先輩と旅立ちの唄
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#1 [あかり]
私、現在20歳。

高校時代の恋を、
懐かしさに浸りながら
書き綴っていきたいと思います

初めて書くので
とても下手です

⏰:08/10/27 04:36 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#2 [あかり]
私、あかり。
現在高校一年生。

中学から高校というステップアップに
胸を弾ませながら、
毎日を楽しく過ごしている。

友達もそれなりにできた。

⏰:08/10/27 04:40 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#3 [あかり]
なにせ、離島出身で、
小・中学校と
小規模なメンバーで過ごしてきた。

何クラスもあったり、
廊下を歩く度、知らない人ばかりということが
新鮮でたまらなかった。

―これから、どんな学生生活が始まるかな?―

⏰:08/10/27 04:44 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#4 [あかり]
ある日の掃除時間。

私たちの班の区域は、
一年生の棟と二・三年生の棟を繋ぐ
渡り廊下前の教室だった。

私ともう一人の女の子は、
廊下掃除をすることになった。

⏰:08/10/27 04:49 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#5 [あかり]
「昨日のテレビ、
本当に面白かったよねー。」

他愛もないことを二人で話ながら、
床を掃いたりしていた。

「渡り廊下も、うちらが
しないといけないのかな?」
もう一人の子が言う。

⏰:08/10/27 04:52 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#6 [あかり]
担当となっている廊下は、
掃除時間内の半分に満たないほど
範囲が小さくて、
なんだか物足りないほどだった。

私は渡り廊下の部分も
掃除することにした。

⏰:08/10/27 04:55 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#7 [あかり]
時々、渡り廊下を
行き来する先輩たちとすれ違う。

きっと、掃除区域までの移動のために。

二・三年生とは接触する機会が
全然なかったから、
色んな人が見れたのは嬉しかった。

⏰:08/10/27 05:00 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#8 [あかり]
ある日、いつものように
二人で半分ずつ
渡り廊下を掃いていっていた。

そして、いつものように
見知らぬ先輩たちが行き交う。

⏰:08/10/27 05:03 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#9 [あかり]
そして、今まで見たことのない
男の先輩二人組が歩いてきた。

一人の人はごみ袋を持っていた。

私はふっと
その人の顔を見た。

⏰:08/10/27 05:07 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#10 [あかり]
その時、一瞬自分の中で
時間が止まった。

ありがちな表現しかできないけれど、
妙な感覚に陥った。


―あの人はもしかして…―

⏰:08/10/27 05:10 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#11 [あかり]
話は遡って、
それは私が中学三年生の時。

受験シーズン真っ只中。
そろそろ、志望校を絞らないと
いけない時期だった。

私は担任の先生と
二者面談をしていた。

⏰:08/10/27 05:12 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#12 [あかり]
この学校がいかに
小規模だと思わせるくらい、
こじんまりとした保健室。

二者面談はここで行われた。

「今日はお前に
見せたいものがあって
持って来た。」
先生が話を切り出した。

⏰:08/10/27 05:17 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#13 [あかり]
中学から高校に進学するにあたって、
私は一つ、大きな不安があった。

「もしも、持病が周りに知られて
いじめられたりしたらどうしよう。」
先生にはそう相談していた。

新しい生活、新しい環境、
今までとは大幅に違う、
できるなら、穏便に過ごしたい。

⏰:08/10/27 05:26 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#14 [あかり]
先生は一枚の用紙を、
私の前に置いた。

よく見ると、
誰かの字で書かれた作文用紙だった。

「前の学校で受け持っていた生徒のだ。

今、お前の行きたい高校の一年生だ。」
先生はそう説明した。

⏰:08/10/27 05:30 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#15 [あかり]
手に取る私。

作文なのに、書きなぐったような感じで、
「やんちゃな少年時代を過ごしました」的な
男子を連想させるような雰囲気だった。

言うなれば、
作文コンクールとかで、
一目で落選をしいたげられるタイプ。

⏰:08/10/27 05:36 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#16 [あかり]
そんなことをふと想像したが、
作文を読みはじめた私は、
それを詫びたいと思ったほど、
「深刻」という二文字が
脳裏に浮かんだ。

