俺がホストじゃなかったら
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#201 [ゆう]
俺はレナを信じてる
レナはそんな女じゃない
セイヤとはとっくに関係を切ったはず
セイヤのくだらない嘘なんかに付き合ってる暇なんかねーよ
そう思いながら、俺はいつもより早く出勤の用意をし始めた
:07/07/31 11:12 :D902iS :☆☆☆
#202 [ゆう]
その週の休日の昼
「ユウさん買い物付き合ってくださいよー!」
ルイのこの一言で俺たちはデパートに来ていた
「すいませんなんか休みの日まで付き合ってもらって」
「いいよ俺暇だしさ」
腹が減った俺たちは適当に飲食店に入って昼飯を食った
:07/08/01 02:18 :D902iS :☆☆☆
#203 [ゆう]
俺らが座った横の席に、まだ2歳か3歳くらいの子供とその母親が座っていた
「あの子めっちゃユウさんのこと見てますよ」
ルイが小さい子を指さす
「うわ‥めっちゃかわいー」
俺はそう言って子供に手を振った
:07/08/01 02:23 :D902iS :☆☆☆
#204 [ゆう]
「えええええぇぇぇ!」
急にルイが驚いたような声を出した
「なんだよ」
「ユウさん子供好きなんすか!?」
「めっちゃ好き。早く子供ほしい」
「えええええぇぇぇ!意外すぎ!子供とか嫌いそう!どけよガキ!とか言って蹴りそうっすよ!」
:07/08/01 02:26 :D902iS :☆☆☆
#205 [ゆう]
「俺どんなイメージだよ!笑」
「いやーとても好きそうには見えないっすね笑」
母親と父親からあまり愛された記憶がないからか、俺は子供が大好きだった
絶対俺なら自分の子を大切にする
そう昔からずっと思っていた
:07/08/01 02:32 :D902iS :☆☆☆
#206 [ゆう]
「あー早く子供ほしいな。レナと結婚したいなー」
俺がそう呟いた
ルイはびっくりしながら
「ユウさんがそういうこと言うの珍しいっすね。俺、いっつもユウさんが何考えてるか全然わかんないっすもん」
と言って笑った
その日は夕方にルイと別れてマンションに帰った
:07/08/01 15:51 :D902iS :☆☆☆
#207 [ゆう]
「ただいまー」
返事はない
レナも今日休みのはずなんだけどな
どっか行ってんのかな
てか今日の子供めっちゃ可愛かったなー‥
子供生まれたらどんな名前にしよう
レナと俺の子なら絶対かわいいし!
そんなことを考えると自然に笑顔になってしまう
:07/08/01 18:54 :D902iS :☆☆☆
#208 [ゆう]
緩んだ頬に気づいて慌てて煙草に火をつける
俺なに一人で笑ってんだよ‥
レナと付き合ってから、らしくない自分がいる
こういうの、幸せって言うのかな
そんなことを考えてた
その時俺の携帯が鳴る
:07/08/01 18:59 :D902iS :☆☆☆
#209 [ゆう]
「ユウくん?今からちょっと早いけど飲みに行かん?あと4人ぐらいうちの従業員いるんだけど」
電話の相手はナンバー2のケン
レナいないし、別にいっか
「行く行くー」
「おー良かった、じゃあ一旦店の前まで来てなー」
まだ夕方6時前だった
俺は店まで向かった
:07/08/01 19:04 :D902iS :☆☆☆
#210 [ゆう]
店の前にはケンたちが待っていた
「おーユウくん来た!とりあえず腹減ったから居酒屋行こう」
店の前に集まった意味ってあったのかな?と思いつつ駅に向かって6人で飲み屋街を抜ける
あれ?
:07/08/01 19:11 :D902iS :☆☆☆
#211 [ゆう]
飲み屋街を抜けようと歩いている俺らの横を通り過ぎた女に目が行く
私服にサングラス、髪はゆるく巻いてあるキャバ嬢みたいな女
間違いなくレナだった
声をかけようとした時はもう遅かった
レナは『60分15000円〜』
って書いてある看板の店のビルの中に入って行った
:07/08/01 19:36 :D902iS :☆☆☆
#212 [ゆう]
「ユウさんどうしました?」
後ろを向いて立ち止まっている俺に気づいた後輩が声をかけてきた
「いや、なんでもないよっ」
俺は笑って歩きだした
「ヘルスなんかガン見しちゃってー。行きたいの?笑」
ケンが冗談でそう言った
やっぱあれは誰がどう見てもヘルスの店だよな‥
:07/08/01 19:40 :D902iS :☆☆☆
#213 [ゆう]
この前のセイヤの言葉を思い出す
『○○っていうヘルスで働いているのも知ってるかな?』
「‥なぁ、ケン、あの箱ヘル何ていう店?」
「あー確か○○だっけ」
それはセイヤが俺に言った店の名前と同じだった
『それも俺の紹介って知ってた?』
頭の中でセイヤの言葉が繰り返された
:07/08/01 19:50 :D902iS :☆☆☆
#214 [ゆう]
その日はアホ程酒を飲んだ
何も考えたくなかったから、何も考えれない程飲んだ
ひとりじゃ帰れなかった俺を、同じ寮の後輩が介護して部屋まで運んでくれた
午前1時
もうすぐレナの帰宅時間だった
:07/08/02 03:55 :D902iS :☆☆☆
#215 [ゆう]
「ユウさん今日どうしたんです?いつも考えて飲むじゃないですか」
俺は、意識はあるものの喋れない程飲んでいたから返事すらろくにできなかった
もう散々だ
これで何回目だよ?
