俺がホストじゃなかったら
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#126 [ゆう]
「別れるなら死ぬから!!」

ハルカはそう叫ぶとキッチンまで走っていった

俺は嫌な予感がしてすぐ追いかけた

ハルカがキッチンにおいてある包丁に手をかけた

「ここで死んでやる!」

ハルカは包丁を自分にむける

「やめろよ」

俺が近寄った瞬間ハルカは思いっきり包丁を振り降ろした

⏰:07/07/11 02:32 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#127 [ゆう]
その時の状況は、よくわからなかった

ただ、ハルカは無傷

俺の左腕には包丁がざっくり深く入った


俺はハルカを止めようとして抱きついた

多分その時に刺さったんだと思う

俺はホッとしたからか、すごい疲れて息が切れてた

冷や汗もいっぱい出た

⏰:07/07/11 02:36 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#128 [ゆう]
ハルカは何が何だか分かんないみたいに泣いてた

俺はとりあえずハルカを落ち着かせて、タクシーを呼んでハルカを家に帰らせてから病院に行った

何針か縫ったけど別に平気だったし、腕で良かったって何回も思った

ハルカが無事で良かったって何回も思った

⏰:07/07/11 02:41 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#129 [ゆう]
それからハルカはすんなり別れてくれた

何度も何度も謝られたけど、別に俺はこれで良かったんだと思っていた

ハルカの腕を切らせたのは俺

そう思う気持ちがあったから、何も言えなかったし何も言うこともなかった

ハルカの真剣な気持ちを甘く見た俺が悪かった


それからもハルカはたまに店に来た

その時は前みたいに喋れる二人だった

⏰:07/07/11 02:55 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#130 [ゆう]
それから季節は冬になった

俺は少し冬が嫌いになっていた

クリスマス
正月
俺の誕生日

クラブではイベントが沢山あった

一夜で動く金は桁が増えたりする

女に金を使わすのに少しトラウマを覚えていた

だからと言ってホストは辞めなかったし営業だってした

このままじゃホストとして使い物にならない

そう自分に言い聞かせた


俺は矛盾してたんだ

⏰:07/07/11 10:07 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#131 [ゆう]
月日は流れ、いくつかイベントが終わり、俺はいつの間にか21歳になっていた

店ではナンバー2か3あたりをウロウロしていた

きっとナンバー1を目指すこともできたけど、ナンバー1になるには何か抵抗があった

この頃は可もなく不可もない毎日だった

レナに失恋してからずっとこんな感じだった

トウヤには「女々しすぎる」と何度も言われた

それは俺も思うことだった

⏰:07/07/11 12:07 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#132 [ゆう]
「ユウ?」
「うわー!ユウくん!」

出勤前に店の通りを歩いていると後ろから誰かに名前を呼ばれた

振り向くと

「うわ!タツミさんとユキちゃん!」


タツミさんってのは俺が中学卒業してからすぐメンズバーで働いてた時にすごくお世話になった人

ユキちゃんは毎日飲みに来てたお客さん。

俺はこの二人が大好きだった

⏰:07/07/11 12:21 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#133 [ゆう]
「めちゃくちゃ久しぶりっすね!」

「ほんとだよ、ユウが全然店に顔見せに来ないからな」

何気ない会話がすごく懐かしくて不思議と癒された

「ユウくんかっこよくなったねー!今○○でホストしてるらしいじゃん、結構ユウくんの名前出てるよ」

ユキちゃんが俺をペタペタと触りながらうれしそうに言った

「お前、俺んとこで働きだした時ってまだ16歳だったもんな。立派になったなぁ」

そう言ったタツミさんが目を細めて俺を見た

⏰:07/07/12 00:28 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#134 [ゆう]
親がいない俺にとってこの二人は、メンズバーで働いてた当時、親みたいな存在だった

また店に顔を出すと約束して、その日は別れた

俺は煙草を買うためにコンビニに寄った

出勤前の知り合いのキャバ嬢やホストが沢山いた

適当に声をかけ合ってレジに並んだ

⏰:07/07/14 13:15 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#135 [ゆう]
「ナオキ‥?」

俺は、認識してから振り向くまでに少し時間がかかった

でも確かに俺のことだって分かった

この夜の街で俺の本当の名前を知ってるのはタツミさんとユキちゃん、あとはレナくらいしかいない

『ナオキ』

俺の本名だった

⏰:07/07/14 13:19 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


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