⏰:08/10/27 05:39 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#17 [あかり]
『小さい頃に両親が離婚して、
それからはお母さんと二人暮らし。


どうしてこの世には
争いや殺し合いなどがあるのだろうか

僕は貧乏だけど、とても幸せです。』
自分なりに要約すると、
こんな感じの内容だった。

⏰:08/10/27 05:44 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#18 [あかり]
「そいつな、両親が離婚した時のストレスで、
頭の髪の毛が脱毛症になったんだ。

学校では、帽子の着用を許可して登校させてた。」

先生はそう作文の人の詳しい所載を教えてくれた。

⏰:08/10/27 05:51 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#19 [あかり]
「そうなんだ…」
用紙をじっと見つめたまま、私は悲しげな気持ちでつぶやいた。

字はお世辞にも、上手いとは言い切れないが、
気持ちがこもっているのは伝わっていた。

⏰:08/10/27 05:54 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#20 [あかり]
両親健在、家庭円満で
何不自由なく過ごしてきた私には、
この作文の人の辛さや寂しさなんて、
一生かけても分からない。

でも、きっとこの人も
私と同じように、
自分の病気を周知されるということに
苦しさを感じなから生きてるんだ。

私は、なんとなく
孤独感から解放されたような気分になった。

⏰:08/10/27 06:00 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#21 [あかり]
私はずっと
用紙から目を離さなかった。

途中までしか書いていなくて、
書き方も拙い内容だけれど、
私の中の作文コンクールで、
今まさに、一位に輝いた。

⏰:08/10/27 06:05 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#22 [あかり]
「先生、これ見て。」
私は文章の終わりの近くに
ぐじゃぐじゃと黒で塗り潰してある
毛虫みたいな落書きに気がついた。

「あいつ、提出になっても出さなかったけど、
何か書きたかったんだろうなあ…。」
先生が物寂しげにつぶやく。

書かなかった作文。
書けなかった作文か…。

⏰:08/10/27 06:09 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#23 [あかり]
それから私は、
志望校に合格した。

作文の人と同じ学校―
なんて思うこともないほど
嬉しさと楽しさでいっぱいで、
私は先生とのあのやり取りを、すっかり忘れていた。

ちなみに、先生は
あの作文を見せたのは
私が初めてだったと言う。

⏰:08/10/27 06:13 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#24 [あかり]
そして、今
私の目の前にいる人。

黒いニット帽を被っている。

帽子…
瞬時にあの時の先生の話を思い出した。


―この人が作文の人…!?―

⏰:08/10/27 06:16 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#25 [あかり]
先輩は、もう一人の人と
楽しそうに話しながら
渡り廊下を過ぎていった。

おそらく、教室のゴミ出し当番なのだろう。

先輩の姿が
ずっと脳裏に焼き付いていた。

⏰:08/10/27 06:20 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#26 [あかり]
小説を読む時、
登場人物を自分なりにイメージするように、
私も作品の人の人物像を
頭の中で作りあげていた。

なんとなく、身長は低くて、
がき大将みたいな感じを想像していた。

実際の先輩は、
高身長で、黒ぶち眼鏡をかけていて、
雰囲気も騒がしい感じではなかった。

⏰:08/10/27 06:25 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#27 [あかり]
それからは、
掃除時間にその先輩が通り過ぎるのを
楽しみにしながら、やり過ごしていた。

ごみ袋を片手に、
友達と話しながら歩く先輩の姿。

あの人は、どんな人なんだろうか?
私の中で興味が湧いた。

⏰:08/10/27 06:30 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#28 [あかり]
「あの帽子被ってる人、
いい匂いするよねぇ〜。」
先輩たちが消えて行った後、そう言い出すもう一人の子。

「うん、私も思った!」
同じ気持ちだったので、
笑顔で答えた。

渡り廊下には、まだ
先輩が身につけているであろう
香水の残り香が漂っていた。

⏰:08/10/27 06:35 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#29 [あかり]
向こうは私の存在を知らないが、
私は先輩のことを知っている。

先輩を初めて見た人は、
「あの人、何で帽子被っているんだろう?」
と、きっと疑問に思う所を、私は理由をだいたい把握している。

なんとも不思議な関係だった。

⏰:08/10/27 06:47 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#30 [あかり]
月も変わり、
掃除区域も変わった。

