先輩と旅立ちの唄
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#14 [あかり]
先生は一枚の用紙を、
私の前に置いた。
よく見ると、
誰かの字で書かれた作文用紙だった。
「前の学校で受け持っていた生徒のだ。
今、お前の行きたい高校の一年生だ。」
先生はそう説明した。
:08/10/27 05:30
:SH705i
:JJ7BuDlA
#15 [あかり]
手に取る私。
作文なのに、書きなぐったような感じで、
「やんちゃな少年時代を過ごしました」的な
男子を連想させるような雰囲気だった。
言うなれば、
作文コンクールとかで、
一目で落選をしいたげられるタイプ。
:08/10/27 05:36
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:JJ7BuDlA
#16 [あかり]
そんなことをふと想像したが、
作文を読みはじめた私は、
それを詫びたいと思ったほど、
「深刻」という二文字が
脳裏に浮かんだ。
:08/10/27 05:39
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#17 [あかり]
『小さい頃に両親が離婚して、
それからはお母さんと二人暮らし。
どうしてこの世には
争いや殺し合いなどがあるのだろうか
僕は貧乏だけど、とても幸せです。』
自分なりに要約すると、
こんな感じの内容だった。
:08/10/27 05:44
:SH705i
:JJ7BuDlA
#18 [あかり]
「そいつな、両親が離婚した時のストレスで、
頭の髪の毛が脱毛症になったんだ。
学校では、帽子の着用を許可して登校させてた。」
先生はそう作文の人の詳しい所載を教えてくれた。
:08/10/27 05:51
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:JJ7BuDlA
#19 [あかり]
「そうなんだ…」
用紙をじっと見つめたまま、私は悲しげな気持ちでつぶやいた。
字はお世辞にも、上手いとは言い切れないが、
気持ちがこもっているのは伝わっていた。
:08/10/27 05:54
:SH705i
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#20 [あかり]
両親健在、家庭円満で
何不自由なく過ごしてきた私には、
この作文の人の辛さや寂しさなんて、
一生かけても分からない。
でも、きっとこの人も
私と同じように、
自分の病気を周知されるということに
苦しさを感じなから生きてるんだ。
私は、なんとなく
孤独感から解放されたような気分になった。
:08/10/27 06:00
:SH705i
:JJ7BuDlA
#21 [あかり]
私はずっと
用紙から目を離さなかった。
途中までしか書いていなくて、
書き方も拙い内容だけれど、
私の中の作文コンクールで、
今まさに、一位に輝いた。
:08/10/27 06:05
:SH705i
:JJ7BuDlA
#22 [あかり]
「先生、これ見て。」
私は文章の終わりの近くに
ぐじゃぐじゃと黒で塗り潰してある
毛虫みたいな落書きに気がついた。
「あいつ、提出になっても出さなかったけど、
何か書きたかったんだろうなあ…。」
先生が物寂しげにつぶやく。
書かなかった作文。
書けなかった作文か…。
:08/10/27 06:09
:SH705i
:JJ7BuDlA
#23 [あかり]
それから私は、
志望校に合格した。
作文の人と同じ学校―
なんて思うこともないほど
嬉しさと楽しさでいっぱいで、
私は先生とのあのやり取りを、すっかり忘れていた。
ちなみに、先生は
あの作文を見せたのは
私が初めてだったと言う。
:08/10/27 06:13
:SH705i
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