もう二度と・・・
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#1 [林奈]
『誰にでも幸せになる権利がある』
そう教えてくれたのは、あなたでした。もう二度と間違いを起こさない。
あなたのために。
:07/03/28 20:08 :W43CA :☆☆☆
#2 [林奈]
うちが生きてきた中で、この手につかんだ苦しみや悲しみ。そして絶望から幸せまでのたくさんの感情を、記したいと思います。
下手な文章ですが、荒らしは勘弁してくださいm
:07/03/28 20:11 :W43CA :☆☆☆
#3 [林奈]
12歳。小学6年。その時から家庭の中で音もなく崩れていった。
うち、兄、母、父、祖父に祖々母。計6人家族。お金持ちではないけど、特に問題ない家族。うちはそう思ってた。
けど、小学6年、二つ上の兄が学校に行かなくなった。
その頃から、間違いなく崩れていった。
:07/03/28 21:01 :W43CA :☆☆☆
#4 [林奈]
原因は分からない。仲のいい友達も見に来てくれてたのに、学校には行かない。そんな兄を、母は焦ってた。焦りをどこにぶつけていいか分からず、うちに当たる毎日。
けどうちは、母も兄も“かわいそう”なんだって子ども心に思ってたんだ。
:07/03/29 18:21 :W43CA :☆☆☆
#5 [林奈]
父は見て見ぬふり。厳格な祖父や祖々母はそんな兄を叱るだけ。
うちはそんな家族を、“第三者”のような目で見てた。
そして中学に入り、そんな兄を知られたくなくて、うちは友達にも兄は遠くにていないと嘘ついた。それが友達についた最初の嘘だった。
:07/03/29 21:36 :W43CA :☆☆☆
#6 [林奈]
遅くなりましたが、うちの名前は“林奈”偽名です。他の人の名前も偽名にしますのでご了承ください。
友達はみんないい子で、うちを慕ってくれてた。
いつからだろう。そんな周りがうっとうしく感じるようになったのは・・・。
相変わらず家はいつも重い雰囲気。そんなストレスを発散するのは学校だった。
:07/03/30 13:11 :W43CA :☆☆☆
#7 [林奈]
バカ騒ぎして勉強もしない。先生からもよく叱られてばかり。うちといつも一緒にいた、“亜由美”も“涼子”も同じ。うちらはそんな毎日が楽しかった。
:07/03/30 13:48 :W43CA :☆☆☆
#8 [林奈]
けど1年経っても兄の状態は変わらなかった。母は毎日のようにうるさく言う。そのうち兄が中学卒業。兄の強い希望で、高校進学はしなかった。
きっともうどうでもよかったんだと思う。15歳にして、兄は自分の人生を諦めてた。
うちはそれが何だか悲しくて仕方なかったんだ・・・。
:07/03/30 23:44 :W43CA :☆☆☆
#9 [林奈]
そして母はそのイライラをうちに、“暴力”という形でぶつけてきた。
「あんたのせいだよ!あんたが頭悪いからお兄ちゃんにプレッシャーがいって、おかしくなったんだよ」
意味の分からない理由ばかり並べてきてはうちを叩いた。
顔じゃなく、お腹とかに。
うちはだんだん自分のいる世界が何なのか分からなくて、しかもまだ中2の自分に、“自由”なんてモノはないから、ただひたすらに耐えてた。
:07/03/31 04:13 :W43CA :☆☆☆
#10 [林奈]
祖父も祖々母もうちはあまり可愛くないらしい。勉強ができる兄ばかり昔から可愛がってた。だから、うちが母に叩かれても知らん顔。もちろん父もだ。
それでもうちは何とも思わない。いや、思うのが怖かった。できなかったんだ。
:07/03/31 04:16 :W43CA :☆☆☆
#11 [林奈]
現実から目を反らす事を覚えた。
まだ14歳なのに。
そんな現実を考えたくないから、うちはめいいっぱいバカ騒ぎしてた。次第に帰るのが夜になり、それでも親は何も言わない。
その時思ったんだ。
『うちはいらない子なんだね』って。
みんな兄ばかり心配して、うちの存在を忘れてない?
何度も聞きたくなった。けど、できなくて、寂しくて・・。
:07/03/31 04:22 :W43CA :☆☆☆
#12 [林奈]
そんな生活の中、涼子に初の彼氏ができた。
「林奈!うちね、彼氏できたんよ」
「まじで?おめでとう!誰なん?」
「3組の前田くん。告られた!でね、カッコいいから付き合ったんよ」
羨ましかった。彼氏がいれば、彼氏に夢中になれるのに。
うちは切実に思ってた。
:07/03/31 04:28 :W43CA :☆☆☆
#13 [林奈]
涼子は前田くんとの時間を大切にするようになってた。亜由美もうちも、そんな事何とも思わなくて、涼子の幸せそうな顔を見るのが嬉しかった。まだケイタイがなかった。だから家電での会話、登下校のデートがすごい楽しいらしい。
「うちらも早く彼氏ほしいね」
亜由美と何度言い合ったかわからない。
:07/04/01 09:27 :W43CA :☆☆☆
#14 [林奈]
夏休みに入り、家にいる時間が多くなった。夜中まで起きて昼まで寝てる。そしてまた家族の中で変化が起きてた。
母が昼間いない。うちは働き始めたもんだと思ってた。
:07/04/01 09:47 :W43CA :☆☆☆
#15 [林奈]
けど祖父が言った。
「またパチンコか」
「パチンコ行ってるの?」
「知り合いが見たってよ。お前の母親はとんでもないな」
少しショックだった。ギャンブルに対していいイメージなんてないからショックだったんだ。
:07/04/01 10:09 :W43CA :☆☆☆
#16 [林奈]
母が帰ってきて問い詰めた。すると母はうちに言う。
「あんたに関係ないでしょ!お母さんだってイライラするんだわ」
“かわいそうな人”うちはふいに思ってた。母のギャンブルが悪い方向に向かなければいいけど。うちは何か嫌な予感がしてた。
:07/04/01 18:02 :W43CA :☆☆☆
#17 [林奈]
そのあとすぐに、物を投げてきた。思いきり腕にテレビのリモコンが当たった。リモコンなのに痛くて少し涙目になるうちに母はまた冷たく言い放った。
「あんたさえいなければね、こんなにイライラしんわ」
“やっぱり自分がいない方がいいんだ”
確信した。
:07/04/02 23:08 :W43CA :☆☆☆
#18 [林奈]
次の日、うちは家出した。
“どうせ心配なんてするわけない”
そう思うのと同時に湧いたほんの少しの希望。
“もしかしたら探すかも”
うちは亜由美の家に転がり込んだ。亜由美の家はお母さんだけ。うちはそれをいいことに、しばらく家に帰らないと決めたんだ。
:07/04/02 23:32 :W43CA :☆☆☆
#19 [林奈]
亜由美はうちがいることを喜んだ。そして遊びまくって、夜中に帰る毎日。お金なんてない。だから駅前を毎日うろついてナンパしてくるヤツらについていってた。
警戒心なんてない。何か起きるかもしれない。そう思うだけでワクワクしてた。
:07/04/02 23:36 :W43CA :☆☆☆
#20 [林奈]
そんな日、うちと亜由美に声をかけてきた男がいた。
「一人2でどう?」
意味が分からなかった。
“2”って何?うちは聞いた。
「二万って事だよ」
亜由美もうちも食い付いた。
:07/04/03 13:52 :W43CA :☆☆☆
#21 [林奈]
「何するの?」
「俺とエッチするだけ」
速攻で断った。中年の男とやるなんて考えただけでも吐き気がする。しかもまだ処女だし。
14歳の時は、まだ純粋に考えることもできてた。
:07/04/03 14:06 :W43CA :☆☆☆
#22 [林奈]
帰り道、亜由美と笑い合ってた。あんな男とやるわけないやん。“エンコー”なんてお金に汚い人がやるもんだ。うちらはそう思ってた。
“薬”と“援交”だけは絶対にしない。あの頃のうちらはそう決めてた。
決めてたはずなのに、うちの中で心の歯車が狂いだすには時間はかからなかったんだ。
:07/04/04 01:16 :W43CA :☆☆☆
#23 [林奈]
昼間、亜由美の家で寝てた。その時しきりに玄関のベルが鳴る。寝ぼけたまま亜由美はドアを開けた音がした。そしてすぐ階段を上がってくる足音が聞こえてきた。
“なに?”
