。』と言った。
だから俺は笑いながら謝った。
「ヤキモチの妬き方知ってたんだ。」
「…ウザい!」
:09/02/04 18:21 :SH901iC :LN85bOO.
#245 [ゆーちん]
「アハハ。可愛いね〜凛ちゃんは。」
「もう、ムカつく!鈍感すぎ!」
「ごめんね。心配しなくても俺は凛ちゃん以外の女の子なんか興味ないから。」
:09/02/04 18:22 :SH901iC :LN85bOO.
#246 [ゆーちん]
「それはそれで困る。」
「えぇ〜。」
ちょっぴり不機嫌な凛を家に送り届けてから、バイトに行く。
:09/02/04 18:22 :SH901iC :LN85bOO.
#247 [ゆーちん]
バイト中、またマスターに熱でもあるのか?と不思議がられた。
どうやら俺はニヤニヤしていたらしい。
:09/02/04 18:23 :SH901iC :LN85bOO.
#248 [ゆーちん]
だってさ、嬉しいじゃん。
凛ちゃんがヤキモチだよ?
鈍感な俺も悪いかもしれないけど、ヤキモチだってわかったときは涙が出るほど嬉しかったんだよ。
:09/02/04 18:24 :SH901iC :LN85bOO.
#249 [ゆーちん]
でも俺は泣かなかった。
どう?
ちょっとは大人になったでしょ?
:09/02/04 18:24 :SH901iC :LN85bOO.
#250 [ゆーちん]
そんな、幸せいっぱいの俺と、照れまくってた凛が、剛さんと佐奈との食事会を当日に迎えたのは3日後の事だった。
「今日は本当にありがとうございます。」
凛が剛さんに頭を下げると、『いやいや、こないだのお詫びだから頭なんか下げないでよ!』と自分も頭を下げていた。
:09/02/04 18:26 :SH901iC :LN85bOO.
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