俺がホストじゃなかったら
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#271 [ゆう]
「だいたいさ、お前の遊び方って未だにセイヤさんがいるクラブに通うことかよ!」

俺はキレた乗りで言ってしまった

レナはびっくりしてこっちを見てる

「お前が家でテレビ見てるって言った時、俺ここにいたんだよ」

レナは何も言わない

⏰:07/08/11 04:41 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#272 [ゆう]
「俺んとこの従業員も見たって言うし、間違いないだろ」

レナはドカッとソファに座ると煙草に火をつけた


「レナ、やめろ」

俺の言葉の意味が分からないかのようにレナが煙草を吸い続ける

⏰:07/08/11 04:44 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#273 [ゆう]
俺はレナから、子供ができたと聞いた日以来、レナの前で煙草は吸わないようになった

今では煙草がなくても平気になっていたから、これを機に禁煙をした

レナにもなるべく煙草は吸わせなかった

酒も飲ませなかった

⏰:07/08/11 04:47 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#274 [ゆう]
「レナ!お前腹ん中に子供いんのに酒飲んだり煙草吸ったり、いい加減やめろよ。わかってんの?」

俺の必死の言葉に、レナは少し鼻で笑ったように見えた

そしてその後こう言った





「ちょっと前にもう、堕ろしたけど」

⏰:07/08/11 04:51 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#275 [ゆう]
‥‥‥‥‥‥‥は?




俺の子は?

もういないの?


意味わかんねぇ

⏰:07/08/11 10:34 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#276 [ゆう]
「なのにさ、ナオキなんか嬉しそうに子供服とかおもちゃとか色々買ってきてウケたし」


今俺の目の前にいるのは、レナ?


「名前の本買って来た時は困ったなー。あははっ」

そんなことより、俺の子供はもういないの‥?

⏰:07/08/11 10:44 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#277 [ゆう]
「‥子供は?もういないの?」

俺は呆然と立ち尽くすしかできなかった

「だからー堕ろしたって言ってるじゃん。このまま黙って結婚しちゃおうと思ったけど」

気づけば俺は泣いていた

レナはこっちを見てないから気づいてない

やばい、俺ださいな

⏰:07/08/11 10:54 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#278 [ゆう]
俺は黙って部屋を出た

何て表現したらいいのかな

すごく大切な人に、すごく大切なものを壊された感じだった

なんとも言えない怒りとか、悲しみとか、いろんな感情が混ざりあってるみたいだった

こんなことされてもまだ、レナを好きな自分がいた

レナを愛しすぎてたんだね

⏰:07/08/11 12:35 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#279 [ゆう]
俺はしばらく家には戻らないと決めた

その間にレナが家を出てってくれればいいと思って、とりあえずその日はビジネスホテルに泊まった

なかなか寝付けなくて、何度もレナのことを考えた

だけどいくら考えたってレナの気持ちなんてわからなかった

⏰:07/08/11 15:01 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#280 [ゆう]
次の日俺は普通に仕事に行った

営業時間が終わって、ルイを連れてファミレスに朝ご飯を食べに行った

奥の喫煙席に座って煙草に火をつける

「あれ?ユウさん、禁煙やめたんですか?」

「あぁ、もういいみたい」

俺は力なく笑った

⏰:07/08/13 13:36 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#281 [ゆう]
「え、でも子供できたから煙草辞めたって‥」

「もういいみたい」

ルイの言葉を途中で遮って俺はそう言った


ルイは不思議そうな顔で俺の煙草を見つめ続けた

⏰:07/08/13 13:43 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#282 [ゆう]
「ユウさん何か元気ないっすよー」

ルイはそう言って、飲んでいたコーラをストローでブクブクさせた

「やめろよ汚ねーだろ」

俺が注意するとルイは嬉しそうに

「今の、父親っぽいっすね!」

と言った

⏰:07/08/13 23:42 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#283 [ゆう]
俺はその『父親っぽい』って言葉に涙が出そうだった

なれるはずだったのに‥


「どうしたんすかユウさん!‥泣いてるんです?」

俺は小さな声で

「子供、ダメになったんだ」

それだけ言った

⏰:07/08/13 23:47 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#284 [ゆう]
「え‥流産したんですか‥?」

俺は顔を横に振った

「‥‥堕ろしたって‥」

俺は我慢できずに下を向いて少し泣いた

「なんで‥?」

ルイはそう俺に聞いたけど、そんなこと俺が一番知りたいこと

⏰:07/08/13 23:52 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#285 [ゆう]
俺はただ

「わかんね」

とだけ言った

その後特に会話をするわけでもなく、ファミレスを出て別れた

俺の向かった先は、タツミさんのアパートだった

⏰:07/08/14 04:30 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#286 [ゆう]
ここに来るのは何年かぶりだった

インターフォンを鳴らすとタツミさんが走って来てドアを開けてくれた

「ナオキ?どうしたん?」

タツミさんは俺を本名で呼んだ

なんか懐かしくて癒された

⏰:07/08/14 16:14 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#287 [ゆう]
「まぁ飲めよ」

俺をリビングのソファーに座らせたタツミさんがオレンジジュースを出してくれた

「いただきます‥うわっ」

オレンジジュースじゃなかった

「酒入ってる、最悪っすね」

俺は笑いながら言った

⏰:07/08/17 02:51 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#288 [ゆう]
「バカか!この俺がソフトドリンクなんか出すと思うな!俺お手製のスクリュードライバーだよ」

