先輩と旅立ちの唄
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#1 [あかり]
私、現在20歳。

高校時代の恋を、
懐かしさに浸りながら
書き綴っていきたいと思います

初めて書くので
とても下手です

⏰:08/10/27 04:36 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#2 [あかり]
私、あかり。
現在高校一年生。

中学から高校というステップアップに
胸を弾ませながら、
毎日を楽しく過ごしている。

友達もそれなりにできた。

⏰:08/10/27 04:40 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#3 [あかり]
なにせ、離島出身で、
小・中学校と
小規模なメンバーで過ごしてきた。

何クラスもあったり、
廊下を歩く度、知らない人ばかりということが
新鮮でたまらなかった。

―これから、どんな学生生活が始まるかな?―

⏰:08/10/27 04:44 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#4 [あかり]
ある日の掃除時間。

私たちの班の区域は、
一年生の棟と二・三年生の棟を繋ぐ
渡り廊下前の教室だった。

私ともう一人の女の子は、
廊下掃除をすることになった。

⏰:08/10/27 04:49 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#5 [あかり]
「昨日のテレビ、
本当に面白かったよねー。」

他愛もないことを二人で話ながら、
床を掃いたりしていた。

「渡り廊下も、うちらが
しないといけないのかな?」
もう一人の子が言う。

⏰:08/10/27 04:52 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#6 [あかり]
担当となっている廊下は、
掃除時間内の半分に満たないほど
範囲が小さくて、
なんだか物足りないほどだった。

私は渡り廊下の部分も
掃除することにした。

⏰:08/10/27 04:55 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#7 [あかり]
時々、渡り廊下を
行き来する先輩たちとすれ違う。

きっと、掃除区域までの移動のために。

二・三年生とは接触する機会が
全然なかったから、
色んな人が見れたのは嬉しかった。

⏰:08/10/27 05:00 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#8 [あかり]
ある日、いつものように
二人で半分ずつ
渡り廊下を掃いていっていた。

そして、いつものように
見知らぬ先輩たちが行き交う。

⏰:08/10/27 05:03 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#9 [あかり]
そして、今まで見たことのない
男の先輩二人組が歩いてきた。

一人の人はごみ袋を持っていた。

私はふっと
その人の顔を見た。

⏰:08/10/27 05:07 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#10 [あかり]
その時、一瞬自分の中で
時間が止まった。

ありがちな表現しかできないけれど、
妙な感覚に陥った。


―あの人はもしかして…―

⏰:08/10/27 05:10 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#11 [あかり]
話は遡って、
それは私が中学三年生の時。

受験シーズン真っ只中。
そろそろ、志望校を絞らないと
いけない時期だった。

私は担任の先生と
二者面談をしていた。

⏰:08/10/27 05:12 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#12 [あかり]
この学校がいかに
小規模だと思わせるくらい、
こじんまりとした保健室。

二者面談はここで行われた。

「今日はお前に
見せたいものがあって
持って来た。」
先生が話を切り出した。

⏰:08/10/27 05:17 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#13 [あかり]
中学から高校に進学するにあたって、
私は一つ、大きな不安があった。

「もしも、持病が周りに知られて
いじめられたりしたらどうしよう。」
先生にはそう相談していた。

新しい生活、新しい環境、
今までとは大幅に違う、
できるなら、穏便に過ごしたい。

⏰:08/10/27 05:26 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#14 [あかり]
先生は一枚の用紙を、
私の前に置いた。

よく見ると、
誰かの字で書かれた作文用紙だった。

「前の学校で受け持っていた生徒のだ。

今、お前の行きたい高校の一年生だ。」
先生はそう説明した。

⏰:08/10/27 05:30 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#15 [あかり]
手に取る私。

作文なのに、書きなぐったような感じで、
「やんちゃな少年時代を過ごしました」的な
男子を連想させるような雰囲気だった。

言うなれば、
作文コンクールとかで、
一目で落選をしいたげられるタイプ。

⏰:08/10/27 05:36 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#16 [あかり]
そんなことをふと想像したが、
作文を読みはじめた私は、
それを詫びたいと思ったほど、
「深刻」という二文字が
脳裏に浮かんだ。

⏰:08/10/27 05:39 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#17 [あかり]
『小さい頃に両親が離婚して、
それからはお母さんと二人暮らし。


どうしてこの世には
争いや殺し合いなどがあるのだろうか

僕は貧乏だけど、とても幸せです。』
自分なりに要約すると、
こんな感じの内容だった。

⏰:08/10/27 05:44 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#18 [あかり]
「そいつな、両親が離婚した時のストレスで、
頭の髪の毛が脱毛症になったんだ。

学校では、帽子の着用を許可して登校させてた。」

先生はそう作文の人の詳しい所載を教えてくれた。

⏰:08/10/27 05:51 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#19 [あかり]
「そうなんだ…」
用紙をじっと見つめたまま、私は悲しげな気持ちでつぶやいた。

字はお世辞にも、上手いとは言い切れないが、
気持ちがこもっているのは伝わっていた。

⏰:08/10/27 05:54 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#20 [あかり]
両親健在、家庭円満で
何不自由なく過ごしてきた私には、
この作文の人の辛さや寂しさなんて、
一生かけても分からない。

でも、きっとこの人も
私と同じように、
自分の病気を周知されるということに
苦しさを感じなから生きてるんだ。

私は、なんとなく
孤独感から解放されたような気分になった。

⏰:08/10/27 06:00 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#21 [あかり]
私はずっと
用紙から目を離さなかった。

途中までしか書いていなくて、
書き方も拙い内容だけれど、
私の中の作文コンクールで、
今まさに、一位に輝いた。

⏰:08/10/27 06:05 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#22 [あかり]
「先生、これ見て。」
私は文章の終わりの近くに
ぐじゃぐじゃと黒で塗り潰してある
毛虫みたいな落書きに気がついた。

「あいつ、提出になっても出さなかったけど、
何か書きたかったんだろうなあ…。」
先生が物寂しげにつぶやく。

書かなかった作文。
書けなかった作文か…。

⏰:08/10/27 06:09 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#23 [あかり]
それから私は、
志望校に合格した。

作文の人と同じ学校―
なんて思うこともないほど
嬉しさと楽しさでいっぱいで、
私は先生とのあのやり取りを、すっかり忘れていた。

ちなみに、先生は
あの作文を見せたのは
私が初めてだったと言う。

⏰:08/10/27 06:13 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#24 [あかり]
そして、今
私の目の前にいる人。

黒いニット帽を被っている。

帽子…
瞬時にあの時の先生の話を思い出した。


―この人が作文の人…!?―

⏰:08/10/27 06:16 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#25 [あかり]
先輩は、もう一人の人と
楽しそうに話しながら
渡り廊下を過ぎていった。

おそらく、教室のゴミ出し当番なのだろう。

先輩の姿が
ずっと脳裏に焼き付いていた。

⏰:08/10/27 06:20 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#26 [あかり]
小説を読む時、
登場人物を自分なりにイメージするように、
私も作品の人の人物像を
頭の中で作りあげていた。

なんとなく、身長は低くて、
がき大将みたいな感じを想像していた。

実際の先輩は、
高身長で、黒ぶち眼鏡をかけていて、
雰囲気も騒がしい感じではなかった。

⏰:08/10/27 06:25 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#27 [あかり]
それからは、
掃除時間にその先輩が通り過ぎるのを
楽しみにしながら、やり過ごしていた。

ごみ袋を片手に、
友達と話しながら歩く先輩の姿。

あの人は、どんな人なんだろうか?
私の中で興味が湧いた。

⏰:08/10/27 06:30 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#28 [あかり]
「あの帽子被ってる人、
いい匂いするよねぇ〜。」
先輩たちが消えて行った後、そう言い出すもう一人の子。

「うん、私も思った!」
同じ気持ちだったので、
笑顔で答えた。

渡り廊下には、まだ
先輩が身につけているであろう
香水の残り香が漂っていた。

⏰:08/10/27 06:35 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#29 [あかり]
向こうは私の存在を知らないが、
私は先輩のことを知っている。

先輩を初めて見た人は、
「あの人、何で帽子被っているんだろう?」
と、きっと疑問に思う所を、私は理由をだいたい把握している。

なんとも不思議な関係だった。

⏰:08/10/27 06:47 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#30 [あかり]
月も変わり、
掃除区域も変わった。

私のささやかな楽しみは、
区域移動とともになくなった。

「まあ、あの先輩が
作文の人って分かっただけでいいか。」

⏰:08/10/27 22:43 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#31 [あかり]
梅雨に入り―
やがて、台風の時期になった。

私の住んでいた離島は、
一度停電が起こると、ひどい時は一日中電気がつかない。

台風が接近した日曜日―
私は暗闇の中、通常の生活が送れることをじっと待っていた。

⏰:08/10/27 22:51 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#32 [あかり]
真っ暗な部屋で、退屈しのぎに
停電に備えて、あらかじめ充電しておいた
MDウォークマンを聴く。

孤独に耐える時間。
あの先輩を初めて見た時のことを思い出す。

⏰:08/10/27 22:58 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#33 [あかり]
なんとなく思い浮かんだ、のではなく、
あの人の姿を思い出したかった。

「先輩は、この台風をどう過ごしてるかな?」

「大丈夫かな、心配だな…」

⏰:08/10/27 23:02 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#34 [あかり]
脳内に、ひたすら好きな音楽が流れてくるが、
頭の中は気が気ではなかった。

あの作文用紙一枚で、
先輩の心の中の闇を見たように感じた。

「ずっと、寂しかったんだろうな…。」

⏰:08/10/27 23:11 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#35 [あかり]
「そういえば私、
あの先輩の名前を知らないなあ。」

「普段はどんな風に過ごしてるんだろう?」

「何かクラブはやっているのかな?」

もはや台風ということを忘れるくらい、
色んな疑問が、頭の中をよぎった。

⏰:08/10/27 23:14 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#36 [あかり]
そうして、夜中には家に明かりが戻り、
押し寄せてきた台風も、通り過ぎていった。

「また明日から学校だあ。」

⏰:08/10/27 23:17 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#37 [あかり]
それから私は、
先輩と同中だった子に、
先輩のことを尋ねてみた。

「帽子の先輩」といえば、
すぐに相手は頷いた。

「塩見 タクロウって人でしょ。
私、テニス部で一緒だったから。」

⏰:08/10/28 03:32 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#38 [あかり]
タクロウ先輩…

テニス部…

新たな情報が、頭の中で交錯する。

自分の中で神秘めいていた存在である先輩に
少し近づけたみたいで嬉しかった。

⏰:08/10/28 03:36 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#39 [あかり]
そして、色んな人からの情報により、
今は帰宅部らしい。

私は先輩のことを少しずつ知る度、
彼と話してみたいと思うようになった。

しかし同中でない、クラブの接点がない人と
交流を持とうとするのは、なかなか厳しいものである。

⏰:08/10/28 03:41 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#40 [あかり]
ある月の掃除区域―
私たちの班は、進路指導室の担当になった。

渡り廊下の時と同じように、たくさんの人が行き交う。

外にあるごみ捨て場に行くには、
ここを通らなければならない。

⏰:08/10/28 06:51 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#41 [あかり]
班の子と、笑い合いながら
清掃をする私。

皆で廊下に立って、雑談をすることが多かった。

⏰:08/10/28 06:57 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#42 [あかり]
するとその時―
ごみ袋を持った友達と、
一緒にいるタクロウ先輩がこっちに近づいてくる。

ドキドキドキドキ…

⏰:08/10/28 07:02 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#43 [あかり]
すれ違った時、それは今までより先輩を近くに感じて、
私の心臓は最高潮に高鳴った。

そのままごみ捨て場まで向かう二人。

私は先輩の後ろ姿を、
ずっとずっと見ていた。

⏰:08/10/28 07:05 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#44 [あかり]
すれ違ったり、遠くの方で先輩の姿を見かけたりすれば、
ときめいたり、幸せを感じる日々が続いた。

隣のクラスの雪依ちゃんという子と仲良くなり、
お互いに自分の気になる人を打ち上けたりした。

⏰:08/10/28 07:17 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#45 [あかり]
「私は、テニス部のマネージャーしてたら、
2年の和臣先輩って人が
気になるようになって来たの。

あかりちゃんは?」

「私は、ほら帽子被ってる先輩いるじゃん?

塩見タクロウ先輩。

何か、憧れちゃうな…」

⏰:08/10/28 07:21 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#46 [あかり]
私自身、自分の体にコンプレックスを感じていて、
性格も内気な為、前へ前へと出ることが、とても苦手である。

それに対してタクロウ先輩は―

私から見る限りでは、
友達もたくさんいるみたいだし、
ムードメーカーという感じもしていた。

⏰:08/10/28 07:29 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#47 [あかり]
私にはそんな先輩の姿が、
とても輝いて見えた。

辛い過去を乗り越え、
卑屈にならないで、周りに笑顔を配っている。

先輩は今の私の鏡だった。

⏰:08/10/28 07:31 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#48 [あかり]
「ああ、あの人なら分かるよ。

あれ?和臣先輩と塩見先輩って同中じゃなかったかなあ?

それに、中学なら同じテニス部だったんじゃない?」

「本当?
私、あの人と話してみたいなあ。

自分の気持ちを伝えてみたい。」

⏰:08/10/28 07:36 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#49 [あかり]
「そっかあ。
うーん、何かいい案はないかなあ。」

「私、手紙書いてみようかな!
言いたいことも簡潔にまとめられるし、
気持ちも伝わるだろうし。」

「うん、それいいかもね!
直接渡すのが恥ずかしかったら、私、和臣先輩に頼んでみるよ!」

⏰:08/10/28 07:39 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#50 [あかり]
「本当に?
ありがとう。すっごく助かるよ〜!」

「いいのいいの。
それに私も、和臣先輩と話せるチャンスになるしね(笑)」

「お互い様々って訳だね(笑)」

⏰:08/10/28 07:42 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#51 [あかり]
家から帰って―
夕飯や宿題、お風呂を済ませ、
先輩に手紙を書くため、机に向かう。

あれこれ迷んで、ハローキティのレターセットにすることにした。

少しでも乙女心を演出したかったのだ。

⏰:08/10/28 07:48 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#52 [あかり]
「Dear タクロウ先輩、っと…」

色つきボールペンで、カラフルに仕上げる。
文の終わりには絵文字や顔文字を書き、精一杯かわいらしくする。

⏰:08/10/28 07:52 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#53 [あかり]
学校の帰り、電車や船の中で携帯の新規メール機能を使って
作成しておいた手紙の内容を書き込む。

「先輩は私の憧れです」
「これからも、体調などには気をつけてください」

私の思いは、一枚半にぎっしり詰まった。
長すぎず、短すぎず、ほどよいと思った。

⏰:08/10/28 07:58 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#54 [あかり]
「遂に、憧れの先輩に
私の存在が知られるんだあ…。」

布団の中で、
手紙が渡った後のことを考える。

「ああ、でも
なんて思われるかなあ…。
もしかしたら、
不快な思いさせるかも知れないや…。」

⏰:08/10/28 08:03 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#55 [あかり]
手紙の内容には、
あの作文を読んだことを書いてある。

これこそが私が先輩に憧れを抱いた第一歩だから、
書かざるを得なかった。

知らぬ間に、自分の家庭内の事情と、病気の原因を知っている者がいる。

嫌な思いをさせないだろうか。
眠りに就く前で、心配になった。

⏰:08/10/28 08:07 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#56 [あかり]
「でも、私が先輩の存在で勇気を貰ったから、
今度は私が先輩の力になれたらなあ。」

ベッドから起き上がり、
明かりをつけ、机に置いていた手紙をかばんの中に入れた。

「先輩がこの手紙を読んで、何か励みになれたらいいな。」

⏰:08/10/28 08:11 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#57 [あかり]
次の日―
休み時間の合間に、隣のクラスに行き、雪依ちゃんに昨日書いた手紙を渡した。

「じゃあ、これを和臣先輩に渡してもらうように頼んでおくね。」

⏰:08/10/28 08:14 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#58 [あかり]
ドキドキドキドキ…

授業中も緊張の波は鎮まらなかった。

「ああ、どうしよう。
今時ラブレターなんて、馬鹿にされるかな。」

昨日の決意も、いざ実践となると
膨らんだ風船を針で突いたように、一瞬でパンッと割れた。

⏰:08/10/28 08:19 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#59 [あかり]
学校から帰って―
まだ緊張はおさまらなかった。
むしろ、今まで以上に大きくなった。

「手紙、もう先輩に渡ったのかな…。」

その時、メールの着信音が鳴った。

「あっ、雪依ちゃんだ。」

⏰:08/10/28 08:22 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#60 [あかり]
「ごめぇん!
やっぱり和臣先輩をいざ前にすると渡せなかったよぉ(;_;)

ごめんねっ ―雪依―」

「ううん、全然気にしないで!
むしろ、やっぱり渡さなくて良かった。
やっぱり手紙なんて、恥ずかしいや〜(>_<) ―あかり―」

⏰:08/10/28 08:26 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#61 [あかり]
「本当?
役に立たなくてごめんなぁ…。
先輩とお近づきになれるといいねo(^-^)o ―雪依―」

「うん。
手紙は自分で処分するね。

うん、今はそれが一番の望みだけど、
やっぱりいざ目の当たりにすると、動転しちゃうっ(+_+;) ―あかり―」

⏰:08/10/28 08:31 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#62 [あかり]
「そんなもんだよぉ。

私も部活で、和臣先輩といつま全然話せないもん〜(T_T) ―雪依―」

「お互いがんばろうね!

今日は無理なお願いしちゃって本当にごめんね。

じゃあ、また明日☆ ―あかり―」

⏰:08/10/28 08:34 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#63 [あかり]
良かった、良かった。
なんとなく安堵した。

「やっぱり急には怖いや。
今は遠くから見るだけで満足、かな…。」

私の生まれて初めてのラブレターは、ごみ箱行きとなった。

⏰:08/10/28 08:39 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#64 [あかり]
時は過ぎ、文化祭の季節となった。

違うクラスにも友達がたくさん出来て、
手紙失敗事件のことも忘れていた。

そして、最終日の体育祭当日―

⏰:08/10/28 08:46 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#65 [あかり]
グランドを移動してる時だった。

中央にタクロウ先輩の姿。

思わず目が見開く。

先輩と目が合ってしまった。
初めてのことだった。

⏰:08/10/28 08:51 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#66 [あかり]
その時、私の中で
色んな思いが駆け巡った。

「私は向こうのことを知ってるのに、
向こうは私のことをこれっぽっちも知らない。

やっぱり今の状況は、寂しいな…」

「よし、やっぱり何か行動に移そう。」

⏰:08/10/28 08:55 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#67 [あかり]
「これもまた、あの作文から始まった、一つの運命に違いない。」

「ん。まてよ、作文…?
そうか、最初からこうすれば良かったんだ!」

私は頼るべき人を思い出した。

⏰:08/10/28 09:00 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#68 [あかり]
好きな人や友達のことを誰かに相談する時、
相手が共通の知り合いであればあるほど、
話はスムーズに進んだり、よりよい方向へと導く。

「あいつはあんな奴だから、こういう行動を取ればいいんじゃない?」

納得する回数も多い。

⏰:08/10/28 09:05 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#69 [あかり]
帰りの船の中―
私はある人にメールを送信した。

「先生、久しぶり。
先生がいつか私に教えてくれた人、塩見タクロウって人でしょ?
学校でたまに見かけるよ。 ―あかり―」

中3の時の担任の先生である。

⏰:08/10/28 09:09 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#70 [あかり]
「うん、そうだ。
でも、あんまりジロジロ見ないでやってくれないか。

あいつも、気にするだろうからさ。 ―日下部―」

「ううん、そうじゃなくて。
私、あの人と話してみたい。

私があの人の姿を見て、
強いパワーを貰ってるんだってこと、教えてあげたいな。 ―あかり―」

⏰:08/10/28 09:13 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#71 [あかり]
「お前はやっぱり偉いなあ。

じゃあ、お前からあいつに先生のアドレスを教えておいてくれないか?

あいつからメールがきた時、お前のお前を伝えておくよ。 ―日下部―」

「うん、分かった!
ありがとう先生。

明日、先輩の教室まで訪ねてみる! ―あかり―」

⏰:08/10/28 09:17 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#72 [あかり]
次の日―
午前から曇り空で、
午後からは雨が降り出した。

放課後になり、
二年の棟に一人で行くのは勇気がいるので
クラスメートに同行してもらうことにした。

⏰:08/10/28 09:25 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#73 [あかり]
渡り廊下の窓から見る外の景色―
学校内全体も、いつもより暗く感じた。

手には先生のアドレスを書いた紙。
いつもより高い私の体温が、紙に伝っていく。

⏰:08/10/28 09:26 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#74 [あかり]
初めて来た二年生の棟―
新鮮と、緊張が走る。

学年毎で、上履きの色が違っていたから、
女子の紫色、男子の茶色のそれを見るほど、
心臓の鼓動は大きくなった。

「きゃあ、どうしよう…!」

⏰:08/10/28 09:33 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#75 [あかり]
近くを通りかかった、女の先輩に声を掛けてみた。

「あのっ、塩見タクロウ先輩はいますか?」

女の先輩は「ちょっと待ってね」と言って、
先輩の教室まで行き、様子を見てくれた。

⏰:08/10/28 09:38 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#76 [あかり]
「タクロウ君、居る?
え、今5組の方?」

女の先輩の声が聞こえる。

そして、女の先輩は今度は5組の教室のドアを開け、「タクロウ君、後輩が呼んでる。」
と、説明してくれた。

私とクラスメートの子は、ちょうど5組の教室の前で立っていた。

⏰:08/10/28 09:43 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#77 [あかり]
ドックン、ドックン…
遂に、先輩と初めての会話の時。

ドアから高身長の先輩が、にょきっと出てきた。

私はクラスメートの子の少し後にし、
先輩の前まで歩いて行った。

⏰:08/10/28 09:46 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#78 [あかり]
151センチの私と、
180近い先輩。

私は顔を上げて先輩と対面した。

「あ、あの…
中学校の日下部先生がメールするように、って…。」

アドレスを書いた紙を渡す。

⏰:08/10/28 09:49 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#79 [あかり]
「へぇ!?
日下部先生がぁ?

ほーい。
分かりました〜。」

想像していたよりも、ひょうきんに受け答えされて
驚きはあったが、嫌な顔をされなくて幸いだった。

私の少ない説明でも、特に何も考えず疑わず、
即答する先輩を面白いと思った。

⏰:08/10/28 09:53 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#80 [あかり]
「ああ、緊張したあ〜。」
教室まで戻りながら、クラスメートの子と、
さっきのやり取りのことを思い返す。

「でもあの先輩、優しそうだったね。」

「…。
うん!そうだね!」

着いてきてもらったのが、この子で良かったと思った。

⏰:08/10/28 09:58 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#81 [あかり]
数日後―
日下部先生にメールを送信してみることに。

「アドレス書いた紙、渡したよ。

どう?連絡あった? ―あかり―」

「うーん、まだきてないなあ。 ―日下部―」

⏰:08/10/28 10:13 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#82 [あかり]
「向こうから連絡なし、か…。

うーん、あの性格的に、
これからも送りそうにはないなあ。」

メール作戦も、半ば失敗に終わった。

でも私にとって、少しでも先輩と会話できたこと、
少しでも私の存在を知られたことが、何よりも大きかった。

⏰:08/10/28 10:19 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#83 [あかり]
次の月―
掃除区域が、また先輩を初めて見かけた場所となった。

前と同じ子で、渡り廊下を清掃する。

―先輩がまた通るといいな…―

⏰:08/10/28 10:22 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#84 [あかり]
私の願いが叶ったのか、
友達と一緒にいる先輩がやって来た。

前と違う所は、
先輩も少なからず私のことを認識している、という所である。

自然と先輩と目が合う。
すぐに向こうからフッと視線を逸らされる。

⏰:08/10/28 10:28 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#85 [優]
読みやすいです
これからも
頑張ってください

⏰:08/10/28 10:36 📱:SH904i 🆔:EpRRxK2o


#86 [あかり]
優さん

感想ありがとうございます!
とても嬉しいです<(__)>

よかったらこれからも見ていって下さい!

⏰:08/10/28 13:20 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#87 [あかり]
渡り廊下は行き来の場、だから
少なくとも二回は先輩が通る。

先輩が通り過ぎていった後は、また戻ってくるその時を、
心の中はドキドキしながら、外見ではそれがばれないように
床を掃きながら待ち構えていた。

⏰:08/10/28 13:30 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#88 [あかり]
目が合ったり、
敢えて相手を見ないようにしたりしたり…

言葉を交わさないやり取りを、繰り返していた。

そんなささやかな日々を繰り返していた時だった。

⏰:08/10/28 13:39 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#89 [あかり]
いつものように、もう一人の子と半分ずつ床を掃いていた。

二年生の教室がある方から、騒がしい声がする。

⏰:08/10/28 13:45 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#90 [あかり]
「ワ〜キャハハハハ!」

二年生の男子数人が、卓球のピンポン球を使ってサッカーをしていた。

その範囲は、私たちが清掃している渡り廊下まで広がった。

その中に、タクロウ先輩の姿もあった。

⏰:08/10/28 13:49 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#91 [あかり]
一人の人がタクロウ先輩にパスを渡した。

タクロウ先輩が球を蹴りながら走る。

方角的に、私のいる方へとそれは向かっていた。
先輩が私とぶつかりそうになる。

⏰:08/10/28 13:51 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#92 [あかり]
「あ!ごめ〜ん!」
私にそういいながら、衝突になりそうになる寸前で、走る方向を変えた先輩。

先輩たちはサッカーに夢中で、そのまま楽しそうに走り続けて、渡り廊下を後にした。

「びっくりしたあ…。
ぶつかるかと思ったあ…。」
動悸がずっと止まらない。

「先輩、すごく近かった…。」

⏰:08/10/28 13:57 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#93 [あかり]
先輩からしてみたら、
何気ない一瞬だとしても、私にとっては嬉しかった。

こんな小さな出来事でも
「先輩に話しかけられた」と私の中でカウントされる。

⏰:08/10/28 15:30 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#94 [あかり]
「ずっと掃除区域がここだったらいいのになあ…!」
実現しないと分かっていても、
中高生らしい願いを抱いていた。

床をモップで磨き上げれば上げるほど、
私の先輩に対しての思いはより輝きを増した。

⏰:08/10/28 22:07 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#95 [あかり]
全校集会があると、必死で先輩の姿を探したり、
二年生たちが教室移動してるのを見かけると、その中に先輩の姿もないか目で追ったり…

今の私には、これ位が精一杯で、これ位で十分満足だった。

⏰:08/10/28 22:12 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#96 [あかり]
季節もすっかり冬になり―マフラーやカイロが手放せなくなった。

私はその日の昼休み、
生理痛のため保健室へと向かった。

冷たい廊下を体を少し丸めた状態で、
早歩きで歩いた。

⏰:08/10/28 22:44 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#97 [あかり]
「失礼します。」
伏し目がちにドアを開けたが、正面を向いてなくても、室内の状況が理解できた。

タクロウ先輩と先輩と仲良しの男の先輩二人が、ストーブを囲って座っていた。

その近くに立っている保健室の先生。

⏰:08/10/28 22:48 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#98 [あかり]
とりあえず私は、ドアの近くのソファーに座った。

四人からは離れた距離にいる。

性格が明るくて、イケてる感じの子なら、
笑顔で一緒に暖まろうと近くに行くのだろうが、
至って普通で、喋りもうまくない私にはそんな勇気は毛頭なかった。

⏰:08/10/28 22:55 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#99 [あかり]
私は生理痛の時や、精神的に嫌なことがあった時、保健室を利用する。

その度に二・三年生の男子が
明らかにサボりにここを利用しているのが見受けられる。

タクロウ先輩やその友達たちも、その代表だった。

先輩たちはいうなれば、学年の中では派手で目立つ方だった。

⏰:08/10/28 23:05 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#100 [あかり]
「君さあ、あの離島出身の子だよね?」
その中にいた大樹先輩という人が、私に話しかけてきた。

大樹先輩とタクロウ先輩は、同じ中学の友達である。

話はそこから私の住んでる島のことになった。

⏰:08/10/29 09:13 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#101 [あかり]
「亮太とかも俺らの中学に越してきたよな〜?」

「あぁーあいつ面白い奴だったわ!(笑)」

身内話で盛り上がる大樹先輩とタクロウ先輩。

オオノリョウタ、顔どんなだったっけ、と頭の中で記憶を辿る私。

⏰:08/10/29 09:19 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#102 [あかり]
先輩たちが話しているように、私の住んでる島から、先輩たちの通っていた中学に転校する人は何人かいた。

私の同級生も、結構な数が島を後にした。

島から来た人は皆キャラクターが個性的らしく、
すぐにその中学のムードメーカーになるみたいだった。

⏰:08/10/29 09:23 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#103 [あかり]
ちなみに、島の同級生で、この高校に入学してきたのは
私と翔馬という男の子二人だけ。

大樹先輩と翔馬は同じサッカー部で
私もそこからちょくちょく大樹先輩の話は聞いていたから
この時初めて会話したが、彼の顔と名前は一致していた。

⏰:08/10/29 09:31 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#104 [あかり]
離島出身ということで
珍しい目で見られたり、入学当初から噂が立ったりするのは毎年恒例。

「あ、島の子のあかりちゃんだ。」
と、私も知らない同級生や先輩から
話しかけられることも何度かあった。

今回もそのノリだな、と解釈していた。

⏰:08/10/29 09:36 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#105 [あかり]
「あそこの島の方言、怖ぇよなあ〜。」
そう言い出すタクロウ先輩。