私のささやかな楽しみは、
区域移動とともになくなった。

「まあ、あの先輩が
作文の人って分かっただけでいいか。」

⏰:08/10/27 22:43 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#31 [あかり]
梅雨に入り―
やがて、台風の時期になった。

私の住んでいた離島は、
一度停電が起こると、ひどい時は一日中電気がつかない。

台風が接近した日曜日―
私は暗闇の中、通常の生活が送れることをじっと待っていた。

⏰:08/10/27 22:51 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#32 [あかり]
真っ暗な部屋で、退屈しのぎに
停電に備えて、あらかじめ充電しておいた
MDウォークマンを聴く。

孤独に耐える時間。
あの先輩を初めて見た時のことを思い出す。

⏰:08/10/27 22:58 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#33 [あかり]
なんとなく思い浮かんだ、のではなく、
あの人の姿を思い出したかった。

「先輩は、この台風をどう過ごしてるかな?」

「大丈夫かな、心配だな…」

⏰:08/10/27 23:02 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#34 [あかり]
脳内に、ひたすら好きな音楽が流れてくるが、
頭の中は気が気ではなかった。

あの作文用紙一枚で、
先輩の心の中の闇を見たように感じた。

「ずっと、寂しかったんだろうな…。」

⏰:08/10/27 23:11 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#35 [あかり]
「そういえば私、
あの先輩の名前を知らないなあ。」

「普段はどんな風に過ごしてるんだろう?」

「何かクラブはやっているのかな?」

もはや台風ということを忘れるくらい、
色んな疑問が、頭の中をよぎった。

⏰:08/10/27 23:14 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#36 [あかり]
そうして、夜中には家に明かりが戻り、
押し寄せてきた台風も、通り過ぎていった。

「また明日から学校だあ。」

⏰:08/10/27 23:17 📱:SH705i 🆔:JJ7BuDlA


#37 [あかり]
それから私は、
先輩と同中だった子に、
先輩のことを尋ねてみた。

「帽子の先輩」といえば、
すぐに相手は頷いた。

「塩見 タクロウって人でしょ。
私、テニス部で一緒だったから。」

⏰:08/10/28 03:32 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#38 [あかり]
タクロウ先輩…

テニス部…

新たな情報が、頭の中で交錯する。

自分の中で神秘めいていた存在である先輩に
少し近づけたみたいで嬉しかった。

⏰:08/10/28 03:36 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#39 [あかり]
そして、色んな人からの情報により、
今は帰宅部らしい。

私は先輩のことを少しずつ知る度、
彼と話してみたいと思うようになった。

しかし同中でない、クラブの接点がない人と
交流を持とうとするのは、なかなか厳しいものである。

⏰:08/10/28 03:41 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#40 [あかり]
ある月の掃除区域―
私たちの班は、進路指導室の担当になった。

渡り廊下の時と同じように、たくさんの人が行き交う。

外にあるごみ捨て場に行くには、
ここを通らなければならない。

⏰:08/10/28 06:51 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#41 [あかり]
班の子と、笑い合いながら
清掃をする私。

皆で廊下に立って、雑談をすることが多かった。

⏰:08/10/28 06:57 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#42 [あかり]
するとその時―
ごみ袋を持った友達と、
一緒にいるタクロウ先輩がこっちに近づいてくる。

ドキドキドキドキ…

⏰:08/10/28 07:02 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#43 [あかり]
すれ違った時、それは今までより先輩を近くに感じて、
私の心臓は最高潮に高鳴った。

そのままごみ捨て場まで向かう二人。

私は先輩の後ろ姿を、
ずっとずっと見ていた。

⏰:08/10/28 07:05 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#44 [あかり]
すれ違ったり、遠くの方で先輩の姿を見かけたりすれば、
ときめいたり、幸せを感じる日々が続いた。

隣のクラスの雪依ちゃんという子と仲良くなり、
お互いに自分の気になる人を打ち上けたりした。

⏰:08/10/28 07:17 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#45 [あかり]
「私は、テニス部のマネージャーしてたら、
2年の和臣先輩って人が
気になるようになって来たの。

あかりちゃんは?」

「私は、ほら帽子被ってる先輩いるじゃん?