そう思った時、亜由美の部屋のドアが開いた。
:07/04/04 01:19 :W43CA :☆☆☆
#24 [林奈]
うちはその人の顔を見た。
母だった。母はうちを見るなり、頭をぶってきた。
「あんた何してるの!帰るよ」
「何しにきたん?うちは帰らん」
「よそ様の家に転がり込むなんてどういう神経しとるの?」
うちが何か返そうとした時腕をつかまれ、頬を殴られた。うちは仕方なく家に帰ることにした。
:07/04/04 01:23 :W43CA :☆☆☆
#25 [林奈]
青春の家出は一週間であっけなく終わった。
帰り道、母に聞いてみた。
「うちが心配だったから来たの?」
「心配なんてしんわ。お兄ちゃんもあんな風で、あんたも何かしでかしたら近所に何言われるかわからんでしょ」
“そういう事か”
少しでも期待した自分が恥ずかしくなった。
やっぱりうちはいらない子なんだね。
:07/04/04 01:31 :W43CA :☆☆☆
#26 [林奈]
誰か読んでますかね心配ですm
:07/04/04 02:10 :W43CA :☆☆☆
#27 [林奈]
家に帰り、またうちは母に殴られる。そしてお決まりの言葉を吐く。
「あんたさえいなければ」
もうどうでもよくなった。
「あぁうちは死んだ方がいいんやろ?なら殺してくれ」
「殺す?あんたごときに捕まりたくないわ!自分で死ね」
“うちは殺される価値もないんだ”
14歳の夏。うちは本気で死ぬことを考えた。
:07/04/04 02:16 :W43CA :☆☆☆
#28 [林奈]
その日から一週間、亜由美からの電話も出たくなくて、家に閉じこもった。
兄と軽くかぶる。だからうちはまた夜に家を出て散歩をするようになった。
:07/04/04 02:24 :W43CA :☆☆☆
#29 [林奈]
川原に行き、夜の星を見る。いつしかそれが日課になった。そしてうちの“大きな嘘”が生まれた。
いつものように川原に行くと、指定席には先客がいた。
“誰だよ”
そう思い近付く。
顔を見て驚いた。
涼子の彼氏だった。
:07/04/04 02:29 :W43CA :☆☆☆
#30 [林奈]
「前田くん?」
声をかけたうちに、前田くんは驚いた。
「涼子の友達の?」
「うん。林奈だよ。何してるの?」
「星が見たくなっただけ。あんたは?」
「うちもだよ」
うちらは少し笑い合った。
:07/04/04 03:31 :W43CA :☆☆☆
#31 [林奈]
それから何気ない話をし、涼子との事や色々聞いた。前田くんは廊下ですれ違うだけで話した事はなかった。
その日以来二人だけの“嘘”が始まったんだ。
:07/04/04 03:33 :W43CA :☆☆☆
#32 [林奈]
気を紛らわすだけに行ってた川原。でも前田くんに会ってから、二人だけの時間を求めに行くようになった。
その時はまだ“友達の彼氏”ただそれだけだったのに・・。夏休みが終わりかけた日。
うちと前田くんに異変が起きた。
:07/04/04 03:36 :W43CA :☆☆☆
#33 [林奈]
いつもみたいに話してる時、沈黙が続いた。何気なくお互いを見た。そして何気なく、キスをしてしまった。止まらなくなったうちと前田くんは、最後まで・・。
うちにとって初めての体験。
してしまった後、友達の彼氏なのに、うちは安らぎを感じてしまってたんだ。
:07/04/04 03:41 :W43CA :☆☆☆
#34 [林奈]
“最低”
心の中のモヤモヤと一緒に感じた快楽。
前田くんとうちとの“秘密”の関係が始まった。
:07/04/04 03:44 :W43CA :☆☆☆
#35 [林奈]
そして二学期。
前と変わらないみんな。涼子も亜由美も。変わったのはうちと前田くんだけ。
涼子は相変わらず、前田くんとのラブラブな話をしてくる。嫌な感じはしないけど、いい気もしなくなってた。
“裏切り”
うちは大事な友達を裏切ってるんだ。涼子の話を聞く度にイライラしてた。
:07/04/04 05:07 :W43CA :☆☆☆
#36 [林奈]
イライラを必死に隠した。何食わぬ顔で聞いてた。
涼子のところに来る前田くんも、うちとは会話はしない。涼子にバレるから。
でもまた夜に会って関係を持つ。
そんな日々が1ヶ月続き、秋。夜は寒くてもう会わないと決めた夜。
「なぁ、俺涼子と別れるよ」
「なんで?」
「お前の方がいい」
何か嬉しかった。親にも見捨てられ、よく分からない感情の先で見つけた思い。
“恋”
だった・・・。
:07/04/04 17:47 :W43CA :☆☆☆
#37 [林奈]
涼子に対する申し訳ない気持ちがなくなった。
あの時友情が壊れることを覚悟した。
次の日、涼子と前田くんは別れた。
落ち込む涼子に何も言えない。言えるわけがない。ひたすら泣く涼子に付き添う亜由美は、前田くんに対する怒りをあらわにしてた。
:07/04/04 18:12 :W43CA :☆☆☆
#38 []
がんばれ
:07/04/05 00:17 :N902i :☆☆☆
#39 [林奈]
ケさんありがとうI
放課後、亜由美は前田くんを呼び出してた。うちにも一緒に来てほしいと言われ、うちも行った。
来た前田くんに、亜由美はすぐつっかかった。
「一方的にフルってなに?涼子の気持ち考えたの?」
「考えた。でも好きな人できたから」
「好きな人って誰なの?」
「言えない」
:07/04/05 10:31 :W43CA :☆☆☆
#40 [林奈]
「言えないってさぁ、てかもう付き合ってるとかじゃないよね?」
「付き合ってる。でもその人は涼子と付き合ってた事は知らない。その人はあんたらと全然関係ないから」
前田くんがうちをかばった。やりきれなかったけど、それが何か嬉しかった。
:07/04/05 18:09 :W43CA :☆☆☆
#41 [林奈]
亜由美は諦めた。帰り、亜由美はこんな事を言ってきた。
「うちらだけは涼子の味方でいてあげようね」
「・・・うん」
ハッキリうんって言えなかった。自分の中にモヤモヤだけが駆け巡る。
:07/04/05 19:58 :W43CA :☆☆☆
#42 [林奈]
うちはその日から涼子と亜由美と距離を置くようになった。バレるのが怖くて。けど、二人とも気付かない。それでいいんだと思ってた。前田くんとの恋を、友情よりも大事にしたかった。
うちは最低だね。。
:07/04/05 21:52 :W43CA :☆☆☆
#43 [林奈]
前田くんとキスをして、体を触れ合って、それだけで家族の事が忘れられてた。涼子から前田くんを奪ってまで、家族との事を忘れたかったんだ。