「何やったっけ、
『おい』と『わい』かな。」
付け加えて言う大樹先輩。

「えー何それ!(笑)」
これまで二人の身内話で黙っていた順也先輩という人が、
タイミングを狙っていたの如く、話に割り込む。

⏰:08/10/29 09:52 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#106 [あかり]
「自分のことを『おい』、相手を指す時『わい』って言うんぞ。なあ?」
大樹先輩が私の方を見て、確認を促してきた。

「あ、はい!…」
私は取り繕った笑顔で答えた。

「アハハハハ!」
改めて笑い出す順也先輩。

タクロウ先輩も、ニヤニヤしていた。

⏰:08/10/29 09:57 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#107 [あかり]
「あかりちゃん、寒いんじゃないの?こっち来たら?」
それまで黙っていた保健室の先生が口を開いた。

話す時、一人だけ遠くというのもあって、そう言ってくれたのだろう。

「いえ…」
小さくポツリと言った。

本当は少し寒かったのだが、先輩たちの近くに寄るのが恥ずかしくて、先生の言葉を遠慮した。

⏰:08/10/29 10:06 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#108 [あかり]
ソファーの上で、足をしっかり閉じて、両手を膝の上に置いていた私。

寒気から体は少しぶるぶる震えていた。

そんな私を、タクロウ先輩が体を全く動かさずじっと見ていた。

後の先輩二人と、保健室の先生は楽しく話をしていた。

「本当は寒いんでしょ?」
と、彼だけには見抜かれてる気がした。

⏰:08/10/29 10:14 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#109 [あかり]
キーンコーンカーンコーン…

昼休み終了のチャイムが鳴る。

「ほら、掃除の場所に行きなさーい!」
先生がストーブの前で、ぬくぬくとくつろいでいた三人に言う。

先生がそう言わないと、
三人は休み時間が終了しても居座りそうな勢いだった。

私はその間にそそくさと自分の教室に戻ろうとした。

⏰:08/10/29 10:22 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#110 [あかり]
保健室を後にして、ドクンドクンと鳴る心臓音のリズムに合わせて廊下を歩いた。

つい先程の、先輩たちとのやり取りが浮かぶ。

「ああ、恥ずかしかった…」

⏰:08/10/29 10:27 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#111 [あかり]
「タクロウ先輩に、島の方言笑われちゃった…」
ショックに感じたことを一番に思い返して、肩を落とす私。

他の人だったら普段は一緒にアハハと笑うのに、
彼だとなると、穴があったら入りたい気分にまでおちいった。

「『怖い』って思うんだ…
確かに可愛くない喋りだよね…」
方言は学校では出さぬまいと、ますます気持ちを固めた。

⏰:08/10/29 10:37 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#112 [あかり]
「あーあ、これが同じクラスの美奈子ちゃんや沙弥だったら
さっきのやり取りをきっかけに、先輩と親しくなれたんだろうな〜…。」

下向き加減で廊下を歩きながら、
その見た目と似たような気持ちを抱いた。

⏰:08/10/29 10:51 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#113 [あかり]
美奈子ちゃんという子は、キャピキャピした明るくて可愛いギャル風の女の子だ。

地毛なのか染めたのかは分からないが、入学当初から茶髪であった。

愛嬌のよい性格のため、ささいなきっかけからでも先輩とも親しくなる。

彼女が知らない男の先輩と話している光景は、何度も目撃していた。

⏰:08/10/29 10:59 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#114 [あかり]
沙弥という子は、学年で一・二番に可愛いと評判で、その噂は三年生の男子にまですぐに広まったほどの子だ。

私とは出席番号が前後で、筆箱を忘れた私にすぐに気がついて、ペンを貸してくれたりと、心持ちも優しい。

天然な部分も見受けられて、男子からも女子からも「可愛い」と思われる愛らしい性格の持ち主だ。

⏰:08/10/29 11:08 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#115 [あかり]
沙弥自身には、中学の時から付き合っている彼氏がいて、
周りの男子にはまるで興味がなさそうだったのだが、
あのルックスと仕草と性格があればなあ〜と、私はいつも彼女を引き合いに出していた。

何もない島からやって来た私には、美奈子ちゃんや沙弥みたいな、華やかな雰囲気が欲しかった。

⏰:08/10/29 11:15 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#116 [あかり]
三学期も残り少し、という時期から、
同じクラスの亜矢子という子を中心としたグループから、
私は少し陰湿な扱いを受けることになった。

「あいつ天然ぶってさあ、絶対性格作ってるっしょ。
うぜーよなあ。」
教室で一人で座っていた私に聞こえるように、亜矢子はそう友達に言った。

⏰:08/10/29 11:27 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#117 [あかり]
亜矢子は自分のルックスに強く自信を持っていて、
自分より目立つ女の子は何より気に食わなかったみたいだ。

「可愛い」というだけで、何の非もない沙弥も、入学したての頃は陰で嫌な思いをされられていたらしい。

⏰:08/10/29 11:32 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#118 [あかり]
離島出身ということもあり、物珍しさから興味を持たれ、誰とでも仲良くなり、
他のクラスの可愛い女子グループから
「あかりちゃん〜!」と声をかけられたりもしていた。

見た目は亜矢子からしたら、私とは比べるほどではないと思っていただろうに、
私のこういう部分が気に入らなかったのだろうかと思ったりした。

⏰:08/10/29 11:41 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#119 [あかり]
まあ、私の性格はいびりの対象とするのには、格好のターゲットだったかも知れない。

物事を強く言えなく、態度もおどおどとしていた。

いつかこんな日がきても、おかしくないなと自分でも納得していた。

⏰:08/10/29 11:46 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#120 [あかり]
亜矢子に逆らえる者は誰もおらず、彼女とわりかし親しい子は、彼女といる時は冷たい目で私を見た。

その中には前タクロウ先輩に日下部先生のアドレスを書いた渡す時、付き添ってくれた女の子もいた。

⏰:08/10/29 11:51 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#121 [あかり]
「塩見先輩に近づこうとしとんのか。目敏い女やな。」
放課後、亜矢子を囲って、教室で数人で話している。

私は遠くの方で、黙々と課題のやり直しをしていたが、
自分の言われていることが気になって全く集中できなかった。

今すぐにでもその場を飛び出したかったが、
私のいない所でもっと陰口を言われる方が嫌で、
聞こえていないフリをして小さな牽制を送っていた。

⏰:08/10/29 12:02 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#122 [あかり]
亜矢子が関わっている時は、私の高校生活は、一気にどんよりとした面持ちになった。

体育の少人数サッカーの授業で、私にパスが回って来た瞬間、その場が一気に沈黙になる。

「プッ!サザエさん(笑)」
亜矢子は陰で、私に変なあだ名をつけていたみたいだった。

⏰:08/10/29 12:09 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#123 [あかり]
私はその頃はもう、早く一年生が終わって欲しくて欲しくて仕方がなかった。

亜矢子やそのグループの子を見る度、ひやひやと怯えていた。

こんな自分を情けないと思う余裕もないほど、私は彼女たちに恐怖を感じていた。

⏰:08/10/29 12:13 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#124 [あかり]
一年生最後のクラスマッチの日―

私は後期の体育委員だったため、係を色々とやらなければいけなかった。

しかし、その日ちょうど熱を出してしまい、それは立っていられないほどだった。

⏰:08/10/29 12:17 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#125 [あかり]
私は早めの段階で、よろよろとグラウンドを後にする。

亜矢子たちにまた後で何か悪口を言われるだろうなと思うと、体調不良とは言え、非を作ってしまった自分が悔しかった。

目頭を熱くし、保健室へと向かう所だった。

⏰:08/10/29 12:25 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#126 [あかり]
玄関の前で、今学校を来たばかりの
他のクラスの城山藍美ちゃんという子と鉢合わせになった。

「あ、藍美ちゃん。おはよう。」
彼女と数回、顔を合わせたことのある私は声を掛けた。

「おはよ。どうしたの?熱っぽいね。」
怪訝そうな顔で、彼女は私に言った。

⏰:08/10/29 12:34 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#127 [あかり]
「うん。熱があって。
クラスマッチだけど早退しようと思って。」

「そっかあ。気をつけて帰ってね。」

「藍美ちゃんは今来たみたいだけど、どこか悪かったとか?」

⏰:08/10/29 12:36 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#128 [あかり]
「ううん。
私、しょっちゅうこんなんだから〜。
欠席・早退もよくするし。」

笑顔でそう藍美ちゃんは言っていたが、
彼女の瞳の奥の悲しげな表情を、私は見逃さなかった。

「そっかあ。
じゃあ、私の分までクラスマッチ、頑張ってね。」
あまり深く話を掘らない方がよいと察知し、
私は彼女とそこでさよならを言った。

⏰:08/10/29 12:41 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#129 [あかり]
「うん。じゃあね。」
彼女は手を振りながら、体育館へと向かった。

彼女の明るい栗色の毛を、日射しが照らした。

「藍美ちゃんって、どこか不思議なオーラを漂わせている存在だよなあ。」
彼女を見る度いつも感じていたことを、私は心の中で再度確認した。

⏰:08/10/29 12:45 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#130 [あかり]
そんなこんなで、
私の高校一年間は終了した。

亜矢子たちのいびりが始まってから、私にはクラスで心から仲が良いと感じる子はいなかった。

やっとの思いで三学期は過ごしていた。

⏰:08/10/29 13:37 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#131 [あかり]
冬休み、先生の送別式の日―

式が終わった後、各教室には、二年次のクラスの貼り紙が出されていた。

黒板の前に、わあっとクラス中の人が集まる。

⏰:08/10/29 15:32 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#132 [あかり]
私も自分の名前がどこにあるのか探した。

「新クラスは二年三組か。」

そのクラスに、亜矢子の名前がないか、恐る恐る見渡してみた。

良かった。彼女はどうやら五組のようだ。

亜矢子と親しかった子も、全員私とは違うクラスになっていた。

⏰:08/10/29 15:39 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#133 [あかり]
ずっと気掛かりだったことが羽を着けたように飛んでいき、私はホッと一息をついた。

二年になれば、もう亜矢子たちを気にしなくて良さそうだ。

わざわざ別のクラスの冴えない女子に
いちゃもんをつけるほど、彼女たちも暇人ではあるまい。

⏰:08/10/29 15:45 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#134 [あかり]
「あ!翔馬も同じクラスじゃん!」
クラス名簿をよく見ると、幼なじみで唯一の同中の男子の名前もあった。

そして、もう少しまじまじと見つめると、
『城山藍美』の名前も、同じクラスの中で発見した。

⏰:08/10/29 15:53 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#135 [あかり]
学校から帰って―
自分の部屋で、ベッドでごろごろしながら、翔馬にメールを送る。

「翔馬!二年になったら、私たち、同じクラスだね☆
よろしく(^O^) ―あかり―」

「おー分かった。よろしくなー。 ―翔馬―」

⏰:08/10/29 15:59 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#136 [あかり]
「城山藍美ちゃんも同じクラスみたいだよ☆
藍美ちゃん、可愛いよね!
私、仲良くなりたいな〜(≧∀≦) ―あかり―」

「えぇー。全然可愛くねーし。
お前のその変なキャラを、あっちは受け入れてくれるかな(*_*)(笑) ―翔馬―」

「相変わらず女子には厳しいね!
失礼ね!絶対仲良くなるんだから! ―あかり―」

⏰:08/10/29 16:06 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#137 [あかり]
私は春休みの間に、パーマをかけたり、化粧の練習をしたりした。

それらのほとんどは、一年次の沙弥の影響だ。

少しでも明るい高校生活を送りたくて、自分なりに努力をしようとした。

⏰:08/10/29 16:16 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#138 [あかり]
そして、始業式―。
新しいクラスの出席番号順で、体育館に列で並ぶ。

各新クラスの先生の発表や、その先生方の挨拶を済ませたりした後、新しい教室へと上がることに。

その途中で、一年間同じクラスになるであろう女の子と目が合った。

⏰:08/10/29 16:22 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#139 [あかり]
「私、木村あかり。よろしくね!」
笑顔で私から話し掛けた。
「あたしは猪谷 尚。よろしくね〜。」

彼女は切れ長の目をしていて、女っ気もさほどなく、ボーイッシュな感じだった。

印象的な彼女の苗字から、私は『いのちゃん』という愛称で、彼女を呼ぶことにした。

⏰:08/10/29 16:28 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#140 [あかり]
「いのちゃん、今日お昼ご飯一緒に食べよう!」

「いいよー。
あたしの同中の子もいるけどさぁ、いい?」

「うん!」

一年の時、結果的にクラスメートに良縁がなかった私は、
いのちゃんという新しい友達が新鮮で、新しい一年間にとてもワクワクした。

⏰:08/10/29 19:36 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#141 [あかり]
二年三組―

見たことのない顔がたくさん。
隣の席に座ってる男子も、一体どんな人物なのか分からない。

そして、この上の階には新三年生たちがいる。
つまり、これからはタクロウ先輩を見れる機会が、
もっと増えると期待しても良いのだ。

私は満面の笑みになりながら、新しい担任の先生が来るのを、席に座ってじっと待った。

⏰:08/10/29 19:45 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#142 [あかり]
ガラッ。
先生が教室に入る。

私語を止めたり、姿勢を正すクラス一同。

「これから一年間、よろしくな。」
簡単な挨拶を終わらせた後、初めてのクラスでの出欠を取る。

「…木村あかり。」
「はい。」

⏰:08/10/29 19:50 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#143 [あかり]
「城山藍美。」

先生がそう呼ぶが、返事が聞こえない。

クラスに一つだけ、空白の机があって、
どうやら彼女の席のようだった。

「城山は欠席か〜。」
先生が名簿にチェックのようなものをつける。

「藍美ちゃん、今日来てないのかぁ。」
ふと窓の景色を見ると、雲一つない綺麗な空だった。

⏰:08/10/29 19:57 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#144 [あかり]
昼休み―
私といのちゃんと彼女の同中の子の三人は、
今いる棟と、目の前にある理科棟とをつないでいる、
外の渡り廊下で昼食を取ることにした。

ふと見上げると、三年生の階がよく見える。
今日の青い空に続いて、最高の景色だと思った。

⏰:08/10/29 20:05 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#145 [あかり]
「ねぇ、いのちゃん。
昼ご飯はいつもここで食べようよ!」

「うん、いいよー。
ここあったかいしねー。
光合成しそうな勢いだわー。」

「アハハ!
いのちゃん植物じゃん!(笑)」

もしかしたら、先輩の姿を見れるかも知れない楽しみと、
仲の良い友達とご飯を食べる二つの楽しみ。

私は久しぶりに、お母さんのお弁当の美味しさを実感した。

⏰:08/10/29 20:11 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#146 [あかり]
掃除の班も、いのちゃんと一緒で、心細さもなく、
そこからまた友達の輪がどんどん広がっていった。

帰りの船の中では、翔馬と「今日、教室でこんなことがあったよね」とか、
それぞれ友達間であった出来事などを話して、笑いあっていた。

⏰:08/10/29 20:17 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#147 [あかり]
「去年のクラスの雰囲気とは全然違うな!
一年の時は…亜矢子たちが怖くて、自分の教室なのに、居づらかった。

新しいクラスは、いのちゃんっていう心強い友達も出来たし、
翔馬もいるし、皆優しいし。
本当に良かった良かった。」

⏰:08/10/29 20:20 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#148 [あかり]
ある日の休み時間。
私はいのちゃんの席までいって、
前の席の人のイスを借りて彼女と二人で話していた。

「いのちゃんは好きな人とかいるの?」

「いる訳ないよ〜。
あかりちゃんはー?」

⏰:08/10/29 20:28 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#149 [あかり]
「私ね、三年の塩見タクロウ先輩って人のことが好きなんだ!

帽子被ってる先輩だよ、見たことあるかな?」

「ああ、その人なら知ってるよ。
だって、あたしが街行った時、いつもその人が友達とタバコ吸いながら
たむろしてんの見るもん。」

「…え!それ本当!?」

「うん、間違いないよ。」

⏰:08/10/29 20:33 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#150 [あかり]
「そうなんだ…
先輩、タバコ吸ってたりするんだあ…」

「まあ、学校でも真面目そうな雰囲気はないよね。」

「うん。そうかもね。」

いのちゃんの話を聞いて、私はますます先輩との距離を感じた。

⏰:08/10/29 22:00 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#151 [あかり]
私なりに、中高生らしいランクをつけるなら、
タクロウ先輩は派手でイケイケな上層部、
私はせいぜい何の変哲もない中層あたりの部類である。

いつかの保健室での出来事みたいに、先輩や先輩の友達を目の前にすると、
あの人たちは、自分とは別世界にいるように感じて、
緊迫という縄に絡まり、ほどこうとして、もがき続ける自分がそこにいる。

⏰:08/10/29 23:10 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#152 [あかり]
「…私なんか、先輩とは釣り合わないよね。」

「私はあかりちゃんみたいに、その人に特別な感情は抱いていないから、
釣り合うとか釣り合わないとかはわかんない。」

「…。」

「てか、あかりちゃんはどうしたいの!?
塩見先輩と付き合いたいの?」

「へっ!?」

⏰:08/10/29 23:16 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#153 [あかり]
「まあ、そんな風になれたら嬉しいけどさ…。
たぶん、てかきっと無理だよ。」

「ふぅん。
私は未成年で喫煙してるイメージしかないけど、
あの人のどこが良かったわけ。
てか、いつ好きになったの。」

「うーん…。」
私は腕を組み、目を閉じ、人差し指を額に当てて、改めて考えてみた。

⏰:08/10/29 23:22 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#154 [あかり]
私は今までの先輩との出来事を思い返してみた。

それをいのちゃんの前で、ブツブツと喋る。

彼女は時々相槌をしたり、しなかったりしていた。

彼女の質問の答えがなかなか返ってこないからか、
途中から、指遊びをし始めた。

⏰:08/10/29 23:31 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#155 [あかり]
「んー。何で好きなのかは分かんないや。
先輩と出会う前は、私、見た目も中身も、
真面目な人がタイプだと思ってたのにさ。

例えば、同じクラスの高橋くんとか。

あー同級生でしかも同じクラスだったら、毎日見れるドキドキとか楽しみとかあったんだろうなー。」

⏰:08/10/29 23:47 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#156 [あかり]
「そんなこと言ってたら、好きな人すらいないあたしはどうなるのよ(笑)

それに、あかりちゃんはすごいなって思った。

だって、向こうは最初は全然あかりちゃんのこと知らなかっただろうに、
今ではほら、少なくとも存在は認識されてんじゃん。

少しずつであろうと、確実に距離は縮まってるさ〜。」

⏰:08/10/29 23:59 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#157 [あかり]
「…うん!
私も私なりに頑張ってるよね!」

「…急にポジティブになりやがってーこんにゃろ(笑)」

「アハハ!
いのちゃん、これから一年間よろしくね。」

⏰:08/10/30 01:24 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#158 [あかり]
その数日後。
新入生歓迎遠足の日―

私は目的地まで、いのちゃんと二人でお喋りをしながら歩いていた。

途中で、ふと後ろを見ると、一人で歩いてる城山藍美ちゃんの姿が目の前にあった。

⏰:08/10/30 01:29 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#159 [あかり]
「藍美ちゃん!」
私は俯き加減な彼女に声を掛けてみた。

私は彼女と歩く歩幅を合わせながら、何か話題はないかと、頭の中をフル回転にして考えた。

「藍美ちゃんはどんな音楽が好き?」

⏰:08/10/30 01:36 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#160 [あかり]
「んー。そうだな〜、
私はマイナーなアーティストが結構好きかな。」

彼女のこの一言は、私のヨロコビの着火剤となった。

「本当っ!?
私ね、普段インディーズバンドばかり聴いてるんだあ!」

心の中の大きな打ち上げ花火が、パーンッと上がる。

⏰:08/10/30 01:42 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#161 [あかり]
私は中学の頃から、物事の興味や関心が
音楽というものに全てといっていいほど注がれていった。

そして今の自分には、マイナーロックバンドが
絶妙にマッチしているという結果に行き着いた。

高校に入ってからも、通学中や帰りの電車・船の中、
家に帰っても、課題そっちのけでひたすら好きな音楽を聴いていた。

⏰:08/10/30 01:57 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#162 [あかり]
「じゃあ、ビートソルジャーズは知ってる?」

「うーん…?」

「じゃあねじゃあねっ、
ホーム・スウィート・ホームは?」

「うーん…?」

「赤アフロはどうかな?」
「うーん、たぶんわかんないかもー。」

⏰:08/10/30 02:03 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#163 [あかり]
「そっかぁ!
じゃあ、私のオススメの曲をMDに録音した奴をプレゼントするよ〜!」

「本当に?
うん、じゃあ、楽しみに待ってるね。」

「近いうちに学校で渡すね!」

⏰:08/10/30 02:06 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#164 [あかり]
藍美ちゃんとそんなやり取りを交わしていたら、
あっという間に目的地まで到着した。

改めて列の順番に並んでいる時、私はあることに気がつく。

「…ごめーん。
いのちゃんそっちのけで話してた(笑)」

「ハハハ、気にせんでいいよ。
なんかすっごい楽しそうやったね。」

⏰:08/10/30 02:15 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#165 [あかり]
歓迎会の場所は、毎年同じ球技場。

先生の合図で、列を乱さないようにゲートをくぐる。
球場全体に、最近の曲らがBGMとして流れる。

⏰:08/10/30 02:20 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#166 [あかり]
全校生徒が球場内に入り、揃って腰を下ろした。

場内全体がしーんと静まる。

今年の司会者の登場を待っていた。

毎年三年生二人で行われている。
去年は当時生徒会長だった人と、その友達の人だった。

⏰:08/10/30 02:25 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#167 [あかり]
遠くのゲートの方から、
ダァーッと二人組が駆けてくる。

一人は女の人…?と一瞬思ったが、
他校のブレザーで女装している、あの時保健室で遭遇した中にいた順也先輩だった。

そしてもう一人は…
いつもと変わらない格好をしている、タクロウ先輩だった…。

⏰:08/10/30 02:30 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#168 [あかり]
「う、うそ…。
本当に…?」
予想外の出来事に、思わず目を見開く私。

前の方で座っていたいのちゃんが、後ろを振り返って私にアイコンタクトを送る。

⏰:08/10/30 02:34 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#169 [あかり]
「三年五組の小松順也でーす!」

「同じく三組五組の塩見タクロウでーす!」

「今年の司会は僕たち二人です!
最後まで頑張るので、暖かく見守っててくださいね〜!」

⏰:08/10/30 02:37 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#170 [あかり]
順也先輩は、ラグビー部に所属しているが、
学年一小柄で、体型も華奢である。

高身長のタクロウ先輩と並ぶと、凸凹さが際立つ。

順也先輩は、どちらかというと目立ちたがり屋な性格で、特に女子からの視線を気にしている。

今回の司会も、進んで立候補したのか、喜んで引き受けたに違いない。

⏰:08/10/30 17:47 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#171 [あかり]
「で、こないだ…
だったんですよぉっ!」

ウケを狙おうと、自分が面白いと感じた話を、トークをする順也先輩。

全校生徒の間に、ぽつぽつと笑いが起こる。

「そろそろ場も和んで来たようですねっ!(笑)
じゃあ、これからもっと盛り上がるように、
ショートコントをしたいと思いま〜す!」

⏰:08/10/30 18:05 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#172 [あかり]
「ショートコント『エロエロの実』。」

大人気少年漫画の、パロディーのようだった。

「あ!あそこにエロエロの実が落ちてるぞ!」

「食べてみようぜー!」
「食べてみようぜー!」

パクっ。

⏰:08/10/30 18:09 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#173 [あかり]
「うっ…うぅ…。」
「う…う…。」

苦しむそぶりを見せる二人。
やがで、覚醒のシーンに入る。

「アーンアハーン。」
「アンアンアンアン。」
お互い向き合って、性行為のポーズをし出す二人。

場内からは、ドッと笑いが起きる。

⏰:08/10/30 18:16 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#174 [あかり]
私も、タクロウ先輩が下ネタをやっているのかと思うと、軽くショックではあったが、
目の前で楽しそうに、司会をやる先輩の輝かしい姿にずっと釘づけだった。

先輩の頑張ってる姿に応えたくて、精一杯自分も笑ったり喜んだりしようと思った。

⏰:08/10/30 18:22 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#175 [あかり]
クイズやゲーム、色々な企画が行われ、
やがて昼食の時間となった。

司会の二人の解散の合図とともに、
全校生徒が場内のあちこちへと散らばる。

私はいのちゃんの元へと駆け寄った。

⏰:08/10/30 21:51 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#176 [あかり]
「いのちゃんっ。」

「おう、あかりちゃん。
あの先輩、司会やったなあ。」

「うん〜!
もうびっくりしちゃったよ〜!」

「二人の司会、すげー面白かったわ。
あたしも塩見先輩に惚れちゃおうかしら(笑)」

「えぇ〜!
ダ、ダメだよお!」

⏰:08/10/30 21:55 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#177 [あかり]
「嘘々。
あたし、もっと上品な人がタイプだし〜。」

「アハハ。
確かに二人の司会、下ネタも結構あったし、下品なところも多かったね。」

「堅苦しいのよりは断然マシだけど〜。」

⏰:08/10/30 21:59 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#178 [あかり]
「いのちゃんっ。」

「…ん?」

「前さ、いのちゃんが
『先輩のこと、いつから好きになったの。』
って聞いてくれたじゃん。
私、あれからその答えを、ずっと自分なりに考えてたの。」

「うん。」

⏰:08/10/30 22:07 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#179 [あかり]
「私ね、先輩を初めて見た時、なんていうか、
時間が一瞬、止まったような感じがしたの。
ううん、止まってた。

外からの音や光も一切閉ざされてさ、
すごく不思議な感覚だった。

私は前もって作文を通して先輩のことを知っていなかったとしても、
私は先輩に恋をしてたと思う。

私は、先輩を好きになる運命だったんだなぁ、って。
さっき、司会をしてる先輩の姿を見ながら、改めてそう感じた。」

⏰:08/10/31 03:01 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#180 [あかり]
「そっか。
なんか、いいじゃん。」

「エヘヘ。
人を好きになるって、自分でもよくわかんないね。

何で、その人じゃないといけないんだろうって思う。」

「理屈じゃないんだよ。」

「あ、理系得意のいのちゃんらしい言葉(笑)。」

⏰:08/10/31 03:07 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#181 [あかり]
その後、歓迎遠足は無事に終了した。

二人の司会ぶりは好評で、帰りながらも、
「楽しかった」「面白かった」の声がちらほら聞こえた。

私も帰りの船の中で、翔馬と今日一日の感想を話し合いながら、「司会が良かった」という意見で合致した。

⏰:08/10/31 06:13 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#182 [あかり]
「あかりちゃん。
はい、これ。」

数日後の休み時間―
席に座って、次の授業の準備をしていたら、
藍美ちゃんから手紙を渡される。

「この間はMDプレゼントしてくれてありがとうね。

私、エンドロールガーデンっていうバンドがすごく好みだったかな。

お礼にあかりちゃんに手紙書きました。」

⏰:08/10/31 06:18 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#183 [あかり]
「わあ!ありがとう!
読んだら返事書くねー!」

「うん。
あ、それから私のことは『藍美』でいいよ。」

「分かったあ!
私も呼び捨てでいいよ!」

「じゃあ、これからも仲良くしようね。」

⏰:08/10/31 06:22 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#184 [あかり]
授業開始のチャイムが鳴り、藍美が自分の席に戻る。

いてもたってもいられなくて、私は授業中にさっき貰った手紙を読む。

お菓子作りが得意だから、MDのお返しに何か焼くよ、とか、今度遊びに行こうなど
かわいらしい字で書かれていた。

私は生まれて初めての『手紙交換』に、嬉しさでいっぱいになった。

⏰:08/10/31 06:30 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#185 [あかり]
その日から、藍美と私の仲は急速に発展した。

休日に二人で遊びに出かけるようになったり、
メールや手紙交換も頻繁にやり取りしていた。

彼女は欠席することが度々あったので、理由は聞かないものの、
その日一日は、心配と彼女がいない寂しさがあった。

⏰:08/10/31 06:41 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#186 [あかり]
ある日の体育の時間―

休憩中、藍美と二人でお喋りをする。

「よく人から髪染めてるって言われるけどさー、
これ地毛なんだよねー。」

「えっ、そうなんだ!」

彼女の発言に、友達の私自身も驚いた。

学年一明るい髪の毛を手に取り、藍美はじっと毛先を見つめていた。

⏰:08/10/31 06:47 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#187 [あかり]
「こんな髪の色してるからかな、『なんで派手なグループとつるまないん?』っても言われるね。

『君、そこのグループで満足なんだ。』ってね(笑)。」

「私も一年の時、藍美はてっきりハシモト ミヤビちゃんや
イノウエ リカちゃんたちと仲良しなのかと思ってたよ〜。」

⏰:08/10/31 06:55 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#188 [あかり]
「私、ああいう人たち苦手なの。

頭からっぽで、ただキャーキャー馬鹿騒ぎしてるだけの女共って感じじゃん。」

「アハハ。
私はいつもあの人たちのこと、かわいらしくて羨ましいって思ってたから、
そういう発想はなかったけど、自分に劣等感を感じる必要はないのかもね。」

⏰:08/10/31 06:59 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#189 [あかり]
「去年私と同じクラスだった、神田亜矢子分かる?