タツミさんは自信満々にそう言った

「あはは、タツミさん、スクリュードライバーはウォッカっすよ。これ多分、ジン入ってます」

俺は笑った

昔からタツミさんはどこか抜けてる

それが素直に面白かった

⏰:07/08/17 02:57 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#289 [ゆう]
「‥なんだ、ナオキちゃんと笑えるじゃん」

タツミさんは安心したように言った

「何があったか、言いなさい」

タツミさんが優しく俺に視線を向けた

タツミさんはやっぱり、俺の父親的存在だなぁ

この時改めて思った

⏰:07/08/17 02:59 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#290 [ゆう]
「俺、ずっと前から好きな女がいるんです。多分、俺が19歳の時から」

俺は静かに話し始めた

ひとつひとつ、大切に思い出しながら


「俺が好きになった女は、ホストにハマってキャバで働くようになった子でした。セイヤってわかりますか?○○の代表の。担当はそいつでした」

「あぁ‥わかるよ」

タツミさんはたまに相槌をうった

⏰:07/08/17 10:39 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#291 [ゆう]
「その時ぐらいに俺、自分の客が店に来るためにソープで働いてるって知ったんです。ハタチのバースデーの時でした」

俺はエリコさんを思い出した

「他に俺の客で風俗の子とかキャバの子って沢山いるけど、その人は違いました。その人、俺と出会った時は普通のOLさんでした。俺のせいで、ソープで働くようになって、俺の太客になりました。俺がその人を変えてしまいました」

⏰:07/08/17 10:50 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#292 [ゆう]
タツミさんは何も言わないでずっと俺を見ていた

「それで俺、すげー落ち込んで。俺がホストじゃなかったらこの人の人生は狂わなかったんだって、そう思いました」

「そんな時、ずっと俺を支えてくれてたのは、レナでした。それからちょっとして、成り行きでレナは俺の家に住むことになって、ちょっとの間二人で暮らしてました」

俺は、溶けていくグラスの氷をずっと見ていた

⏰:07/08/17 11:59 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#293 [ゆう]
「でも二人暮らしはすぐ終わりました。レナの電話を聞いちゃって。俺は都合良く使ってるだけだって、寝床にしてるだけだって、そう言ってました」

タツミさんの表情が曇った

「で、部屋出てってもらいました。しばらくの間めっちゃ落ち込んだし女癖も前よりもっと悪くなって。だから、刺されたこともありました」

俺は笑って言った

タツミさんは苦笑いだった

⏰:07/08/17 13:32 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#294 [ゆう]
「だけどしばらくしてレナが店に来ました。謝りに。あの電話は誤解だって言ってました」

「本当に誤解なのか?」

タツミさんの問いに俺は

「わかりません。でもその時の俺は、好きな女は信じるしかねーだろと思って、許して、また一緒に住み始めました」

そう言った

⏰:07/08/17 13:35 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#295 [ゆう]
「それからまた成り行きで、付き合うことになりました。その時レナはキャバ辞めてて、昼間働いてました。だけど付き合って少し経って、またキャバ嬢に戻りました。でも本当は、セクキャバでした」

「お前の店に通うために?」

タツミさんは静かに俺に聞いた

⏰:07/08/17 13:41 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#296 [ゆう]
「レナがセクキャバで働いてるって知った時に問いつめたら、そうやって言ってましたね。俺の店に行きたいからだって。だから俺、また思ったんです。俺がホストじゃなかったらレナはこんな思いしなくて済んだのにって。それで、店には来るなって言ってレナにはセクキャバ辞めてもらいました」

タツミさんは口を挟まず真剣に俺の話しを聞いてくれていた

⏰:07/08/17 13:45 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#297 [ゆう]
「そしたら次はレナ、風俗で働いてて。気づかなかった俺も悪いんですけど。レナ、セイヤに金払ってたんです。店にも通ってるみたいで。セクキャバもヘルスも全部、セイヤのスカウトでした。セイヤとはもう切れてると思ってたからめっちゃショックでした」

タツミさんはため息をついて

「なんでそんな女‥」

と言った

⏰:07/08/17 13:50 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#298 [ゆう]
「俺、レナに依存してたんだと思います。まともな恋愛とかしたことなくて、本気で好きになったのも、レナが初めてでした」

タツミさんは笑って

「お前は相変わらずどうしようもねー男だな」

って言った

⏰:07/08/17 13:52 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#299 [ゆう]
「まぁさすがの俺もキレて、真剣別れも考えました。だけど、子供ができたんです」

タツミさんは驚いたように顔を上げた

「俺昔から子供大好きで。なんか、怒ってるのも忘れるぐらい嬉しくて。3度目の正直みたいに、許して、結婚するって決めました」

⏰:07/08/17 13:56 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#300 [ゆう]
「それから毎日考えるのは子供のことばっかりでした。俺、嬉しくて、おもちゃとか服とか家具も揃えちゃって。名前の本も買いました」

タツミさんは、俺が小学校を卒業してから両親が家を出てったことも知っていたから、この話しの時の表情は穏やかだった

「俺すげー楽しみで、絶対いい親になるって決めました。だけど、子供、産まれないんです」

⏰:07/08/17 14:01 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


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