こういう嘘は突き通せよな‥
:07/08/02 03:59 :D902iS :☆☆☆
#216 [ゆう]
「じゃ、俺明日大学あるんで部屋戻りますね!ユウさんお大事にしてくださいね」
そう言って後輩は部屋に戻った
俺はリビングのソファーに丸まって寝ていた
その時玄関のドアが開いた
レナの帰宅だった
:07/08/02 04:12 :D902iS :☆☆☆
#217 [ゆう]
「ただいまー‥ってナオキどうしたの?」
「飲んでた」
レナはリビングに入るなり俺に近づいて
「酒くさっ。潰れるなんてらしくないじゃん」
と言った
俺は少しの間黙ったあと
「今日なにしてたの?」
それだけやっと聞けた
:07/08/03 13:00 :D902iS :☆☆☆
#218 [ゆう]
「なにって‥お仕事」
ごめん、もうレナを信じることは難しいよ
「ヘルスの仕事?」
俺の言葉にレナは驚いた顔をした
「ナオキどうしたの?酔ってる?」
「酔ってない。ヘルスかそうじゃないか聞いてんの」
そう言うとレナがいきなり泣き出した
:07/08/03 13:08 :D902iS :☆☆☆
#219 [ゆう]
俺はただ、泣いて謝るレナをぼーっと見てた
「何でヘルスで働いてんの?そんなに金いるの?」
俺の問いにレナは
「ナオキのお店行きたくて‥」
と言った
:07/08/03 13:55 :D902iS :☆☆☆
#220 [ゆう]
「ふざけんなよ、彼女のお前が俺の店来る意味ってあんの?つーか前もそうやって言ってセクキャバやってたじゃん。だからセクキャバ辞めてもう俺の店にも来るなって言ったじゃん。だから最近は来なかっただろ、なのにヘルスで働いてんのは何でだよ」
俺はキレて一気に喋った
レナはびっくりしてた
そしてレナがありえないことを言った
:07/08/03 13:58 :D902iS :☆☆☆
#221 [ゆう]
「あたし、お金渡さなきゃいけない人がいるの‥」
直感でセイヤだと分かった
「セイヤさんだろ?今の店もセイヤさんに紹介してもらったんだろ?」
レナは黙っていた
「なんの金なんだよ」
俺は聞いた
:07/08/03 15:10 :D902iS :☆☆☆
#222 [ゆう]
「あたし‥この前働いてたセイヤに紹介されたセクキャバ、最低出勤日数働かないで飛んだらしくて、あたしを紹介したセイヤに責任がまわったらしくて‥それでそのお金‥」
「は?そんなんあいつの嘘に決まってんじゃん。最低出勤日数とかせいぜい10日間とかじゃん、お前騙されてんだよ」
「でもなんか‥スカウトの仕事って大変らしくて、あたしが飛んだから店から信用なくしたって言われて‥」
:07/08/03 15:15 :D902iS :☆☆☆
#223 [ゆう]
「お前さぁ、この世界どんだけ飛ぶ奴とかいると思ってんの?そんなんお前から金取る口実だろ!」
「そんなんじゃないと思うよ‥」
俺は完全にキレた
俺がここまで言っても分からない?そこまでセイヤを信じてる?かばうの?