塩見タクロウ先輩。

何か、憧れちゃうな…」

⏰:08/10/28 07:21 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#46 [あかり]
私自身、自分の体にコンプレックスを感じていて、
性格も内気な為、前へ前へと出ることが、とても苦手である。

それに対してタクロウ先輩は―

私から見る限りでは、
友達もたくさんいるみたいだし、
ムードメーカーという感じもしていた。

⏰:08/10/28 07:29 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#47 [あかり]
私にはそんな先輩の姿が、
とても輝いて見えた。

辛い過去を乗り越え、
卑屈にならないで、周りに笑顔を配っている。

先輩は今の私の鏡だった。

⏰:08/10/28 07:31 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#48 [あかり]
「ああ、あの人なら分かるよ。

あれ?和臣先輩と塩見先輩って同中じゃなかったかなあ?

それに、中学なら同じテニス部だったんじゃない?」

「本当?
私、あの人と話してみたいなあ。

自分の気持ちを伝えてみたい。」

⏰:08/10/28 07:36 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#49 [あかり]
「そっかあ。
うーん、何かいい案はないかなあ。」

「私、手紙書いてみようかな!
言いたいことも簡潔にまとめられるし、
気持ちも伝わるだろうし。」

「うん、それいいかもね!
直接渡すのが恥ずかしかったら、私、和臣先輩に頼んでみるよ!」

⏰:08/10/28 07:39 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#50 [あかり]
「本当に?
ありがとう。すっごく助かるよ〜!」

「いいのいいの。
それに私も、和臣先輩と話せるチャンスになるしね(笑)」

「お互い様々って訳だね(笑)」

⏰:08/10/28 07:42 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#51 [あかり]
家から帰って―
夕飯や宿題、お風呂を済ませ、
先輩に手紙を書くため、机に向かう。

あれこれ迷んで、ハローキティのレターセットにすることにした。

少しでも乙女心を演出したかったのだ。

⏰:08/10/28 07:48 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#52 [あかり]
「Dear タクロウ先輩、っと…」

色つきボールペンで、カラフルに仕上げる。
文の終わりには絵文字や顔文字を書き、精一杯かわいらしくする。

⏰:08/10/28 07:52 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#53 [あかり]
学校の帰り、電車や船の中で携帯の新規メール機能を使って
作成しておいた手紙の内容を書き込む。

「先輩は私の憧れです」
「これからも、体調などには気をつけてください」

私の思いは、一枚半にぎっしり詰まった。
長すぎず、短すぎず、ほどよいと思った。

⏰:08/10/28 07:58 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#54 [あかり]
「遂に、憧れの先輩に
私の存在が知られるんだあ…。」

布団の中で、
手紙が渡った後のことを考える。

「ああ、でも
なんて思われるかなあ…。
もしかしたら、
不快な思いさせるかも知れないや…。」

⏰:08/10/28 08:03 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#55 [あかり]
手紙の内容には、
あの作文を読んだことを書いてある。

これこそが私が先輩に憧れを抱いた第一歩だから、
書かざるを得なかった。

知らぬ間に、自分の家庭内の事情と、病気の原因を知っている者がいる。

嫌な思いをさせないだろうか。
眠りに就く前で、心配になった。

⏰:08/10/28 08:07 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#56 [あかり]
「でも、私が先輩の存在で勇気を貰ったから、
今度は私が先輩の力になれたらなあ。」

ベッドから起き上がり、
明かりをつけ、机に置いていた手紙をかばんの中に入れた。

「先輩がこの手紙を読んで、何か励みになれたらいいな。」

⏰:08/10/28 08:11 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#57 [あかり]
次の日―
休み時間の合間に、隣のクラスに行き、雪依ちゃんに昨日書いた手紙を渡した。

「じゃあ、これを和臣先輩に渡してもらうように頼んでおくね。」

⏰:08/10/28 08:14 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#58 [あかり]
ドキドキドキドキ…