私さ、陰口とか言われてたりしてさ、あの時は辛かったなあ。」

「ああ、すっごい自分に自信持ってる人でしょ?
でもさー、実際本人ブロッコリーみたいな頭ですから!みたいな〜!(笑)

いかにも性格悪そうだし、嫌いな人も多いと思うから大丈夫だよ。
私もその内の一人だし(笑)。」

「うん!ありがとう!
そうだよね、ブロッコリーだよね!」

⏰:08/10/31 07:13 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#190 [あかり]
二年になって―
去年の孤独感が嘘のように感じられた。

友達と一緒にトイレに行ったり、放課後の教室でのお喋り、
女子高生らしい毎日を送っている。

お日様を見てみた。
いつもより眩しかった。
物事が、良い方向へ進んでいってる気がした。

⏰:08/10/31 07:25 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#191 [あかり]
それからもクラスの雰囲気にも慣れ、従順な日々を過ごしていた。

私はクラスの係決めで、前期の体育委員に立候補していた。
一年の最後のクラスマッチを、最後までやり遂げたかったとの思いで。

放課後―
全学年・全クラスの体育委員の集まりがあった。

⏰:08/10/31 07:33 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#192 [あかり]
ホームルームが早く終わったこともあって、
私は集合時間より早く教室に着いた。

一人の女の子がイスに座っていた。
上履きの色と初々しい表情からして一年生だった。

「こんにちはー。」
私は笑顔で声を掛けた。

⏰:08/10/31 07:43 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#193 [あかり]
「こんにちは!」

彼女の顔をよく見ると、くりくりとした大きな瞳、
発色のよい唇、美少女と思わせる顔立ちをしていた。

「私は一年三組の原 希緒といいます!
先輩の名前は何ですか?」

はきはきとしていて、元気な喋りで私にそう言った。

⏰:08/10/31 07:50 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#194 [あかり]
「希緒ちゃん、珍しい名前だね。

私は二年三組の木村あかりって言います。」

そこから話は広がり、学校は慣れた?とか、
担任の先生は誰?とか希緒ちゃんに聞いていたりしていた。

⏰:08/10/31 07:54 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#195 [あかり]
「あのぅっ、歓迎遠足の時に司会やった、
塩見タクロウ先輩ってチョーかっこいいですよねぇ!」

「…えっ?」
突然、彼女から先輩の名前が出て、私は驚く。

「私、塩見先輩みたいに黒ぶち眼鏡掛けてる人、
もうチョーチョー好きなんですよぉっ。」

希緒ちゃんの大きくて綺麗な瞳が、更にキラキラと輝く。

⏰:08/10/31 08:01 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#196 [あかり]
「うん、そうだね。
かっこいいねっ。」

私は合わせる感じで彼女に言った。

思えば、遠足の司会という大々的なことをしたのだから、
先輩の存在は、全校生徒に知れ渡ったということになる。

⏰:08/10/31 08:08 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#197 [あかり]
例えば、掲示板などにあるの中傷が書かれていたりすると、
違う人もその人に対して、同じように悪く思っている風にとらえてしまう。

これもまた、一つの人間心理らしい。

希緒ちゃんの話を聞いて、一年生の他にも、
あれ以来先輩に片思いをしてる子もいるだろうなと感じた。

私はそこで初めて、先輩には司会をやらないで欲しかったと、ヤキモチを妬いた。

⏰:08/10/31 08:19 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#198 [あかり]
そんなことを思っているうち、
やがて、次々と同じ体育委員であろう人たちが入って来た。

私はそのメンバーの中にいた、ある女の先輩に目をやった。

タクロウ先輩と同じクラスの、江戸川小春先輩という人である。

⏰:08/10/31 08:25 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#199 [あかり]
私は初めて見た時から、彼女の可愛らしさに同性であるものの惹かれ、
学校でその姿を見かける度、ポーッとしてしまう程見入ってしまう。

こんなに近くに小春先輩がいて、同じ空間にいるなんて、
タクロウ先輩の時とは違う、ドキドキ感が少しあった。

⏰:08/10/31 08:32 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#200 [あかり]
「小春ちゃんの爪、かわいい〜。」
隣にいた女の先輩が言う。

そう言われた小春先輩は、両手を自分の目の前で広げ、「そうかな。」と恥ずかしげに小さな声でいった。

彼女の名前にピッタリの、ピンク色のマニキュアが、全ての爪にコーティングされていた。

私はそれを後ろの席から見ていた。

⏰:08/10/31 08:41 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#201 [あかり]
小春。
小さな春かあ。

150センチに満たない彼女の身長と
愛らしい顔なのに、おとなしくて物静かな性格。
名は体を表すとは、こういうことなのか。

「確か、小春先輩には彼氏はいないんだよね。
不思議だあ。一体どんな人が好みなんだろ。」

私は担当の先生にも少し上の空で、そんなことを考えていた。

⏰:08/10/31 08:50 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#202 [あかり]
その日の帰りの船の中―
一通のメールが届く。

「んっ?
日下部先生からじゃん!」
久しぶりの名前に少し驚く。

「こないだタクロウと偶然に会った時、お前のことを話しておいたよ。

向こうは笑顔で嬉しそうにしてたぞ! ―日下部―」

「ま、ま、まじぃ〜!?」

⏰:08/10/31 08:58 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#203 [あかり]
私はイスから飛び上がり、胸を高鳴らせながら返信をする。

「先生ありがとう!かなり嬉しい! ―あかり―」

「学校でも気軽に話しかけてごらんよ。 ―日下部―」

「えー!無理だよー!(>_<)
先輩、いつも友達と一緒にいるもん。 ―あかり―」

⏰:08/10/31 09:03 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#204 [あかり]
「先生、その時あいつとアドレス交換したから、
お前ともメールするように頼んでやろうか? ―日下部―」

「えぇー!?いいの〜?是非お願いしまーす!(ノ><)ノ ―あかり―」

携帯電話を閉じ、座ってた長イスにゴロンと寝転ぶ私。

「キャァァー!どうしよう!
話は一気に急展開だあっ!」

⏰:08/10/31 09:09 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#205 [あかり]
その日の夜―
日下部先生から、タクロウ先輩のアドレスが載せてあるメールが届く。

「二年の木村あかりです☆私のこと分かりますか?(>_<) ―あかり―」

何度もためらいながら、やっとの思いで送信ボタンを押す。

心臓はバクバクである。

20分くらい経った後―
先輩からの返信がきた。

⏰:08/10/31 09:18 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#206 [あかり]
「ぅん。分かるよぉ↑↑
ょろしくぅ〜(^_-)-☆ ―タクロウ―」

先輩からのメールは、中高生の女の子がよく使っている、小文字混じりの文体であった。

「先輩ってメールではこんな感じなんだぁ〜!」

その一つ一つが新発見であった。

⏰:08/10/31 09:24 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#207 [あかり]
それと、私が「木村あかり」という人物であることを、先輩の中できちんとインプットされている。

たったそれだけのことに、非常に幸せを感じた。

その後のメールのやり取りから、私は先輩からCDを借りることになった。

『0318』の先輩の靴箱に入れておくから、勝手に取っておいても構わないとのこと。

⏰:08/10/31 09:33 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#208 [あかり]
先輩の靴箱…

そこで行われる、
誰も知らない、私と先輩のやり取り…

その日の夜はとても嬉しくて嬉しくて、
布団の中で、早く明日の朝になることを待ちわびた。

⏰:08/10/31 09:37 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#209 [優]
いつも見てます
読みやすくて
好きです〜

⏰:08/10/31 09:39 📱:SH904i 🆔:oFFOA4zI


#210 [あかり]
次の日―
午前のホームルームが終わって、私は足早に玄関へと階段を下り、
『0318』の靴箱を探し、見つけたと同時にパカッと開けた。

「あれぇ?まだCD入ってないやぁ。」

そこには先輩の靴が一足分、入ってるだけだった。

でも、今日も一日先輩が学校にいるということが
この中身から読み取れただけで、私には十分だった。

⏰:08/10/31 09:46 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#211 [あかり]
優さん

またまたご感想ありがとうございます!
めちゃくちゃ感激です!

特に甘い内容もなく、つまらない話ですが(笑)

優さんのように読んでくれる方がいると、やりがいを感じられます(^-^)

⏰:08/10/31 09:50 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#212 [あかり]
教室に戻り、いのちゃんに「入ってなかった!」と、報告した。

彼女には朝一番に、昨日の先輩とのメールの件を話していた。

「あかりちゃん、気ィ早いな〜!
まだまだこれからっしょ。」

「あ、そうだよね(笑)。」

⏰:08/10/31 09:55 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#213 [あかり]
5限目―
私はその時間一杯を、生理痛の為、保健室で過ごしていた。

終礼のチャイムが鳴り、教室まで戻ろうとする。

その途中、体操服に着替えたタクロウ先輩が、ダダダッと向こうから走って来た。

私の存在に気づいた先輩が、私の目の前で、ピタリと足を止める。

⏰:08/10/31 10:07 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#214 [あかり]
「あっ!あんなぁ、
今日CD忘れたけん、明日持ってくるわぁ!」

先輩らしいケラケラとした表情で、私に指を指しながらそう言った。

「あっ…は、はい!
わざわざありがとうございます!」

⏰:08/10/31 10:10 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#215 [あかり]
「先輩に初めて話し掛けられちゃった…。」

動きの速くなる心臓を押さえながら、階段を上る。

私に向けられたさっきの先輩の笑顔が、ずっと、頭の中から離れられない。

⏰:08/10/31 10:15 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#216 [あかり]
次の日―
休み時間の合間に、先輩の靴箱を開けてみると、
約束どおりCDが入っていた。

私はそれを手に取り、教室に戻ると、ケースを割らないようにと、
持っていた袋の中に入れて、かばんの中にしまった。

⏰:08/10/31 10:20 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#217 [あかり]
CDを返す時は、メールの時決めておいたように、
また先輩の靴箱の中に入れておいた。

それ以降、先輩とは特に進展もなく、
普段と変わらない日常を過ごしていた。

私の先輩に対しての思いは、「好き」と「憧れ」が合わさった感じであったので、
自分から積極的にアタックやアピールというのには
かなり恐れ多く、気も引けて出来ずにいた。

⏰:08/10/31 10:28 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#218 [あかり]
ある日の船の中―
後輩である福島怜香という子と話していた。

島の子で、私と同じ高校に通っている一年生は、
彼女ともう一人の男の子だけである。

そういう境遇もあって、
帰りは毎日彼女とお喋りをするようになった。

⏰:08/10/31 10:39 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#219 [あかり]
「遠足の時に司会やった、小松先輩と塩見先輩、かっこいいよなぁー。
怜香は小松先輩の方がタイプかな〜!(笑)」

「あはは。小松先輩、面白いもんねっ。」

「一年生の間じゃあ、あの二人は人気あるねぇ。
隣のクラスの日高ちゃんっていう子なんか、
塩見先輩に本気で片思いしてるって聞いた。」

「へ、へぇ…。」

胸の奥から微かに、ズキンという音が聞こえた。

⏰:08/10/31 10:48 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#220 [あかり]
全く面識もなく、どんな子かも知らないが、
私はヒダカチャンというその子のことが、
今後話すことがあっても、好きになれそうもない気がした。

私は先輩を初めて会った時、「私が彼を見つけた」ような気分に浸った。

それが先輩を司会を行ったことによって、
一年生の女の子たちにとって「皆の先輩」みたいな感じになったのが、
無性に寂しかった。

⏰:08/10/31 10:58 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#221 [あかり]
月日は経ち―
その月、私たちの班は教室掃除の担当だった。

私はいのちゃんと二人で、ごみ捨てに行くことにした。

私は室内をひたすら掃除するより、
移動できるような係を好んでいた。

タクロウ先輩と、どこかですれ違うかも知れないという、可能性に期待していた。

⏰:08/10/31 11:05 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#222 [あかり]
二人でごみ捨て場まで行き、燃えるごみを出す。

この場所の清掃は、三年生が担当区域である。

渡されたごみを、数名の三年生の手によって、分別される。

⏰:08/10/31 11:11 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#223 [あかり]
その日は普段あまり出ない、燃えないごみの袋も持って来ていた。

燃えるごみを出し終えた後、次は不燃物処理場へと足を運ぶ、私といのちゃん。

その場所に近づいてみると、楽しそうな男女の話し声が聞こえる。

⏰:08/10/31 11:16 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#224 [あかり]
そこには―
タクロウ先輩と一年の女の子の姿が…。

女の子が私たちの存在に気がついて、こちらを振り向く。

その顔は―
いつかの体育委員の集まりの時、会話をした原 希緒ちゃんだった。

「あ、こんにちはです!」
希緒ちゃんは、あの時と同じ笑顔で、私に挨拶をした。

⏰:08/10/31 11:21 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#225 [あかり]
その後、再び二人はまた会話をし出した。

私といのちゃんは、燃えないごみの分別をする。

希緒ちゃんは可愛い顔のつくりをしているが、
ショートヘアで、喋り方や振る舞いも少々男の子っぽいのだが、
耳から聞こえる先輩との会話では、いつもより声のトーンを下げ、気品よく話しているような気がした。

⏰:08/10/31 11:27 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#226 [あかり]
あの光景を見てから、午後からの授業、放課後と、
一気に淀んだ気分でやり過ごした。

帰りの船の中で、怜香に尋ねてみる。

「一年三組の原 希緒ちゃんって分かる?」

⏰:08/10/31 11:32 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#227 [あかり]
「うん、分かるよ。
明孝もクラスが違うけど、その子と話す仲だもん。」

明孝とは、彼女の同級生で、同じ高校に通うもう一人の男子である。

「へぇ、そうなんだー。
希緒ちゃんって、どんな子なの?

明るくて、いい子そうに見えるけど。」

⏰:08/10/31 11:41 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#228 [あかり]
「とんでもない。
ナルシストで自分のことを自慢げに話すから、
女子からは嫌われてるよ。」

「えぇ!そうなの?
可愛いし、人懐っこい性格だから、周りから好かれてるのかと思ってた。」

怜香からの意外な情報に、私は目を丸くして驚いた。

私の目からは、あの子がそんな風には見えなかった。

それと同時に、ライバルになるかも知れない子が、
なかなかの不評で、ホッとする自分もいた。

⏰:08/10/31 11:52 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#229 [あかり]
「今日あの子が、タクロウ先輩と話してる所を見たんだ。」

「男タラシだからねー。

かっこいい人には自分から近づいて行ってるよ。」

「先輩が希緒ちゃんを好きになるとか、ないかな?」

「んー、ないんじゃない?
先輩からしてみたら、希緒ちゃんなんかガキだよ、ガキ。」

⏰:08/10/31 11:57 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#230 [あかり]
「アハハ(笑)。」
怜香の強気な発言に、私は笑った。

彼女は気の小さい私とは違い、ずばずばと物事を言う。
私はそんな彼女を、いつも羨ましいと思っていた。

年齢は私の方が一つ上だが、長年島で一緒にいたこともあり、対応は同級生と全く変わらなかった。

ちなみに島に住んでると、年上にでも、タメ口で話すのが自然なのである。

⏰:08/10/31 12:04 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#231 [あかり]
「原 希緒ちゃん―
タクロウ先輩のことを、どんな風な目で見ているのだろうか?

仮に二人が付き合うとかなったとしても、ここに怜香という、
一緒にブツブツ文句言える相手がいるから、いいっか。」

⏰:08/10/31 12:10 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#232 [あかり]
そして、真夏日も続く中、学期末試験も無事に終了し、学校は夏休みに入った―

私は長期休暇を兼ねて、隣の県に住んでいる、いとこの姉の元を訪ねることにした。

黒田未央という人で、私は未央姉と呼んでいる。
美容専門学校生ということもあり、服装や髪型もお洒落で、自慢の身内だった。

⏰:08/10/31 12:22 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#233 [あかり]
一人暮らしの未央姉の部屋に、数日間お泊りをさせてもらうことになった。

未央姉の住んでいる街は、田舎育ちの私からしてみれば、断然に都会に見え、
彼女に色んなお店などを案内してもらう度、自分もいつかはこんな所に住みたいと憧れた。

買い物から帰宅して―
買ったものを整理しながら、未央姉は言う。

「あ、今日の夜は、あたしの彼氏とその友達と、その後輩とか、色々来るけん。」

⏰:08/10/31 12:31 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#234 [あかり]
「うん、分かった。
未央姉の彼氏、どんなんだろー。
写真もプリクラも見せてくれないんだもんっ。」

「ブッサイクだから、あんま期待しないでー!(笑)
あかりと同い年の子も来るよ。」

「本当?仲良くなろうっと。」

⏰:08/10/31 12:35 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#235 [あかり]
夜になり―
ピンポーン、とチャイムが鳴る。

「あ、来た来た。」
未央姉が玄関まで、そそくさと立ち寄る。

「いらっしゃーい。」
未央姉がドアを開けた瞬間、がやがやという声が部屋からも聞こえ出した。

⏰:08/10/31 12:39 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#236 [あかり]
「こんばんはー!」
「おじゃましまーっす!」
部屋に続々と人が入る。

入って来る人来る人が、お姉さん・お兄さんという感じがして、少し緊張した。

「あかり、これがあたしの彼氏。」
未央姉が紹介する男の人を見た。

⏰:08/10/31 12:47 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#237 [あかり]
「あかりちゃん、初めまして。」
ファッション雑誌に載っても、おかしくはないような風貌と身なりだった。

彼はいわゆるお兄系という系統で、全体を決めていた。

「あかりちゃん、高二なんだって?
そこにいる彼が、あかりちゃんと同級生だよ。」
彼氏の人は、一人の男の子を指差す。

⏰:08/10/31 12:54 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#238 [あかり]
私は彼と目が合った―

「こいつな、高校で同じ部活の後輩やったに。
俺は今年で卒業したけどな。」

「あ、初めまして。
木村あかりって言います。」
私はその男の子に向けて、自己紹介をした。

「…初めまして。
…堀之内悠介です。」
彼は私に視線を合わせることなく、ぼそぼそと言った。

⏰:08/10/31 13:05 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#239 [あかり]
「悠の奴、なかなかのイケメンやろぉ!?
でもなー、こんな風にシャイな奴やし、
高校も男子高やけん、彼女が出来んのよな〜。

あ、俺の名前秋人ね(笑)。」
買ってきたお菓子の袋を開けながら、秋人さんが説明する。

彼の言うように、悠介くんはとても整った顔立ちをしていた。

眼球の大きな目、高くてスーッとした鼻、分厚い唇、爽やかなオーラや服装。

私の学校に転校して来たら、間違いなくたくさんの女の子からの、熱烈アプローチを受けるだろうと思った。

⏰:08/10/31 13:16 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#240 [あかり]
その後、未央姉と秋人さんの馴れ初め話や、学校での出来事などを聞いたりしていた。

一時して、持ち込んだお菓子の量が予想以上に足りず、数人でコンビニまで買い出しを行くことになった。

未央姉は秋人さんと女友達と楽しそうに歩いていて、
私は同級生の悠介くんの元に近寄ってみた。

⏰:08/10/31 13:25 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#241 [あかり]
「秋人さん、とても気さくでいい人だね。」

「…うん。」

「私は隣の県から今やって来たから、
悠介くんと出会ったのも、これも何かの縁だね。」

「…あ、そなんだ。
…こっちの人じゃないんだ。」

「うんっ。」

「…。」
「…。」

そこで会話は途切れ、コンビニに着くまで沈黙が続いた。

⏰:08/10/31 13:30 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#242 [あかり]
数日後―
私は悠介くんと図書館で勉強をすることになった。

その日は実家に用事のあった、未央姉からの提案である。

「一人で部屋でするよりはかどるし、寂しくないでしょ。
わかんないとこがあったら、成績優秀の悠介くんに教えてもらんなさい。」

⏰:08/11/01 17:17 📱:SH705i 🆔:a4gM.aaM


#243 [あかり]
未央姉が書いてくれた、図書館までの地図を見ながら歩く。

紙の右下には、緊急時のため、と悠介くんの携帯番号が書かれていた。

私はそこに掛けるまでもなく、何なりと図書館までたどり着いた。

そこには悠介くんの姿が、すでにあった。

⏰:08/11/01 17:25 📱:SH705i 🆔:a4gM.aaM


#244 [あかり]
「ごめんね、お待たせっ。」
駆け足で彼の元へ寄る私。

「…うん。」

「今日一日、私に付き添う形になっちゃってごめんね。」

「…別に、部活は朝に終わって暇だし。
家に居ても、勉強あんまり集中できないから。」

彼は相変わらず、私の目を見て話さずに、会話する。

改めて近くに立つと、二人の身長差が際立つことに気がついた。

⏰:08/11/01 17:37 📱:SH705i 🆔:a4gM.aaM


#245 [あかり]
彼もまた、男の子なんだ―

常日頃、同級生の男の子を特に意識して接しない私は、
私服姿の彼と二人きりという状況に少しばかり緊張し始めた。

タクロウ先輩は、これよりもう少し高いよなぁ―

夏休みに入ってから、一度も会っていない、意中の相手を思い浮かべる。

⏰:08/11/01 19:09 📱:SH705i 🆔:a4gM.aaM


#246 [あかり]
私たちは、中へと入り、
空いている席に、向かい合わせになるような形で、座った。

西洋風の、少し洒落た外観同様、館内も、それを思わせるような雰囲気だった。

私は夏休みの課題を取り出した。
悠介くんも、それらしいものから、取り掛かろうとする。

少し離れた席では、初老の男性が、文庫本を読んでいた。

⏰:08/11/02 19:32 📱:SH705i 🆔:VokpdkiI


#247 [あかり]
一言も会話することなく、黙々と課題に取り組む私たち。

男の子と一緒に勉強するのなんて、あまりない経験だから、
最初は彼を意識しながら私であったが、次第と問題に集中して解いていた。

そろそろ他の教科をしようかと思った時、未央姉からのメールが届いた。

「無事に行けた?悠介くんによろしく言っておいて。 ―未央―」

⏰:08/11/02 19:44 📱:SH705i 🆔:VokpdkiI


#248 [あかり]
「うん、今一緒に勉強してるよ。
分かった、伝えとく! ―あかり―」

「勉強頑張って。
帰り、あかりの好きなロールケーキ買ってくるね。 ―未央―」

やったあ、と心の中で喜ぶ私。
中にプリンが入った奴ね、と未央姉に注文した。

幼稚園くらいの女の子が、ワァーっといいながら、館内を走っていた。

⏰:08/11/02 19:54 📱:SH705i 🆔:VokpdkiI


#249 [あかり]
プリンの部分を頬張っている自分の姿を想像すると、
同じように、顔もにやけて来た。

そんな私の姿に気づいたのか、悠介くんがちらっとこっちを見た。

私は恥ずかしくなり、咄嗟にページを乱雑な手でめくった。

⏰:08/11/02 20:01 📱:SH705i 🆔:VokpdkiI


#250 [あかり]
それからして―
時計を見てみると、夕方の16時に差し迫ろうとした。

私は彼の前まで手を延ばし、
そろそろ出る?と、声に出さずに言った。
彼も出るか、といいながら、勉強道具をかばんの中にしまい始めた。

近くにいた初老の男性はいつ席を立ったのか、もう居なかった。

私は消しゴムから出たかすを、机の下へ落ちるように掃った。

⏰:08/11/02 20:12 📱:SH705i 🆔:VokpdkiI


#251 [あかり]
「うーん。今日はすごく課題がはかどったよ〜。」
図書館の近くのカフェの中で、
私は冷たいカフェラテを飲みながら、彼に言った。

「…俺も。数学はもう終わりそう。」
コーヒーの中に入れた砂糖をスプーンで掻き混ぜながら、
視線はそれを見るようにして、彼は言った。

図書館から出て、この店に入ろうと言い出したのは私だが、
落ち着いた店内は、お客は私たちが一際若いようで、二人とも少しそわそわしていた。

⏰:08/11/02 20:22 📱:SH705i 🆔:VokpdkiI


#252 [我輩は匿名である]
もしかして種子島の方ですか(^ω^)?

⏰:08/11/02 20:37 📱:D902iS 🆔:x3aj0gGQ


#253 [あかり]
>我輩は匿名であるさん

いえ、全く違いますね
あそこほど大きな島ではないですm(__)m

⏰:08/11/02 20:51 📱:SH705i 🆔:VokpdkiI


#254 [あかり]
「未央姉がね、今日はありがとうって。

そうそう、悠介くんとこの男子高って、有名進学校なんでしょ?
東大に進学してる人も、たくさんいるらしいね。

私、びっくりしちゃったー。
じゃあ、秋人さんも何気に頭いいんだね(笑)」

「…ああ、まあ。
俺はたいしたことないけど。」

「進路はもう決めてあるの?」

「学部はまだ迷ってるけど、とりあえず国公立を目指してる。」

「そうなんだ!私も見習わなきゃ!」

⏰:08/11/02 21:09 📱:SH705i 🆔:VokpdkiI


#255 [あかり]
「悠介くんが私の学校にいたら、きっとモテモテだっただろうなぁ〜!

えっ、好きな人とかはいないのー?」

「…いや、そんなのとは全然縁ないよ。男子高だし。」

「友達の紹介とかは?」

「…何それ。」

「…。」
私は敢えて説明をしなかった。

⏰:08/11/02 21:27 📱:SH705i 🆔:VokpdkiI


#256 [あかり]
「…いるの?」

「んっ?」

「…好きな人、いるの?」
初めて彼から質問をされて、私は少し驚いた。

「私?
うん!一年くらいずっと好きでいる男の先輩がいるんだ〜、
本当一方的な片思いだけどねー、アハハ。」

「…そなんだ、いるんだ。」

⏰:08/11/02 21:36 📱:SH705i 🆔:VokpdkiI


#257 [あかり]
「うんー。」

表情では笑っていたが、
改めてこの一年を振り返ると、これといったアクションをかけられず
先輩を遠くから見ているだけの日々に、少し虚しさを覚えた。

「悠介くんはどんな人がタイプなの?」
私は話の方向を少しそらした。

「…明るい人、かな…。」

丸顔を気にしている私は、彼のシャープで小顔な輪郭を、羨ましいと思いながら見ていた。

⏰:08/11/02 22:02 📱:SH705i 🆔:VokpdkiI


#258 [あかり]
彼のような顔立ちの少年は、どのような人に恋をするのだろうか―

「明るい人かあ。
うーん、どんな人かなあ。」

私は未央姉や、学校でとにかく自分が明るいと感じる女の子の名前を言ってみた。

「…な感じ…。」
その途中で、彼がぼそぼそとつぶやいた。

「んっ?何か言った?」

「…何でも。」

彼がそう返したので、私は特に気にしないことにした。

⏰:08/11/02 22:11 📱:SH705i 🆔:VokpdkiI


#259 [あかり]
カフェを出た後、私たちは店の前でアドレスを交換して、それから解散することになった。

一人、未央姉の部屋まで帰る途中、
先程話題に出たからであろうか、タクロウ先輩の顔が浮かんだ。

先輩、今頃何してるかな―

夕方の涼しい風が、そよいだ。

⏰:08/11/02 22:50 📱:SH705i 🆔:VokpdkiI


#260 [あかり]
「んーっ。最高ーっ。」
未央姉が切ってくれたロールケーキを食べながら、悦に浸る私。

未央姉は予定より早く実家から戻ってきたらしく、
一応渡されていたスペアキーを使うことなく、私は帰宅した。

「駅の中にあるケーキ屋さんの、新商品買ってきた。
今日、悠介くんとどうだった?」
うん、これにして良かった、と未央姉も食べながら言っていた。

⏰:08/11/02 23:20 📱:SH705i 🆔:VokpdkiI


#261 [あかり]
「お互い黙々と課題やってた。
図書館の帰り、カフェで少し話したよ。」

「あかり、あの子とくっついちゃえばいいのに。
あ、そうしたら、ちょっと遠距離になっちゃうわねー。」

「へへへ変なこと言わないでよ未央姉っ!