:07/08/03 15:18 :D902iS :☆☆☆
#224 [ゆう]
「いくらだよ‥もうそれ俺が払うから。セイヤって人にもう会わないで」
レナがヘルスで働くぐらいなら俺が金出して早く終わらせたい
そう思って言った言葉にレナは
「それはできない‥」
と言った
:07/08/03 15:21 :D902iS :☆☆☆
#225 [ゆう]
「もうお前なんなんだよ!好きな女に風俗で働かれて他の男に金払ってるの知った俺の気持ちも考えろよ!」
俺は完全にキレていたけど酒のせいで動けなかった
潰れるまで飲んでて良かった
きっとシラフだったらキレて何するかわかんない
レナを殴ってたかもしれないから
それ程むかついたから
:07/08/03 15:24 :D902iS :☆☆☆
#226 [ゆう]
レナはキレた俺にただ泣きながら「ごめんなさい」と何度も言った
俺は、もうこの女とは別れよう。そう思った
どれだけ好きでも、どれだけ愛しても、こんなんじゃ意味ないよ
この女と結婚するとか、この女が最後とか、そんな夢もう捨てよう
信じてた俺がバカだった
そう思った
:07/08/04 02:24 :D902iS :☆☆☆
#227 [ゆう]
とりあえず俺は部屋を出た
その日は漫画喫茶に泊まった
レナには別れをまだ切り出せなかった
どれだけ裏切られてもやっぱり失うのは怖い
俺は本当にレナに愛されてたのかな?
俺って誰かに愛されたこと、あるのかな?
:07/08/04 02:28 :D902iS :☆☆☆
#228 [ゆう]
それからしばらく友達、後輩、ルイ、ケンたちの部屋を泊まり歩いた
ある日俺は部屋に戻った
理由はレナからの電話
「話しがあるから戻ってきて」
この時のことは今でも、きっと一生忘れられない
:07/08/04 04:12 :D902iS :☆☆☆
#229 [ゆう]
久しぶりに会うレナはなんだか痩せて見えた
リビングのテーブルに二人向かい合って座った
普通の話しじゃないと思った
レナはなかなか切り出さない
「どうした?」
俺はできるだけ優しくそう言った
:07/08/04 04:14 :D902iS :☆☆☆
#230 [ゆう]
「子供できたの」
レナは確かにそう言った
俺の子供なんだろう
この前まで別れようと思ってたのに、なぜかすごくすごく嬉しかった
「まじで!?」
この時の俺はきっと子供みたいに喜んでた
:07/08/04 04:17 :D902iS :☆☆☆
#231 [ゆう]
「え、いいの?」
喜んでいる俺を見て驚いたレナがそう聞いてきた
「ダメなわけないじゃん!つーか、おろしたら逆に嫌だよ。元気な子産んでほしい」
俺のありのままの本心を伝えた
レナは泣いてた
:07/08/04 04:19 :D902iS :☆☆☆
#232 [ゆう]
俺とレナの子供が、レナのお腹の中に宿った
涙が出る程嬉しかった
不安なんかより全然、父親になれることの喜びの方が大きかった
22年間生きてて一番幸せな瞬間だった
子供が生まれる前に、落ち着いたら籍を入れる約束をした
:07/08/04 04:23 :D902iS :☆☆☆
#233 [ゆう]
すぐに寮を出て新しいマンションに移った
レナと、俺と、子供のための新居
必ず毎日寝る前、元気な子が生まれますようにって頭ん中で呟いてから眠りについた
レナは仕事を辞めた
:07/08/04 04:38 :D902iS :☆☆☆
#234 [ゆう]
「ユウさん、最近めっちゃ機嫌いいっすね」
ルイが俺に言った
「あぁ、子供生まれるんだ♪」
「まじっすか!?いつです!?」
「あと10ヶ月ぐらいかかるんじゃない?俺、父親だよ」
「良かったっすね!夢、叶いましたね!おめでとうございます!」
ルイは祝福してくれた
:07/08/04 04:42 :D902iS :☆☆☆
#235 [ゆう]
それから俺は、どこかに買い物に行って赤ちゃん用品を目にする度、必ず何かを買って帰った
レナにはいつも
「気が早いよぉ」
と笑われた
楽しみで仕方なかった
俺は絶対自分の子を大切にする
自分と同じ思いは絶対させない
そう強く思った
:07/08/04 12:57 :D902iS :☆☆☆
#236 [ゆう]
レナがたまに自分のお腹を触りながら
「早く会いたいなぁ、明日にでも生まれてくれないかな」
と言っているとこを見た時なぜかすごくレナを愛しく感じた
やっぱりこの女を好きで良かった
そう思ったんだ
:07/08/04 13:01 :D902iS :☆☆☆
#237 [ゆう]
それから最大限にレナをいたわった
「いやいや俺がするよ」
が口癖になってた。笑
産婦人科にも一緒に行った
「あなたがお父さんですか?」
って病院の先生に聞かれた時嬉しくて思わず
「はい!!!」
とバカでかい声で返事をして笑われた
:07/08/04 13:12 :D902iS :☆☆☆
#238 [ゆう]
毎日毎日、子供は女か男かって言い合った
元気に生まれて育ってくれたらいいねってレナは言ってた
なにもかもが順調だった
俺はすごく幸せだったよ
:07/08/04 23:55 :D902iS :☆☆☆
#239 [ゆう]
「なんすか!?この部屋!!」
それは、新しい自分のマンションにルイを呼んだ時のこと
ルイは一つの部屋を見つけ次第そう叫んだ
「あぁ、子供の部屋」
俺は普通にそう答えた
その部屋には赤ちゃんのベッドやおもちゃ、家具なんかが、(俺なりに)綺麗に揃えて置いてある
:07/08/05 12:36 :D902iS :☆☆☆
#240 [ゆう]
「もう今から産まれてもいいってぐらい準備いいっすね〜」
「だって楽しみじゃん!」
そんな会話の後ルイは急に
「俺はまだこの店そんな長くないけど、みんなユウさんは変わったって言ってますよ」
なんて言い出した
「え?何で?」
俺はびっくりした
俺が変わった?