授業中も緊張の波は鎮まらなかった。

「ああ、どうしよう。
今時ラブレターなんて、馬鹿にされるかな。」

昨日の決意も、いざ実践となると
膨らんだ風船を針で突いたように、一瞬でパンッと割れた。

⏰:08/10/28 08:19 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#59 [あかり]
学校から帰って―
まだ緊張はおさまらなかった。
むしろ、今まで以上に大きくなった。

「手紙、もう先輩に渡ったのかな…。」

その時、メールの着信音が鳴った。

「あっ、雪依ちゃんだ。」

⏰:08/10/28 08:22 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#60 [あかり]
「ごめぇん!
やっぱり和臣先輩をいざ前にすると渡せなかったよぉ(;_;)

ごめんねっ ―雪依―」

「ううん、全然気にしないで!
むしろ、やっぱり渡さなくて良かった。
やっぱり手紙なんて、恥ずかしいや〜(>_<) ―あかり―」

⏰:08/10/28 08:26 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#61 [あかり]
「本当?
役に立たなくてごめんなぁ…。
先輩とお近づきになれるといいねo(^-^)o ―雪依―」

「うん。
手紙は自分で処分するね。

うん、今はそれが一番の望みだけど、
やっぱりいざ目の当たりにすると、動転しちゃうっ(+_+;) ―あかり―」

⏰:08/10/28 08:31 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#62 [あかり]
「そんなもんだよぉ。

私も部活で、和臣先輩といつま全然話せないもん〜(T_T) ―雪依―」

「お互いがんばろうね!

今日は無理なお願いしちゃって本当にごめんね。

じゃあ、また明日☆ ―あかり―」

⏰:08/10/28 08:34 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#63 [あかり]
良かった、良かった。
なんとなく安堵した。

「やっぱり急には怖いや。
今は遠くから見るだけで満足、かな…。」

私の生まれて初めてのラブレターは、ごみ箱行きとなった。

⏰:08/10/28 08:39 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#64 [あかり]
時は過ぎ、文化祭の季節となった。

違うクラスにも友達がたくさん出来て、
手紙失敗事件のことも忘れていた。

そして、最終日の体育祭当日―

⏰:08/10/28 08:46 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#65 [あかり]
グランドを移動してる時だった。

中央にタクロウ先輩の姿。

思わず目が見開く。

先輩と目が合ってしまった。
初めてのことだった。

⏰:08/10/28 08:51 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#66 [あかり]
その時、私の中で
色んな思いが駆け巡った。

「私は向こうのことを知ってるのに、
向こうは私のことをこれっぽっちも知らない。

やっぱり今の状況は、寂しいな…」

「よし、やっぱり何か行動に移そう。」

⏰:08/10/28 08:55 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#67 [あかり]
「これもまた、あの作文から始まった、一つの運命に違いない。」

「ん。まてよ、作文…?
そうか、最初からこうすれば良かったんだ!」

私は頼るべき人を思い出した。

⏰:08/10/28 09:00 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#68 [あかり]
好きな人や友達のことを誰かに相談する時、
相手が共通の知り合いであればあるほど、
話はスムーズに進んだり、よりよい方向へと導く。

「あいつはあんな奴だから、こういう行動を取ればいいんじゃない?」

納得する回数も多い。

⏰:08/10/28 09:05 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#69 [あかり]
帰りの船の中―
私はある人にメールを送信した。

「先生、久しぶり。
先生がいつか私に教えてくれた人、塩見タクロウって人でしょ?
学校でたまに見かけるよ。 ―あかり―」

中3の時の担任の先生である。

⏰:08/10/28 09:09 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#70 [あかり]
「うん、そうだ。
でも、あんまりジロジロ見ないでやってくれないか。

あいつも、気にするだろうからさ。 ―日下部―」

「ううん、そうじゃなくて。
私、あの人と話してみたい。

私があの人の姿を見て、
強いパワーを貰ってるんだってこと、教えてあげたいな。 ―あかり―」

⏰:08/10/28 09:13 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#71 [あかり]
「お前はやっぱり偉いなあ。

じゃあ、お前からあいつに先生のアドレスを教えておいてくれないか?