私、一応好きな人いるしっ!」

「あら、それは初耳。」

⏰:08/11/02 23:27 📱:SH705i 🆔:VokpdkiI


#262 [あかり]
こうして、未央姉宅へのお泊りは、楽しく過ぎていった。

一日中部屋でゴロゴロ過ごす日もあれば、
未央姉に外食に連れて行ってもらったり―

数日後、私は実家に帰ることにした。
未央姉が駅まで車を出してくれた。

窓の景色を見ながら、私はここであった様々な出来事を、思い返してみた。

⏰:08/11/03 19:19 📱:SH705i 🆔:yfrWS1oo


#263 [あかり]
秋人さんのバイト先での面白い人の話や、
未央姉と食べた焼肉の味、
悠介くんが、恋愛経験ゼロって言ってたこと―

冬休みもまた、来れたら来ようと心の中で思った。

⏰:08/11/03 19:43 📱:SH705i 🆔:yfrWS1oo


#264 [あかり]
車は数十分して駅に着き、
そこで、未央姉に別れを告げる。

それから、広い駅の中を歩き、改札口をくぐり抜けて、少し経った後、やって来た新幹線に乗り込んだ。

あと少ししたら、夏休みの補習が始まる。
タクロウ先輩の姿が、少しでも見れるといいな―

車内のアナウンスが鳴り響いた。

⏰:08/11/03 22:00 📱:SH705i 🆔:yfrWS1oo


#265 [あかり]
久しぶりの我が家に帰宅―
その日の晩は、お母さんがご馳走を振る舞ってくれた。

未央姉の彼氏を見たこと、時々手伝いをした話などを、食卓に持ち込んだ。

へえ、そうとポテトサラダを皿に取り寄せながら言う母。

私は唐揚げを何個も頬張った。

⏰:08/11/03 22:36 📱:SH705i 🆔:yfrWS1oo


#266 [あかり]
そして、補習の日へとなった―
久しぶりに、クラスの皆と顔を合わせる。

「いのちゃーん!元気してたー??」

「おう、あかりちゃん。
おかげさまで元気ピンピンやわ。」

夏休みの間に、いのちゃんは、髪を少し切っていたようだった。

⏰:08/11/03 22:48 📱:SH705i 🆔:yfrWS1oo


#267 [あかり]
「藍美っ!」

今度は一人で座っていた、藍美の席へと近づく。

「あかりー!久しいねえ。
あ〜っ、補習とかやってられんわあーっ。

でも、好きな人に会えるかと思うと、嬉しいかなあ。」

「藍美、好きな人いるの!?」

彼女が何気なく言った言葉に、私は逃さなかった。

⏰:08/11/03 22:56 📱:SH705i 🆔:yfrWS1oo


#268 [優]
あげっ
あかりさん
頑張って

⏰:08/11/03 22:59 📱:D902iS 🆔:QxfIhSEg


#269 [あかり]
「いるいる〜。
三年五組の高島克次先輩。」

あ、その人知ってる、と私は一言もらした。

一年の最初の頃、部活見学でラグビー部も訪れに行った時、
私に向かって、「この子、マネージャーの瞳さんに似てる。」と、何度も言ってきたので、覚えていた。

学校でも時々見かけたことがあり、その度に厳つい人だなと思っていた。

⏰:08/11/03 23:05 📱:SH705i 🆔:yfrWS1oo


#270 [あかり]
優さん

いつもコメントを残してくれて、本当にありがとうございます<(__)>

胸が踊るほど、とても嬉しいです。

今日は時間の許す限り、更新したいと思います(^_^)

⏰:08/11/03 23:09 📱:SH705i 🆔:yfrWS1oo


#271 [あかり]
「克次先輩、かっこいい〜!」
藍美は最高潮の笑顔を、私に見せる。

こんなにときめいている彼女を見たのは初めてだ。

克次先輩という人は、ラグビー部ということもあり、体はいつも黒く焼けていて、体格も良く、ガッチリしていた。

目つきも決していいとは言えず、彼に喧嘩を挑んでくる人はいないのではないかと思う。

⏰:08/11/03 23:18 📱:SH705i 🆔:yfrWS1oo


#272 [あかり]
「私ね、ソフトマッチョって感じの人がいいの!
かっこよくない?」

藍美が一年の時に交際していた同級生の男子も、
確かに色黒で、ガタイが良かった。

「うーん…」
彼女の問い掛けに、私はたじる。

私が思いを寄せているタクロウ先輩は、高身長ではあるが、なかなか痩せていた。

「もやしっ子」の代名詞が、似合う人物であった。

⏰:08/11/03 23:26 📱:SH705i 🆔:yfrWS1oo


#273 [あかり]
視力が悪く、普段も裸眼で過ごす私は、
その事実を知ったのは先輩を好きになってから随分後で、
先輩の細さには少しびっくりした。

そこから先輩を見る目が変わった訳ではないのだが。

体型重視で異性を選ぶ、藍美の恋愛の価値観だけは、
私には唯一理解できなかった。

⏰:08/11/03 23:33 📱:SH705i 🆔:yfrWS1oo


#274 [あかり]
「文化祭の時にアタックするの!」
決意を私に示す藍美。

夏休みが終われば、文化祭の準備に取り掛かり、
それが一ヶ月もすれば、本番が始まる。
学校中が、文化祭一色になる季節。

今日の放課後も、クラスでの出し物を決める話し合いが行われる予定だ。

⏰:08/11/03 23:39 📱:SH705i 🆔:yfrWS1oo


#275 [あかり]
文化祭かあ…―
私も、先輩と何か思い出が出来るといいけど―

まだ来ぬ学校行事に、別の意味で胸が膨らむ。

「あかりも頑張ろうよ!
塩見先輩のこと、好きなんでしょ?

そういえば、克次先輩と塩見先輩、同じクラスだねーっ。
なんか嬉しい。」

⏰:08/11/03 23:43 📱:SH705i 🆔:yfrWS1oo


#276 [あかり]
昼休み―
私は藍美と購買、それから自販機へと足を運ぶ。

彼女とは昼食を取るグループが違うが、この行動は二人の日課であった。

タクロウ先輩とすれ違えるかな―
ひそかな私の期待。

⏰:08/11/04 00:07 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#277 [あかり]
自販機で紙パックのジュースを買っている時、
少し離れた所から、友達と一緒にいるタクロウ先輩の姿が見えた。

ドキンドキンドキンドキン…
久しぶりの先輩の姿に、体全身で、緊張する。

夏休み前と変わっていない先輩の外見に、私は何故か安心感を覚えた。

⏰:08/11/04 00:13 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#278 [あかり]
先輩は、昼食は友達と外で取っているようで、
一年の時から、その移動中をしょっちゅう見ていた。

私がお母さんに弁当を作らなくていいと言ったり、
毎日飲み物を買っていたのも、
先輩が廊下を通り掛かるこの瞬間を、一目でも見たいという、淡い希望を抱いていたからだ。

⏰:08/11/04 00:19 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#279 [あかり]
私の狙いどおり、先輩は毎日その時間帯に、この場所に、姿を現しにやって来る。

補習の日であろうと、それは変わらなかったようだ。

「タクロウ先輩いた…。」
階段を上がりながら、教室へと戻る途中、藍美にぼそぼそと言った。

⏰:08/11/04 01:32 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#280 [あかり]
私はこの日から、日記をつけることにした。

先輩の卒業まで残り半年ということで、
先輩と過ごす貴重な時間を、少しでも書き留めておきたいという気持ちからであった。

家にあった大学ノートを、それ用にすることにした。

先輩をどこどこで見たとか、どんな些細なことでも、ノートに記そうと決めた。

⏰:08/11/04 01:40 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#281 [あかり]
最初ページに、今日一日の出来事や、感じたことなどを書き込む。

ペンが思わず進む。

『今日は通り掛かったタクロウ先輩を見ただけど、とても嬉しかった。』―

⏰:08/11/04 02:48 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#282 [あかり]
夏休みの補習も終了し、
学校は二学期に入った―

学校全体で、文化祭に向けての準備に取り掛かろうとしていた。

毎年一年生は展示、二年生はステージ発表と決まっていた。
三年生は受験ということもあって、クラス一丸で何かすることはない。

私のクラスは、皆でソーラン節を踊ることへと進行した。

⏰:08/11/04 02:53 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#283 [あかり]
放課後、クラス一体で柔剣道場へと移動し、ひたすら練習へと励む。

私は藍美と水野名美佳という子と、いつも三人で固まって踊りに励んでいた。

名美佳は「三年三組の坂下幸弘先輩がかっこいい〜。」と私と藍美に話していて、
したがって、私たちは自分たちのことを"先輩に恋する三人組"などと総称していた。

⏰:08/11/04 03:04 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#284 [あかり]
「先輩にこの踊りが届けばいいのになーっ!」
私は両手に持っていた鳴子を天井にかざしながら、二人に言った。

「私も克次先輩の為に踊るーっ!」
私に続くように、藍美も同じポーズを取る。

「アハハ。二人とも熱いねえ。
うちは片思いってほどじゃないからー。
顔ファンって奴かな。」
名美佳が私たち二人を、見届けるような感じで言った。

⏰:08/11/04 03:10 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#285 [あかり]
名美佳は笑っていたが、私のその気持ちは、彼女が思ってる以上に真剣であった。

生まれてこの方、学校でのイベント事などには、
「他の誰かがやってくれるだろう」という気持ちで、自分から積極的に取り組むことはなかった。

本番はタクロウ先輩たち三年生が、ステージの目の前の席で座っている。
下手な踊りは見せられないと焦った。

⏰:08/11/04 03:20 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#286 [あかり]
「翔馬っ!
そっちの練習の方はどう?」
帰りの船の中、間食に菓子パンを食べていた翔馬に話し掛ける。

「んーっ。やっぱり難しい。」
いつもより低いテンションで、彼は言った。

翔馬を含むクラスの一部男子で、ソーラン節の前に、ダブルダッチという長縄を使ったパフォーマンスも、やることが決まっていた。

ソーラン節だけでは尺が短いということと、
クラス全員で踊れるほどステージが広くないということと、
会場を一際湧かせるためということからだった。

⏰:08/11/04 03:32 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#287 [あかり]
「お互い頑張ろうねっ。
私、タクロウ先輩の為に踊るんだ。」
今日藍美が言った台詞を、そっくりそのまま発した。

「何だそれ(笑)。
本番、二つとも上手くいくといいよなー。」

「うん。」

明日の練習は、今日よりもっと打ち込もうと思った。

⏰:08/11/04 03:37 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#288 [あかり]
文化祭も目前に差し迫った頃―
帰りのホームルームで、そのパンフレットが配布された。

放課後、藍美の席でそれを一緒に眺める。

各ゲームのメンバー紹介、体育祭の団長紹介など、様々なことが書かれていた。

「あかり、これ見て。」
藍美がある所に指を差した。

⏰:08/11/04 03:44 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#289 [あかり]
『Dr.塩見タクロウ』
そこには意中の先輩の名前があった。

どうやら友達とバンドを組んで、ライブを行うようであった。
ボーカル、ギター、ベースの名前もそれぞれあった。

他にも数組のバンド名と、そのメンバーの名前が書かれていた。
同級生の名前もあった。

⏰:08/11/04 03:49 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#290 [あかり]
「先輩、ライブするんだぁ…。」

「何か見た目も楽器出来そうな感じだよねーっ。

アハハっ!バンド名『インキン・パーク』だってさー!
まじウケるーっ。」

それは大人気洋楽バンドの名前を、一文字変えた総称であった。

自分の好きな人の下品で小学生みたいな一面を感じると、私はあまり笑えなかった。

⏰:08/11/04 03:56 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#291 [あかり]
「あ、そろそろ行くー?」
藍美が時計を見て言った。

「あ、うん。そうしよっか。」
パンフレットを閉じる私。

先生が今日のホームルームの時間で、
「生徒会が食べ物の販売員を募集しているらしい。」
と言っていたのに対して、
私たちは興味をそそられ、それをやることにした。

二人で集合場所となっている教室まで行く。

⏰:08/11/04 04:03 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#292 [あかり]
既に、教室にはたくさんの人でにぎわっていた。
販売員希望の中に、他のクラスの男子たちの顔も見える。

「きゃあっ、あかり。
あそこに克次先輩がいる!」
私にだけ聞こえるように、藍美は話した。

藍美が見つめる向に目を向けると、藍美の好きな克次先輩の姿があった。

「先輩もこのメンバーにいるんだあ!ラッキ〜!」

⏰:08/11/04 04:09 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#293 [あかり]
二人で係まで登録をし、また教室へと戻った。

「一生の思い出に残る文化祭にしようね。
あかりも塩見先輩ともっとお近づきになれるといいねっ。」

「うん―。」

彼女のたくましさに、私は背中を押されたようだった。

文化祭は、先輩に絶対声を掛けるぞ―

決心した。

⏰:08/11/04 04:14 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#294 [あかり]
文化祭開催が、もう明日へとなった日だった。

放課後、私は自分の席で、持っていた本を読んでいた。

周りには数人しかいなくて、とても静かであった。

「あかりっ。」
教室を入って来たやいなや、名美佳が私の方へと駆け寄ってくる。

⏰:08/11/04 04:21 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#295 [あかり]
「ん?どうしたの名美佳?」
彼女の異様な表情に、私もすぐに異変を察知した。

「ちょっと廊下で話そうっ。」
周りに聞こえないようにか、彼女は話す場所を変えたがった。

私たち二人は廊下へと移動した。

⏰:08/11/04 04:24 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#296 [あかり]
「あのね…。さっき女の先輩と話してた時に聞いたんだけどね…。」

「…?うん。」

「塩見…先ぱ…、かの…女が…いるんだって…。」

「え…。う、嘘…。」

名美佳からの思わぬ情報に、私は全身で震え上がった。

⏰:08/11/04 04:28 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#297 [あかり]
「相手はね…、同じクラスの…江戸川…小春先輩…。」

「あ…。」

聞いたことのある名前で、それは私が同性で憧れを抱いている人だった。

体育委員の集まりの時にいた、三年生の中でも、特に可愛い容姿をしている先輩。

「そ、そうなんだ…。」
私は小さい声で、精一杯の返事をした。

⏰:08/11/04 04:34 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#298 [あかり]
「ごめんね…。黙っていようかなって最初思ったけど、
やっぱり友達として、真実は伝えようって…。」
自分が悪いことでもしたように、謝る名美佳。

「ううんっ。むしろ本当のことが分かって嬉しいよ。
私がいつまでも気持ちを行動に移さないで、ただ遠くから見てるだけっていうのがいけないんだよね。

先輩に彼女が出来ても、全然おかしくないやーっ。」
彼女の優しさに、私は精一杯応えた。

⏰:08/11/04 04:40 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#299 [あかり]
「江戸川小春先輩、すっごい可愛いよねー。」
帰りの船の中、翔馬に一番に話し掛けた言葉。

「陸上部のマネージャーの人だっけ。
サッカー部の練習の時、よく見るわ。

えーっ。ちょっと鼻がでかい。」

「…あんたねぇ、一体どんな人だったら可愛いって思うのよ!?」

「そりゃ俺だって、栗原沙弥さんは可愛いとは思ってるわ。」

「…。」

⏰:08/11/04 04:49 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#300 [あかり]
「小春先輩とタクロウ先輩、付き合ってるんだってーっ。」

「タクロウって、お前の好きな人?あの帽子の。

それはドンマーイっ。」

「ちょっとぉ、少しは慰めてよねーっ!」

「…だからドンマイって言ってんじゃん。」

「翔馬の意地悪っ!」

⏰:08/11/04 04:52 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#301 [あかり]
「…諦めないといけないよねー。」

「もし俺が塩見さんの立場だったら、
江戸川さんからお前に乗り換えようとは思わないな(笑)。」

「もーっ!そんなことぐらい私も分かってるってばー!」

「アハハ。まあ後は別れるのを待つとか。」

「タクロウ先輩があの小春先輩に別れを告げるなんて、そんなの想像もつかないっ!」

⏰:08/11/04 04:59 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#302 [あかり]
「そんなのはわかんないぜ。どちらかというと、江戸川さんの方がベタ惚れという線もある。」

「もーっ。悲しくなるからこの話はやめよう…。」

「自分から話したんじゃん。」

「とにかく!これからどうしていいか分からないよ…。

ずっと、好きだったのにさ…。」

⏰:08/11/04 05:04 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#303 [あかり]
「まあ、心の中では何を思っても自由だぜ。」
かばんの中にあった紙パックのジュースに、ストローを挿そうとする翔馬。

「うん…。
私、せめて文化祭で先輩と写真撮りたいな…。」

「それくらいいいんじゃね。」
勢いよくジュースを飲む翔馬。

「ありがと。」
彼に聞こえないように、私は言った。

⏰:08/11/04 05:09 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#304 [あかり]
そして、
文化祭一日目―

この日は一日中、藍美と出店の販売員を担当した。

といっても、私たちがやったことは、カレーの食券を、
希望者にひたすらお金と引き換えに配る係だった。

二人で一つの机に、仲良く座っていた。
その近辺では、主に三年生たちが、焼きそばやかき氷などをせっせと売っていた。

⏰:08/11/04 14:51 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#305 [あかり]
「おーい、二人とも頑張ってるかーい。」

「あっ、いのちゃん。」

いのちゃんが、他のクラスの友達と共に、私たちの様子を見にやって来た。

「いのちゃん、写真撮ろう。あっ、皆で一緒に写真撮ろう。」

藍美にカメラを頼んで、思い出の瞬間をおさめたりしていた。

⏰:08/11/04 14:56 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#306 [あかり]
顔なじみの人や、そうでない人、先生であったり、
色んな顔ぶれが、私たちの元へ食券を求めにやって来た。

そんな時間をやり過ごしている時だった。

「あ、小春先輩だ…。」
江戸川小春先輩が、女友達と出店へ買いにとやって来た。

販売員と親しげに話している所から、先程のいのちゃんたち同様、
きっと様子を見に来たのだろう。

⏰:08/11/04 15:03 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#307 [あかり]
「藍美、小春先輩とタクロウ先輩、付き合ってるらしいよ…。」
昨日名美佳から告げられたばかりの事実を、私は藍美に話した。

「えっ、そうなの?
えーっ、エドコハ先輩は、もっと落ち着きのある人が好きなのかと思ってたー。」

私も、物静かな小春先輩のことだから、
てっきり大人な人じゃないと、合わないのかと思ってた。

タクロウ先輩は、大人びた見た目に似合わない、おちゃらけたやんちゃな人である。

⏰:08/11/04 15:12 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#308 [あかり]
タクロウ先輩のことは、一年の希緒ちゃんや、後輩の怜香みたいに「かっこいい」と思う人もいれば、
「何あれ。」「調子乗ってる。」と、その存在をあまり良く思わない人とに、はっきりと分かれていた。

「エドコハ先輩、あの人でいいんだーっ。」
こんな台詞を吐く藍美も、どちらかというと、後者の立場であろう。

そんなやり取りをしていると、今度はタクロウ先輩が友達と出店の方にやって来た。
方向は、小春先輩のいる所。

⏰:08/11/04 15:25 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#309 [あかり]
「タッちゃん。」
小春先輩が、先輩を愛称で呼んだ。

胸の奥が、ズキンと痛みだした。

少し離れた所にいた私にも、タクロウ先輩が、
明らかに"好きな人の目の前にいる"オーラになっているのが理解できた。

私はその光景を見るのをやめた。

⏰:08/11/04 15:30 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#310 [あかり]
「あっ、エドコハ先輩が塩見先輩にお好み焼きを食べさせてる…。」
ずっと二人の姿を見ていた藍美が言い出した。

私は思わずもう一度目をやった。

ちょうどタクロウ先輩が、私とは背中越しになっていて何も見えない。

でも、先輩はかがんでいた。
小さな小春先輩に、合わせるようにかと。
藍美の言うとおりの映像が浮かんだ。

⏰:08/11/04 15:39 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#311 [あかり]
ズキンズキンズキンズキン…

それからの私は、あまり明るい気持ちではいられなかった。

二人のあれだけのやり取りで、一気に現実を突き付けられたような気分になった。

文化祭一日目は少しブルーな思いと共に終了した。

⏰:08/11/04 15:43 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#312 [あかり]
その放課後―

「あかりちゃん。」
廊下で一人の女子に、声を掛けられた。

「あっ、佑里ちゃん。」
隣のクラスの、新坂佑里ちゃんという子だった。

佑里ちゃんとは、今年からひょんなことで仲良くなり、二人で図書館まで勉強しに行ったり、放課後一緒に行動したりしていた。

佑里ちゃんはおっとりとした外見が好を為すのか、男子に告白されて付き合うことが多かった。

⏰:08/11/04 15:51 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#313 [あかり]
「塩見先輩のドラム姿、かっこよかったよー。
上半身裸だったんだけど、意外と筋肉がついてて、ちょっとときめいちゃったね。」

私がタクロウ先輩を好きなのを知っている彼女は、
自分が知ってる限りの情報をいつも教えてくれた。

私は今日ばかりはそれが切なくなり、先輩に彼女がいることを言った。

佑里ちゃんと小春先輩は、同中という関係であった。

⏰:08/11/04 15:56 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#314 [あかり]
「そっかぁ。あの二人がくっつくなんて、思いそうで思わなかったなあ〜。」

「私、これからどうしたらいいんだろうって…。」

「先輩のことはまだ好き?」

「略奪したいとは微塵も思わないけど…。」

私は応えるのに迷った。
私の先輩に対しての思いは、一体何であったのだろうか?

⏰:08/11/04 16:01 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#315 [あかり]
「いいんじゃない。遠くから見てるだけなら。
全然罪にならないよ。」
昨日の翔馬と似たようなことを、彼女も言った。

「…。」
私は黙って考えた。

⏰:08/11/04 16:04 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#316 [あかり]
「私ね。」
一時して、私は口を開いた。
うん、と佑里ちゃんが相槌をする。

「先輩と出会ってね、こんな人がいるんだあって思った。

皆に笑顔を振り撒いて。
自分は色々と辛く悲しいことがあったのにさ。

明日のステージ発表も、先輩が見てると思うから、一生懸命頑張った。
家でもたくさん練習した。

先輩がいるから、目の前の出来事が明るくなってる部分は多かったな。

私は先輩に、ただ『ありがとう』って言いたい。」

⏰:08/11/04 16:11 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#317 [あかり]
帰りの船の中―
今日一日で起こった、ありとあらゆることが思い巡ってきた。

タクロウ先輩と小春先輩のツーショット、
佑里ちゃんにタクロウ先輩への気持ちを告げた自分。

諦めてしまいたい思いと、諦めたくない思いとが頭の中で交錯する。
考えたくないけど、考えずにはいられない。
世の中は矛盾だらけだ。

「あっかりちゃん。」
そんな私を尻目なのか察したのか、明るく怜香が話し掛けてきた。

⏰:08/11/05 22:28 📱:SH705i 🆔:w2wy4Vzs


#318 [あかり]
「見てこれ。かっこいいよ。」

怜香は、上半身裸でピースをしてる、タクロウ先輩の写メを私に見せてきた。

「これは…?!」

「塩見先輩たちのライブの後に、友達が頼んで撮らせてもらったんだって。
私も転送してもらった。
あかりちゃんに喜ばせようと思って。」

「う、うん…。」
彼女持ちの先輩を直視できないという気持ちよりも、後輩の優しさに泣けてきた。

⏰:08/11/05 22:34 📱:SH705i 🆔:w2wy4Vzs


#319 [あかり]
「あかりちゃんいるでしょ?送るよ。」

「え…えっと…。」

戸惑いが走る。
それを所持する必要があるのだろうか…。
そこに映っている人は、違う女の人のことを思っている。

その時、
『思うくらいならいい』
翔馬と佑里ちゃんから、同時に叫ばれた気がした。

「うん!欲しい!」
私は決意した。
どんな先輩であろうと、やっぱり好きなものは好きだ。

⏰:08/11/05 22:43 📱:SH705i 🆔:w2wy4Vzs


#320 [あかり]
「怜香、付き合うってどういうことだと思う?」

「んー…、好き同士が一緒になるってことなんじゃない?」

「じゃあ、人を好きになることは?」

「私の場合は、あーこの人じゃなきゃダメだって…って感じ。」

⏰:08/11/07 03:06 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#321 [あかり]
「そっか…。」
私は敢えて、怜香にはタクロウ先輩に彼女がいることを言わなかった。
これ以上、人に会う度に説明するのが煩わしくなった。

「自分の好きな人に、彼女が出来たらどうする?」
今の自分の状況を、怜香に投げ掛けてみた。

「えーっ、時と場合によるけど、私だったら辛いけん諦めるかもー。
彼女にも悪いし。」

⏰:08/11/07 03:29 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#322 [あかり]
それが出来たらどんなに楽だろうか、と思った。
私も実際、少し前までは怜香と同じ意見であった。

未だに半分は、今の現実を飲み込めきれない思いが混じっている。

毎日毎日、ただ先輩の姿だけを、追いかけていた。
それが今、何故音を立てて崩れていかなければならないのかが、納得出来ずにいる。

⏰:08/11/07 04:25 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#323 [あかり]
怜香から送られてきたばかりの先輩の写メが、画面いっぱいに表示されている。

今まで、これといって先輩に何をしてもらった訳ではないが、
私はその存在に、深く感謝をしている。

それは彼女の有無一つで変えてはいけない気持ちだと思った。

「思うだけなら、ね…。」

⏰:08/11/07 05:08 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#324 [あかり]
次の日―
文化祭二日目。

学校から少し離れたところにある、公民館で行われた。

この日は、主に二年生のステージ発表であり、それ以外はカラオケ大会や、
ゲスト出演、劇団のお芝居などが披露される。

⏰:08/11/07 05:20 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#325 [あかり]
私たち二年三組の発表は、くじ引きで最後から二番目と決まっていた。

司会のMC、他のクラスの発表を、そわそわした様子で見る。

面白いと思ったものはありのまま笑い、凄いと思ったものには心から拍手していた。

⏰:08/11/07 05:25 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#326 [あかり]
私は去年のこの日を思い出した。

当時の二年四組の発表の時―
種類は分からないが、足でリズムを取るダンスを、クラス全員で踊っていた。


クラスの中央で、恥ずかしがりながら踊るタクロウ先輩。

私には、彼の姿しか映っていなかった。
ふいに涙も出ていた。
心の中で頑張れ、頑張れとひたすら声援を送っていた。

あれからもう一年か―
あの頃は、先輩の名前くらいしか、知らなかった気がする。

⏰:08/11/07 05:32 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#327 [あかり]
私たちの出番の前のクラスがステージに登場した時、
クラス一斉に席を立ち、準備室に直行していった。

「いよいよ、だね…。」

「ホントに。ドキドキするわ〜。」

いのちゃんと通路を歩きながら、高揚を抑えようとしていた。

⏰:08/11/07 07:35 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#328 [あかり]
舞台衣装のはっぴに着替え、自分たちの出番が来るまでの時を過ごしていた。

周りからは「どうしよう〜!」という声や、
数人で固まって、踊りの最終チェックの確認をしあったりしている。

私も藍美や他の子たちと一緒になって、ギリギリまで振付の練習をしていた。

⏰:08/11/07 08:05 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#329 [あかり]
「そろそろ時間です。」
生徒会の人からの、合図が来た。

私たちは、舞台の袖口までと静かに移動した。

会場は暗闇に包まれ、客席もシーンとしている。

遂に、その時が来た…。

⏰:08/11/07 08:10 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#330 [あかり]
今まで、本当に頑張って来た。
土日も学校に来て、体育館や屋外の渡り廊下を使って、皆でとことん練習に励んできた。

タクロウ先輩に、いいものを見せたくて必死でいた自分がいた。

先輩、私の思いはあなたに届きますか?―

⏰:08/11/07 08:16 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#331 [あかり]
まずは、翔馬を中心とした、男子数名で行われるダブルダッチ。

BGMは翔馬の好きなロックバンドの歌だった。

客席から「おぉ!」との歓喜の声や、パフォーマンスが行われる度に、拍手が送られていた。

舞台袖から、私たち女子が祈るように見守る。

⏰:08/11/07 08:20 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#332 [あかり]
縄に引っ掛かってしまうというシチュエーションが、2回ほどあった。

ミスといえばそれまでだが、本当に彼らはよくやってくれたと思う。
練習より、本番の方が上手くいったということが光栄であった。

ダブルダッチの披露が終わった。
いよいよ、私たちのソーラン節の成果を見せる時がやって来た。

⏰:08/11/07 08:29 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#333 [あかり]
主に立ち位置は、翔馬が最前列の真ん中、藍美が同じ列の右端、
いのちゃんが二番目の列の中央よりやや右より、といった具合だった。

私は三番目、最後列の中央であった。
こう決められた時、タクロウ先輩が気づいてくれないのではないかと不安があったが、
下手な踊りを前の方でやるよりマシだと自分に言い聞かせた。

⏰:08/11/07 08:35 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#334 [あかり]
舞台がまた真っ暗に染まった時、皆それぞれ決められた位置へとスタスタと向かっていった。

その時である―
クラスのぽっちゃりした木田くんという男子が、どういう訳か私の位置でスタンバイをしていた。

―ちょ、ちょっと…。

舞台がまたパッと明るくなった。
私は仕方なく、最後列の右端へと急いで移動した。

⏰:08/11/07 08:41 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#335 [あかり]
ああ、きっと私は、今一番目立たないポジションにいる―

元々決められていない配役にいたから、より一層悲しくなった。

自分が目立ちたい訳じゃない。
ただ、タクロウ先輩に、自分のことを見てほしいだけ―。

それでもその思い一つだけで、体いっぱいを使って精一杯ソーラン節を踊る。

突如、それは起こった。

⏰:08/11/07 08:48 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#336 [あかり]
突然、音楽が止まったのだ。
皆の動きが少しずつ止まり出す。

どうして…?
これはまたやり直し…?
私も心の中で困惑した。

すると、客席にいた三年生たちが、「頑張れーっ!」などの声を送ってくれていた。

音楽が再び流れ始めた。
客席も私たちに合わせて拍手を叩いてくれたり、「ソーラン!ソーラン!」と一緒に言ってくれていた。

今、会場全体一つになって、ソーラン節を表現している。

⏰:08/11/07 08:55 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#337 [あかり]
「ヤァッ!」
最後に両手に持っている鳴子を掲げ、大きな声を出し、この場を締めた。

お、終わった…。―

やるだけのことは、全て出し尽くした。

幕が下り、私たちは舞台を後にした。
鳴り止まない観客席からの拍手が心地良かった。

⏰:08/11/07 09:02 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#338 [あかり]
「ちょっと木田くん!私の所で踊ってたでしょ!」

私がステージ発表が終わって、一番にやったことは、
私を一番冴えない所へと追いやった、張本人を責めることであった。

「え、あ、そうなの?」

彼は上手いことはぐらかした。
私には分かる、心の中では目立ちたがり屋の彼は、隅の方で踊りたくなかったのだと。

私は普段、気が小さい為、人に怒鳴ったりという経験があまりないのだが、
この時ばかりは本当に怒りが来た。

翔馬から以前、木田くんは同級生から好かれていないと聞かされていたが、
きっとこういう姑息な行動と態度が、反感を呼ぶのだろう。

⏰:08/11/07 09:12 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#339 [あかり]
でも、ついさっきの出来事ではあるが、過ぎたことはしょうがないのである。

気を取り留め、私は先輩が自分のことを気付いてくれたことだけを願った。
でも、あんな場所じゃ…と、ネガティブにならずにいられない。

「あかりちゃん、お疲れー。」
いのちゃんのいつもの笑顔を見て、あまり深く考えるのをやめることにした。

⏰:08/11/07 09:17 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#340 [あかり]
文化祭二日目も、終盤に迫ろうとしていた。

司会の三年生二人だけとなった。

「最後に、先程のステージ発表の結果を報告します。
1位は、二年五組!」

同時に、ワァー!っという声が広がる。

私たちのクラスもそれとなく拍手をした。

⏰:08/11/07 09:22 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#341 [あかり]
「2位は、二年三組!」

えっ!、という声を私も周りも発していた。
私たちは満面の笑みで、自分たちに歓声の拍手を送った。

やった、2位だ…!
一生懸命にやれば、きっと何事も伝わるんだ。

⏰:08/11/07 09:27 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#342 [あかり]
「おめでとう!」
帰りのホームルームで、先生が賞状を、クラスを代表とした翔馬に渡す。