:07/08/05 12:40 :D902iS :☆☆☆
#241 [ゆう]
「みんな言ってますよ、ユウは柔らかくなったとか、人間らしくなったとか。俺、最近のユウさんしか知らないんで、ユウさんって優しいっすよねってみんなに言ったら、ちょっと前まではとんでもなかったよーって言われました笑」
「そうなんだ笑」
俺はびっくりした
そんなに俺変わったんだ
レナと付き合ってからかな?
なんか嬉しかった
:07/08/05 12:45 :D902iS :☆☆☆
#242 [ゆう]
それから俺とレナの子供は、レナのお腹の中で順調に育っているはずだった
俺は、産まれて来るはずの子供をずっと待ち遠しくしていた
もうあの子は俺のところへ戻って来てくれないのかな?
:07/08/06 20:05 :D902iS :☆☆☆
#243 [ゆう]
「ナオキ、ホストやめるの?」
レナが俺に聞いた
「んー、まだ辞めない。てか俺新しい店任されるし辞めれないっしょ」
俺が答える
「そーだよねぇー」
ちょっと素っ気なかったかな?
今思うと俺は少し自己中だったかな
:07/08/06 20:13 :D902iS :☆☆☆
#244 [ゆう]
その夜俺らは婚姻届けを書いた
「あたしから書きたーい」
レナは子供みたいにハシャいでた
続けて俺も緊張しながら名前を書いた
『直輝(ナオキ)』
久しぶりに本名を漢字で書いたなぁ
その日はお互い名前だけ書いて、レナの印鑑が実家にあるから、また今度子供が産まれるまでに全部書いて役所に出そう、ってことになった
:07/08/06 20:59 :D902iS :☆☆☆
#245 [ゆう]
レナとは色々あったし、何度も嘘つかれたり隠し事されたり裏切られたけど‥最後に信じてみよう
今までのこと全部忘れよう
その頃季節は真夏だった
クーラーなしじゃ死ぬほど暑い
昼過ぎに店が終わって家に帰るといつもレナがクーラーをかけて待っている
:07/08/06 21:19 :D902iS :☆☆☆
#246 [ゆう]
「ただいまー‥あつっ」
玄関を開けるとムワッと夏特有の暑さが俺を迎えた
「あっ、おかえり」
レナがリビングから出て来た
「暑くね?クーラーかけなかったの?」
俺はシャツをパタパタ仰いだ
:07/08/06 21:22 :D902iS :☆☆☆
#247 [ゆう]
「あぁクーラーかけるの忘れてた!暑いよね、今からつけるね」
俺は忘れるわけねーだろと心の中でレナに突っ込んだ
「今までどっか行ってたの?さっき家ついたとか?」
俺の問いにレナは
「ずっと家にいたよ」
と言っていた
こんな暑い部屋によくいれたな
俺はその時それしか思わなかった
:07/08/06 21:25 :D902iS :☆☆☆
#248 [ゆう]
ある日俺は同業周りで他の店のイベントに顔を出しに行っていた
その店は、セイヤがナンバーワンを勤める店だった
正直マジで嫌だった
「まさかユウくんが来てくれるとは思ってなかったよ」
そう行って俺に近づいて来たのはセイヤ
「仕事なんで、嫌々ですけど」
俺は愛想良く返した
:07/08/06 23:05 :D902iS :☆☆☆
#249 [ゆう]
「あ、俺子供産まれるんです」
ニコッと笑ってやった
セイヤは驚いた顔で
「‥レナとの子共?」
って聞いてきた
「そうっす。結婚するんで」
セイヤは黙ってた
ただ、何か可哀想なものを見るような目で俺を見た
:07/08/06 23:09 :D902iS :☆☆☆
#250 [ゆう]
セイヤの態度が気になったけど、適当にシャンパンを卸してすぐ自分の店に戻った
帰り際、セイヤに
「もうレナに近づかないでくださいね」
と言った
その時、この俺の言葉は無力だった
:07/08/09 10:32 :D902iS :☆☆☆
#251 [ゆう]
その頃の俺は、子供の部屋を見ると嫌なことも忘れられた
赤ちゃんのベッドや沢山のおもちゃを見ると、もうすぐ産まれてくる自分の子供が楽しみで、その日嫌なことがあっても自然と癒されたんだ
昔からの俺の客には
「最近ユウ楽しそう」とか「柔らかくなった」とか言われるようになった
ずっと友営でやって来てる子には結婚することも子供ができたことも打ち明けた
:07/08/09 10:38 :D902iS :☆☆☆
#252 [ゆう]
ある日俺は、本屋で赤ちゃんに名前をつける時に参考になる本を買って帰った
レナと本を見ているうちに、画数とか色々含め、女の子だったら桜って名前がいいねって話した
それから毎日、暇があればその本を読んでた
『直輝』
この名前を俺の親はどんな気持ちで俺につけたんだろう?