“最低で弱い”
頭の中では分かってるのにね・・。
心がついてけなかった・・・。
:07/04/05 22:06 :W43CA :☆☆☆
#44 [林奈]
モヤモヤの気持ちの中、毎日が過ぎ、そして冬になり、クリスマス。うちと前田くんは夕方、地元から少し離れた駅で待ち合わせた。
行き先・・・。
“東京”
うちと前田くんは真剣に家出をしようと思ってた。
:07/04/07 00:00 :W43CA :☆☆☆
#45 [林奈]
ほんとに幼いうちらは後先考えなくて東京へ向かった。東京はすごい街で、想像してたよりも賑やかだった。たくさんの人に、うちも前田くんもあ然とした。
渋谷をふらついて、夜になり、周りは若い人ばっか。クリスマスだからカップルだらけ。うちらは田舎くささ丸出しなのがほんとに恥ずかしくなった。
:07/04/08 00:57 :W43CA :☆☆☆
#46 [林奈]
泊まる場所を探して歩くうちに、前田くんからどんどん離れてしまう。そんな時に声かけてきたのは、ホストや変なスカウトマン。それに気付いて手を引っ張りながら歩いてくれる前田くんの背中が、どこか昔の父を思い出させてたんだ。
:07/04/09 22:06 :W43CA :☆☆☆
#47 [林奈]
小さい頃、デパートではぐれないようにと、手をつないでくれてた父の背中。前田くんの背中と重なった。
ホテル街に入り、安いラブホを探した。夜遅い時間に田舎くささ丸出しの幼い二人。警官に声かけられた。
:07/04/09 22:12 :W43CA :☆☆☆
#48 [林奈]
「君達、未成年だよね?」
「いえ。ハタチですけど」
前田くんの返しに、まじまじと見てくる警官。
「ちょっと来てくれるかな?」
“ヤバい”
前田くんも瞬間的に思ったんだろう。
うちらは逃げた。
:07/04/09 22:16 :W43CA :☆☆☆
#49 [林奈]
全力疾走。久々に走った。けど警官の足はさすがに速い。すぐ捕まった。
「来なさい」
そう言われて連れていかれた派出所。
心臓バクバクだった。
:07/04/09 22:19 :W43CA :☆☆☆
#50 [林奈]
「ほんとはいくつなの?」
「14です」
「東京の子じゃないよね?」
カンずかれてた。警官はうちらに出した紙。
家の電話番号を書きなさいと言われて、うちらは拒否した。
:07/04/11 21:01 :W43CA :☆☆☆
#51 [林奈]
拒否した時、警官に言われたこと。
「家族に不満があるならこんな形じゃなくて言葉で伝えなきゃ分からないよ」
確かにそうだと思った。けどこんなちっぽけなうちらの声に親は耳を傾けない。だからうちらは早く“自立”がしたくてしかたなかった。それが“家出”と言う形になっただけ。ただそれだけなんだ。
:07/04/12 19:48 :W43CA :☆☆☆
#52 [林奈]
警官に話しても、分かってくれるわけない。頭ごなしに説教。イライラした。だからうちらは黙ったままになり、派出所に来てから二時間。前田くんが口を開いた。
「家に電話してください」
うちはムカついた。あんなに家が嫌いだって言ったのに、簡単にあきらめる前田くんに対して、一気に冷めた。
:07/04/12 19:55 :W43CA :☆☆☆
#53 [林奈]
そしてうちもあきらめて家の番号を教えた。
警官がまず前田くんのお母さんに電話した。お母さんはすぐに駆けつけると言った。そしてうちの家に電話。父が出た。父と母が来ると言った。
“もしかして少しは心配してるかな?”
今度こそ期待できるかもしれない。。
:07/04/12 20:07 :W43CA :☆☆☆
#54 [林奈]
1時間くらい待った。先に来たのは前田くんのお母さん。
お母さんは前田くんと会話をする前に、ひたすら頭を下げてた。そんな姿が、何か羨ましいと思ったんだ。
:07/04/12 21:12 :W43CA :☆☆☆
#55 [林奈]
お母さんはうちの顔を見て言った。
「あなたがこの子を巻き込んだんでしょう?この子は有名な高校に行かせるんだからもう構わないでよ」
うちはただ謝るしかできなかった。
でも思ったんだ。
こんな風に自分の子をかばう親がいてくれて、前田くんは幸せだよって・・・。
うちには考えられない光景だった。
:07/04/13 10:15 :W43CA :☆☆☆
#56 [林奈]
その後すぐに、父と母が来た。
血相を変えて来た。そして母はうちを抱きしめてきた。
「心配したんだよ」
初めて言われた。
これが『親』の本心なんだよね?
期待してよかった。そう心から思ったのに・・・。
やっぱりうちはいらない子だった。
:07/04/13 10:20 :W43CA :☆☆☆
#57 [林奈]
警官に謝り、前田くんともお母さんとも会話をしずに別れた。車の中。無言が続く。
「ゴメンナサイ」
勇気を出して言った一言。
けど伝わらなかったんだ・・・。
「ほんとはあんたなんてどうでもいいんだけどね。けど捕まって恥かくのは御免だよ」
物凄い悲しさが突き刺さった。
:07/04/13 16:19 :W43CA :☆☆☆
#58 [林奈]
うちは泣くにも泣けずに下を向くしかできなかった。
父も母の言葉に対して怒ることもしない。
ほんとに悲しかった。自分の存在価値なんて、そんなもんなんだと悟った。
:07/04/13 17:44 :W43CA :☆☆☆
#59 [林奈]
家に着き、起きてた祖父にも言われた。
「警察のお世話になんてなりやがって!お前なんかこの家の恥だ」
家族に見放されたうちはどこに気持ちをぶつければいいの?
あの頃のうちは幼すぎて、大切な何かを見失ってた。
そしてもっと大切なモノを、うちは失うことになるんだ。
:07/04/13 18:07 :W43CA :☆☆☆
#60 [林奈]
そのまま年が明け、うちは一人家で冬休みを過ごした。ほんとに外なんて出ずに、亜由美や涼子、そして前田くんとも連絡を取らず過ごした。
家の空気は年を越しても変わらず、その雰囲気を変えられないイライラを、母はうちにぶつける。
それはもう痛くて痛くてたまらない。
ただ我慢するしかできなかった。
:07/04/13 21:08 :W43CA :☆☆☆
#61 [林奈]
―新学期―
何も変わっていないと思ってた。
涼子と亜由美とまた騒げると思ってた。
けど現実は甘くないね・・・。
:07/04/13 21:11 :W43CA :☆☆☆
#62 [林奈]
教室に入り、おはようを言う。
けどクラスの子達はみんなシカト。
・・・ん?
