2006,夏恋
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#27 [主]
9回裏…5対4であたしの学校は勝っていた。

この回を抑えれば、ベスト16入りとなる。

エースは中村達也

かっこいいがクールで無口だと、あたしの学年で有名だ。

同じ年でエースだから評判もよく、ファンもそこそこ。
キャーキャー黄色い声援がとぶ中、あたしは目をつぶった。

⏰:07/01/07 02:08 📱:N701i 🆔:s.uGeus6


#28 [主]
"お願いです、神様。中村くんが点をとられませんように…"

自分でも似合わないことをしたなと思う。

あたしはこんな可愛いキャラじゃなく、普段なら暑さのほうが気になってこんなに集中して見ていないだろう。
なぜこんなにも中村くんに感情を思い入れたのか、今でもわからない。

⏰:07/01/07 02:12 📱:N701i 🆔:s.uGeus6


#29 [主]
「三振、バッターアウトっ」

うわああああ…!!

歓声と共にあたしの目から一粒、一粒と涙がこぼれる。

自分でもよくわからない。
そしてあたしが我に戻ったのは、加奈の泣き声が聞えたからだった。

「うっ、ひっく…」

「ちょっ、加奈!?何泣いてんの?」

⏰:07/01/07 02:19 📱:N701i 🆔:s.uGeus6


#30 [主]
「南が泣いてたからだよお…。加奈もらい泣きしちゃったじゃんっ」

あたしは泣きながら加奈の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。

加奈はやめてと笑いながらにげる。そんな姿が可愛く、うらやましかった。


そして、あたしたちは抱き合って喜んだ。まだ甲子園に行くとは決まってないのに、バカみたい

と、加奈と泣きながら笑い合った。

⏰:07/01/07 02:29 📱:N701i 🆔:s.uGeus6


#31 [主]
「みーなーみっ」

「………。」

あたしはまた加奈の声で我にかえった。

加奈はどうしたの?と聞いてきたが、あたしはあえて口にせず

「なんでもないよ」
とかるく返事をした。

⏰:07/01/07 02:34 📱:N701i 🆔:s.uGeus6


#32 [主]
そして、去年の夏はベスト16入りしたまま
野球部は幕を閉じた。

長い長い、夏だった。

中村くんはあのとき以来、あまり目にしていない。

たまに廊下で会うが、知り合いでもないあたしたちは何も話さないのが現実。

別にあたしは中村くんのことを好きでもないし、中村くんはあたしの存在すらしらないだろう。

⏰:07/01/07 02:39 📱:N701i 🆔:s.uGeus6


#33 [主]
それを考えると少し淋しくなるが、恋心を持たなかったことには感謝している。

中村くんはあたしの存在をしらないのだから。


手にとった野球ボールをみつめ、去年の夏を思い出したあたし。

なんだか、所帯染みたような気がするのは気のせいかな?

⏰:07/01/07 02:51 📱:N701i 🆔:s.uGeus6


#34 [主]
「ごめん」

と走ってきたのは、坊主頭。

加奈が「あっ」と声をあげたのは聞き間違いだろうか。

「ん?加奈どうした?」

あたしは野球ボールを走ってきた人に渡し、加奈をみた。
加奈は「なんでもない」といい下をむいた。あたしはわけもわからず、前を向くと

さっきの人はもういなくなっていた。

⏰:07/01/07 02:55 📱:N701i 🆔:s.uGeus6


#35 [主]
蒸し暑い風が、涼しい午後の風に変わった。

時計を見るともうすぐ1時。チャイムが鳴る時間


あたしはコロッケパンの入っていた袋をクシャッとつぶし、その場から立った。
「ほら、加奈もお弁当箱かたして。あたしいくよ?」

⏰:07/01/07 03:01 📱:N701i 🆔:s.uGeus6


#36 [主]
「あのね…南。さっきの人」

キーンコーン…。

加奈が言いかけたときに、タイミング悪くチャイムが鳴った。

加奈は慌ててお弁当箱をかたして、立ち上がり
スカートについたほこりをパンパンっとはらう。

「さっきの人…の続き言ってよ。気になって授業に集中できない」

ざわざわとうるさい昼休みの雰囲気も一気に消え、シーンとした空気が耳鳴りになって聞える。

⏰:07/01/07 03:13 📱:N701i 🆔:s.uGeus6


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