その親二人に捨てられた今では、何も分からなかった
:07/08/09 14:41 :D902iS :☆☆☆
#253 [ゆう]
それから一ヶ月くらい経った時のこと
レナに行ってきますと言って家を出た俺は、店について俺を指名していた客を接客した後、携帯を忘れたことに気づいて家に取りに戻った
別に取りに戻らなくても良かったのに、その日は平日で店が暇だったし、本当になんとなくの行動だった
:07/08/09 15:19 :D902iS :☆☆☆
#254 [ゆう]
家についてインターフォンを鳴らす
レナは出なかった
おかしいなと思いつつ俺は鍵で部屋に入った
部屋にレナはいなかった
時刻は確か午前2時
俺はその場でレナに
『今なにしてる?』
ってメールを送った
:07/08/09 15:22 :D902iS :☆☆☆
#255 [ゆう]
少し経ってレナから返信が来た
『テレビ見てるよ〜もう眠いから寝そうだけど』
部屋にレナはいないしテレビもついてない
『どこでテレビ見てんの?』
そう送った
レナからの返信は
『家だよ』
:07/08/09 15:25 :D902iS :☆☆☆
#256 [ゆう]
『だよね、おやすみ』
そう送った後俺は店に戻った
何も知らなきゃ良かった
いつも、知って傷つくことばっかりだよ
:07/08/09 15:27 :D902iS :☆☆☆
#257 [ゆう]
店に戻ると、二部の時間帯なのに何でか一部の従業員がスタッフルームにいた
「あ、ユウさん!」
俺に用があったらしく、俺を見るなり駆け寄ってきた
「今日レナさん見たんです」
そいつは気まずそうな顔で俺に教えてくれた
セイヤが働いている店から、セイヤの送りで店から出て来るレナの姿を見たってことを
:07/08/10 00:23 :D902iS :☆☆☆
#258 [ゆう]
「お前それ教えてくれるためにここまで来てくれたの?」
俺は平然を装って言った
さっきの今っていう状況で、レナを信じられるわけない俺はかなりのショックを受けていた
そいつに軽く礼を言っていつものように仕事に戻った
:07/08/10 00:26 :D902iS :☆☆☆
#259 [ゆう]
俺はその朝、営業時間が終わってからトウヤに電話をかけてみた
トウヤが夜の世界から足を洗ってから、一切連絡の取り合いはなかった
だけどなんとなく、俺の中ではこいつが一番の友達だった
:07/08/10 00:29 :D902iS :☆☆☆
#260 [ゆう]
「もしもし」
何回か呼び出し音が鳴った後、眠そうな声で電話に出たトウヤ
声を聞くのはすごく久しぶりだった
「もしもし?ユウだけど分かる?」
「うわー久しぶり、どしたん?」
「ごめん起こした?」
「いいよ、もう起きる時間だし。ユウ仕事終わったんだ」
:07/08/10 00:32 :D902iS :☆☆☆
#261 [ゆう]
そんな会話をした後俺はトウヤに今の状況を話し始めた
レナと付き合ってから、二回隠れて風俗で働かれたこと
セイヤの紹介だったこと
セイヤに金を渡してたこと
子供ができて結婚すること
今日レナがセイヤの店に行っていたってこと
:07/08/10 00:35 :D902iS :☆☆☆
#262 [ゆう]
一通り話し終わったところでトウヤは
「お前、バカ?」
とだけ言った
俺も十分わかってる
何度も目を瞑っては裏切られて、それでも大好きなんだから
「昔からレナって子、いい噂ないじゃん。やめときな、ユウを大切にしないような女、ユウが大切にする必要ない」
トウヤはそう言った
:07/08/10 00:38 :D902iS :☆☆☆
#263 [ゆう]
トウヤの言葉に少し目頭が熱くなった
なんで俺はこんなにもレナのこと好きなんだろう?