私たちは、もう一度教室内でその結果に喜んだ。

1位であることに越したことはないが、
音楽が突然止まるというハプニングも乗り越えたクラスの結束力が何よりも大きかった。

⏰:08/11/07 09:32 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#343 [あかり]
「翔馬、うちらやったね!」
帰りの船の中、二人でまた今日一日を振り返る。

「音楽が聞こえなくなった時は、本当どうしようかと思ったよ〜…。」

「俺も、まじでびびったわ。
でも、隣の方見たら、城山さんがそれでも踊り続けよんけん、
『え?やり直しじゃないんだ』って思った。」

「え、そうなの…?」
藍美、一人で凄いな…。

彼女を先頭にしたのは、クラスとして、かなり間違いではなかった。

⏰:08/11/07 09:39 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#344 [あかり]
次の日―
文化祭最終日。
体育祭が行われた。

皆大体、出番は二種目くらいのみである。

生徒会や体育委員、応援団は担当に忙しいが、
その他の人たちは、たいてい暇を持て余している。

⏰:08/11/07 09:46 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#345 [あかり]
私といのちゃんは、応援席で目の前の種目を見ていた。

全校男子で行われた、自由競争を見ている時であった。

最後尾前列辺りに、タクロウ先輩の姿があった。

⏰:08/11/07 09:49 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#346 [あかり]
パンッ。
ピストルの合図と共に、タクロウ先輩たちの走者が駆け出した。

数メートル先に置かれてあるカードをめくり、
マイクに向かってその指示を読み上げる。

「えっと…、校歌を歌う。」
タクロウ先輩の声が校庭中に響いた。

⏰:08/11/07 09:52 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#347 [あかり]
「あ〜あ〜、この胸に〜誓い〜合う〜我が母校〜」
適当にワンフレーズ歌って、ゴールまで走るタクロウ先輩。
見事一位になった。

応援席では笑いの渦が起こっていた。

「やべー、腹痛ぇ。
あの人おもしろすぎるわー。」
隣のいのちゃんも、抱腹絶倒という感じであった。

私も、いつまでも笑っていた。

⏰:08/11/07 09:57 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#348 [あかり]
こうして、体育祭も何なりと終了した。
結果などは対して気にならなかったが、やはり一位がいいというところが本音だ。
私たちの団は、これまた二位であった。

放課後―
まだ体操服のままで、過ごしていた。
私には一つだけ、やり残していることがある。

⏰:08/11/07 10:01 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#349 [あかり]
「名美佳…。」

「ん?何、あかり?」

「あのね、私、まだタクロウ先輩と写真撮ってないんだ…。」

「体育祭の時、声かけなかったの?」

「うん、話し掛けづらくて…。」

⏰:08/11/07 10:04 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#350 [あかり]
「そっかあ…。まだ校内にいるんやない?
きっと今ホームルーム中かも。
うちらのクラス、早く終わったけんさ。」

「う、うん…。」

「私一緒に付き添おうか?
シャッター係がおらんといけんでしょっ。」

「名美佳…、ありがとう!」

⏰:08/11/07 10:08 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#351 [あかり]
私と名美佳は、玄関で先輩がやって来るのを、待ち伏せすることにした。

三年生はホームルームの終わりか遅いのか、下校する人がぽつぽつとしかいなかった。

私たちは話をしながら、ひたすら先輩の登場を待つ。

「髪型整えなきゃ。」
そう言って二人で一旦トイレに入り、もう一度出てきた時だった。

⏰:08/11/07 10:12 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#352 [あかり]
体操服姿で、タクロウ先輩がスタスタ帰ろうとしている、後ろ姿が見えた。

私は思わず名美佳を置いて、近くまで走った。
名前を呼ぼうとするが、緊張からなかなか声が出ない。

しかし、このままでは先輩が帰ってしまう―

⏰:08/11/07 10:15 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#353 [あかり]
「し…、塩見先輩っ!」
やっと言えた。
思っていたより、小さい声になっていた。
それと同時に、背伸びをして、彼の肩を叩いていた。

先輩の名前を名字で呼んだのは、不快な馴れ馴れしさをなくす為である。

「しゃ…写真一緒に撮って下さい…。」
振り返って目の前にいる彼に向かって、言った。

⏰:08/11/07 10:20 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#354 [あかり]
「はい、チーズ!」
名美佳のシャッター合図と共に、二人並んでいる所が、カメラの中に瞬間におさまった。

先輩はそれから、無言でその場を立ち去るかのように、靴に履きかえ、帰っていった。

「ありがとうございます」と言いそびれた私には、
その態度が怖く感じた。

⏰:08/11/07 10:28 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#355 [あかり]
「やっぱり写真なんて、うざかったかな…。
先輩には、小春先輩がいるしさ…。
先輩、さっき一言も話さなかった…。」

「そんなことないよ!
塩見先輩、写真撮る時あかりの身長に合わせて屈んでくれてたし、ピースもしてたよ。
本当に面倒臭かったら、嫌そうな振る舞いすると思うな。」

「う、うん…。」

とにもかくにも、全ては写真が物語っていることであろう。
私は現像するのが、楽しみな、不安でたまらないような気分であった。

⏰:08/11/07 10:35 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#356 [あかり]
「じゃーんっ。」
文化祭も遠い昔のように感じた昼休み、藍美が一枚の写真を見せてくれた。

藍美と彼女の意中の相手の、克次先輩のツーショット写真である。

その周りには彼女の手で、ハートマークが赤い油性ペンで書かれていた。

「克次先輩とも今メールのやり取りしてるんだあ。」
携帯で文章を作成しだす藍美。

⏰:08/11/07 10:43 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#357 [あかり]
「城山さんが、ラクビー部の高島さん?に、手紙渡してる所を見た。」
と、翔馬から聞いていたので、今の状況は、何となく予測は出来ていた。

それにしても藍美は…
タイミングを上手く掴めるというか、良い方向に持っていくのが巧み、という子である。

一年以上思い続けている私よりも遥かに、好きな人に近づききれていた。

⏰:08/11/07 10:52 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#358 [あかり]
「あかりは?
塩見先輩とどうだった?
せめて写真は撮りたいって言ってたじゃん。」

「あ、うん。
撮ったことは撮ったよ…。」

「やったねぇ!
頑張ったじゃん、あかり!

何せ憧れの先輩だもんねっ。」

「うん…。」

"憧れの先輩"か―
一年以上、私は一体何をして過ごしてきたのか…情けなくなった。

⏰:08/11/07 10:58 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#359 [あかり]
ある日の放課後、職員室まで課題のやり直しを提出しに行った時であった。

「木村先輩っ!」
ふいに誰かに呼ばれた気がした。

「あっ…、竜樹くん!」
振り返ると、一年生の阿倍野竜樹くんという人がそこにいた。

私たちは、前期の体育委員の集まりがきっかけで、
学校で会った時は話す程度の仲になっていた。

⏰:08/11/07 18:25 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#360 [あかり]
「お久しぶりっすね!
先輩たち、もうすぐ修学旅行ですよね?
オーストラリアとか、まじスケールでかいっすよね〜!」

「うん、そうだよ!
だから、準備に大忙しなんだ!」

「お土産お願いします!(笑)」

「うん、分かった!
でっかいコアラ連れて戻ってくるわ(笑)」

⏰:08/11/07 18:33 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#361 [あかり]
「聞いてくださいよ、
最近部活で、翔馬さんがやたら俺のこといじるんすよ。」

「アハハ。竜樹くんはいじめがいがありそうやけんねっ(笑)。」

「えーっ、俺結構しっかりしてるっすよ!
そういやぁ、木村先輩、アドレス教えてくださいよ!」

「あ、まだ交換してなかったっけ?
じゃあ私、翔馬から聞いとくね!」

「あざーっす!」

⏰:08/11/07 22:44 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#362 [あかり]
「じゃ、俺、部活行って来ます。」

「うん、分かった!またね!」

一旦、職員室を出ようとした彼が、また振り返る。

「あ、木村先輩!」

「?」

「先輩、最近髪切ったっすよね。カワイイっすよ。」

⏰:08/11/07 22:54 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#363 [あかり]
「あーかーりっ。」

「わぁ!藍美!いたの?」

今度は藍美と鉢合わせ。

「ついさっき来たの。
今の男の子、地元の子?」

「ううん、高校で仲良くなったの。」

「なんか、カッコ可愛いって感じ〜♪
背も高いし、しかもあかり、仲よさ気じゃんっ。」

⏰:08/11/07 22:59 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#364 [あかり]
「うん。面白くて明るい子だよっ!」

「…彼なんかどう?」

「…え?」

「彼を恋愛対象として見るのはどう?」

「…えぇっ!」

⏰:08/11/07 23:03 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#365 [あかり]
「塩見先輩はさ、彼女いるじゃん。
遠くから見るっていうのもいいと思うけど、
私、最近あかり見てて心から笑ってないと思うのね…。

もしかしたら辛いんじゃないかなって。
新しい出会いや予期せぬ出来事が、自分を変えてくれることもあるよ。」

「…藍美。
心配させてたんだね、ごめんね…。」

「ううん、全然。最終的にはあかりが決めることだから。」

「私、私は…。」

⏰:08/11/07 23:09 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#366 [あかり]
「本当にわかんないんだ、自分でも…。

先輩のこと、いっそのこと忘れたいって思っても、
いざその姿を見るとやっぱり出来ないし、
付き合いたいとか思ってないつもりだったのに、
いざ先輩が他の女の人のになると、無償に悲しくて、辛くて、寂しくて…。

私の中にも、嫉妬心があったんだね。」

「うんうん…。
私も克次先輩に彼女がいたら、きっとあかりくらい悩んでると思うよ…。

だからさ、だから、二人で一緒に幸せになろう…。」

⏰:08/11/07 23:15 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#367 [あかり]
「翔馬ー、阿倍野竜樹くんってどう思うー?」

帰りの船の中。
今日は、いつも話題にあまり出ない人を中心とした会話。

「ん?あいつは一年の中じゃ中心人物って感じだし、
いつもふざけたことやってて、皆の笑い誘ってるよ。

俺、あいついつもおちょくってる(笑)」

⏰:08/11/07 23:24 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#368 [あかり]
今日の藍美の苦しそうな表情を思い出す。
私のこと、いつもずっと気にしてたんだ。

片思いなんて、私一人だけの問題かと思ってた。
でも、そうじゃないということが分かった。

客観的に見たら、今の私の恋は、もう終わってるのだろうか?
『思うだけなら勝手』っていうのも、実際、虚しいものがあるよ…。

⏰:08/11/07 23:30 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#369 [あかり]
「翔馬。」

「何?」

「私ね、幸せになりたいの。」

「うん。俺も。」

「だから、もっと視野を広げることにする。」

「うん?」

「タクロウ先輩だけが、男じゃない…よね…。」

「あ?ああ、まあ。」

⏰:08/11/07 23:35 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#370 [あかり]
私のいいたいことを察したのか、翔馬が口を開く。

「そういや、竜樹から何回かお前の地元の時のこととか、クラスでの様子とか聞かれたことあるわ。」

「え?私のこと気にかけてくれてるんだ。嬉しいな。」

「まあ、あいつは普通にいい奴だと思う。」

「うん。」

⏰:08/11/07 23:42 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#371 [あかり]
それから帰宅して、晩ご飯の前に、船の中で翔馬から教えてもらった、
竜樹くんのアドレスにメールを送る。

「二年の木村です(^O^)
登録よろしくね☆
修学旅行のお土産、どんなのがいい?(゜▽゜) ―あかり―」

数分で返信はきた。

「こちらこそよろしくっす!何でもいいっすよぉ!食い物でも残る物でも! ―竜樹―」

⏰:08/11/07 23:52 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#372 [あかり]
それから、会話は途絶えるどころか、弾んでいくばかりだった。

「翔馬さん、ソーラン節の時、皆裸足なのに、一人だけ体育館シューズ履いてましたよねぇ?
先頭の真ん中だから、余計目立ってました(笑) ―竜樹―」

「そうそう!(笑)皆であれは笑ったなぁ〜。
翔馬はめっちゃ後悔してたけど(笑) ―あかり―」

「木村先輩、一番後ろの端の方で踊ってましたよね?
俺、ちゃんと気付いてましたよ!頑張ってましたね。 ―竜樹―」

⏰:08/11/08 00:01 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#373 [あかり]
「竜樹くん、私のこと見てくれてたんだ…。」

心の底から嬉しかった。
自分でも、地味で目立たない奴だと思ってたから。

「ありがとう。来年は、竜樹くんたちの出番だね!私、しっかり竜樹くんのこと見るから!o(^-^)o ―あかり―」

⏰:08/11/08 00:07 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#374 [あかり]
「あーかりちゃんっ。」

「あ、怜香。」

テスト期間真っ只中。
この日は、午前で学校が終わった。
帰りの船の中。

「あー最近何かときめきがないっ。
同じクラスの男子とはこないだ別れたばっかだし。」

「佐藤くんだっけ?
いい感じに見えたけど。」

「あいつ、ああ見えて女にだらしないだよねー。
怜香はもっと、尽くしてくれる人がいい。」

⏰:08/11/08 00:18 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#375 [あかり]
「あ、ねえねえ。
阿倍野竜樹くんって分かる?一年二組だっけ?」

「うん。隣のクラスだし、話したこともあるよ。

優しいし、面白いよねー。

女子からも人気あるよ。
告った子もいるって聞いた。」

「そうなの?
竜樹くんは、誰かと噂になったりしないの?」

⏰:08/11/08 00:27 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#376 [あかり]
「うん、ああ見えて硬派な感じ。
しかも自分からは、女子にあんま話し掛けないんよ。」

「へぇぇ〜。
それは本当に意外だなあ。」

「何々どうしたのー?
阿倍野くんのこと、いいと思った?」

「えっ!いや、最近メールしてるから…。」

⏰:08/11/08 00:37 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#377 [あかり]
「へぇーっ!阿倍野くんとメールのやり取りとか羨ましー。」

「あ、うん、まあ…。」

「…。
塩見先輩、彼女いるんでしょ。」

「えっ、何でそれを…。」

⏰:08/11/08 00:46 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#378 [あかり]
「あかりちゃん、最近塩見先輩の話めっきりしないなーと思って。

そしたら、日高ちゃん、前言った塩見先輩に片思いしてる子ね、
その子たちらが、先輩が女の先輩と付き合ってるーって騒いでて。

まあ、その相手が江戸川小春先輩だから、皆手も足も出せないみたい。」

「あ、そか…。
もう一年生にまで噂広がってるんだっ。」

「お似合いなような似合わないような、よく分からんカップルだよねー。」

「アハハッ…。」

⏰:08/11/08 00:53 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#379 [あかり]
「…。」
怜香がこっちをじーっと見つめる。

「ん!何?」

「誰かに取られる前に、早くしないとと思ってー。
近頃、原 希緒ちゃんも阿倍野くんに、積極的に話し掛けに行ってるし。

まあ、あの子はないと思うけど。」

「うん、それはタクロウ先輩の件で肝に命じてる…(笑)。
私、これでいいのかな。」

⏰:08/11/08 01:05 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#380 [あかり]
「そんな馬鹿正直に生きなくていいと思うよー。
ランダムでいいんだよ、恋愛は。」

「うんっ。
もっと高校生活を謳歌したいなあ!(笑)」

「私もあかりちゃんと阿倍野くんがくっつくように協力するわあ!」

「えっ、気早いって怜香っ!(笑)」

⏰:08/11/08 01:46 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#381 [あかり]
「一組の福島さんも離島の人ですよね?
こないだ明孝と三人で話しましたよ♪ ―竜樹―」

今日も家に帰ってから、竜樹くんとひたすらメールのやり取りをする。

「竜樹くん、原 希緒ちゃんとも仲良いんだって?
前期の体育委員で一緒だったしね。 ―あかり―」

さっき、怜香が言っていたことが気になって彼に尋ねてみた。

⏰:08/11/08 01:54 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#382 [あかり]
「そこまで話したことないっすよ! ―竜樹―」

「そうなんだっ。希緒ちゃん可愛いよねっ。 ―あかり―」

ああ、私何てこと言ってるんだろ…。

「そうすか?
てか、先輩が修学旅行中はメール出来ないっすねー(>_<) ―竜樹―」

ドキドキ…。
竜樹くんは、いつも嬉しいこと言ってくれるなあ…。

⏰:08/11/08 02:01 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#383 [あかり]
「帰ったらまたすぐに送るよ!
私たち、明日もテストあるのに、ずっとメールしてるね!(@_@)(笑) ―あかり―」

「あっ、迷惑やったらすいません!(>_<)
先輩、明日放課後時間ありますか? ―竜樹―」

「どうせ勉強はかどらないから気にしないで♪(笑)
うん、何も予定はないよ〜? ―あかり―」

「あ、じゃあまた明日になったら連絡しますっ(^O^)/ ―竜樹―」

⏰:08/11/08 02:10 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#384 [あかり]
次の日―
中間テスト最終日。

苦手な教科に苦戦しながらも、何とか乗り切った。

午前中で終わった為、
放課後いのちゃんとのんびり昼食を取りながら、過ごしていた。

「あかりちゃん、携帯鳴ってるよ。」
メロンパン片手にいのちゃんが、私の携帯に指を差す。

⏰:08/11/08 03:13 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#385 [あかり]
「テストお疲れっす!<(__)>
俺今体育館の玄関のトコにいるんで、来てもらっていいですか? ―竜樹―」

昨日約束してたとおりに、竜樹くんからメールがきた。

「会うことになってた後輩からだった。」
いのちゃんに説明をする。

「お、まじで。じゃああたしは、隣のクラスに遊びにでも行ってこようかな。」食べかけのメロンパンをしまう彼女。

「ありがと、いのちゃん。」
私たちはその場を整えて、教室を出ることにした。

⏰:08/11/08 19:24 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#386 [あかり]
「竜樹くんっ!」
メールで言っていたとおりの場所に、彼がいた。

彼の存在を見るやいなや、玄関で靴に履きかえた私は走っていった。

「先輩、お疲れさまでーす。今日コレ持って来たんですよ。」
そう言い出した彼の体に、アコースティックギターが包まれていた。

⏰:08/11/09 23:19 📱:SH705i 🆔:i7UtH6lg


#387 [あかり]
「先輩、ギター始めたいって言ってましたよね?
俺、中学の時からやってっから、何か参考になればいいなーって。

今日まだテスト期間中やったんで、朝コレ持って学校来たら
周りから、すげー白い目で見られましたよ(笑)。」

そう言って、愛らしい目でギターを見つめる彼。
その視線から、きっと、かなりこれをやり込んでいるのだろう。

「私の為にそんな…わざわざ有り難う!すっごく嬉しいな。」

「いえいえ。
放課後は毎日部活だし、こんな時じゃないと、木村先輩と一緒にいれないですから。」

⏰:08/11/09 23:27 📱:SH705i 🆔:i7UtH6lg


#388 [あかり]
「えっ…。」
体中の血液が、逆流するかのようにどぎまぎした。

「先輩、エンドロールガーデン好きって言ってましたね。

えっと、『シューティングスター』、歌い出しどんなんやったっけ…。」

フレーズを思い出すかのように顔を仰ぎ、弾き語りをし出す彼。

歌声は地声より少し高音で、甘い声をしていた。

私はその姿をすぐ隣で、正座を崩したような姿勢で、一緒に口ずさみながら聴いていた。

⏰:08/11/09 23:38 📱:SH705i 🆔:i7UtH6lg


#389 [あかり]
こんな人の隣で毎日過ごせたら、幸せだろうな―
そんなことを考えながら、歌っている彼の顔をじっと見つめていた。

「…と、こんな感じですかね。」
気がついたら一曲歌い終わっていて、私は一瞬ハッとしたが、すぐにその場で、ぱちぱちと拍手をした。

「歌もギターも上手いね!私がギター買ったら、教えて欲しいなー!」

⏰:08/11/09 23:43 📱:SH705i 🆔:i7UtH6lg


#390 [あかり]
「いいですよ、俺でよければ。一緒にやりましょうよ。」

「うん!よろしくね!」
口約束にしたくない思いで、私は強く言った。

時々、下校する人が、私たちの方に視線をやる。
三年生が多かった。

竜樹くんがオススメのギターのメーカーを、私に教えてくれている時だった。

⏰:08/11/09 23:55 📱:SH705i 🆔:i7UtH6lg


#391 [あかり]
タクロウ先輩と、その男友達の人が、一緒に帰ろうとしていた。

「あっ…!」
私はつい、声に出して言ってしまった。
幸いにも、それは隣の竜樹くんに聞こえまでの大きさだった。

タクロウ先輩は私たち二人に気がついたようで、私は先輩と目が合ってしまった。

でも、すぐに彼は顔を逸らし、そのまま友達と校門の方へ歩いて行った。

⏰:08/11/10 00:00 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#392 [あかり]
「あの人と知り合いなんすか?
遠足の時、司会やってた人ですよね?」
タクロウ先輩たちが消えたと同時に、竜樹くんが話を振った。

「あ、うん。少し…。」
私は顔を地面にやったまま、答えた。

心臓の鼓動がまだおさまらない。
先輩のことは、あまり考えないようにしていたのに―。

⏰:08/11/10 00:07 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#393 [あかり]
今日は小春先輩と一緒じゃないんだ…―

ふとそんなことが頭の中を過ぎった。

「先輩?大丈夫っすか?」
竜樹くんの言葉で、また我に戻る。

「うん!全然!
ちょっとぼーっとしちゃった!」
明るい声で返事をした。

⏰:08/11/10 00:11 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#394 [あかり]
「先輩はー、気になってる人とかいるんですか?」

「…えっ?」
突然の彼の質問に、私の声は必要以上に大きく発した。
彼とは普段、こういう話をすることはない。

以前、堀ノ内悠介くんから聞かれた時とは、また違う動揺であった。

私はその場でフル回転で考えた。
一体、どう答えればいいのだろうか―

⏰:08/11/10 00:16 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#395 [あかり]
さっき、竜樹くんの歌声を聴いた時、
"うっとりとする"とはこういうことなのかと、改めて理解した。

彼は私より一つ年下だけど、そうとは思わさせないくらい、見習いたいほど大人な意見をたくさん持っていた。

人間にはいくら好きでも、「合う」「合わない」があると思っている。
私は竜樹くんとは、同じような波長が漂っていると、感じていた。

⏰:08/11/10 00:25 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#396 [あかり]
それに比べて―
一年以上も片思いしていたタクロウ先輩とは―

私ははっきり言って、彼とは「合わない」であるだろうと、
初めて話した時から、その答えに自分でも納得していた。

一緒にいる時の二つの異なる空気が、溶け合うことなく反発しようとしているのが、それを物語る。

そんなのは努力次第だと思われるかも知れないが、
人生とは時に、自分の力だけではどうしようもならない物事がある。

特に男女間のフィーリングが、いい事例であろう。

⏰:08/11/10 00:36 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#397 [あかり]
それを十分承知していたつもりで、私は先輩に思いを寄せていた。

でも―
決して報われることのない自分の気持ち。
決して交わることのない平行線は、私の方の線が、
そろそろ折れかけている所だった。

先輩には、誰もが羨む彼女がいる。
私が陰で思うことに、何の意味があるのか―

⏰:08/11/10 00:42 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#398 [あかり]
以前、翔馬が言っていたことを思い出す。

「竜樹の奴さ、最近お前とメールするようになって、何か嬉しそうにしてたぞ。

あいつから普段女子のこととか全然聞かんから、俺もびっくりしとる訳。

相手がお前やけん、尚更やし!(笑)。

…あいつ、かわいい後輩やけんさ、真剣に向き合ってやってくれないか。」

⏰:08/11/10 00:49 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#399 [あかり]
最高の部分は、意味深な台詞だった。

日頃あまり、翔馬から真面目な話をすることはないから、私はより、その意見を受け止めていた。

竜樹くんも、私のことを決して悪く思っていないのだから、こうして接してくれているのだろう―

タクロウ先輩と出会って初めて、彼以上に、もっと色んなことを知りたいと思う男性が現れた。

⏰:08/11/10 00:56 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#400 [あかり]
「あ、えっと…えーっと…。」
そんなことを考えながら、言葉にならない思いを、
どう表現していいか分からずにいる私。

「あ、俺、変なこと聞いちゃったようですね…。
困らせたようで、すいません…。」

それから、二人の間に、沈黙の空気が流れる。

⏰:08/11/10 01:00 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#401 [あかり]
何か話さなければ、と焦る。
でも、全く違う内容に持っていくのも、むしろもっと気まずくさせると思った。

私は、いつもうじうじして、自分からぶつかっていくのを、いつも避けて過ごしてきた。

こんな自分を、本当はずっと変えたいと思っていた。
きっかけを待っていた、どんな小さなことでもいいから―

⏰:08/11/10 01:07 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#402 [あかり]
自分の本当の気持ち―

日に日に、竜樹くんの存在が、大きくなっていってるような気がした。

それは、決して先輩への思いが、報われないからという理由ではないことを、願いたい―

フッと、今度は藍美の顔が浮かんだ。
藍美、私、新しい自分に出会いたい―

⏰:08/11/10 01:13 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#403 [あかり]
「私ね…。」
シーンとした空気の中、口を開いたのは、私からだった。

「私、竜樹くんと、もっと話したり、一緒にいたいなって思って…るんだ…。」

あっ!と思った時には、既に遅かった。
自分でも何故こんなことを口走ったのか、分からなかった。

⏰:08/11/10 01:20 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#404 [あかり]
「えっ!?」
彼が驚く。
唐突なことを言ってしまったので、引かれただろうか。

でも、後悔はしていない。
むしろ、すっきりしている。
はっきりしない自分とは、もう決別したかった。

どうにでもなっちゃえ―
半分投げやりな思いで、目をつむった。

⏰:08/11/10 01:24 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#405 [あかり]
「俺、めっちゃ嬉しいっす!
木村先輩が、俺のことそんな風に思っててくれてたなんて。」

「えっ?」
予想外の彼の言葉と嬉しそうな表情に、私はふいをつかれた。

「俺、こう見えても、女の人とはどう接していいかわかんないんすよ?

でも、そんなこと言ってたら、いつまでも木村先輩と距離縮まんないじゃんって。
最近はホント頑張ってましたよ(笑)」

⏰:08/11/10 01:31 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#406 [あかり]
竜樹くんが話すことを、隣で心臓をバクバクにしながら聞いていた。

相変わらず彼は、私をドキドキさせるのが上手い―

「俺、本当はもっと時間が経ってから言おうと思ってたんですけど…

先輩のこと、ずっといいなと思ってて…

よかったら、俺と付き合ってくれませんか?」

⏰:08/11/10 01:44 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#407 [あかり]
「あかり、さっきから顔が赤いわよ。
熱でもあるんじゃない?」
晩御飯を食べながら、私の額に、母が手を当ててきた。

「熱はないみたいね。」

家に帰ってからも、ずっと竜樹くんから言われた告白の言葉が、頭の中で反復していた。

⏰:08/11/10 01:54 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#408 [あかり]
帰りの船の中で、翔馬と怜香には、今日の出来事を話さなかった。

付き合ってください―

彼のその気持ちに、まだ返事は出していない。
どちらに転ぶにしても、中途半端な思いが、一番傷つけると思ったからだ。

したがって、翔馬たちにも、まだ報告するべきではないと考えた。

自慢めいたものにしたくないし、竜樹くんのことは大切にしたいからこそ、より。

⏰:08/11/10 02:02 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#409 [あかり]
お風呂に入っている時も、部屋にいる時も、布団の中で眠りに就こうとした時も、竜樹くんのことばかり考えていた。

私にとって、彼の存在とは…?
ただのよく話す、後輩の一人…?

ちょっと前までは、そうであったかも知れない。

でも、この頃は…
一人の、男性…―

⏰:08/11/10 02:12 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#410 [あかり]
次の日―
休み時間のことだった。

「ンフフ。
私、克次先輩と付き合うことになったから〜!」
藍美からの、突然の発表。

「えぇぇ〜!!
それははおめでとう!よかったね、藍美!」
私は感極まった声で、彼女を祝福した。

⏰:08/11/10 06:50 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#411 [あかり]
「告白したのは、克次先輩からだよ。」
そう言って、藍美は口を開けたお菓子の袋を、私に差し出した。

「本当に!?藍美は、すごいね。好きな人を振り向かせるなんて。」
お菓子をつまみながら、私は彼女に感心した。

もしも私が、藍美だったら、タクロウ先輩ともっと仲良くなれたのだろうか―?

⏰:08/11/10 07:00 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#412 [あかり]
「メールの内容は大事だね〜。顔文字とか、めっちゃかわいいの使いまくるの。」

「アハハ。」

「あかりはどう、最近?
例の一年の男子とは。」

「えっ!」

⏰:08/11/10 07:05 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#413 [あかり]
「昨日、告白…されたよ…。」
藍美にだけは、今後のことを相談してみようと思った。

「あれま!それは急展開!
返事したの?」
藍美がふいに、お菓子の袋を床に落とす。
ゆっくりとした体勢で、それを拾い上げる。

「あ、まだ…。
どうしたらいいんだろって。」
ふと、翔馬がクラスの男子と輪になっているのに視線をやった。
彼は笑っていた。

⏰:08/11/10 07:17 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#414 [あかり]
「彼のことはどう思ってるの?好きなの?」

「…気になってる存在ではあるよ。」

「じゃあ問題ないじゃんっ!」

「えっ!藍美ったら!」
あっけらかんと即答した彼女に、私は笑った。
彼女のこんなところに、魅力を感じるというのはある。

⏰:08/11/10 07:24 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#415 [あかり]
「ん?何?おかしい?」

「私、つい最近までタクロウ先輩のことが好きだったんだよ。一年以上も…。

それなのに、すぐに他の人好きになるなんて、
先輩への思いなんて、その程度だったのかって…。」
改まったような面持ちで、私は言った。

それは、私が一番気にかけている部分であったかも知れない。

⏰:08/11/10 07:33 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#416 [あかり]
「んー…」
目を閉じて、藍美が腕を組み出した。

「あのさぁ!」
そして、自分の意見なりのを言う。

「例えばさ、付き合ってる人がいて…んで、別れたとするでしょー?