何か変・・・。
:07/04/13 21:13 :W43CA :☆☆☆
#63 [林奈]
うちは亜由美に話しかける。
すると亜由美から思いもよらない事を聞いた。
「あんたさぁ前田くんと家出したらしいね?涼子から奪ったのあんたでしょ?」
全身に鳥肌が立った。返す言葉がない。
「あんたのお母さんがうちのおかんと会った時、言ったんだってよ!前田って子と家出したってね」
何て返事をするべきか一瞬のうちに考えた。
:07/04/15 00:12 :W43CA :☆☆☆
#64 [林奈]
「うちだよ。前田くんと付き合ってたのは」
「は?じゃあうちと前田くんで話した時はもう付き合ってたってこと?」
「うん」
「あんた最低」
当たり前だけど、その時からうちは孤立した。
:07/04/15 23:24 :W43CA :☆☆☆
#65 [林奈]
涼子はショックから学校を休みがちになり、亜由美とクラスの子達からの嫌がらせ。
机やノート、教科書に、『最低』『淫乱女』『死ね』と言う文字を書かれまくった。それだけじゃない。帰り道に川原に呼ばれて、男女合わせて6人くらいから暴行。
そのリーダーは亜由美だった。
:07/04/15 23:29 :W43CA :☆☆☆
#66 [林奈]
家でも外でも殴られ、うちは次第にそれが快感に変わっていったんだ。
普通に考えたら、ありえない事。
けどあの時は、抵抗する資格もない自分は、そう思うことで耐えられたんだ。
“嘘”“裏切り”
自分でまいた種。
完全に自分を見失ってた。
:07/04/15 23:32 :W43CA :☆☆☆
#67 [林奈]
前田くんはうちに言い寄られたからと言い逃げた。
悪者はうちだけ。
頭では分かってる。嫌がらせを受けても仕方ないことをした。友達がいなくなっても仕方ないことをした。
言い訳にしかすぎないけど、あの頃、友達を裏切ってでも、誰かがそばにいてほしかったんだと思う・・・。
:07/04/16 04:05 :W43CA :☆☆☆
#68 [林奈]
そして最悪な日。
うちは頭が悪い。だからテストの補習を受けた。もう夕方。いつもより遅い時間に帰った。
そして校門で待ってたのは亜由美達。
うちは思った。
“こんなくそ寒い中ご苦労さんだね”って・・・。
うちはシカトしようと思った。
:07/04/16 17:20 :W43CA :☆☆☆
#69 [林奈]
亜由美はうちの手を引っ張り、不自然な笑顔を見せた。
「仲直りしたいからさぁちょっと付き合ってよ」
うちは亜由美達に囲まれて付いてった。着いた場所は古い家で、うちはこの薄気味悪さに嫌な予感がした。
:07/04/16 18:48 :W43CA :☆☆☆
#70 [林奈]
誰か読んでくれてますかね
:07/04/17 08:00 :W43CA :☆☆☆
#71 [ちゃァ]
よんでますよ|
頑張ってください
:07/04/17 08:50 :W41CA :☆☆☆
#72 [まい]
うんッッ読んでるで
:07/04/17 09:03 :SH902iS :☆☆☆
#73 [林奈]
ちゃァさん、まいさん読んでくれててありがとう
また更新します!
:07/04/17 09:14 :W43CA :☆☆☆
#74 [みか]
続きが気になる
:07/04/17 09:16 :D902iS :☆☆☆
#75 [林奈]
古い家に入ったけど、めちゃくちゃ寒い。ほんとに古びた状態で、部屋に入り待ってたのは、知らない三人の男。
「亜由美〜さみぃがや!仲直りしたいっていう子は誰?」
「この子」
男達に突き出されたうちを見て、まじまじと見る。
「何するの?」
うちの質問にニヤリと笑う亜由美。
:07/04/17 09:18 :W43CA :☆☆☆
#76 [林奈]
「こいつらの相手してくれたら仲直りしてやってもいいよ」
「意味わからんし」
うちのそんな言葉に聞く耳持たず、亜由美達は、うちと男達を残して帰った。
今から何が起こるのか想像がついた。
:07/04/17 09:20 :W43CA :☆☆☆
#77 [林奈]
みかさんありがとI
:07/04/17 09:21 :W43CA :☆☆☆
#78 [林奈]
“この状況、逃げなきゃヤバいよね?”
うちは心の中で自分に問いかけた。
そして一瞬のすきを見て逃げようと思い、体を玄関に向けた。
その瞬間、うちは男達に腕をつかまれ、床に叩きつけられてしまったんだ。
:07/04/17 09:24 :W43CA :☆☆☆
#79 [林奈]
抵抗しても抵抗しても体を抑えつける。
「おとなしくしろ」
笑いながら言う男達を睨みつけても変わらなかった。
あまりにも怖くて目を閉じた。
その時・・・。
制服を脱がされ、スカートの中に手を入れてくる。
“イヤっ”
叫んでも止めない。
うちは男達の玩具になった。
:07/04/17 17:54 :W43CA :☆☆☆
#80 [林奈]
終わったあと、男達は言う。
「またよろしくな」
吐き気とともに湧き上がる悔しさ。
悔しくて涙が出た。
“死にたい”
ただそう思うしかできなかった。
:07/04/17 17:59 :W43CA :☆☆☆
#81 [林奈]
脱力したままどうやって家に帰ったか分からない。
気付いたら玄関にいた。
うちを見た母は駆け寄ってきた。
「どうしたの?」
「やられた」
「ふーん。でもあんた初めてじゃないんだからいいんじゃない?」
うちは絶句した。
こんな時にすら優しい言葉をくれない。
うちはほんとに死にたくて死にたくて、また家を出た。
:07/04/17 18:03 :W43CA :☆☆☆
#82 [林奈]
外は冷たい。まるで自分と家族のように思えた。
泣きながら向かった川原。
うちは死ぬことだけを考えて川に入った。冬の水は氷のように冷たくて、それでも入った。
“これで死ねる”
急激な温度変化で意識が遠のいてくのは今も覚えてる。
:07/04/17 18:07 :W43CA :☆☆☆
#83 [林奈]
じっとしてればいつか死ぬだろう。
そう思ってた時、腕を掴まれた。
「何やってんだよ」
暗闇の中見たその人は全然知らない男の人だった。
“コワい”
また襲われるんじゃないか。ふと思ってしまい、叫んだ。
するとその人はそんなことを構わずうちを、川原に引き上げる。
:07/04/17 19:57 :W43CA :☆☆☆
#84 [林奈]
その人はうちに着ていた服を着せて、
「お前何やってんだよ!死にたいんか」
「勝手な事しないでよ!」
「ふざけるな!お前生きてる事を無駄に思うなよ」
その人の言葉が涙を誘う。
うちは子どもみたいに泣いた。寒さか何なのか分からないくらい泣けた。
:07/04/17 20:16 :W43CA :☆☆☆
#85 [みい]
頑張ってください(/_;)
:07/04/17 21:33 :F902iS :☆☆☆
#86 [林奈]
みいさんありがと!頑張るよ!
:07/04/17 21:51 :W43CA :☆☆☆
#87 [林奈]
他人にでもいいから、そんな言葉を言われたかった。
この世の中に、こんなうちに言ってくれる人がいるなんて思わなかった・・・。
その人はうちを支えるように家まで送ってくれた。街灯の明かりでチラチラ見える横顔。うちより少し大人な感じがした。でも寒くて寒くて口が開かない。
名前を聞こうと思っても聞けなくて、情けない声でお礼を言い、その人はすぐ帰った。
うちは家に入りすぐにお風呂に入った。お風呂にいる間、ずっと考えてた。
:07/04/17 22:01 :W43CA :☆☆☆
#88 [林奈]
“何であの人は助けたんだろう?”