「そうだよな‥俺おかしいわ。でもやっぱ子供も産まれるしさ」
俺はそう力なく言った
「あぁそっか、そうだったな。んーまぁもう深入りはすんなよ!じゃあ俺もうすぐ仕事だから行くわ。何かあったら連絡して」
トウヤはそう言って電話を切った
:07/08/10 10:34 :D902iS :☆☆☆
#264 [ゆう]
俺はレナに話す覚悟で家に帰った
でも別れることだけはしたくなかった
俺はなぜか、どうしようもなくレナが好きだったし、産まれてくる子供の顔だって見たい
俺はあの子の父親だから
多分この時の俺は、レナの口から直接
「セイヤとは何もない」
って言葉が聞きたかったんだろう
:07/08/11 00:18 :D902iS :☆☆☆
#265 [ゆう]
決死の覚悟で部屋に入った
レナはいなかった
ありえねーだろ、もう朝8時過ぎてるし
レナに電話をかけてみたけど、出たのはレナじゃなくて
「こちらはNTTドコモです‥」
っていうガイダンスだった
電源切ってんのかな
:07/08/11 00:28 :D902iS :☆☆☆
#266 [ゆう]
もういーや
投げやりな気持ちでベッドに横たわった
目が覚めたら夕方だった
思い体を起こしてシャワーを浴びた
レナの帰宅はまだだった
電話も繋がらないまま
:07/08/11 01:42 :D902iS :☆☆☆
#267 [ゆう]
結局レナは俺が仕事に行く時間になっても帰って来なかった
何かあったのか心配になったけど、やっぱり何度かけても電源は切れたままだった
その日何度も
「ユウくん今日携帯気にしてるね」
って言われた
:07/08/11 02:10 :D902iS :☆☆☆
#268 [ゆう]
その日営業時間が終わって家に帰ると、レナがリビングのソファに座って雑誌を読んでいた
「ただいま」
「おかえりー」
おかえり、と言ったレナは少し酒の匂いがした
「どこ行ってたの?」
俺はそれを聞かずにはいられなかった
:07/08/11 04:29 :D902iS :☆☆☆
#269 [ゆう]
「女友達と家飲みしてたー」
レナは雑誌から顔を上げようとしなかった
「携帯、切ってた?」
「うん充電なくてーごめんね」
「出掛けるならちゃんと言ってってよ、心配するじゃん」
「ナオキごめんねー。さ、もう寝ようよ」
レナは気にする素振りもなく俺の言葉さえ流した
:07/08/11 04:33 :D902iS :☆☆☆
#270 [ゆう]
「レナ、ちゃんと聞いてる?」
「わかってる!だってナオキは仕事忙しいし別にあたしが遊ぶくらいいいじゃん!」
レナは少し声を張り上げた
「は?遊ぶなとは言ってないし仕事は仕事だろ」
俺はカチンと来てきつく言ってしまった
:07/08/11 04:38 :D902iS :☆☆☆
#271 [ゆう]
「だいたいさ、お前の遊び方って未だにセイヤさんがいるクラブに通うことかよ!」
俺はキレた乗りで言ってしまった
レナはびっくりしてこっちを見てる
「お前が家でテレビ見てるって言った時、俺ここにいたんだよ」
レナは何も言わない
:07/08/11 04:41 :D902iS :☆☆☆
#272 [ゆう]
「俺んとこの従業員も見たって言うし、間違いないだろ」
レナはドカッとソファに座ると煙草に火をつけた
「レナ、やめろ」
俺の言葉の意味が分からないかのようにレナが煙草を吸い続ける
:07/08/11 04:44 :D902iS :☆☆☆
#273 [ゆう]
俺はレナから、子供ができたと聞いた日以来、レナの前で煙草は吸わないようになった
今では煙草がなくても平気になっていたから、これを機に禁煙をした
レナにもなるべく煙草は吸わせなかった
酒も飲ませなかった
:07/08/11 04:47 :D902iS :☆☆☆
#274 [ゆう]
「レナ!お前腹ん中に子供いんのに酒飲んだり煙草吸ったり、いい加減やめろよ。わかってんの?」
俺の必死の言葉に、レナは少し鼻で笑ったように見えた
そしてその後こう言った
「ちょっと前にもう、堕ろしたけど」
:07/08/11 04:51 :D902iS :☆☆☆
#275 [ゆう]
‥‥‥‥‥‥‥は?
俺の子は?
もういないの?
意味わかんねぇ
:07/08/11 10:34 :D902iS :☆☆☆
#276 [ゆう]
「なのにさ、ナオキなんか嬉しそうに子供服とかおもちゃとか色々買ってきてウケたし」
今俺の目の前にいるのは、レナ?
「名前の本買って来た時は困ったなー。あははっ」
そんなことより、俺の子供はもういないの‥?