極論だけど、私は他に好きな人が5日後に出来ようが、5年後に出来ようが、変わらないと思うの。

ただ出会った日が遅かったか早かったかの違いだけで。

でも、すぐに付き合ったりすると、すぐに終わるパターンが多いのは確かだね。」

⏰:08/11/10 07:52 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#417 [あかり]
「うん、うん。」
私は藍美の話を、傍らで拍子をとりながら聞いていた。

「自分のこと、真剣に見てくれる人を大事にする人生にしたいね。」
私は窓の景色を見ながら、独り言のように彼女に言った。

昨日、竜樹くんと見た空と、同じ青さだった。

⏰:08/11/10 16:54 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#418 [あかり]
「あかりちゃん、今日中学校に遊びに行ってみない?」
帰りの船の中―
怜香からの提案だった。

「うんっ、いいかもねー。
久しぶりに日下部先生にも会いたいし。」

船が着いた後、私と怜香は歩いて母校を訪ねた。

⏰:08/11/10 20:04 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#419 [あかり]
「大原せんせーっ!」
職員室に入った途端、怜香が顔なじみの先生の所に、駆け寄る。

「おぉー!怜香、あかり!
元気しとったかぁ?」

「うん!元気ー!
先生、怜香がいなくて寂しいんじゃない?」
怜香が先生に抱き着く。

「おうおう。お前らが卒業してから、少しは静かになったかのう。」

⏰:08/11/10 20:16 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#420 [あかり]
「おー!何か懐かしいのがおるなぁー!」

「日下部先生!」
今、職員室に入って来たばかりの、元担任の先生に気づく。

「あかり!久しいのぉ。
ん?少し大人っぽくなったんじゃないかあ?」

⏰:08/11/10 20:29 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#421 [あかり]
しばらく私と怜香は職員室でたむろしていた。

中学の時は、昼休みになるとしょっちゅう遊びに来ていたものだ。

私と怜香は、高校の時の様子を話したり、中学の時の思い出話を、
室内にいる先生たちに話し出したりしていた。

「怜香お腹空いちゃったかも。そろそろご飯食べに帰ろうかな。」
気がつけば、外の景色はすっかり暗くなっていた。

⏰:08/11/10 20:42 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#422 [あかり]
「私も。今日の夕飯何だろー?」
ディスク用のイスから立ち上がり、怜香と帰る準備をしようとしていた。

その時、
「おー、そうそう!こないだタクロウとばったり会ったぞ!」
日下部先生が、思い出したかのように言い出した。

「…えっ?」
胸の奥で、懐かしい感覚が疼いた。

⏰:08/11/10 20:51 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#423 [あかり]
「あいつ学校帰りだったみたいでさ。
声かけたら、そそくさと立ち去るようにしてさあ。」
「ふーん…。」

「あ、女ん子が一緒にいたなあ。背の小さい子。」

「あ…。」

きっと小春先輩だ―

ズキン―
忘れようと励んでるつもりなのに、まだ痛む心がある―

⏰:08/11/10 20:56 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#424 [あかり]
怜香と中学校から帰る。
秋の夜風は、少し冷たかった。

空を見上げて、一番星を探そうとした。
田舎の星空は綺麗だ。すぐに見つかった。
一番星どころか、たくさんの星が、もうぽつぽつと広がっていた。

怜香が隣で、あー寒い、とぼやいていた。

⏰:08/11/10 21:01 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#425 [あかり]
カップルで下校―
普通、真っすぐ別れないで、どちらかの家に行くよね―

「ねぇ、怜香。
タクロウ先輩と小春先輩、どこまでいったと思う…?」
彼女に聞いてもどうしようもないことを、私は分かっていながら質問した。

⏰:08/11/10 21:04 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#426 [あかり]
「んー。最後までいってんじゃなーい?わかんないけど。
タクロウ先輩も18だし、経験があってもおかしくないっしょー、てか自然。

あんな可愛い人と二人きりになって、襲わない方がありえんっ。」

「アハハ…。」
少し前までは、三日くらいは沈み続けるほど、落ち込んだかも知れない。

でも今は、だいぶ心に余裕が出来ている。

竜樹くん―
私、前に進みたい。

⏰:08/11/10 21:10 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#427 [あかり]
「怜香。」

「うん?」

「私もいつまでも、後ろめいてちゃダメだよね。」

「?」

「私ね、昨日竜樹くんに告白されたんだ。
まだ答え出してないんだけど、明日、OKの返事、出すことにする。」

⏰:08/11/10 21:13 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#428 [あかり]
次の日の放課後―
私は竜樹くんとこないだ一緒にいた、体育館の玄関の所にいた。

昨日の夜、メールで、彼とまたここで会うよう約束を交わしていた。

今日は私の方が、先に来ていた。
私は彼に言う言葉を、頭の中で覚えるように何度も繰り返していた。

既に心臓の脈は、早く打っていた。

⏰:08/11/10 21:24 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#429 [あかり]
「先輩っ。」
しばらくして、竜樹くんがやって来た。

彼は私の隣に座った。
いつもより、静かな感じがした。

当たり前か。
今日は大事な話をするために誘ったんだから―

⏰:08/11/10 21:38 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#430 [あかり]
「…。」
「…。」

お互い最初の言葉が出ない。
嫌、私は思ってることを言いたいのだが、恥ずかしさからと緊張からか、
喉につっかえてしまい、そのままでいた。

もっとしっかりしなきゃ―
決めたんだ、一歩前に踏み出すって―

⏰:08/11/10 22:24 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#431 [あかり]
「…あのねっ!

えっと、こないだは告白してくれてありがとう。

私もね、この頃、日に日に竜樹くんの存在が大きくなってきてたんだ。

だから、気持ちを言ってくれたの、すごく嬉しかった。

私、全然可愛くないし、性格も…だけど
これからもっと竜樹くんと一緒に過ごしたいな!

んーと、んと…
だから、…よろしくお願い…します。」

⏰:08/11/10 22:32 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#432 [あかり]
体は竜樹くんの方に向けていたが、下向き加減で思いのままを伝えた。

生まれて初めて、ここまで正直な気持ちを誰かに言えたのかも知れない。
まじまじと言うのは照れ臭いけど、心境は何だか悪くない。

むしろ、いい感じ。

⏰:08/11/11 02:06 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#433 [あかり]
「ははっ…まじ…すか…。」
竜樹くんは、胸を撫で下ろしながら、感嘆した様子でいた。
だんだん顔の表情が明るくなっていくのが分かった。

「あー俺、今日フラれるんじゃないかって思ってて…。

まじ…嬉し…。

歳は俺の方が一つ下だけど、大切にしますんで。」

「う、うん…。」
真面目な顔をして言う彼に、顔の体温が、だんだん熱くなっていった。

⏰:08/11/11 02:15 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#434 [あかり]
そして、私と竜樹くんの交際が始まった―

竜樹くんは、ほぼ毎日部活に明け暮れていたから、
家に帰ってからの、メールや電話のやり取りを毎日したり、
休日、一緒に図書館で勉強したりと、楽しい時間は流れていった。

やっと、私にも幸せが訪れたんだ―
心からそう思った。

⏰:08/11/11 02:22 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#435 [あかり]
「いよいよ後少しで修学旅行だねーっ!
克っちゃんへのお土産何にしよう!?

あかりは阿倍野くんに何あげたいー?」
藍美がお土産パンフレットみたいなものを眺めながら、そう言ってきた。

藍美は克次先輩と付き合うようになってから、
彼のことを"克っちゃん"という愛称で呼ぶことにしたみたいだ。

⏰:08/11/11 02:27 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#436 [あかり]
「あーん!
旅行中は克っちゃんと会えないし、連絡取れないや。」

「あはは。その分日本では出来ない体験を、存分にしてこようよ。」

「あ!修学旅行終わったらさ、Wデートしようよ!」

「うんっ、いいねー!楽しみなことがいっぱいだぁー!」

⏰:08/11/11 02:30 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#437 [あかり]
「ねぇねぇ!
もう竜樹くんとはチューしたの?」

「ななな何言ってんの藍美っ!?
まだ付き合ったばっかだよ!?」

「ありゃりゃー。まだかぁ〜。
そりゃ旅行前に是非とも拝んとかないとー。寂しいよー。」

「そんなっ…永遠の別れじゃないんだから(笑)。」

⏰:08/11/11 02:35 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#438 [あかり]
「私も後一週、間克っちゃんにチューせがみまくろーっと。」

「何も私の前で宣言しなくても(笑)」

「でも実際さ、そばにいれるだけで幸せっていうか…
キャハッ、城山さん清純派〜!(笑)」

「もー、言ってることの意味わかんないよ(笑)
一年の時は、藍美がこんな壊れた奴とは思いもしなかったよ!(笑)」

⏰:08/11/11 02:41 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#439 [あかり]
「…ありがとね。」

「え!?」

「私さぁ、一年の時、欠席や早退が多かったっていってたじゃん?
二年の最初の頃も、それは少し続いてたのね?

今まで話さなかったけど、精神的なことが影響してた…のよ。

でも、あかりと仲良くなってから、学校のこと楽しくなかった訳じゃないけど、休むのもったいなーって思うようになって!

出席率も多くなったのです〜めでたしめでたし!」

⏰:08/11/11 02:49 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#440 [あかり]
藍美は笑いながら言っていたが、目が涙で少し滲んでるのが分かった。

「そんな、こちらこそ。
私も二年になって、藍美やいのちゃんと友達になって、すっごく楽しいよ!」

藍美の休みが多いのは、体調不良だけかと思っていたが、明るい彼女も彼女なりに、色々とあるんだと思った。

今年は、悪いことを探す方が難しいくらい、良い一年になっている。

⏰:08/11/11 02:56 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#441 [あかり]
その日の帰りの船の中―
怜香の恋の相談を聞いていた。
同じクラスに、気になる人が出来たらしい。

「希緒ちゃん、阿倍野くんに教科書借りたりとかしてるよー。
まあでも、今はどちらかというと、四組の石上くんの方がお気に入りみたい。

あかりちゃん、付き合ってること隠してないで、周りに公表したらー?」
途中で怜香が、私にこんなアドバイスをしてきた。

⏰:08/11/11 03:04 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#442 [あかり]
「うーんでも、私自信ないし…。
『何であの人なん?』って中傷に耐えられる精神は持ってないよ…(笑)。」

私と竜樹くんは、一部を除いて、周りに秘密にしながら付き合うことにした。
私がそうしたいと彼に望んだ。

「ま、あかりちゃんがそれでいいなら、ね。

それに、事実を知らないで阿倍野くんに近寄ろうとしてる、希緒ちゃん見てるの楽しい(笑)」

「れ、怜香…。アハハ…。」
希緒ちゃん、ごめんなさい。

⏰:08/11/11 03:11 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#443 [あかり]
その時、私の携帯が鳴る。

「お、彼氏からかー?
いいなぁーラブラブで。」冷やかす怜香。

「今週末、良かったら俺の家で遊びませんか?(ノ゚O゚)ノ
ちょうど親いないんすよ!
修学旅行始まったらしばらく会えなくなるので(>_<) ―竜樹―」

ドキドキドキ…。
初めての竜樹くんの家…。

⏰:08/11/11 03:20 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#444 [あかり]
私はその誘いをOKすることにした。

竜樹くんと付き合うようになって、一緒にいる時間が増えてから、
それでも足りず、もっともっと近づきたいと思うようになってきた。

彼氏の家に行くということは、今までにないくらい気が動転するが、
当日は、私のこの思いを、伝えようと決めた。

溢れんばかりの好きという気持ちが、あるということ。

⏰:08/11/11 03:29 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#445 [あかり]
土曜日―
電車が彼の住んでる街に到着すると、竜樹くんが既に駅で待っていた。

竜樹くんは中距離で学校に通っていた。

竜樹くんの地元は、私のいる島とは違って、色んなお店があるのでワクワクした。

「行きましょうか。」
そう言うと、竜樹くんは私の手を取って歩き出した。

⏰:08/11/11 03:37 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#446 [あかり]
私服の竜樹くん―
何回か見たけど、彼のセンスは好きだなぁ…―

少し、香水をつけてるみたいだ―
鼻がツンとせず、程よく漂ってる―

今日の私の服、これで良かったかな―

色んなことを考えてしまう。

⏰:08/11/11 03:41 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#447 [あかり]
「家行く前、DVDでも借りて行きましょうか。」

私たちは、レンタルショップへと向かった。

「何か観たいのありますー?」
竜樹くんが、店内にを物色しながら、私に聞いてくる。

「うーん、『名探偵ドイル』とか、『ドラ太郎』が観たいなあ。
あ、後ね『リュックモンスター』。
チューピカ大好きなんだっ。」
私は自分の好みのアニメを色々言った。

⏰:08/11/11 03:56 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#448 [あかり]
「ぶはっ!
付き合ってるもん同士が観るのって言えば、普通恋愛もんとかじゃないんですか?
何ですかそのムードなしのセレクションは(笑)」
竜樹くんは、腹を抱えて笑い出した。

「ご、ごめんー!
私、恋愛ドラマや映画にはめっきり疎くて…。

えっと、今流行ってるのは『タクシー男』だっけ?
それ観よっか〜!」

「『バス男』ですよ!(笑)
もういいっす、リュクモンゲットだぜーでも観ましょか(笑)」

⏰:08/11/11 04:04 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#449 [あかり]
「う…(笑)。ごめんね…。
でも、嬉しい。アニメの方が好きだから…(笑)。」

「いえいえ(笑)。
まあ、こういう所がまた好き、なんですよねっ!

年上なのに、変に子供っぽいというか…幼稚園児?」
「その言い方はひどいよー!

ふーんだ。じゃあ、ついでに『カスタードパンマン』もよろしく。」

⏰:08/11/11 04:10 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#450 [あかり]
会計を済ませ、それからまた歩き出し、彼の家の近くまで来ると、
最寄りのコンビニでお菓子やジュースを買って、店を後にした。

そして、数分後―
阿倍野宅に到着。

「うわぁっ。綺麗なお家だね。」

「昨日から両親旅行行っててさ。俺、一人っ子だし、今誰もいないよ。」
ポケットから鍵を取り出し、竜樹くんがドアを開ける。

⏰:08/11/11 04:20 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#451 [あかり]
「どうぞ。何もないとこですけど。」

「おじゃましまーす。」

二人で玄関にあったスリッパに履き変える。

「リビング行きましょ。テレビも大きいし。」
竜樹くんの誘導のまま歩く。

⏰:08/11/11 04:24 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#452 [あかり]
「わぁ…居間広いねー!」
「まあ、そこのソファーにでも座っといてください。
俺、ジュースをコップに汲みますんで。」

「あ!私も手伝うよー!」

「いえいえ、わざわざ起こしいただいた身分なんで、まあ、ゆっくりしていってください。」
ダイニングキッチンの方へと移動した竜樹くん。

⏰:08/11/11 04:32 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#453 [あかり]
「本当?何か悪いねー。
じゃあ私は、観たいDVDの順番を決めようっと。」

「俺、最初はドイルがいいなー(笑)。」
キッチンの方から話かける彼。
2リットルペットボトルの、蓋を開けている。

「あっ、竜樹くんも一応こういうのに興味があるんだねっ。」

「いや、その中じゃそれが一番まだマシかなって…(笑)。」

「…。
『カスタードパンマン』にしよーっと。」

「わぁー!ごめんなさい!失礼なこと言いました!」

⏰:08/11/11 04:42 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#454 [あかり]
「嘘々。私も最初はドイルが観たいと思ってた。」

「やったぁ。」
オレンジジュースをついだコップを二人分持って、竜樹くんがこっちに来た。

「どうぞ。」
一つを私の目の前の位置に、テーブルに置いた。

それと同時に、彼もソファーに座った。

⏰:08/11/11 04:52 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#455 [あかり]
「犯人あの人っぽくない!?」

「俺も思った!」

DVDを観ながら、それにツッコミを加える二人。

「なんちゅう殺害動機やっ(笑)」

「現実ではありえないよねー(笑)」

⏰:08/11/11 05:37 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#456 [あかり]
「ギター弾いていいっすか?」

「あ、うん!」

何巻分か見終わって、彼はそろそろ痺れを切らしたのか、DVD鑑賞はそこで中断した。

二階の部屋から、ギターを持って来た。
こないだ見たのと、同じだった。

⏰:08/11/11 05:50 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#457 [あかり]
「ねぇねぇ、『カルガモ』弾いてっ。」

「赤アフロのですか?
えーっと、…」

思い出すような感じで、彼が伴奏の部分を弾く。

うんうん、そんな感じ、と隣で私が言う。

一曲歌い終わると、私がじゃああれはー?といった風にどんどんリクエストしていった。

⏰:08/11/11 06:05 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#458 [あかり]
「…先輩。」

「うん?何?」

「今日、良かったら泊まっていきませんか…?
あ、着替えとかは貸すんで。」

「えっ?えと…。」

「突然すいません。
でも俺、今日先輩をこのまま帰すのは惜しいです。

もっと先輩と一緒にいたいです。」

「う、うん…。」

⏰:08/11/11 06:13 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#459 [あかり]
嬉しい、ただそれだけだった

「じゃあ、お言葉に甘えてそうしちゃおうかな…。

私、お母さんに連絡するね。」

「やった…!ありがとうっす!」

「ううん、こちらこそ。迷惑かけちゃうけど。」

私は今日一晩、竜樹くんの家にいることになった。

⏰:08/11/11 14:43 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#460 [あかり]
私はお母さんに電話で用件を伝えた。
私の家は比較的緩い。
あっさり了承をもらえた。

「うん、分かった、だってー。」

「お礼に、今日借りたDVD、好きなだけ観ていいっすから(笑)。」

「はーい(笑)。」

楽しい一日になりそうだ。

⏰:08/11/11 14:51 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#461 [あかり]
「今日、夜何食べます?
出前頼みますか?それとも、どっか食べに行きますか?」

「うーん、そうだなぁ…。
私、今日はずっとここにいたいな。

あ!竜樹くんが何か作った奴が食べたい。」

「俺は主夫っすか(笑)。

いいですよ、チャーハンとかでいいなら。」

「わーい!」

⏰:08/11/11 14:59 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#462 [あかり]
だんだんと私たちは、お菓子をつまみながら、話をするようになった。

最初はお互いのクラスであった面白いこと、竜樹くんの部活での出来事、翔馬のこと、ずっと二人で笑い合っていた。

私は夏休み、未央姉の所に遊びに行ってたことも話した。
クリスマスはあそこみたいなお洒落な街でデートしたいな、と言った。

そうしましょ、と彼も約束してくれた。

⏰:08/11/11 15:08 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#463 [あかり]
「あのね…、一つ聞いていい?」

「ん?一つと言わず何でも。」

「すっごく今更なんだけど、何で私なのかな、っていつも思ってて。
一年生にも、可愛い子たくさんいるしさ。

体育委員の集まりの時にも、希緒ちゃんや江戸川小春先輩みたいな、他にもっといい子いたのに。」

私は前から疑問に思ってたことを、この際と思い尋ねてみた。

⏰:08/11/11 15:14 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#464 [あかり]
「俺、体育委員の時の前から、先輩のこと知ってたんすよ。」

「え!どうして?」

「ん?学校で時々見かける程度でしたけど。

その時から、いつもニコニコして可愛いなあーって。
そんで、あの集まりがあって、『あ!あの人もいるじゃん!』って思って。
何とか近づこうと必死でしたよ(笑)。」

「そ…そなんだ…。嬉しいな…。」
ありのままを話す彼に、照れる私。

⏰:08/11/11 15:24 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#465 [あかり]
「同級の女子とか、賑やかなんばっかなんで、ちょいきついっすね。
原さんも、なかなか騒がしい人なんで、ぶっちゃけ苦手っす。

えーと、江戸川さん?陸部のマネージャーしてましたよね。
あの人はー…ちょっとわかんないっす、すいません(笑)。

俺、先輩みたいに落ち着いてる人がいいっす。
だったら誰でもいいって訳じゃないけど。」

⏰:08/11/11 15:30 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#466 [あかり]
「先輩も、俺みたいなガキでいいんですか?」

「そんなことないよ!どちらかと言うと私の方が子供だし!」
私は今日借りたDVDの方を見た。

そうみたいですね、彼は笑いながら言った。

「竜樹くんは、私からしてみたら、文句なしの最高の恋人だよ。」
今日くらいは恥ずかしいくらいの台詞を言おうと思った。

⏰:08/11/11 15:42 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#467 [あかり]
時間はあっという間に過ぎていった。
楽しい時は決まってこうだ。いくらあっても足りないと思うほどである。

晩ご飯は、竜樹くん特製かに玉チャーハンなるものだった。

美味しくて、私はスプーンでパクパク食べた。
その光景を、彼は笑いながら見ていた。

⏰:08/11/11 16:01 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#468 [あかり]
「風呂どうしますー?
着替えとか、持ってないですよねー?」

「うーん、そうなんだよね。
明日、家に帰ってから入ろうかな。」

「じゃあ、寝る時はスエット貸します。
服は、洗濯しときますね。
明日には乾くやろ。」

「ありがとう。」

「じゃあ俺、風呂入って来ます。
まあ、ゆっくりしてってください。」

⏰:08/11/11 16:11 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#469 [あかり]
彼が入浴している間、私は居間に置いてあったカタログを見たり、テレビドラマを観てたりしてた。

「お待たせー。」
30分くらいして、彼がお風呂から出てきた。


タオルで髪を拭きながら、上はTシャツ、下は短パンジャージといった格好をしていた。

⏰:08/11/11 21:15 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#470 [あかり]
「はい、これ。寝巻き代わりに。」
そう言う彼から、上下灰色のスエットを渡された。

「脱衣所で着替えていいっすよ。」
その場所まで案内される。

「脱いだ奴は、洗濯機の中に放り込んどいてください。洗濯するんで。」
彼はそう説明すると、私一人にしてドアを閉めた。

⏰:08/11/11 21:27 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#471 [優]
あかりさん

コメントありがとう
ございます

⏰:08/11/11 21:33 📱:D902iS 🆔:Eo33jFa2


#472 [あかり]
優さん

こちらこそ
優さんのような方がいてくれて、本当嬉しいです。
今度は感想板を利用させていただきますね<(__)>

⏰:08/11/11 22:28 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#473 [あかり]
せっせと着替える私。
少しぶかぶかだった。

スエットから彼の匂いが少しした。
私の好きな匂い。

「着替えたよー。」
5分してから、再び居間に行く。

「歯磨きますか?歯ブラシ出します。洗顔も使ってください。」
座ってた彼が立ち上がって、また洗面台のある脱衣所へと二人で移動した。

⏰:08/11/11 22:36 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#474 [あかり]
シャコシャコシャコシャコ…

二人分の歯を小刻みに磨く音が、脱衣所内に響き渡る。

私は洗面台の棚に置かれている、あらゆるものを見ていた。

コップの中に入っている数人分の歯ブラシ、
男物の洗顔、T字型剃刀、ワックス、ハンドソープなどなど…。

洗顔はこれ使って、と彼に言われたものは、おそらく彼の母が使っているだろう。

今日初めてこの家に来たが、もう何年も暮らしているような気分に浸った。

⏰:08/11/12 04:21 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#475 [あかり]
ガコンガコン…


洗濯機の動く音が、居間にも聞こえてくる。
さっき竜樹くんが、私の服を洗うために起動させた。

「俺の部屋行く?」

「うん。」

広くて立派な家を、二人で持て余していた。

⏰:08/11/12 08:03 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#476 [あかり]
「どうぞ。汚い部屋ですけど。」

「おじゃましまーす。」

12畳くらいの広さで、床はフローリングだった。
中央に灰色のカーペットが敷いてあり、その上に白いテーブルがある。

部屋の左奥に、アルミ性のシングルベッドがあった。
布団カバーなどは、全て青で統一されている。

「寝る時一緒でいいですか?ちょいと狭いかも知れないですけど。」
彼がベッドを見ながら言った。

⏰:08/11/12 08:38 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#477 [あかり]
「あ、うん。」
少し声が裏返った返事をしたかも知れない。

当たり前か―
私たちは付き合ってるんだから―

私はベッドの奥の方へと行って、体を横にした。
続いて、彼がベッドに入る。
私たちは顔を向き合っているような体勢になっていた。

これまで以上の至近距離だった。

⏰:08/11/12 09:01 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#478 [あかり]
「今日一日、どうでしたか?
退屈しなかったですか?」

「ううん、めっちゃ楽しかった!また来たいなー。」

「是非。親、仕事上あんまりいないこと多いし。」

「寂しくないの?」

「小さい頃はそうでしたけど、今はもう慣れました。
それに、これからは先輩を思う存分詰め込められるしね(笑)。」

⏰:08/11/12 15:27 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#479 [あかり]
「フフフ。それを言うなら連れ込めるでしょ(笑)。
私をどこの箱に収納しようとするのよ(笑)。」

「あ、ヤベ…日本語間違えちった…。」

「フフフ、フフフ。
しっかりしてるけど、時々抜けてるよね。」

「うるせー(笑)。」

⏰:08/11/12 15:39 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#480 [あかり]
私はいつまでも笑っていた。

その時―
彼が真顔になる

私も次第に、表情が固まってくる。

「キス…してもいい?」

⏰:08/11/12 18:11 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#481 [あかり]
旅行前にチューくらいしときなよ〜―
藍美が冗談めいて言ってたのを思い出す。

いざ、そういう雰囲気になると、全く笑える状態ではない。

「うっ、うん…。」
しどろもどろになりながら、彼の要求を飲み込む。

⏰:08/11/12 18:19 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#482 [あかり]
彼は上半身を起こし、私の方に前のめりになって来る。

自分の右手を、私の左頬に添えた。

顔の顔がぐんぐん近づくてくる。

私は瞼を心持ち強く閉じた―

その瞬間―
彼の唇と、私の唇が合わさった。

私たちは、初めてキスをした。

⏰:08/11/12 18:30 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#483 [あかり]
彼がその唇を離しては、私の唇に優しく押し当てる。

その繰り返しの何度目かで、私は目を開けてみた。

彼と視線が重なる―
今更ながらこの状況に緊張してしまい、体が硬直していく。

キスが終わっかと思ったその後、彼は私の体に架けてあった布団をめくった。

⏰:08/11/12 19:18 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#484 [あかり]
「あかり…っ。」
年下の彼が、初めて私を呼び捨てで呼ぶ。

彼が、私の左の首筋を這う。
少しくすぐったくて、小さく、ひゃっ、という声を出してしまった。

そして、さっき私の頬に触れていた右手を、私が着ているスエットの中に入れてきた。

⏰:08/11/12 19:29 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#485 [あかり]
その腕は、ぐんと私の背中の方にまで回った。

ブラジャーのホックを、片手でパチンと外す。

それから、彼の右手は、私の左胸に触れる。

彼が手を動かす度に、私の口から、あっ、という声が、何度も漏れる。

今まさに、未知の世界に飛び込もうとしている、そんなエクスタシーを感じていた。

⏰:08/11/12 19:37 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#486 [あかり]
嫌ではなかった―
ただ、普段優しい彼の、こんな一面にいざ出くわすと、何かは分からない恐怖があった―

このまま抵抗しないとどうなるのか―
なろうとする結果を、今の私は望んでいるのだろうか―

涙が少しばかり出そうになった。
「いやっ。」と一言、ふいに漏らしてしまった。

それと同時に、体も僅かほど左に傾けた。

⏰:08/11/12 19:47 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#487 [あかり]
彼の動きが止まった―

「あ…ごめ…。」
そのまま体を起こし、ベッドの上に座る体勢になった。

「洗濯、もう終わったよな。
干してくる。」
そう言い残して、部屋を後にした。

私は布団をまた被り、その中で体を丸めた。
心臓の音が、嫌になるほど騒がしかった。

⏰:08/11/12 20:15 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#488 [あかり]
ギィーッ―
ドアを開ける音で、彼が戻ってきたのが分かった。

私は布団の中に潜ったままだった。

ギシッ。
彼はベッドに座ったみたいであった。
その重みが私の方にも伝わった。

「さっきはすいませんでした…。」

⏰:08/11/12 20:28 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#489 [あかり]
「…。」
私は言葉が出なかった。

「俺、こんなんじゃダメっすよね。」

違う、そうじゃないの。
ただ、まだ心の準備が―

「続きはつか、ね…。」
体を起こして、彼の隣に座った。
彼の顔の表情が、明るくなった気がした。

⏰:08/11/12 21:49 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#490 [あかり]
初めてのお泊りの夜は、彼に包まれながら眠りに就いた。

彼の中は、布団もいらないんじゃないかというくらい、暖かかった。

これでいい―
これがいいんだ―

夢の中でも、私は噛み締め続けていた。

⏰:08/11/12 23:25 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#491 [我輩は匿名である]
>>100-200
>>200-300
>>300-500

⏰:08/11/15 14:20 📱:F706i 🆔:☆☆☆


#492 [あかり]
>我輩は匿名であるさん

アンカーありがとうございますm(__)m

また更新したいと思います。

誤字脱字が多くてごめんなさい(>_<)

⏰:08/11/15 17:25 📱:SH705i 🆔:2pDbajnE


#493 [優]
誤字脱字なんて
あたしの方が
しょっちゅうですよ
あかりさん
更新待ってます

⏰:08/11/15 21:23 📱:D902iS 🆔:APiCvIn6


#494 [あかり]
優さん

コメント有難うございます!!(*^O)ノ

今から更新したいと思いますp(^^)q

タロージローにウケました(笑)