“そこまでして何で生きなきゃいけないの?”
答えは見つからなかった・・・。
うちは何のために生まれたんだろう。
そんな事を抱えてまた時間だけが過ぎてった。
:07/04/18 10:32 :W43CA :☆☆☆
#89 [林奈]
うちは次の日学校を休んだ。仮病。
親は何も言わなかった。
その次の日も休み、結局一週間うちはずる休みした。
その一週間の間に分かった事実。
母が借金をしていたという事。
:07/04/18 10:35 :W43CA :☆☆☆
#90 [林奈]
家にしきりにかかる請求の電話。
祖父は母を問い詰めた。
すると母は言った。
「私の借金だよ。私だってストレス溜まるんだよ!働いて返すからいいでしょ」
逆ギレだった。
母はパチンコをしたくて家のお金を使い込んだ。それが借金と言う形でバレ、親戚を集めて家族会議が行われた。
:07/04/18 10:43 :W43CA :☆☆☆
#91 [林奈]
うちも部屋で聞いてた。
母は自分のした事を棚に上げて、父や祖父を責める。
おまけに言い出した捨てゼリフ。
「子どもなんか生まなきゃよかった」
何ともないようでいたけど、やっぱりそんな事を言われると心が痛かったんだ。
締め付けられる心。うちは親達の前で、初めて泣いた・・。
:07/04/18 10:49 :W43CA :☆☆☆
#92 [林奈]
うちや兄は望まれて生まれたんじゃないんだね・・・。
言葉が出てこないくらい大泣きした。
そんな時親戚のおばさんが母に言ってくれた。
「この子達がどんな思いで過ごしていくか考えたことある?生まなきゃよかったなんて口が裂けても言わないで。あんた達親失格だよ!」
おばさんはうちと兄を引き取ると言ってくれた。うちはそれだけで救われた気がしたんだ。
:07/04/18 10:56 :W43CA :☆☆☆
#93 [林奈]
嘘でもいい。嘘でもそんな事を言ってくれる人がいるなら、うちは強くなれるような気がした。
この家で強くなると決めた。
これから起きる困難たちに立ち向かう。
14歳の冬だった。
:07/04/18 10:59 :W43CA :☆☆☆
#94 [林奈]
おばさんはいつでも電話してほしいと言って帰った。
その次の日から、自分の心に大きな爆弾を抱えて学校に通った。
亜由美達からのイジメ。
あんなヒドい事をされて、うちは“復讐”と言う気持ちでいっぱいだった。
:07/04/18 11:03 :W43CA :☆☆☆
#95 [林奈]
そんな気持ちを必死に抑えこんで、春休みに入り、家に閉じこもる毎日。相変わらず家の電話は鳴りっぱなしで、そんな時、怖い人が家を訪ねてきた。
「お母さんいる?」
「いません」
「そうか。君はいくつかな?」
「14です」
「勉強頑張ってね」
笑顔でうちの頭を優しくポンポンと叩いて帰った。
テレビでしか見たことないような怖い人。けど初めだからか知らないけど、優しかった。
間違いなく借金取りだ。
:07/04/18 11:31 :W43CA :☆☆☆
#96 [林奈]
母が帰って来た時、その人の事を話した。優しそうな人だと言うと怒り狂った。
「あんた嫌味?私が大変なのを面白がってるんでしょ?」
「そんな事ない」
何でもかんでも怒る母。
もういい加減何とも思わなくなってた。
:07/04/18 15:10 :W43CA :☆☆☆
#97 [林奈]
叩かれても蹴られても何も思わない。
そんな自分が何だか怖かった。
もう諦めてたのかもしれない・・・。
次の日もまた怖い人は来た。
母はいない事を伝えると、アメをくれた。帰りを待つからと言い、うちに色々話しかけてくる。
ウザい反面、この人は何者なのか興味が湧いてた。
:07/04/19 02:19 :W43CA :☆☆☆
#98 [林奈]
うちと同じ年の姪がいること、勉強は数学が得意だということ。そして“畑中”という名前だってこと。
パンチパーマでグラサン。真っ白なスーツ。いかにもそちらの筋の方。
でも畑中さんはうちに笑顔を絶やさなかったんだ・・・。
“きっとほんとは優しいんだろうな”
そう思いながら、どこか実の父よりも父らしく感じてた。
:07/04/19 05:12 :W43CA :☆☆☆
#99 [林奈]
一時間くらいしてから、チラチラ見えるうちの右腕のアザに気付いた。
「どうしたんだ?」
母にやられたなんて言えずに黙り込んだ。
「学校でイジメられてるのか?誰にやられた?」
「転んだんだよ」
うちの目をジーッと見る。
:07/04/19 05:15 :W43CA :☆☆☆
#100 [林奈]
「オジサンには嘘つけないぞ。そのアザはなんだ?」
「お母さんにやられた」
「一回じゃないな?いつからだ?」
「いつからかも分からない。もう慣れちゃった」
畑中さんは怒りだした。
:07/04/20 13:28 :W43CA :☆☆☆
#101 [林奈]
「俺も散々悪い事して、今もこんなんだけどよぉ、自分の嫁や子どもに手上げた事はない。俺がお母さんに言ってやるから」
「いいよ。オジサンが言ったあともどうせ殴られるんだし」
「我慢することないんだからな」
ヤクザの人は冷たい人ばかりだと思ってた。見た目はむちゃくちゃ怖くて、こんな事言ってくれるなんて思わなかった。
:07/04/20 13:33 :W43CA :☆☆☆
#102 [林奈]
大人への偏見が少し変わったような気がした。
母が帰ってきて、畑中さんを見て、逃げるように部屋に帰った。
そんな母に畑中さんは怒鳴った。
:07/04/20 13:39 :W43CA :☆☆☆
#103 [林奈]
「お前、この子に何した?」
「何って?」
「この子のアザ、お前がやったんだろうが?」
「私は知らないよ」
その言葉で畑中さんがキレた。
:07/04/20 13:44 :W43CA :☆☆☆
#104 [林奈]
「この子がお母さんにやられたって言ったんだぞ」
畑中さんの言葉で、うちをものすごい顔でニラむ母。
畑中さんの帰ったあとの事を想像したら、ゾッとした。
畑中さんはまた怒り始める。
「お前なぁ自分の子どもに手を上げるなんて最低だぞ」
:07/04/21 21:42 :W43CA :☆☆☆
#105 [林奈]
「あんたに関係ないでしょ!今月の分は渡すから帰って」
ものすごい形相でニラみつけ、母は家の中に帰ってった。
それはまるで鬼のようだった。
案の定、母はうちを殴る。
「あんたさえいなければこんなみじめな思いしなくてよかったのに」
母は目にうっすらの涙をためた。
あの時の涙は本物だった。
:07/04/21 21:59 :W43CA :☆☆☆
#106 [林奈]
あの時、何度も思った。
“何でうちは死ななかったんだろう”
うちさえいなければ母をこんな苦しまなくて済むんだ。
胸が痛くて痛くて仕方なかった・・・。あの時の痛み以上のモノはない。
:07/04/21 22:07 :W43CA :☆☆☆
#107 [林奈]
その日の夜、父から言われた一言。
「お父さん達離婚するから」
驚かなかった。いつかそうなるだろうって思ってたから。
そして次の日、母は家を出た。
:07/04/23 00:59 :W43CA :☆☆☆
#108 [林奈]
憎むべき母が家を出ていく姿はどこか悲しそうだった。
ほんとは喜んでいいはずなのに、何か心に引っかかるモノを感じていたんだ。
“もう会えないのかな?”