あいつからメールがきた時、お前のお前を伝えておくよ。 ―日下部―」

「うん、分かった!
ありがとう先生。

明日、先輩の教室まで訪ねてみる! ―あかり―」

⏰:08/10/28 09:17 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#72 [あかり]
次の日―
午前から曇り空で、
午後からは雨が降り出した。

放課後になり、
二年の棟に一人で行くのは勇気がいるので
クラスメートに同行してもらうことにした。

⏰:08/10/28 09:25 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#73 [あかり]
渡り廊下の窓から見る外の景色―
学校内全体も、いつもより暗く感じた。

手には先生のアドレスを書いた紙。
いつもより高い私の体温が、紙に伝っていく。

⏰:08/10/28 09:26 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#74 [あかり]
初めて来た二年生の棟―
新鮮と、緊張が走る。

学年毎で、上履きの色が違っていたから、
女子の紫色、男子の茶色のそれを見るほど、
心臓の鼓動は大きくなった。

「きゃあ、どうしよう…!」

⏰:08/10/28 09:33 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#75 [あかり]
近くを通りかかった、女の先輩に声を掛けてみた。

「あのっ、塩見タクロウ先輩はいますか?」

女の先輩は「ちょっと待ってね」と言って、
先輩の教室まで行き、様子を見てくれた。

⏰:08/10/28 09:38 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#76 [あかり]
「タクロウ君、居る?
え、今5組の方?」

女の先輩の声が聞こえる。

そして、女の先輩は今度は5組の教室のドアを開け、「タクロウ君、後輩が呼んでる。」
と、説明してくれた。

私とクラスメートの子は、ちょうど5組の教室の前で立っていた。

⏰:08/10/28 09:43 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#77 [あかり]
ドックン、ドックン…
遂に、先輩と初めての会話の時。

ドアから高身長の先輩が、にょきっと出てきた。

私はクラスメートの子の少し後にし、
先輩の前まで歩いて行った。

⏰:08/10/28 09:46 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#78 [あかり]
151センチの私と、
180近い先輩。

私は顔を上げて先輩と対面した。

「あ、あの…
中学校の日下部先生がメールするように、って…。」

アドレスを書いた紙を渡す。

⏰:08/10/28 09:49 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#79 [あかり]
「へぇ!?
日下部先生がぁ?

ほーい。
分かりました〜。」

想像していたよりも、ひょうきんに受け答えされて
驚きはあったが、嫌な顔をされなくて幸いだった。

私の少ない説明でも、特に何も考えず疑わず、
即答する先輩を面白いと思った。

⏰:08/10/28 09:53 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#80 [あかり]
「ああ、緊張したあ〜。」
教室まで戻りながら、クラスメートの子と、
さっきのやり取りのことを思い返す。

「でもあの先輩、優しそうだったね。」

「…。
うん!そうだね!」

着いてきてもらったのが、この子で良かったと思った。

⏰:08/10/28 09:58 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#81 [あかり]
数日後―
日下部先生にメールを送信してみることに。

「アドレス書いた紙、渡したよ。

どう?連絡あった? ―あかり―」

「うーん、まだきてないなあ。 ―日下部―」

⏰:08/10/28 10:13 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#82 [あかり]
「向こうから連絡なし、か…。

うーん、あの性格的に、
これからも送りそうにはないなあ。」

メール作戦も、半ば失敗に終わった。

でも私にとって、少しでも先輩と会話できたこと、
少しでも私の存在を知られたことが、何よりも大きかった。

⏰:08/10/28 10:19 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#83 [あかり]
次の月―
掃除区域が、また先輩を初めて見かけた場所となった。

前と同じ子で、渡り廊下を清掃する。

―先輩がまた通るといいな…―

⏰:08/10/28 10:22 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#84 [あかり]
私の願いが叶ったのか、
友達と一緒にいる先輩がやって来た。

前と違う所は、
先輩も少なからず私のことを認識している、という所である。

自然と先輩と目が合う。
すぐに向こうからフッと視線を逸らされる。

⏰:08/10/28 10:28 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#85 [優]
読みやすいです
これからも
頑張ってください

⏰:08/10/28 10:36 📱:SH904i 🆔:EpRRxK2o


#86 [あかり]
優さん

感想ありがとうございます!
とても嬉しいです<(__)>

よかったらこれからも見ていって下さい!