⏰:08/11/16 01:43 📱:SH705i 🆔:qd3N09Qw


#495 [あかり]
次の日―
彼の中で、パッと目が覚めた。
彼はまだ寝ているようだった。

その寝顔をジーッと見つめていた。

神様…
私の運命の人は、この人なんですか…?―

⏰:08/11/16 01:48 📱:SH705i 🆔:qd3N09Qw


#496 [あかり]
私ももう一度、眠ることにした。
安らかなこの一時を、もう少しだけ味わっておきたい。

再び目を覚ました時―
彼は隣にいなかった。

部屋にもいなくて、私はとりあえず一階の居間へと下がった。

⏰:08/11/16 01:51 📱:SH705i 🆔:qd3N09Qw


#497 [あかり]
「あ、起きました?
洗濯物、夜干しで乾いてましたよ。」
キッチンで何やら作業をしながら、話す彼。

見ると私の服が、ソファーの上に置かれていた。

「ありがとう。洗顔と歯磨きしてくるね。」
私は洗面台へと向かった。

⏰:08/11/16 01:59 📱:SH705i 🆔:qd3N09Qw


#498 [あかり]
「それにしても先輩、結構寝てましたねー。
ほっぺつんつんしても、反応なかったから、起こさんどこーって思いましたよ(笑)」

時刻は朝の10時過ぎ―
私たちは、居間で少し遅めの朝食を取った。

竜樹くんが、トーストとハムエッグを作ってくれていた。

「う…。本当は早くに起きたけど、竜樹くん起こしたくなかったから、二度寝したんだよ!」

⏰:08/11/16 02:10 📱:SH705i 🆔:qd3N09Qw


#499 [あかり]
「先輩。」

「ん?」

「また来てくださいね。」

「ん?うん、もちろん!」

「修学旅行、気をつけて行ってくださいね。
俺にとっての一番の土産は、笑顔で帰ってきた先輩ですから。」

「う、うん!
何だか照れるね…ありがと。」

⏰:08/11/16 02:20 📱:SH705i 🆔:qd3N09Qw


#500 [あかり]
穏やかな時間は、瞬く間に過ぎていった。

昼過ぎに支度をして、二人で手をつないで駅まで歩いた。

改札口を通り抜けた後も、竜樹くんにずっと手を振り続けていた。

電車の中でも―
ずっとメールのやり取りをしていた。

⏰:08/11/16 02:25 📱:SH705i 🆔:qd3N09Qw


#501 [あかり]
次の日の学校―

「克っちゃんにねー、修学旅行終わった後、Wデートしたいって言ったらいいよ、ってー。」
放課後、教室で課題のやり直しをしながら、藍美とお洒落をしていた。

「本当に?楽しみだなー。竜樹くんにも言っておくね。」

「そういえば土曜のデートどうだった?」

⏰:08/11/16 02:30 📱:SH705i 🆔:qd3N09Qw


#502 [あかり]
「え?ああ、いつものように楽しかったよ。」

「進展なしかー!(笑)
でも私も、意外と地味にコツコツいってるから、大丈夫よ。」

藍美は奥手な私を何かと気にかけているようだった。

彼の家に一晩泊まり、キスをし、胸を揉まれたことは、内緒にしておこうと思った。

⏰:08/11/16 02:36 📱:SH705i 🆔:qd3N09Qw


#503 [あかり]
「あかりちゃんっ。遅くなってごめんね。はい、これ。」
私たちの所に、同じクラスの下田さんという子がやって来た。

下田さんの実家はカメラ屋で、私は彼女に、文化祭の時に撮った写真の現像をお願いしていた。

「下田さんー。ありがとう。」

「ううん、全然。お金は明日でもいいから。」

⏰:08/11/16 02:40 📱:SH705i 🆔:qd3N09Qw


#504 [あかり]
私はさっそく、出来上がった写真を見ることにした。

藍美やいのちゃん、たくさんの友達と、笑顔で映ってる写真で溢れていた。

「ソーラン節、本当頑張ったよねー。」
クラス全員で、本番後に撮った写真を二人で見ながら、藍美が言った。

⏰:08/11/16 02:44 📱:SH705i 🆔:qd3N09Qw


#505 [あかり]
「あ…。」
私は一枚の写真に、目をやった。

はにかみ過ぎて顔の表情がおかしくなってる私と、
ニッコリ微笑んでるタクロウ先輩のツーショット写真。

体育祭の放課後、名美佳に協力してもらって、撮った写真だった。

「タクロウ先輩、笑ってくれてる…。」

⏰:08/11/16 02:51 📱:SH705i 🆔:qd3N09Qw


#506 [あかり]
先輩は、怠そうに映ってるだろうと想像してたから、何だか余計に嬉しかった。

「藍美、私、タクロウ先輩にも、修学旅行のお土産買いたいな。変かな…?」

「んー?もう恋愛感情ないんでしょ?」

「あ、そういう意味じゃなくて…日頃のお礼したいなって。」

⏰:08/11/16 02:57 📱:SH705i 🆔:qd3N09Qw


#507 [あかり]
「まあね。タクロウ先輩を思ってる時のあかり、輝いてたもんねっ。
あっ、今ももちろんそうだけど。
せっかくこうして出会ったんだしね〜。」

「うん!先輩に『ありがとう』って。
今年で卒業だしさ。」

⏰:08/11/16 07:36 📱:SH705i 🆔:qd3N09Qw


#508 [あかり]
そして、修学旅行が始まった―

早朝5時半に港に集合と、ハードスケジュールであった。

私は前日に、お母さんと一緒に学校の近くのホテルに宿泊していた。

そこから港まで、二人でタクシーで向かった。

⏰:08/11/16 07:41 📱:SH705i 🆔:qd3N09Qw


#509 [あかり]
既に港には、クラス分のバスが並んでいた。

私は母に別れを告げ、三組のバスに乗り込んだ。

クラスの半分くらいの人が、ぽつぽつと座っていた。

「あーかりっ。おはよっ。」
藍美に声をかけられた。
私は彼女の隣の席に座った。

私はよく寝坊をして学校を休む、翔馬のことが気になった。
まだ来ていない。
まあ、さすがの翔馬も、修学旅行には遅れず来るよね。

⏰:08/11/16 19:48 📱:SH705i 🆔:qd3N09Qw


#510 [あかり]
バスが走り出す―
先生が、出席を確認する。
クラス全員いるみたいだ。
バスの後ろからは、翔馬の笑い声が聞こえてくる。

バスは空港へと走っていった。
これから、長い旅が始まる―

⏰:08/11/16 19:56 📱:SH705i 🆔:qd3N09Qw


#511 [あかり]
ゆっくりと時間をかけて、バスは空港へと到着した。

生まれて初めての飛行機。
生まれて初めての海外旅行。

夏休みの合間に作成しておいた、パスポートに目を光らせる。

「いのちゃん〜!オーストラリア、ワクワクするねぇー。」

「おう、あかりちゃん。パスポートなくさんごとよ。おっちょこちょいなんやけん。」

「はーい(笑)。」

⏰:08/11/16 20:01 📱:SH705i 🆔:qd3N09Qw


#512 [あかり]
私たちの目的地はオーストラリアだが、
まずはシンガポールへと、飛行機は旅立っていった。

機内食は主食がタイ米で口に合わなかったりと、
次から次にフライトアテンダントさんがサービスをしてくれたりと
心も浮き立つ感じだった。

私は機内に設置してあるゲームをしたり、
パンフレットを読んだりしていた。

⏰:08/11/18 01:38 📱:SH705i 🆔:0FKI4RAA


#513 [あかり]
夕方4時過ぎ頃
飛行機は、シンガポールに到着―

初めての海外という感想は、"時差ぼけ"の意味を、理解出来たような気がした。

オーストラリア発の飛行機の出発時間まで、空港内を自由行動となった。
私はいのちゃんとお土産屋さんを回った。

⏰:08/11/18 01:46 📱:SH705i 🆔:0FKI4RAA


#514 [あかり]
そして、時間は夜へと変わり
本日二度目の飛行機―

今日の所は、機内で就寝となるようだ。

私はまたゲームをしたり、邦画を観たり、それなりに航空を楽しんでいた。

やがて、日付が変わると共に、機内の照明も全て落ちた。

辺りが一斉にしーんとなる。
私も、眠りに就こうとした。

⏰:08/11/18 03:24 📱:SH705i 🆔:0FKI4RAA


#515 [あかり]
BGMにと、ヘッドフォンでセットされてある音楽を聴く。

せっかくの機会なので、普段聴かないような系統をセレクトした。

男性シンガーのバラード曲が、私の体全体を包む。

なぜだか、涙がぽろぽろと出てしまった。

⏰:08/11/18 03:28 📱:SH705i 🆔:0FKI4RAA


#516 [あかり]
ちょっと前まで恋心を抱いていた、タクロウ先輩のことが頭に浮かぶ。

本当は、いつも心のどこかで、悲しみに暮れたいと思っていた。

その気持ちを抑えることで、自分の無力さを実感することから逃れていた。

涙が止まらない。

世の中には、報われないものもあるということを、思い知らされた恋だった。

⏰:08/11/18 03:39 📱:SH705i 🆔:0FKI4RAA


#517 [あかり]
でも今、私には竜樹くんという、大切な人がいる。

私の帰りを、待ってくれている人がいる。

『人は誰かを愛した分、誰かに愛される』
というようなことを、どこかで耳にした記憶がある。

これでいい―
これがいいんだ―

最近、この台詞を口癖のように唱えるようになった。

⏰:08/11/18 03:45 📱:SH705i 🆔:0FKI4RAA


#518 [あかり]
次の日―
飛行機は無事に、オーストラリアへと着陸した。

空港前に待機していたバスで、宿泊先のホテルに直行した。

各部屋は二人一組と決まっており、私はいのちゃんと相部屋をすることに、予め決まっていた。

⏰:08/11/18 16:07 📱:SH705i 🆔:0FKI4RAA


#519 [みい]
>>300-600

⏰:08/11/18 18:06 📱:P905i 🆔:s4DgSfkk


#520 [あかり]
みいさん

アンカー有難うございますm(__)m

⏰:08/11/18 20:42 📱:SH705i 🆔:0FKI4RAA


#521 [あかり]
宿泊先の部屋は、それぞれ広めのユニットバスがついており、清潔で快適なものであった。

私といのちゃんは、部屋にある小さい金庫に、パスポートを保管することにした。

「7070(ナオナオ)」と、いのちゃんの下の名前をあやかった暗証番号を登録した。

⏰:08/11/18 20:49 📱:SH705i 🆔:0FKI4RAA


#522 [あかり]
「いのちゃーん。テレビどこの局も英語でやってるよー!」

「当たり前やんあかりちゃん(笑)。
ここはオーストレィリアなんやから、オーストレィリア。」

「はぁ…今日夜勉強会なんて嫌やねー。
なにも海外まで来て勉強するなんてさ〜。」

「しょうがない。一応進学校っちゅう面目があるけん。
勉強したくてうずうずしとる人もおると思うよ。」

「うげぇー(笑)。」

⏰:08/11/18 21:03 📱:SH705i 🆔:0FKI4RAA


#523 [あかり]
ホテルで夕食を済ませ、
この日の夜は、二時間ほど広場で、先生から与えられた課題をやることが義務付けられていた。

出題されたものは、数学だった。

私は理系クラスに所属していながら、理系教科を何よりも不得意としていた。

数人の男子と一緒に考えるフリをしながら、彼らの答案を少々写させてもらった。

⏰:08/11/19 00:41 📱:SH705i 🆔:uh/6K/.M


#524 [あかり]
修学旅行とあってか、問題は少し易しく作られており、思っていたよりも苦痛を受けずにいられた。

勉強会の後は、班長会議というものが行われた。

私といのちゃんを含む班の班長は、成績優秀の唯ちゃんという子だった。

私といのちゃんは、その時間の合間に、代わりばんこでお風呂に入った。

⏰:08/11/19 00:49 📱:SH705i 🆔:uh/6K/.M


#525 [あかり]
班長会議が終わった後は、各班長は自分たちの班に、会議で決まったことを報告をする、というものだった。

私たちの班は、唯ちゃんたちの部屋に集まった。

明日は班毎で自由行動。
ここは日本じゃない、気を引き締めていかなきゃ―

⏰:08/11/19 00:58 📱:SH705i 🆔:uh/6K/.M


#526 [あかり]
次の日―
私たち一行を乗せたバスは、首都キャンベラへと向かった。

目的地に到着し、バスから降りた時、
他にも日本人の修学旅行生が、何校もいたことに驚いた。

キョロキョロ辺りを見渡す私。

その時、一人の男性に一目で視線がいった。
「えっ?…。」

⏰:08/11/19 01:07 📱:SH705i 🆔:uh/6K/.M


#527 [あかり]
「タ、タクロウ先輩…!?」

長身で、黒ぶち眼鏡をかけていて、黒のニット帽を被った男性がいた。

先輩の見なりにそっくりだったが、すぐに現地の人だと気がついた。

「…アハハ。こんな所にいる訳ないじゃん…。
馬鹿だなぁ、私…。」
先輩を追いかけていた時と、同じ鼓動の音がしていた。

⏰:08/11/19 01:13 📱:SH705i 🆔:uh/6K/.M


#528 [あかり]
そして、昼から夕方にかけて、各班の自由行動となった。

私たちの班は、まず集合場所の近くにある、デパートの中に入った。

2階、3階とエスカレーターで上りながら、順番に店内を見ていった。

⏰:08/11/19 19:43 📱:SH705i 🆔:uh/6K/.M


#529 [あかり]
最上階は、グッズ屋さんという感じだった。

私たちは、しばらくそこをバラバラになりながら見ていた。

私は、白いコアラの人形が陳列してあるのを発見した。

「わあ!いのちゃん見て見てー!
可愛いー!」

一目惚れした私は、それを買うことにした。

⏰:08/11/20 03:01 📱:SH705i 🆔:VJv4DOQI


#530 [あかり]
パン屋さんやスーパー、
日本の店などを回っていった。

会計する時、現地の店員さんとメモで会話したりと、
意思伝達のやり取りに、新鮮味を覚えた。

国籍が違っても、伝えたいという気持ちは双方同じであった。


「意外と通じるもんだよねー。
あ、あかりちゃん、このパン、部屋に戻ったら一緒に食べよー。」

⏰:08/11/20 03:42 📱:SH705i 🆔:VJv4DOQI


#531 [あかり]
その夜―
今日の自由行動も難無く終わり、それなりに楽しんだ。

夕飯は、ホテルのフルコースが、次々に出てきた。

お腹も十分に膨れ、いのちゃんと部屋に戻った私は、
今日買ったものをベッドの上に並べていた。

⏰:08/11/20 23:03 📱:SH705i 🆔:VJv4DOQI


#532 [あかり]
「このコアラのマウスパッドは、
パソコンをよく使うお兄ちゃんに!

あ!このコアラのぬいぐるみは竜樹くんにあげようっと!
ねぇ、いのちゃん、この子に名前つけたいと思うんだけど、何がいいかなぁ?」

「うーん、そうだなぁ…シロ、クリーム、ホワイトコアラ…。」

「…ホワちゃん!ホワちゃんにする!
ホワイトだから!」

「うん。いいんじゃない。
かわいいよ。」

⏰:08/11/20 23:07 📱:SH705i 🆔:VJv4DOQI


#533 [あかり]
修学旅行三日目―

今日は街を色々と観光した後、アトラクションのある所で、また班毎に、自由行動をするといった予定だ。

私は朝から、ひどい生理痛に見回れていた。
ずっと我慢をしていたが、あれこれ移動をしている内に、遂にそれにも限界がきた。

バスで相席をしていた藍美に、その痛みを訴えた。

「もっと早く言えば良かったのに!
私、鎮痛剤持ってるからあげる!」

「う、うん…。
ありがと…。」

⏰:08/11/22 00:10 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#534 [あかり]
私は次の美術館見学には行かず、
バスの最後列の席で寝ていた。

車内は、私と運転手さんだけ。

運転手さんは、ひたすら街を走行していた。

早く痛みが引いて欲しい―
神経をこの思い一点に集中させて、私は浅い眠りに就いた。

⏰:08/11/22 00:15 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#535 [あかり]
再び目を覚ました時―
運転手さんは、まだバスを走らせていた。

藍美に貰った薬が効いたのか、生理痛はすっかりおさまっていた。

バスは皆のいる所へ向かっていった。
次に行われるのは、写真撮影―
私は合流することにした。

⏰:08/11/22 00:20 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#536 [あかり]
「さっき行った美術館に、お笑い芸人のハンディの二人がいたよ〜!」

「えー、そうだったのぉ!?私も見たかったなぁー。」

クラスの集合写真で形をつくってる時、藍美と隣同士で、こんな話をしていた。

⏰:08/11/22 00:24 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#537 [あかり]
その後に、バスは自由行動を取るであろう場所に向かい、
まずは全校生徒で、外の景色が展望できるレストランで昼食を取った。

続いての自由行動では、私たちの班は、水族館やお土産さんを見て回った。

皆との思い出が、どんどん写真の中に収まっていく。

⏰:08/11/22 00:32 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#538 [あかり]
「見て見ていのちゃんっ。
帽子屋さんで、コアラのキャップ見つけたよ!
お母さんへのお土産!」

「キャハハハ!何コレ、可愛いやん。」

その日、ホテルに戻って―
今日買った、キャップ全体が、コアラの頭部になっているものを、いのちゃんに見せた。
耳もきちんとついてある。

「お母さんウォーキングが日課だから、これ被って歩いてほしいな。」

⏰:08/11/22 00:38 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#539 [あかり]
夜の11時半―
部屋を暗くし、二人とも就寝しようとする。

「そういえばさぁ…
私、いのちゃんの恋愛について、何も聞いたことないなぁ。」

窓側のベッドに寝ているいのちゃんに対して、こんなことを尋ねてみた。

⏰:08/11/22 00:44 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#540 [あかり]
「萩原まい先輩知ってる?」

「ん?うん。
陸上部のエースだよね?

江戸川小春先輩とたまに一緒にいるから、分かるよ。」

「あたし、あの人と同じ中学だったんだけど…
あの人、ずーっと好きな人がいたのよ。」

「そうなんだ。」

⏰:08/11/22 00:47 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#541 [あかり]
「で、そのまい先輩が片思いしてた人に、あたしが告られた訳。」

「えー!そうなのぉ!?
いのちゃん、何て返事したの?」

「…まあ、今では元彼っていう存在かな。」

「付き合ったんだ。」

⏰:08/11/22 00:50 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#542 [あかり]
「悪いことしたかなって、まい先輩に、って時々思うね!」

「うーん…それはしょうがないんじゃない?
男の人は、いのちゃんを選んだんだしさ。」

「あたし、塩見先輩に彼女が出来たって時、
あかりちゃん見るの辛かったなぁ〜。

"あの時のまい先輩、こんな感じやったかんなぁ"って。
まい先輩の気持ち知ってて、付き合ったから。」

⏰:08/11/22 00:55 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#543 [あかり]
「そんなに自分を責めなくて、大丈夫だよ。

タクロウ先輩を好きになって、幸せなことも苦しいこともあったから、
今、竜樹くんと真っすぐに向き合えてると思う。

人を思うことがどんなのかってことが、生かされてるよ。」

「なんだ結局、最後はノロケかい(笑)。」

「アハハ(笑)。」

⏰:08/11/22 01:03 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#544 [あかり]
「でもね、最近…
また時々タクロウ先輩を好きだった時のこと、思い出してるんだ…。

彼氏いるのに…これって、いけないことだよね。」

「…んー、一年以上も思いを寄せてた人を、簡単に忘れる方が、無理な話なんじゃないかなぁ。」

「私、先輩に修学旅行のお土産渡そうと思うんだ。
…ためらって、まだ買ってないけど。」

「本当の意味で前に進むために、それはそれでいいと思うよ。」

「うん!ありがとう!」

⏰:08/11/22 01:09 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#545 [あかり]
「まあ、そろそろ寝ますか。
明日も早いし。」

「今日はいのちゃんのことが聞けて嬉しかったな!
いつも私の話を聞いてばかりだったからさ。

私、今日のやり取りのこと、一生忘れないね!」

「そんな貴重に思わんくてもいいから!
恥ずかしいやん〜(笑)。」

「アハハ。明日もいい一日になるといいね。」

⏰:08/11/22 01:19 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#546 [あかり]
修学旅行四日目―
午前に、現地の高校生との、交流会が開かれた。
スポーツやゲーム、クイズなどをして楽しんだ。

昼過ぎになり―
バスは空港へと向かう。

オーストラリア最後での自由行動、空港内のお土産屋さんを、ひたすら回った。

⏰:08/11/22 01:28 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#547 [あかり]
「あかりちゃーん。もうすぐ時間なるよー。」
いつまでもぐずぐずしている私を、いのちゃんが店の前で声を掛けてきた。

「うん、ちょっと待ってー!
…あ、コレにしよ!」
私は一つのキーホルダーを手に取り、会計を済ませた。

⏰:08/11/22 01:31 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#548 [あかり]
その日の夜―
航空便は、またもやシンガポールに到着。
マーライオンや様々な観光地を訪ねた。

夕食のレストランで、中華料理を堪能する。

明日はいよいよ、我が家に帰る予定だ―
夜遅くに、日本行きの飛行機に乗り、私は土産話に思いを膨らませた。

⏰:08/11/22 01:35 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#549 [あかり]
次の日―
飛行機は地元の空港に到着し、私たちは災難に遭うことなく、日本に戻った。

帰りの船の中―
翔馬と、それぞれ旅行中に起こった出来事を、ひたすら話すのに盛り上がった。

「本当に楽しかったね。
またオーストラリアに行きたいな!」

「…ああ、俺も。」

⏰:08/11/22 01:42 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#550 [あかり]
修学旅行の後の、休み明けの学校―

「はい竜樹くん、オーストラリアのお土産だよ!」
放課後、私は缶のお菓子と、コアラの人形、
シンガポールで買った携帯ストラップを竜樹くんに渡した。

「わぁ!こんなにいいんですか?
あざーす、嬉しいっす!」

「この人形はホワちゃんっていう名前だよ。
このストラップは、私とお揃い。エヘヘ。」
私は同じのをつけてある携帯を、彼に見せた。

⏰:08/11/22 01:49 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#551 [あかり]
「そういえば、もうすぐクリスマスだね。
私、未央姉に竜樹くんのこと紹介したいな!」

「えっ!悪く思われたら、どうしよう!
でも、クリスマスは先輩と、都会の綺麗なイルミネーションを見て歩きたいな。」

「うん!行こうね!」

オーストラリアから帰った後も、私たちの仲は順調だった。

⏰:08/11/22 01:56 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#552 [あかり]
ある日の休み時間―

「見て見てーいのちゃん。
日本に帰る前の空港で、こんなへんてこなの見つけた。」
私はあの時買ったキーホルダーを、いのちゃんに見せた。

「これ、カモノハシじゃない?
癖になるかわいさやね。」

「カモノ…ハシ?
タクロウ先輩へのお土産にしようかなって思ってるよ!」

⏰:08/11/22 02:02 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#553 [あかり]
「このカモノハシのアホな感じが、塩見先輩のイメージにぴったりやね(笑)。」

私はこの日一日、キーホルダーをクラスの子に見せて回ったり、
いのちゃんと遊んだりしてた。

タクロウ先輩にどうやって渡すかは、あまり考えてなかった。
しばらく、かばんの中に入れておく日々が続いた。

⏰:08/11/22 02:07 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#554 [あかり]
二学期も、終盤に差し迫った頃―
夜、翔馬の家に、借りてた漫画を返しに行った。

翔馬の家は、私の家と近所だ。
彼の部屋で、二人でお喋りをしていた。

「なあ、お前、学校の掲示板見てる?」
翔馬が私に尋ねてきた。

⏰:08/11/22 02:11 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#555 [あかり]
「ネットの掲示板?
あるのは知ってるけど、見たことはないなあ。」

「じゃあ、これちょっと見てみろよ。」
翔馬が自分の携帯を、私に差し出してきた。

画面は、話に出ているサイトに、接続されてある。

⏰:08/11/22 02:14 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#556 [あかり]
『しおみんとエドコハちゃん、別れたらしいな!』

『まじで?仲良さそうやったのにー。』

『今度は俺が、小春を頂くゼ!(笑)』

『何で別れたんやろ。』

『エドコハの周りに対して無頓着な所が、
ねちっこいタクローと合わなかったんやない?』

掲示板には、匿名同士でこんなやり取りが、交わされていた。

⏰:08/11/22 02:22 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#557 [あかり]
「う、嘘…。本当に…?」
私は目を見開いて、ひどく動揺した。

携帯を持つ手も、震えてきた。

私の頭の中で、初めて先輩を見た時の光景が映った。

⏰:08/11/22 02:26 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#558 [あかり]
「先輩には幸せになって欲しかったのに、残念だ。

今、どんな気持ちでいるんだろ。」

「さあ…。
まあ、学校での様子で分かるんじゃね。」

「タクロウ先輩…。」

⏰:08/11/22 02:34 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#559 [あかり]
家に帰ってからも―
さっき知った事実が、頭から離れられなかった。

もし、竜樹くんと出会っていなかったら、
私は今頃、どうなっていたのだろうか…―?

布団の中、ついこんなことを考えてしまった。

⏰:08/11/22 02:38 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#560 [あかり]
それからの学校で見かける先輩は、いつもと変わらないようにも見えたし、空元気な風にも見えた。

翔馬から掲示板のURLを送ってもらって、時々サイトをチェックするようになったが、
あれ以来、それ関連の書き込みは見受けられなかった。

そして、終業式の日となった―
私は結局、タクロウ先輩にお土産を渡せないままでいた。

⏰:08/11/22 02:44 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#561 [あかり]
25日のクリスマスの日―

私と竜樹くんは、朝早くに特急列車で、未央姉の住む街へと向かった。


これから宿泊するホテルの手配などは、全て竜樹くんがやってくれていた。

私たちは列車の中で、旅行パンフレットを見ながら、お互い行きたい店などを言い合ったりしていた。

⏰:08/11/22 02:52 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#562 [あかり]
駅に着くと、未央姉と秋人さんが、入口の所で待ってくれていた。

「この子があかりの彼氏!?
ジョニーズにいそうね!」

それから私たち四人は、未央姉の車で、アミューズメントパークへと向かった。
秋人さんが助手席、私と竜樹くんが後部席といった感じだった。

⏰:08/11/22 06:19 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#563 [あかり]
車内で、これから行く場所の様子を、私と竜樹くんに説明する、未央姉たち。

久しぶりに会った二人は、一段と見なりに気をつけているように思えた。

未央姉は髪の毛がより明るくなっており、
ストレートロングの髪を、今日は派手に巻いていた。

秋人さんの方は、身に纏ってる全ての物が、高そうに見えた。

⏰:08/11/22 06:35 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#564 [あかり]
目的地に到着し、まずはイタリアンレストランで、皆でパスタを食べた。

食べ終えて少し雑談をし、席を立とうとした時、
「あー、ここは俺が全部払うから。」
と、秋人さんが私たちに言った。

私たちはその言葉に、甘えることにした。
竜樹くんが秋人さん位の年齢になった時は、
こんな風に、さらりと気を遣える人になって欲しいと思った。

⏰:08/11/22 08:52 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#565 [あかり]
「せっかく二人、ここまで来たけん、
これからは自由行動しようか!
色んな店があるけん、楽しんでおいで。」
店を後にしてから、秋人さんがこんな提案をした。

秋人くんの意見に従った私と竜樹くんは、
男性用の服屋を見て回ったり、このパークの名物である、巨大観覧車に乗ったりした。

⏰:08/11/22 08:59 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#566 [あかり]
夕方になって、私たち二組は再び合流し、乗ってきた未央姉の車まで、パークを後にした。

「私と秋ちゃんは、これから私の家に行くけど…
二人は街で遊ぶ?夜になると、イルミネーションが綺麗よ。」

「うん、そうする!」

「じゃあ、そこまで車出しとくわね。
困ったことがあったり、分からないことがあったりしたら、また連絡して。」

⏰:08/11/22 09:04 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#567 [あかり]
数十分して、車は繁華街に着いた。

クリスマスということもあって、街はカップルでごった返していた。

私と竜樹くんは、二人に別れを告げ、目についた店にひたすら入っていった。

⏰:08/11/22 09:10 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#568 [あかり]
外の景色も、すっかり暗くなってきた頃―

「竜樹くん!
少し時間もらっていい?」

「ん?別にいいすけど。」

「ごめんね。すぐ戻ってくるから!
その辺ぶらぶらしといて。また連絡する!」

私と竜樹くんは、一旦別行動を取ることにした。

⏰:08/11/22 09:13 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#569 [あかり]
彼と離れた後、私はとある人に、携帯から電話を掛けた。

プルル、プルル―

「…もしもし?」
二回ほどのコール音で、向こうは電話を取った。

「あ、もしもし悠介くん?
久しぶり、あかりです。

今、そっちに来てるんだけど…これから少し会えないかな?」

相手は夏休み、秋人さんを通じて知り合った、堀之内悠介くんであった。

⏰:08/11/22 09:18 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#570 [あかり]
15分ほど経ってから、私が悠介くんがやってきた。

彼はフード着きの灰色の服に、迷彩柄のズボンを履いている。

彼が、この繁華街の近くに住んでいることは、以前に聞いていた。

「ごめんね、突然呼び出して。」

「あ、いや別に…。
…それより、どうしたの?」

⏰:08/11/22 09:23 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#571 [あかり]
「はいコレ、メリークリスマス。」
私はチョコレートのお菓子を、彼に差し出した。

「こないだ修学旅行で、オーストラリアに行ってたんだ。
夏休み図書館に付き添ってたお礼に、と思って。」

「…あ、ありがとう…。」
彼はそれを受け取った。

⏰:08/11/22 09:26 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#572 [あかり]
「…今も秋人さんの彼女さんの所に遊びに来たの?」
首元を掻きながら、悠介くんが私に尋ねてきた。

「ううん。今日は彼氏とデートしに来たんだ。
あ、前言った片思いの人じゃないよ、エヘヘ。」

「…あ、そうなんだ…。
彼氏、出来たんだ…。」

「うん。今も待たせてるから、そろそろ行かなきゃ。
ごめんね、自分から呼び出しておいて。」

「…あ、別に。家で家族と過ごしてたから…。」

⏰:08/11/22 09:32 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#573 [あかり]
「それじゃあ、来年はお互い、受験頑張ろうね!」

「あ、あの。」
その場を去ろうとした時、彼が私を呼び止めた。


「ん?何?」

「…彼氏、どんな人なの?」

「んー、一つ年下だけど頼りがいがあって、優しくて面白い人だよ!」
私は笑顔で質問に答えた。

「…そか。お幸せにね。」

⏰:08/11/22 09:38 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#574 [あかり]
それから、また竜樹くんと合流し、手をつなぎながら街を歩いた。

未央姉が言っていた通り、あちこちにあるイルミネーションが宝石のように輝いていた。

夜の8時半頃、私たちは予約していたホテルに、チェックインしに行った。

⏰:08/11/22 09:44 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#575 [あかり]
ホテルの部屋で―
私たちは予め約束していた、プレゼント交換をすることになった。

私はアクセサリー店で買った男物のネックレスを、
彼はバーバリーのマフラーを、それぞれに渡した。

「ありがとう!すごく嬉しい!
これ、高かったでしょ?」

「親父の元でちょいと雑用して、そのバイト代で買いました(笑)。」

⏰:08/11/22 09:52 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#576 [あかり]
「ホテル代も全額出してくれるなんて…お金、大丈夫なの?」

「うちの家、金があるだけが取り柄ですから(笑)。」

彼の父親は、自営業をしているらしい。
彼の家に初めて行った時、そんな感じがしていた。

⏰:08/11/22 09:55 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#577 [あかり]
「んっ…。」
彼が私に、キスを求めてくる。
いつもとは違い、舌を入れてきた。

二人の舌が、口の中で絡まる。
激しいキスが続いた。

「…お風呂、入ってくるね。」
私は、続きを察したかのように、今自分が取るべき行動を取った。

⏰:08/11/22 10:02 📱:SH705i 🆔:e9leUYT.