去ってく母に何回も聞いてみたかった。
けどできなかった。
:07/04/23 01:04 :W43CA :☆☆☆
#109 [林奈]
何か分からないわだかまりを抱えて、うちはその日から毎日家の事をした。
料理、洗濯、それまで家事なんて無縁だった分、めちゃくちゃ苦労した。
けど何よりも辛かったのは、祖父に毎日繰り返し言われる事。
「お前は母親そっくりだな」
複雑だった・・・。
:07/04/23 01:17 :W43CA :☆☆☆
#110 [林奈]
目つきや言い方が似てるらしい・・・。
娘は母親に顔が似ると幸せにはなれないと聞いた。
“やっぱりそうなのかな?”
母親に似るうちもこの家を出た方がいいのかもしれない。
:07/04/23 01:20 :W43CA :☆☆☆
#111 [林奈]
うちは、家を出る事だけを考えて生活するようになってた。中学を卒業したら絶対に家を出るんだ。
かすかな夢だった。
そんな小さな小さな夢を叶えるために見つけたバイト。
―援助交際―
援助交際をしようと思ったきっかけ。
それは本当に些細な事だった。
:07/04/23 01:34 :W43CA :☆☆☆
#112 [林奈]
テレビで援助交際を取り上げている特番がやってた。
「一回3万かなぁ。それ以下の値段だったら絶対ヤらない」
元援交をしてた女の子のインタビュー。
うちは高額なお金に目がくらんだんだ。
本当にバカだよ。
あの頃、自分の価値が分からなかった。
:07/04/23 01:40 :W43CA :☆☆☆
#113 [林奈]
うちは夜な夜な父達に隠れて、外に出るようになった。
駅前から少し奥に入ったとこにある公衆電話。
そこに貼ってあるチラシ。いわゆるピンクチラシだ。
うちはそこに電話してみた。
:07/04/23 01:46 :W43CA :☆☆☆
#114 [林奈]
「もしもし。私19歳だけど・・」
「若いねぇ。オジサンは32歳だよ。今から会う?」
「うん」
緊張した。いっぱいっぱいで電話を切ったあと、少し恐怖感が出てきた。
:07/04/23 02:05 :W43CA :☆☆☆
#115 [ちー]
:07/04/23 02:22 :SH902iS :☆☆☆
#116 [林奈]
“山の中でいきなり降ろされたどうしよう”
“複数で来て襲われたらどうしよう”
色々考えて広がる不安と恐怖。
でも後戻りはしたくなかった。
ただお金のためだけにうちはそのオジサンと会った。
:07/04/23 02:39 :W43CA :☆☆☆
#117 [林奈]
ちーさんこんな夜中に読んでくれてありがとうI
:07/04/23 02:40 :W43CA :☆☆☆
#118 [林奈]
高級車で現れた。
顔は若くてなかなかのイケメン。
うちは車に乗り込み、適当にあいさつしてみた。
「名前なんて言うのかな?」
「アユミだよ」
とっさに出た嘘。
何となく亜由美の名前を使わせてもらった・・・。
「アユミちゃんはこういうの何回目?」
「初めてだよ」
:07/04/23 02:43 :W43CA :☆☆☆
#119 [林奈]
「ほんとに初めて?かなり落ち着いてるから見えないね?」
「そんな事ないよ!めちゃくちゃ緊張してるんだから」
うちの言葉に笑った。それを見たうちも笑ってみた。
その人は、ノブヒロと言うらしい。
:07/04/23 02:46 :W43CA :☆☆☆
#120 [林奈]
これがノブヒロとの最初の出会い。
ノブヒロは初めてと言ううちの頬に軽くキスをした。
10歳以上も年が離れてる人からのキスなのに、何か嫌な感じがしなかった。
きっとあの時からもう気付いてたのかもしれない・・。
“運命”だって事を・・。
:07/04/23 02:50 :W43CA :☆☆☆
#121 [林奈]
少しドライブをしてから向かったホテル。
初めて行くラブホに心臓バクバクになってた。
そんなうちに気付いて、ノブヒロはうちの手を握る。
大きくて男らしい手。うちはすごく暖かく感じた。
“このドキドキなんなんだろう”
言葉では表せれない感覚。
うちは何かを感じ取ってたんだと思う。
:07/04/23 04:15 :W43CA :☆☆☆
#122 [林奈]
部屋に入って事を済まし、ベットでノブヒロはうちをギュッと抱きしめた。
「どうしたの?」
うちの問いかけにノブヒロは逆に聞いてきた。
:07/04/23 16:03 :W43CA :☆☆☆
#123 [林奈]
「何でこんな事しようと思ったの?」
「お金がほしいからだよ」
「それだけ?」
「うん」
ノブヒロは不思議な顔をしてきた。
「他にも理由あるんじゃないの?」
うちはすぐに答えられなかった。
:07/04/24 09:07 :W43CA :☆☆☆
#124 [林奈]
けどどうせ一度しか会わない人だから、話してもいいやって思った。
家族の事、前田くんとの事、イジメ、レイプ、母からの暴力。うちは包み隠さず話した。
泣く事もしない、冷静なうちにノブヒロはまた強く抱きしめてきた。
:07/04/24 09:11 :W43CA :☆☆☆
#125 [林奈]
「辛かったなぁ。だからこんなアザがあるんだな。聞かないつもりだったけど気になって。ごめんな。話させてまって」
ノブヒロの目に涙がたまってた。
うちの話で自分以外の人が泣くなんて思いもよらなかった。
:07/04/24 09:14 :W43CA :☆☆☆
#126 [林奈]
「こんな事してる俺が言うのは説得力ないけど、もうこんな事するなよ。俺ももうやめる。だから約束しよう?同情じゃなくてアユミちゃん自身に惹かれた」
うちはノブヒロはおかしい人かと思った。だって10歳以上も離れてる子に、たった一回の出会いでそんな事を言うから。
:07/04/24 09:17 :W43CA :☆☆☆
#127 [なな]
読んでて
すごく惹き付けられる
ものがあります
読んでるので
頑張ってください
:07/04/24 09:59 :D902iS :☆☆☆
#128 [林奈]
ななさんありがとI
続き↓↓
ノブヒロはうちに携帯番号を書いた紙を渡してきた。
「もし何かあったら電話して」
「うちが悪用したりするかもしれないんだよ?」
「アユミちゃんはしないよ」
まっすぐなノブヒロの目に偽りはなかった・・・。
:07/04/24 12:02 :W43CA :☆☆☆
#129 [林奈]
うちはノブヒロに二つの嘘ついた。
名前が林奈だという事。
ほんとの年齢は14歳だという事。
今ここで話すべき事なのか迷った。
だからうちは最後まで隠し通したんだ。
:07/04/24 22:33 :W43CA :☆☆☆
#130 [林奈]
うちはノブヒロに二つの嘘をついた。
名前が林奈だという事。
ほんとの年齢は14歳だという事。
今ここで話すべき事なのか迷った。
だからうちは最後まで隠し通したんだ。
:07/04/24 22:34 :W43CA :☆☆☆
#131 [林奈]
↑↑連続しちゃいました。ごめんなさい
続き↓↓
帰り際、ノブヒロはうちに10万という大金をくれた。
“こんなに?”