⏰:08/10/28 13:20 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#87 [あかり]
渡り廊下は行き来の場、だから
少なくとも二回は先輩が通る。

先輩が通り過ぎていった後は、また戻ってくるその時を、
心の中はドキドキしながら、外見ではそれがばれないように
床を掃きながら待ち構えていた。

⏰:08/10/28 13:30 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#88 [あかり]
目が合ったり、
敢えて相手を見ないようにしたりしたり…

言葉を交わさないやり取りを、繰り返していた。

そんなささやかな日々を繰り返していた時だった。

⏰:08/10/28 13:39 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#89 [あかり]
いつものように、もう一人の子と半分ずつ床を掃いていた。

二年生の教室がある方から、騒がしい声がする。

⏰:08/10/28 13:45 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#90 [あかり]
「ワ〜キャハハハハ!」

二年生の男子数人が、卓球のピンポン球を使ってサッカーをしていた。

その範囲は、私たちが清掃している渡り廊下まで広がった。

その中に、タクロウ先輩の姿もあった。

⏰:08/10/28 13:49 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#91 [あかり]
一人の人がタクロウ先輩にパスを渡した。

タクロウ先輩が球を蹴りながら走る。

方角的に、私のいる方へとそれは向かっていた。
先輩が私とぶつかりそうになる。

⏰:08/10/28 13:51 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#92 [あかり]
「あ!ごめ〜ん!」
私にそういいながら、衝突になりそうになる寸前で、走る方向を変えた先輩。

先輩たちはサッカーに夢中で、そのまま楽しそうに走り続けて、渡り廊下を後にした。

「びっくりしたあ…。
ぶつかるかと思ったあ…。」
動悸がずっと止まらない。

「先輩、すごく近かった…。」

⏰:08/10/28 13:57 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#93 [あかり]
先輩からしてみたら、
何気ない一瞬だとしても、私にとっては嬉しかった。

こんな小さな出来事でも
「先輩に話しかけられた」と私の中でカウントされる。

⏰:08/10/28 15:30 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#94 [あかり]
「ずっと掃除区域がここだったらいいのになあ…!」
実現しないと分かっていても、
中高生らしい願いを抱いていた。

床をモップで磨き上げれば上げるほど、
私の先輩に対しての思いはより輝きを増した。

⏰:08/10/28 22:07 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#95 [あかり]
全校集会があると、必死で先輩の姿を探したり、
二年生たちが教室移動してるのを見かけると、その中に先輩の姿もないか目で追ったり…

今の私には、これ位が精一杯で、これ位で十分満足だった。

⏰:08/10/28 22:12 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#96 [あかり]
季節もすっかり冬になり―マフラーやカイロが手放せなくなった。

私はその日の昼休み、
生理痛のため保健室へと向かった。

冷たい廊下を体を少し丸めた状態で、
早歩きで歩いた。

⏰:08/10/28 22:44 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#97 [あかり]
「失礼します。」
伏し目がちにドアを開けたが、正面を向いてなくても、室内の状況が理解できた。

タクロウ先輩と先輩と仲良しの男の先輩二人が、ストーブを囲って座っていた。

その近くに立っている保健室の先生。

⏰:08/10/28 22:48 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#98 [あかり]
とりあえず私は、ドアの近くのソファーに座った。

四人からは離れた距離にいる。

性格が明るくて、イケてる感じの子なら、
笑顔で一緒に暖まろうと近くに行くのだろうが、
至って普通で、喋りもうまくない私にはそんな勇気は毛頭なかった。

⏰:08/10/28 22:55 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#99 [あかり]
私は生理痛の時や、精神的に嫌なことがあった時、保健室を利用する。

その度に二・三年生の男子が
明らかにサボりにここを利用しているのが見受けられる。

タクロウ先輩やその友達たちも、その代表だった。

先輩たちはいうなれば、学年の中では派手で目立つ方だった。

⏰:08/10/28 23:05 📱:SH705i 🆔:dtU0GNBU


#100 [あかり]
「君さあ、あの離島出身の子だよね?」
その中にいた大樹先輩という人が、私に話しかけてきた。

大樹先輩とタクロウ先輩は、同じ中学の友達である。

話はそこから私の住んでる島のことになった。

⏰:08/10/29 09:13 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


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