:07/08/11 10:44 :D902iS :☆☆☆
#277 [ゆう]
「‥子供は?もういないの?」
俺は呆然と立ち尽くすしかできなかった
「だからー堕ろしたって言ってるじゃん。このまま黙って結婚しちゃおうと思ったけど」
気づけば俺は泣いていた
レナはこっちを見てないから気づいてない
やばい、俺ださいな
:07/08/11 10:54 :D902iS :☆☆☆
#278 [ゆう]
俺は黙って部屋を出た
何て表現したらいいのかな
すごく大切な人に、すごく大切なものを壊された感じだった
なんとも言えない怒りとか、悲しみとか、いろんな感情が混ざりあってるみたいだった
こんなことされてもまだ、レナを好きな自分がいた
レナを愛しすぎてたんだね
:07/08/11 12:35 :D902iS :☆☆☆
#279 [ゆう]
俺はしばらく家には戻らないと決めた
その間にレナが家を出てってくれればいいと思って、とりあえずその日はビジネスホテルに泊まった
なかなか寝付けなくて、何度もレナのことを考えた
だけどいくら考えたってレナの気持ちなんてわからなかった
:07/08/11 15:01 :D902iS :☆☆☆
#280 [ゆう]
次の日俺は普通に仕事に行った
営業時間が終わって、ルイを連れてファミレスに朝ご飯を食べに行った
奥の喫煙席に座って煙草に火をつける
「あれ?ユウさん、禁煙やめたんですか?」
「あぁ、もういいみたい」
俺は力なく笑った
:07/08/13 13:36 :D902iS :☆☆☆
#281 [ゆう]
「え、でも子供できたから煙草辞めたって‥」
「もういいみたい」
ルイの言葉を途中で遮って俺はそう言った
ルイは不思議そうな顔で俺の煙草を見つめ続けた
:07/08/13 13:43 :D902iS :☆☆☆
#282 [ゆう]
「ユウさん何か元気ないっすよー」
ルイはそう言って、飲んでいたコーラをストローでブクブクさせた
「やめろよ汚ねーだろ」
俺が注意するとルイは嬉しそうに
「今の、父親っぽいっすね!」
と言った
:07/08/13 23:42 :D902iS :☆☆☆
#283 [ゆう]
俺はその『父親っぽい』って言葉に涙が出そうだった
なれるはずだったのに‥
「どうしたんすかユウさん!‥泣いてるんです?」
俺は小さな声で
「子供、ダメになったんだ」
それだけ言った
:07/08/13 23:47 :D902iS :☆☆☆
#284 [ゆう]
「え‥流産したんですか‥?」
俺は顔を横に振った
「‥‥堕ろしたって‥」
俺は我慢できずに下を向いて少し泣いた
「なんで‥?」
ルイはそう俺に聞いたけど、そんなこと俺が一番知りたいこと
:07/08/13 23:52 :D902iS :☆☆☆
#285 [ゆう]
俺はただ
「わかんね」
とだけ言った
その後特に会話をするわけでもなく、ファミレスを出て別れた
俺の向かった先は、タツミさんのアパートだった
:07/08/14 04:30 :D902iS :☆☆☆
#286 [ゆう]
ここに来るのは何年かぶりだった
インターフォンを鳴らすとタツミさんが走って来てドアを開けてくれた
「ナオキ?どうしたん?」
タツミさんは俺を本名で呼んだ
なんか懐かしくて癒された
:07/08/14 16:14 :D902iS :☆☆☆
#287 [ゆう]
「まぁ飲めよ」
俺をリビングのソファーに座らせたタツミさんがオレンジジュースを出してくれた
「いただきます‥うわっ」
オレンジジュースじゃなかった
「酒入ってる、最悪っすね」
俺は笑いながら言った
:07/08/17 02:51 :D902iS :☆☆☆
#288 [ゆう]
「バカか!この俺がソフトドリンクなんか出すと思うな!俺お手製のスクリュードライバーだよ」
タツミさんは自信満々にそう言った
「あはは、タツミさん、スクリュードライバーはウォッカっすよ。これ多分、ジン入ってます」
俺は笑った
昔からタツミさんはどこか抜けてる
それが素直に面白かった
:07/08/17 02:57 :D902iS :☆☆☆
#289 [ゆう]
「‥なんだ、ナオキちゃんと笑えるじゃん」
タツミさんは安心したように言った
「何があったか、言いなさい」
タツミさんが優しく俺に視線を向けた
タツミさんはやっぱり、俺の父親的存在だなぁ
この時改めて思った
:07/08/17 02:59 :D902iS :☆☆☆
#290 [ゆう]
「俺、ずっと前から好きな女がいるんです。多分、俺が19歳の時から」
俺は静かに話し始めた
ひとつひとつ、大切に思い出しながら
「俺が好きになった女は、ホストにハマってキャバで働くようになった子でした。セイヤってわかりますか?○○の代表の。担当はそいつでした」