驚くうちにノブヒロは言う。
「少ないけどもうこれでこんな事やめてね」
うちはただお礼だけを言った。
:07/04/24 22:37 :W43CA :☆☆☆
#132 [林奈]
“電話なんてするわけないよ”
うちは帰り際思ってた。
でも初対面のノブヒロに、何かを感じていた。けどそれが何かは、あの時は分からなかった。
:07/04/25 10:17 :W43CA :☆☆☆
#133 [林奈]
10万なんて大金をどうすればいいか分からず、家に帰りとりあえず部屋の中に隠した。
しばらくうちは援助交際をやめた。
そして新学期になり、イジメも何故か分からないけどなくなった。
ノブヒロに電話をすることなく時が過ぎて、あっという間に卒業。
:07/04/25 10:47 :W43CA :☆☆☆
#134 [林奈]
中学最後の年はほんとにあっという間だった。
家事をして祖父に嫌みを言われ、しかも友達もいない。
何かあったとしてもうちはそれに気づきもしないくらい、時間が早く過ぎた。
父に言われるがままに入った私立の高校。行く気はなかったんだ。
:07/04/25 10:51 :W43CA :☆☆☆
#135 [林奈]
義務教育から解放され、やっと自立ができる。それを夢見て過ごしてた分、高校なんてバカみたいに感じてた。
行きたくなくなったら辞めればいいや。
軽く考えてた。
:07/04/25 10:53 :W43CA :☆☆☆
#136 [林奈]
高校へ入学。
友達なんて作らない。ほんとにどうでもよくて、いつ辞めよう。そればっかり考えてた。
入学式。
うちは見た目も茶髪で春休みにピアスも空けてた。けど中身は全然子どもで、見た目ばかり気張ってたんだ。
そんなうちに近付いてきたのは、サオリとマサ。
二人は明らかに浮いてる。
男女で近付いてきた二人に警戒心丸出しだった。
:07/04/25 22:01 :W43CA :☆☆☆
#137 [林奈]
「アンタ名前は?」
「最初に自分の名前言うのが常識でしょ!」
自分の名前より先にうちの名前を聞いてきたサオリに腹が立った。
そんなうちの答えにサオリとマサは爆笑。
“は?”
そう思いうちは睨みつけた。
:07/04/26 09:39 :W43CA :☆☆☆
#138 [のり]
:07/04/26 15:24 :N702iD :☆☆☆
#139 [林奈]
のりさんありがとI今から少し書くねメ
続き↓↓
うちが睨んだのにも関わらず二人は、笑いながら言う。
「ごめんごめん。そうだよね。うちはサオリ。こっちはマサ。うちら同中でさぁ。あんたと友達になりたいなと思って」
満面の笑みが何かうちの心も明るくさせた。
「うちは林奈だよ」
「仲良くしよう」
マサも笑顔で言ってくれた。
:07/04/26 16:03 :W43CA :☆☆☆
#140 [林奈]
見た目とは違って、笑顔が似合う二人。
この二人となら長く続くような気がした。
何か二人の笑顔に吸い込まれそうになった・・・。
:07/04/26 16:14 :W43CA :☆☆☆
#141 [林奈]
友達なんて作らない。いらない。
けど表面上ならいいと思った。
どうせ辞めるから。
うちはサオリとマサと帰りにファミレスに行った。
:07/04/26 22:43 :W43CA :☆☆☆
#142 [林奈]
好きな歌手や俳優、好きなタイプ、たわいもない話で笑った。
だから不思議な感じがしてた。
それでもうちはこの二人を信じる事はないだろう。
あの時強くそう思った。
:07/04/26 22:55 :W43CA :☆☆☆
#143 [林奈]
次の日、学校に行くなり笑顔で駆け寄ってくる二人。
この二人とは毎日一緒に過ごすようになった。
けど、家族の事、過去の事は話すことはできない・・・。
きっとこの二人に話したら引くんだろうな。
心の境界線・・・
すごく寂しい感じがしてた頃でもあった。
:07/04/27 21:18 :W43CA :☆☆☆
#144 [林奈]
相変わらず家の雰囲気は悪かった。
兄はまだ引きこもりで、父や祖父達はもう諦めてた。
うちが高校入学してから一週間くらいしてから、母から父への手紙を見つけてしまった。
見てはいけないって思ったけど、興味半分で見た。
うちがもっともショックだった事実。
:07/04/27 21:42 :W43CA :☆☆☆
#145 [林奈]
母の手紙にはこう書かれてた。
うちを今まで一度も可愛いと思った事がない事、その理由がアイツの子どもだからだという事だった。
“アイツって誰?”
うちは父と母の子どもじゃないの?
どういう事なの?
頭が真っ白になった・・・。
:07/04/27 21:45 :W43CA :☆☆☆
#146 [林奈]
うちはまず祖父に聞いた。
けど知らないの一点張りだった。
帰ってきた父にも問い詰めた。
気まずそうな顔。
一瞬で分かった。
あの手紙が事実だという事が・・・。
:07/04/27 21:53 :W43CA :☆☆☆
#147 [林奈]
「座りなさい」
いつも以上に真面目な顔の父は、話を切り出した。
兄が生まれてすぐ、母は前の恋人と駆け落ち。そして何年かして戻って来た時に、うちが母のお腹の中にいたらしい。恋人は無職。そんな母を置いて出て行き、仕方ない母は家に戻りうちを産んだ。
そんな母を、祖父達は許すはずがない。けど父は、兄のためにと離婚はしず、母をまた家に入れる事にした。
それから15年。
うちがだんだん母みたいになると同時に、父も知らない恋人と言う男にも似てきた事に、戸惑いを隠せなかったそうだ。
:07/04/28 00:46 :W43CA :☆☆☆
#148 [林奈]
逃げた恋人を恨み、そしてその人と血を分けたうちの事も憎い母。
だからうちは可愛がってもらえなかったんだ。
この時今まで母や祖父達にされてきた事が全てつながった。
ただただショックだった・・・。
うちは望まれなかったんだね・・。
:07/04/28 00:50 :W43CA :☆☆☆
#149 [林奈]
うちは父に聞いた。
「ねぇ、じゃあお父さんもうちの事可愛く思わなかったんだよね?」
「そんなことない」
言葉とは逆に、しっかり可愛くないと顔に書いてある。
父のあの表情は今も目に焼き付いてしまってる・・・。
:07/04/28 11:17 :W43CA :☆☆☆
#150 [林奈]
この複雑な気持ち。うちはどこにぶつけたらいい?