#578 [あかり]
私がお風呂から出た後は、今度は彼が入浴しに行った。

私は、ホテルにあった薄いバスローブみたいなのを、着用していた。

彼がお風呂に入っている間、一人ベッドで横になっていた。

20分くらい経った後、彼が、腰にバスタオルを巻いたまま出てきた。

⏰:08/11/24 06:18 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#579 [あかり]
ベッドは部屋に二つあるのに、窓側のベッドで寝ている私の隣へ、彼も横になった。

「今日はホンマ楽しかったっす。」

「うん、私もー。
やっぱ都会は違うね。」

肌の露出が多い彼を、私は恥ずかしくて正視できなかった。

⏰:08/11/24 06:27 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#580 [あかり]
一瞬にして、二人の間に沈黙が走った。

そして、彼が小さな声で言った。
「…してもいい?」

⏰:08/11/24 06:30 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#581 [あかり]
「うっ、うん…。」
彼の目を見て言った。

即座に彼が、私の体に覆いかぶさるような体勢になる。

お互いお風呂に入る前よりも、激しくて濃厚なキスをした。

⏰:08/11/24 06:34 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#582 [あかり]
次の日―
窓から差し込む日の光で、目を覚ました。

隣にいる彼は、まだぐっすり寝ており、寝息が微かに聞こえてくる。

私たちは、クリスマスの夜に、初めて体を重ねた。

二人で一つの布団に被っている中は、産まれたままの姿である。

⏰:08/11/24 06:41 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#583 [あかり]
その日は昼過ぎに買い物をしてから、
夕方頃、また特急列車で地元に帰った。

冬休み―
年末年始は家族と過ごし、私と竜樹くんは電話とメールで、頻繁に連絡を取り合っていた。

そして、三学期が始まった―

⏰:08/11/24 06:46 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#584 [あかり]
「あけおめー、あかり!
年賀状、届いたよん。」

朝教室に入って、新年早々も元気そうな、藍美の声を聞く。

「藍美、何か嬉しそう。
何かいいことあった?」

「ううんー、むしろその逆。私、別れたし。」

「えぇっ!」
私の仰天した声に、近くに座っていた数人のクラスメートが、私の方を見た。

⏰:08/11/24 06:51 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#585 [あかり]
「あの人さー、見た目は頼りがいがありそうな感じなのに、実際は超ナヨナヨしてるからねー。

しかもさ、プレゼントしてくれたのと同じのを、ある店で見つけたんよ。
その値段が315円!
まじありえなくない?」

軽蔑したような表情で、藍美は事情を言った。

「ア、アハハ…。」
彼女の克次先輩に対する態度の激変に、とりあえず笑うしかなかった。

⏰:08/11/24 06:57 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#586 [あかり]
ある日―
その日の午前中に、私は気分が悪くて保健室のベッドで仮眠を取っていた。

一時間ほどした後、うつろながら目が覚めてきた。

カーテン越しに、保健室の先生と、一人の男子生徒の話し声が聞こえる。

「…最近、しおみんの奴、元気ないんだよねー。」
男子生徒のこの一言で、一瞬にして寝ぼけた状態から抜けた。

⏰:08/11/24 07:04 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#587 [あかり]
「元気だけが取り柄のタクロウだから、それは余計に心配ね。」
先生という立場から、意見を述べる保健室の先生。

「うーん、やっぱ彼女と別れたんが大きいんかなあ。」

タクロウ先輩は、今も小春先輩のこと引きずってるんだ…。

⏰:08/11/24 07:11 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#588 [あかり]
「タクロウ、卒業したら東京の方で就職なんでしょ?
そうなったらまた新しい出会いに恵まれるわよ。」


えっ―
保健室の先生のこの一言に、私は布団の中で目を見開いた。

タクロウ先輩が上京―
と、遠い…―

⏰:08/11/24 07:15 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#589 [あかり]
帰りの船の中―
怜香とお喋りをしながら、かばんの中にずっと入れたままでいた、
あのカモノハシのキーホルダーを触っていた。

「怜香、タクロウ先輩、卒業したら東京に行くんだって。」

「そうなの?え、それめっちゃ遠い。」
私が第一声に思ったことを、怜香も言い放った。

⏰:08/11/24 07:22 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#590 [あかり]
「もう会うことないよね…。」
私は、持っていたキーホルダーを見つめた。
相変わらず、惚けた顔をしていた。

「…。
前から思ってたんだけど、あかりちゃんさー。
…。」

「何?」
続きを言わない怜香に、私は聞き返した。

⏰:08/11/24 07:25 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#591 [あかり]
「…塩見先輩への思いを消化しきれてないまま、阿倍野くんと付き合った感じだなあ、と思って。」

「あ…。」
私は動揺し、思わず目をキョロキョロさせた。

⏰:08/11/24 07:29 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#592 [あかり]
竜樹くんとは、キスも、それ以上のこともした。

二人で安泰な日々を、それなりに築き上げていってるつもりだ。

しかし―

タクロウ先輩が小春先輩と破局した事実を知った時、
私の心の中で、何かがパリンと割れる音がした。

⏰:08/11/24 07:32 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#593 [あかり]
タクロウ先輩の彼女になりたいとか、彼の特別な人になりたいとか、そんなことは思ってないつもりである。

先輩に憧れを抱いてる人が沢山いるのなら、その中の一人でいい。

あの頃の私は、先輩のことを考えたり思ったりするだけで、幸せだった。

⏰:08/11/24 07:37 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#594 [あかり]
人間は、思い出や過去などを、美化してしまう生き物だと思う。

今の私がそうだ―
今目の前にある幸せに気がつかないで、
他のことばかりが余計に気になってしまう―

今の私には、間違っている部分が所々見受けられる。

⏰:08/11/24 07:46 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#595 [あかり]
数日後―

午前の授業が終わって、藍美と日課である、購買のパンを買いに行った。

その帰りの廊下で、向こう側から友達数人と歩いてる、タクロウ先輩とすれ違った。

⏰:08/11/24 08:04 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#596 [あかり]
他の人たちはにぎやかな様子だったが、先輩は一人だけ無表情だった。
―そんな印象を受けた。

私が先輩を好きだった時は、彼は我先にと馬鹿騒ぎをするような人であった。

最近、先輩を見かける度、昔との変化を、私なりに感じていた。

先輩は、変わった―
少なくとも、小春先輩と別れたことが影響で―

⏰:08/11/24 10:02 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#597 [あかり]
違う、違うよ怜香―
私は彼に未練がある訳じゃない―

彼と、幸せになりたいんじゃなくて―
彼に、幸せになってもらいたいんだ―

先輩の辛い表情なんか、見たくないよ…―

あの日私に疑問を抱いていた怜香に対して、心の中で叫んだ。

⏰:08/11/24 16:17 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#598 [あかり]
「最近さあ、神田亜矢子がうざいよね〜。」
放課後、藍美とコンビニに行く途中で、彼女がこんなことを言ってきた。

神田亜矢子は、私が一年の時に、私に陰湿な行為をしていた第一人者だ。

その彼女は現在、私と同じクラスの、川木くんという男子と交際している。

川木くんは翔馬と一番仲が良い人で、目が大きく、そこそこ整った顔立ちをしている。

⏰:08/11/24 16:29 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#599 [あかり]
彼と付き合うことになってから、亜矢子は頻繁に、私たちの教室に入り浸るようになった。

藍美はそのことが言いたいのだと、解釈をした。

「なんかさー、あの二人、空き教室でキス以上のことをしてたらしいよー。」
軽蔑するような表情をしながら、藍美は噂話をする。

⏰:08/11/24 16:34 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#600 [あかり]
「でも、亜矢子って元彼だった先輩と、今セフレみたいな関係になってるらしいよー。」

「えっ、そうなの?!川木くんに夢中って感じがしてるのに。」

亜矢子の猛烈なアプローチがきっかけで、二人の交際がスタートしていたのを知っていた私は、その事実が意外だった。

⏰:08/11/24 16:47 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#601 [あかり]
「ああはなりたくないよねー。過去を清算しきれないまま、ずるずる引きずっちゃうなんて。
川木くんがちょっと可哀相だね。」

「う、うん…。」
私は一瞬、冷や汗をかいた。

今でもタクロウ先輩のことを気にしてたり、どこか引っ掛かっている自分。

藍美は痛烈なメッセージを込めて、今のこんな私に言ったのだろうか…?

⏰:08/11/24 16:54 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#602 [あかり]
「私もさー、克次先輩の前の彼氏と別れた時は、そりゃ辛かったよ。
こっちからしてみたら、全然望んでない道だったのに。

でも、やっぱりそれでも前に進まにゃいけないのよ。
てか、与えられた道は、どんなにもがいても、それしかないんだよね。

昔に戻ろうとしたって、全然いいことないよ。
今、目の前にいる人間を、傷つけることになるから…。」

久しぶりに、藍美の真剣な顔を見た。

⏰:08/11/24 17:02 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#603 [あかり]
数日経った週末―
私は、竜樹くんの家に泊まりにきていた。
彼の両親は、またもや不在とのこと。

夜、彼の部屋で、私は彼に大事な話があると言った。

あの日、藍美の言葉を聞いて以来、
彼には、きちんと伝えるべきだと考えるようになった。

⏰:08/11/24 17:09 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#604 [あかり]
竜樹くんと出会う前、タクロウ先輩のことが、一年以上も好きだったこと―

タクロウ先輩と小春先輩が付き合うようになった後に、竜樹くんを意識し始めたこと―

時々、恋愛感情とは違うけど、彼女と別れて元気のに先輩のことが、気掛かりであること―

自分の過去や思っていたことを、ありのまま話した。

⏰:08/11/24 17:15 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#605 [あかり]
「ごめん、ごめんね。
中途半端な自分が、いつも嫌いだった。

でも、こんなこと話したら、竜樹くんに嫌われるんじゃないかって…怖くて。」
目の前にいる竜樹くんが、涙で霞んで、少しぼやけてきた。

彼は何も言わないまま、私を自分の方に、きつく抱き寄せてきた。

⏰:08/11/24 17:20 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#606 [あかり]
「もし、その人に彼女ができなかったとしても、
俺のこと、好きになってくれてた…?」

「うん、うん。」

「俺のこと、本当に好き…?」

「…うん。」

⏰:08/11/24 17:26 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#607 [あかり]
「じゃあ…しよ?」

「…うん…。」

そう言うと、彼は履いていたスカートの中に、いきなり手を入れてきた。

いつもなら、最初にキスをしてくれるのに―

普段との違いを感じた―

⏰:08/11/24 17:36 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#608 [あかり]
「今度はあかりが上になってよ。
俺にしか見せない、いやらしい顔をして。」

彼が初めて、行為中に催促をしてきた。

「うん…。」

私は彼の、言うままにした。

⏰:08/11/24 17:46 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#609 [あかり]
それ以来、放課後になると、彼にメールで呼ばれるようになった。

私たちは誰もいない所で鉢合わせると、あまり使われることのない男子トイレへと、二人で入っていった。

そして、二人で一つの個室に潜り込む。

鍵を閉めた途端、彼は私をギュッと抱きしめる。

長身の彼の中に、私の体はすっぽり収まる。

⏰:08/11/24 17:53 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#610 [あかり]
そして、そのままの体勢で、私の履いてるパンツの中に手を入れ、下腹部を指で刺激する。

「相変わらず、濡れるの早いよね。
気持ちいいの?」

最近の彼は、言葉責めをするのが激しくなった。

彼を満足させたい一心で、コクリと頷く私。

⏰:08/11/24 18:00 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#611 [あかり]
その瞬間、彼がピタリと動きを止める。

「自分からしてって言わないと、もうやめちゃうよ。
いいの?」
彼が命令口調になる。

首を横に振りながら
「もっと…して…。」
と、私はお願いした。

彼の指を動かすスピードが、さっきよりも速くなった。

⏰:08/11/24 18:05 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#612 [あかり]
途中で頭がのぼせてきて、両足もがくがくとなる。

我慢しきれずに、喘ぐ声も漏れてしまう。

「…今日はこの辺でおしまい。」

行為は、いつも数十分で終わる。

こんなやり取りが、何日か続いた。

⏰:08/11/24 18:13 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#613 [あかり]
その日も、彼のすることと態度は、同じであった。


その行為中、私は遂に泣き出してしまった。

彼がこんな風になってしまったことよりも、
彼をこんな風にしてしまった自分が悲しかった。

動きを即座にやめる彼。
「ごめん…。」

⏰:08/11/24 18:18 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#614 [あかり]
「俺、自分に自信がなくて…。
先輩に、いつも触れてないと不安で…。

傷つけてしまったよね…。
ごめん、ごめんなさい…。」

「ううん、悪いのは私だよ…。
私、もう塩見先輩のことは何とも思ってないから…、忘れるから…。」

⏰:08/11/24 18:23 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#615 [あかり]
それからの私たちは、より関係が深くなったと思う。
彼は前以上に、穏やかで優しくなった。

相手を思いやるとは、こういうことなのかと、解ったような気がする。

バレンタインも、奮闘して作ったクッキーとショコラを、彼に渡した。
彼はいびつな形を気にせず、喜んでくれた。

日常に、平凡な笑顔が溢れていた。

そして、三年生の卒業も目前に控えている時だった。

⏰:08/11/24 22:38 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#616 [あかり]
「克次先輩から、もう一度付き合って欲しいって言われたー。」
放課後、屋外の渡り廊下で、藍美に相談をされた。

私たちは自販機で買った、ココアの缶を手に持っていた。

「まじで!?この学校も、もう卒業するっていうのに、
藍美のこと、本当に好きなんだね。」

「うーん…。
でも私はやっぱり、ヨリを戻す気なーい。
何か…違うんだもん。」
そう言った後、藍美がココアを飲み干した。

⏰:08/11/24 22:49 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#617 [あかり]
「それじゃあしょうがないね。
人間には相性というものがあるから。」

「うん、断るつもりー。
当分男はいいや。

あかりはいいよねー。
年下クンとラブラブで。

ねぇねぇ、
どこまでいってんのよー?」

⏰:08/11/24 22:53 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#618 [あかり]
「えっ、な、何言ってんの藍美っ…。」

「あーあー、何にも知らなさそうな顔して、男を色々知っちゃってるのねー。

城山さん、なーんか寂しっ。」

「ブッ!!」

「これからも、彼氏と仲良くね。」

「うんっ。」

⏰:08/11/24 23:08 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#619 [あかり]
卒業式前日―
放課後、その予行練習が行われた。

在校生出席は、毎年二年生だけである。
後ろの席から、先輩たちの晴れ舞台を見ることになる。

起立や着席、一礼の確認、進行の手順などを一通りやっていた。

⏰:08/11/24 23:49 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#620 [あかり]
私はその間、タクロウ先輩の姿を、意識して見ないようにした。

練習は一時間ほどで終わって、生徒は解散をした。

放課後、私は一人で学校の近くのコンビニに、お菓子を買いに行った。

日が暮れるのもすっかり早くなってきた。
駅に向かっている時だった。

⏰:08/11/24 23:55 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#621 [あかり]
学校の目の前にある川沿いの道で、タクロウ先輩が一人、反対方向から歩いていた。

先輩は、紺のマフラーを首に巻いていた。

「あ…。」
先輩の姿に気づいた私は、無意識に声を出してしまい、その場で足を止めた。

先輩も私の目の前に立った。

⏰:08/11/24 23:58 📱:SH705i 🆔:KS/NgqI2


#622 [あかり]
「あ…あのぅ…、
卒業、おめでとうございます…。」
社交辞令にと、こんな台詞を言った。

「ありがと。」
辺りが暗くてよく見えなかったけど、先輩が微笑んでるのが読み取れた。

「じゃ、また…。」
お辞儀をして、その場を後にしようとした。

「ああ…。」
先輩も、反対側から歩き始めた。

⏰:08/11/25 00:04 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#623 [あかり]
そして、卒業式本番―

式は順調に行われていた。

卒業証書授与の時―
三年五組の担任の先生が、一人一人の生徒の名前を読み上げていた。

「…小松順也。」

⏰:08/11/25 00:10 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#624 [あかり]
「あーいっ。」
タクロウ先輩と一番仲の良い順也先輩が、
真面目な式とはそぐわない、ひょうきんな返事をした。

静まり返った会場に、一瞬小さな笑いが起きた。

私もおかしくて、顔がニヤニヤしていた。

⏰:08/11/25 00:13 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#625 [あかり]
「…塩見タクロウ。」

そして、タクロウ先輩の番が来た。

「はあぁぁいっっ!!」
先輩はこれでもかという大きな声で、起立をした。

クスクスクス…
順也先輩の時と同様、再び小さな笑いが起こった。

⏰:08/11/25 00:15 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#626 [あかり]
私が好きだった時の先輩だ―

確かに、先輩はふざけることが多いし、下品なことばかりやってみせるし、
何でこんな人を好きになったんだろう?と思うこともあった。

でも確かに私は、そんな先輩に恋をしていて、憧れていた。

⏰:08/11/25 00:19 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#627 [あかり]
私の目には、自然に涙が溜まっていた。

先輩に接触をしようと、あれこれ考えていた時のこと、
先輩と初めて会話した時のこと、
先輩をとにかく、追いかけていた日々。

今、私の視界には、ここから旅立とうとしている、先輩の姿しか見えていない。

⏰:08/11/25 00:24 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#628 [あかり]
式最後の、卒業生退場の時―

パンパンパンパン…

在校生や先生たちで、拍手でその姿を見送る。

私は両手が痛くなる位、大きな拍手をした。

⏰:08/11/25 00:32 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#629 [あかり]
そして、タクロウ先輩が起立をし、その場を立ち去ろうとした。

振り返った時、先輩は私の方を見ていた。
偶然なのか必然なのかは分からないが、私たちは、目が合った。

先輩はフッと視線を逸らし、会場を後にした。

⏰:08/11/25 00:54 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#630 [あかり]
三年生全員が会場から姿を消した後、
二年生も、脚立イスを直したりした後、先生の指示で教室へと戻った。

各クラスのホームルーム中…
今頃、上の階にいる卒業生たちも、最後のホームルームを行っているだろう。

時々、上から拍手や歓声の音が聞こえた。

⏰:08/11/25 01:22 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#631 [あかり]
「あかりちゃん。」

帰りの会が終わった後、いのちゃんが話し掛けにきた。

「三年生、個性的で面白い人が多かったから、何だかもういなくなるなんて、寂しいね。」
いのちゃんが窓の景色を見ながら、私に言った。

「うん…。」

⏰:08/11/25 01:25 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#632 [あかり]
「あー!」
突然、いのちゃんが叫んだ。

「な、何、いのちゃん!?」

「あかりちゃん、カモノハシのキーホルダー、自分のかばんに着けてどうすんのよ!?」
いのちゃんが、机の横に掛けていた、私のかばんを指差しながら言った。

⏰:08/11/25 01:29 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#633 [あかり]
「え?えっと…」

「これは塩見先輩にあげるものでしょ!?
自分のものにしちゃいけないじゃん!」

「タクロウ先輩のことは、竜樹くんに忘れるって言ったから…。」

「それとこれとは、話が別じゃない!?
あかりちゃんいつも言ってたじゃん、塩見先輩に『ありがとう』が言っていたって!」

⏰:08/11/25 01:41 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#634 [あかり]
「塩見先輩とは、もう会えなくなるんだよ?
このままだと、後悔しちゃうんじゃない?」

「うっ、うん…。」

「あたし、塩見先輩のことが好きなあかりちゃんが、好きだったよ。
あの頃のあかりちゃんの為にも、ここは一つ、いい踏ん切りをつけようよ!」

⏰:08/11/25 02:14 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#635 [あかり]
私といのちゃんは、一つ上の卒業生の階へと上がった。
私の右手には、カモノハシのキーホルダーが握られていた。

全クラスはまだ、ホームルームが行われているようで、
廊下は人っ子一人いなかった。

私たち二人は、三年五組の教室の前で立っていた。

⏰:08/11/25 02:45 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#636 [あかり]
他の教室から、わらわらと卒業生が、廊下に出てきた。

「あ!あかりちゃん、ちょっと人捜ししていい?
三年五組はまだ終わってないみたいだし…」

「うんっ。」

私といのちゃんは、いのちゃんと同中だった先輩に声を掛け、少し談話をした。

⏰:08/11/25 03:12 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#637 [あかり]
「あ!五組の方、終わったみたい!
もっかいあっち行こ!

じゃあ先輩…また!」

私といのちゃんは、再び五組の教室まで駆けていった。

廊下には人が密集してて、少し通りにくかった。

私たちは周りにいる人を避けながら足早に歩いた。

⏰:08/11/25 03:18 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#638 [あかり]
「すみません!塩見タクロウ先輩いますか?」
私は五組の人らしき男の先輩に、声を掛けた。

「えっ?しおみんならさっき帰ったみたいだけど―…」


あまりに一瞬のことで、私は言葉が出なかった。

咄嗟に、いのちゃんを置いて、足は玄関の方へと向かっていった。

階段を四階分下り、室内スリッパのまま外を飛び出した。

⏰:08/11/25 03:24 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#639 [あかり]
すると、昨日タクロウ先輩と会った川沿いの道に、彼の姿が―

息を切らしながら、先輩に追い付こうと、全速力で走った。

「し…塩見先輩っ!」

私の呼ぶ声に、先輩が振り返った。

⏰:08/11/25 03:27 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#640 [あかり]
「こ、これ…。
お、遅くなったけど…修学旅行の…お土産…です…ハァハァ…。」
やっとの思いでいいながら、カモノハシのキーホルダーを目の前に出した。

「タハハ。またマイナーなのを買ったもんやな〜。」
私の手からキーホルダーを受け取った先輩は、まじまじと見つめながら言った。

⏰:08/11/25 03:32 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#641 [あかり]
「塩見先輩…。
私、一年の頃から、先輩の生き方とか明るさに、ずっと憧れてて…

皆の中心、って感じだし…
本当すごいな、っていつも思ってて…。

先輩に、いつかこの気持ちを伝えたいな、って思ってて…
…私と出会ってくれて、本当にありがとうございます。」

⏰:08/11/25 03:38 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#642 [あかり]
「俺なんかにそんなん思ってくれてても、しゃーねって!(笑)
でも、こちらこそわざわざありがとうな。」

「先輩、今年の春から東京行くんですよね?

色々あると思いますけど、先輩のパワーがあるなら乗り切れると思います!

私、こっちでずっと応援してますから!」

⏰:08/11/25 03:43 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#643 [あかり]
「おう!それに俺には、コイツもいるしな。」
キーホルダーを見ながら、先輩が言った。

「先輩…。
またどこかで、お会いしましょうね。」

⏰:08/11/25 03:48 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#644 [あかり]
数日後―

タクロウ先輩との、卒業式の日の出来事を、竜樹くんに話した。

「俺、前みたいにヤキモチなんか妬いたりしませんから。

それに、過去を無理に忘れさせようとする方が、間違ってますよね。

何か、あかり先輩が一つ前に進めたみたいで、俺も嬉しいです。」

⏰:08/11/25 03:53 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#645 [あかり]
「ありがとう。
てか、『ありがとう』っていいよね。

沢山言ったり、言われたりする人生にしたいな。」

「…今度は先輩が最上級生っすね。

一年経った時、ここで旅立ちの唄を歌えるように。
また一緒に、歩き出しましょう。」

「うん。」
空を見上げた。
沢山の雲が、ゆたゆたと移動をしている。
文句なしの青空だった。

⏰:08/11/25 04:00 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#646 [あかり]
ガタンゴトンガタンゴトン…。

私、木村あかり。
現在、高校三年生。

受験生という意識を少しずつ持ちながら、毎日学校に通っている。

去年仲良しだった、いのちゃんとは同じクラスで、
藍美とは別のクラスになったが、それでも変わらずに、二人との交流は保っている。

⏰:08/11/25 04:05 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#647 [あかり]
幼なじみの翔馬とも、クラスは離れ離れになってしまったが、
私たち離島出資者が交通手段としている、船の中などで、しょっちゅう話したりしている。

後輩の怜香とも、毎日色んな話をして、地元にいる時よりも、仲が深まっていると思う。

⏰:08/11/25 04:08 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#648 [あかり]
一つ年下の、彼氏の竜樹くんは、優しくて頼りがいのある人だ。
未だに所々、敬語で話すところが愛らしい。

―今、朝の通学電車に揺られながら、窓の景色を見ている。

⏰:08/11/25 04:11 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#649 [あかり]
ふと、同じ車両に座っている一人の子に、目がいく。
というか、立っている私の目の前に、座っている。

同じ制服を着ており、表情の初々しさからして、きっと新一年生であるだろう。

今年の春から、毎日見るようになった。
私が電車に乗る時には、彼女は既に、この定位置に座っている。

⏰:08/11/25 04:16 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#650 [あかり]
数日後―
彼女の隣に座った私。

お互い、目が合った。

「一年生?」

「はい。…先輩の方ですか?」

「私は三年だよ。」

こんなやり取りから、私たちの会話が弾んだ。

⏰:08/11/25 04:18 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#651 [あかり]
そろそろ、電車が学校のある駅へ、着こうとしていた―

「あっ、先輩の名前は、何て言うんですか?」

「私は木村あかりって言うよ。

…名前、何て言うの?」

⏰:08/11/25 04:20 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#652 [あかり]
彼女は、はにかんだ笑顔を見せながら、こう言った。

「塩見…塩見ユカです。」

駅に着いた電車のドアが、今にも開こうとしていた。

―END―

⏰:08/11/25 04:24 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#653 [あかり]
あとがき

最後まで読んで下さった方、少しだけでも見て下さった方も、お付き合いして頂き、ありがとうございますm(__)m

駄文で読みづらく、理解できない所も多かったと思います。
申し訳ありません…(>_<)

⏰:08/11/25 04:27 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#654 [あかり]
あとがき2

続いては、私自身のちょっと最近の話を題材にした、
『開く花』というタイトルのものを、書く予定でございます。

頑張ってレベルアップして書くつもりです!f^_^;

ありがとうございました。

⏰:08/11/25 04:31 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#655 [優]
あかりさん

おつかれさまでした
次作も読ませていただきます

⏰:08/11/25 09:20 📱:SH904i 🆔:IUCMQVBA


#656 [あかり]
優さん

最後まで読んで頂き
本当に感謝しています
o(^-^)o

つまらないものを
読ませてすみません
(*o*)

優さんの作品、
ちょくちょくチェックさせてもらってます!
(^O^)

⏰:08/11/25 12:10 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#657 [空海]
あかりさン

お疲れさまでしたッッ
めっちゃ
面白かったです

次もがンばッッて
下さいねぇ---

⏰:08/11/25 18:16 📱:N704imyu 🆔:u4uQg5Kg


#658 [あかり]
空海さん

コメント有り難うございます!( ^^)Y☆Y(^^ )

全部読んで下さったなんて…めちゃくちゃ嬉しいです(T_T)

ハイ!
次回のもお付き合いよろしくお願いします(^人^)

⏰:08/11/25 19:06 📱:SH705i 🆔:JwgW5bj.


#659 [あかり]
感想板を作りました
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4088/

よかったら、是非遊びに来てください!(^_^)/

ご意見などもお待ちしております!(^^ゞ

⏰:08/11/27 15:24 📱:SH705i 🆔:eONNhIps


#660 [あかり]
アンカーです!★

>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600

⏰:08/11/27 15:25 📱:SH705i 🆔:eONNhIps


#661 [あかり]
アンカーです!★2

>>601-700

⏰:08/11/28 18:26 📱:SH705i 🆔:SuFbpR76


#662 [ん◇◇]
↑(*゚∀゚*)↑

⏰:22/10/29 10:03 📱:Android 🆔:ww1G8DfI


#663 [ん◇◇]
>>620-650

⏰:22/10/29 10:15 📱:Android 🆔:ww1G8DfI


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