「あぁ‥わかるよ」
タツミさんはたまに相槌をうった
:07/08/17 10:39 :D902iS :☆☆☆
#291 [ゆう]
「その時ぐらいに俺、自分の客が店に来るためにソープで働いてるって知ったんです。ハタチのバースデーの時でした」
俺はエリコさんを思い出した
「他に俺の客で風俗の子とかキャバの子って沢山いるけど、その人は違いました。その人、俺と出会った時は普通のOLさんでした。俺のせいで、ソープで働くようになって、俺の太客になりました。俺がその人を変えてしまいました」
:07/08/17 10:50 :D902iS :☆☆☆
#292 [ゆう]
タツミさんは何も言わないでずっと俺を見ていた
「それで俺、すげー落ち込んで。俺がホストじゃなかったらこの人の人生は狂わなかったんだって、そう思いました」
「そんな時、ずっと俺を支えてくれてたのは、レナでした。それからちょっとして、成り行きでレナは俺の家に住むことになって、ちょっとの間二人で暮らしてました」
俺は、溶けていくグラスの氷をずっと見ていた
:07/08/17 11:59 :D902iS :☆☆☆
#293 [ゆう]
「でも二人暮らしはすぐ終わりました。レナの電話を聞いちゃって。俺は都合良く使ってるだけだって、寝床にしてるだけだって、そう言ってました」
タツミさんの表情が曇った
「で、部屋出てってもらいました。しばらくの間めっちゃ落ち込んだし女癖も前よりもっと悪くなって。だから、刺されたこともありました」
俺は笑って言った
タツミさんは苦笑いだった
:07/08/17 13:32 :D902iS :☆☆☆
#294 [ゆう]
「だけどしばらくしてレナが店に来ました。謝りに。あの電話は誤解だって言ってました」
「本当に誤解なのか?」
タツミさんの問いに俺は
「わかりません。でもその時の俺は、好きな女は信じるしかねーだろと思って、許して、また一緒に住み始めました」
そう言った
:07/08/17 13:35 :D902iS :☆☆☆
#295 [ゆう]
「それからまた成り行きで、付き合うことになりました。その時レナはキャバ辞めてて、昼間働いてました。だけど付き合って少し経って、またキャバ嬢に戻りました。でも本当は、セクキャバでした」
「お前の店に通うために?」
タツミさんは静かに俺に聞いた
:07/08/17 13:41 :D902iS :☆☆☆
#296 [ゆう]
「レナがセクキャバで働いてるって知った時に問いつめたら、そうやって言ってましたね。俺の店に行きたいからだって。だから俺、また思ったんです。俺がホストじゃなかったらレナはこんな思いしなくて済んだのにって。それで、店には来るなって言ってレナにはセクキャバ辞めてもらいました」
タツミさんは口を挟まず真剣に俺の話しを聞いてくれていた
:07/08/17 13:45 :D902iS :☆☆☆
#297 [ゆう]
「そしたら次はレナ、風俗で働いてて。気づかなかった俺も悪いんですけど。レナ、セイヤに金払ってたんです。店にも通ってるみたいで。セクキャバもヘルスも全部、セイヤのスカウトでした。セイヤとはもう切れてると思ってたからめっちゃショックでした」
タツミさんはため息をついて
「なんでそんな女‥」
と言った
:07/08/17 13:50 :D902iS :☆☆☆
#298 [ゆう]
「俺、レナに依存してたんだと思います。まともな恋愛とかしたことなくて、本気で好きになったのも、レナが初めてでした」
タツミさんは笑って
「お前は相変わらずどうしようもねー男だな」
って言った
:07/08/17 13:52 :D902iS :☆☆☆
#299 [ゆう]
「まぁさすがの俺もキレて、真剣別れも考えました。だけど、子供ができたんです」
タツミさんは驚いたように顔を上げた
「俺昔から子供大好きで。なんか、怒ってるのも忘れるぐらい嬉しくて。3度目の正直みたいに、許して、結婚するって決めました」
:07/08/17 13:56 :D902iS :☆☆☆
#300 [ゆう]
「それから毎日考えるのは子供のことばっかりでした。俺、嬉しくて、おもちゃとか服とか家具も揃えちゃって。名前の本も買いました」
タツミさんは、俺が小学校を卒業してから両親が家を出てったことも知っていたから、この話しの時の表情は穏やかだった
「俺すげー楽しみで、絶対いい親になるって決めました。だけど、子供、産まれないんです」
:07/08/17 14:01 :D902iS :☆☆☆
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