気づいたらノブヒロの携帯番号が書かれてる紙を握りしめてた。
“もう忘れてるよね?一年も経つし”
うちはそう思いながら誰かに聞いてもらいたくて電話した。
:07/04/28 11:32 :W43CA :☆☆☆
#151 [林奈]
コールが鳴り、手が震えた。
5回目のコール。
「はい。高島です」
「ノブヒロさんの携帯ですか?」
「そうですけど、あなた誰?」
「アユミです。一年前に会った」
一瞬無言になったノブヒロ。
うちは電話を切りたくなった。
:07/04/28 11:37 :W43CA :☆☆☆
#152 [林奈]
けどノブヒロはすぐに声を変えた。
「久しぶり。元気にしてる?電話ないからもう諦めてたよ」
優しい声。
うちはその声を聞いた途端に涙が出てきた・・・。
:07/04/28 11:39 :W43CA :☆☆☆
#153 [林奈]
溢れ出す感情。
何から話せばいいのか分からずただ泣くだけ。
ノブヒロはそれでも泣きやむまで待ってくれてたんだ。
少し落ち着いてうちから話す。
「ごめんね。忙しいのにね。切るね」
「ちょっと待って!明日会おう!19時に駅前で」
ノブヒロはうちと会う約束をしてきた。
:07/04/28 11:44 :W43CA :☆☆☆
#154 [林奈]
学校からすぐ帰り着替え、待ち合わせ場所に行く。
その足取りは軽やかで、一年振りに会うノブヒロにドキドキしてた。
そして駅前で待つスーツ姿の、ノブヒロ。うちは近付くにつれて何て声をかければいいのか迷ってた。
その時うちの姿に気付き寄ってくるノブヒロ。
:07/04/28 13:52 :W43CA :☆☆☆
#155 [林奈]
「久しぶりだね。アユミちゃん何かちょっと痩せたね?」
「そんな事ないよ。ノブヒロさんは変わらないね」
久しぶりなのに、何か暖かい気持ちになってく・・・。
車に乗りうちは気付いた。
ノブヒロの左手にある指輪。
:07/04/28 13:57 :W43CA :☆☆☆
#156 [あやめ]
:07/04/29 00:39 :SH702iS :☆☆☆
#157 [林奈]
あやめさんへ
読んでくれてありがとう
これは全部ほんとにあった話だよ!今の事もこれから少しずつ書いてくので待っててください
:07/04/29 01:15 :W43CA :☆☆☆
#158 [林奈]
「ねぇ、その指輪って・・」
「俺去年結婚したんだ。会社の子でね」
「子どもは?」
「いないよ」
うちは何だかショックだった。
恋とかではなく、ただ何となく寂しい気持ち。
素直にオメデトウが言えなかった。
:07/04/29 01:17 :W43CA :☆☆☆
#159 [林奈]
「なんだよ!オメデトウくらい言ってくれてもいいやんか」
笑いながら言うノブヒロに負けて、嫌みっぽくうちはオメデトウを言った。
でもあのオメデトウは、本心だったんだよ?ノブヒロ・・。
ノブヒロは車を海まで走らせた。
:07/04/29 01:20 :W43CA :☆☆☆
#160 [林奈]
海辺に着き、まだ春だから風は冷たかった。
車の中でノブヒロはうちの話を聞いてくれた。
うちには別の父がいて、両親から愛されていない事・・・。話しながら涙が溢れ出てた。
:07/04/29 01:23 :W43CA :☆☆☆
#161 [林奈]
どうしようもない寂しさと悔しさ。
色んな気持ちが交差してた。
そんな時ノブヒロがしてくれた事は、頭を撫でる事だけだった。
“何か言ってくれてもいいじゃん”
そう思い、ノブヒロを見た時、ノブヒロから出た言葉・・。
:07/04/29 01:26 :W43CA :☆☆☆
#162 [林奈]
「アユミちゃんはお父さんもお母さんも大好きなんだね」
意外な言葉だった。思わずうちは返してた。
「大好きなわけないやん!めちゃくちゃ恨んでるよ」
「恨みもあるかもしれない。でも大好きだからこんなに涙が出るんだと思う。寂しいって言う感情は、好きな相手にしか現れないと思うけどな・・」
:07/04/29 01:30 :W43CA :☆☆☆
#163 [林奈]
ノブヒロの言葉がうまく飲み込めなかった。
そしてノブヒロはまた言う。
「お子ちゃまにはまだわかんないかな」
“え?”
「ほんとはまだ16とかだろ?」
:07/04/29 01:50 :W43CA :☆☆☆
#164 [林奈]
「何で?」
「分かるよ。アユミちゃんと別れて考えたらさぁ、やっぱり年偽ってるなって思った」
全部バレてた。
:07/04/29 01:52 :W43CA :☆☆☆
#165 [林奈]
「ほんとはいくつなの?」
「今高1だよ」
「そっかぁ」
「怒らないの?」
「俺が怒れるわけないやん。俺もやったんだし」
ノブヒロは苦笑いで答えてた。
:07/04/29 03:23 :W43CA :☆☆☆
#166 [林奈]
いつの間にかたわいもない話で盛り上がってた。
気付いたら親の事なんてどうでもよくなってた。
また車を地元へと走らせた。
車中でノブヒロは真面目にまた聞いててきた。
「あれから援助交際はしてない?」
「してないよ」
「よかった」
ノブヒロが笑った。
:07/04/29 03:26 :W43CA :☆☆☆
#167 [林奈]
ノブヒロといると安心してる自分がいた。けどそれは、恋愛とかじゃない。
お兄さんのような安心感だった。
帰り際、うちはノブヒロに聞いた。
「また会える?」
「いいけど仕事とかあるし嫁もいるから、アユミちゃんが会いたい時に会えないかもしれないよ?」
「いいよ」
ノブヒロは少し困った顔をしたけど、うちのワガママを聞いてくれたんだ。
ノブヒロはほんとに優しい人だった。
:07/04/29 03:30 :W43CA :☆☆☆
#168 [林奈]
家の近くまで来ると、頭をなでて笑ってくれたノブヒロ。
うちは思った。
“ノブヒロの家庭を壊したらいけない”って・・・。
家に着いた時はもう日付が変わってた。
:07/04/29 03:33 :W43CA :☆☆☆
#169 [林奈]
“きっとお父さんも起きてるわけない”
そう思いながら玄関に入り電気を付ける。すると玄関にうずくまりながらウトウトしている父がいたんだ。
“なんで?”
嬉しいのに素直になれずに父の横を通り過ぎた。
:07/04/29 10:13 :W43CA :☆☆☆
#170 [林奈]
気配に気付いた父が起きた。
「こんな時間まで何してたんだ。でも帰ってきてよかった」
小さく言った、“よかった”の言葉。
ちゃんと聞こえた。
今までどれだけ夜中になっても言われなかった一言。
:07/04/29 17:16 :W43CA :☆☆☆
#171 [林奈]
“この言葉が欲しかった”
心の中でとっさにつぶやいてたのを今もはっきり覚えてる。
でもだからと言って恨みが消えたわけでもなく、嬉しさと憎しみが半々の中でうちはまた、父にはむかった。
:07/04/29 17:18 :W43CA :☆☆☆
#172 [我輩は匿名である]
:07/04/29 18:44 :SH903iTV :☆☆☆
#173 [我輩は匿名である]
:07/04/30 00:12 :D902iS :☆☆☆
#174 [林奈]
「どこに行こうが関係ないやん。ほんとはどうでもいいくせに」
父は少し寂しい顔して寝室に帰ってた。あの顔は“本当の父の顔”だった。
うちは父の顔を思い出すだけで今も切なくなる・・。
:07/04/30 09:32 :W43CA :☆☆☆
#175 [林奈]
次の日、うちは何食わぬ顔でサオリとマサに会った。
いつもの自分。
うちは昨日の事は考えないようにしてたのに、うちの変化をマサは気づいてた。
「なんかあった?」
「何もないよ」
マサは不思議な顔をした。
:07/04/30 12:12 :W43CA :☆☆☆
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