先輩と旅立ちの唄
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#1 [あかり]
私、現在20歳。
高校時代の恋を、
懐かしさに浸りながら
書き綴っていきたいと思います
初めて書くので
とても下手です
:08/10/27 04:36 :SH705i :JJ7BuDlA
#2 [あかり]
私、あかり。
現在高校一年生。
中学から高校というステップアップに
胸を弾ませながら、
毎日を楽しく過ごしている。
友達もそれなりにできた。
:08/10/27 04:40 :SH705i :JJ7BuDlA
#3 [あかり]
なにせ、離島出身で、
小・中学校と
小規模なメンバーで過ごしてきた。
何クラスもあったり、
廊下を歩く度、知らない人ばかりということが
新鮮でたまらなかった。
―これから、どんな学生生活が始まるかな?―
:08/10/27 04:44 :SH705i :JJ7BuDlA
#4 [あかり]
ある日の掃除時間。
私たちの班の区域は、
一年生の棟と二・三年生の棟を繋ぐ
渡り廊下前の教室だった。
私ともう一人の女の子は、
廊下掃除をすることになった。
:08/10/27 04:49 :SH705i :JJ7BuDlA
#5 [あかり]
「昨日のテレビ、
本当に面白かったよねー。」
他愛もないことを二人で話ながら、
床を掃いたりしていた。
「渡り廊下も、うちらが
しないといけないのかな?」
もう一人の子が言う。
:08/10/27 04:52 :SH705i :JJ7BuDlA
#6 [あかり]
担当となっている廊下は、
掃除時間内の半分に満たないほど
範囲が小さくて、
なんだか物足りないほどだった。
私は渡り廊下の部分も
掃除することにした。
:08/10/27 04:55 :SH705i :JJ7BuDlA
#7 [あかり]
時々、渡り廊下を
行き来する先輩たちとすれ違う。
きっと、掃除区域までの移動のために。
二・三年生とは接触する機会が
全然なかったから、
色んな人が見れたのは嬉しかった。
:08/10/27 05:00 :SH705i :JJ7BuDlA
#8 [あかり]
ある日、いつものように
二人で半分ずつ
渡り廊下を掃いていっていた。
そして、いつものように
見知らぬ先輩たちが行き交う。
:08/10/27 05:03 :SH705i :JJ7BuDlA
#9 [あかり]
そして、今まで見たことのない
男の先輩二人組が歩いてきた。
一人の人はごみ袋を持っていた。
私はふっと
その人の顔を見た。
:08/10/27 05:07 :SH705i :JJ7BuDlA
#10 [あかり]
その時、一瞬自分の中で
時間が止まった。
ありがちな表現しかできないけれど、
妙な感覚に陥った。
―あの人はもしかして…―
:08/10/27 05:10 :SH705i :JJ7BuDlA
#11 [あかり]
話は遡って、
それは私が中学三年生の時。
受験シーズン真っ只中。
そろそろ、志望校を絞らないと
いけない時期だった。
私は担任の先生と
二者面談をしていた。
:08/10/27 05:12 :SH705i :JJ7BuDlA
#12 [あかり]
この学校がいかに
小規模だと思わせるくらい、
こじんまりとした保健室。
二者面談はここで行われた。
「今日はお前に
見せたいものがあって
持って来た。」
先生が話を切り出した。
:08/10/27 05:17 :SH705i :JJ7BuDlA
#13 [あかり]
中学から高校に進学するにあたって、
私は一つ、大きな不安があった。
「もしも、持病が周りに知られて
いじめられたりしたらどうしよう。」
先生にはそう相談していた。
新しい生活、新しい環境、
今までとは大幅に違う、
できるなら、穏便に過ごしたい。
:08/10/27 05:26 :SH705i :JJ7BuDlA
#14 [あかり]
先生は一枚の用紙を、
私の前に置いた。
よく見ると、
誰かの字で書かれた作文用紙だった。
「前の学校で受け持っていた生徒のだ。
今、お前の行きたい高校の一年生だ。」
先生はそう説明した。
:08/10/27 05:30 :SH705i :JJ7BuDlA
#15 [あかり]
手に取る私。
作文なのに、書きなぐったような感じで、
「やんちゃな少年時代を過ごしました」的な
男子を連想させるような雰囲気だった。
言うなれば、
作文コンクールとかで、
一目で落選をしいたげられるタイプ。
:08/10/27 05:36 :SH705i :JJ7BuDlA
#16 [あかり]
そんなことをふと想像したが、
作文を読みはじめた私は、
それを詫びたいと思ったほど、
「深刻」という二文字が
脳裏に浮かんだ。
:08/10/27 05:39 :SH705i :JJ7BuDlA
#17 [あかり]
『小さい頃に両親が離婚して、
それからはお母さんと二人暮らし。
どうしてこの世には
争いや殺し合いなどがあるのだろうか
僕は貧乏だけど、とても幸せです。』
自分なりに要約すると、
こんな感じの内容だった。
:08/10/27 05:44 :SH705i :JJ7BuDlA
#18 [あかり]
「そいつな、両親が離婚した時のストレスで、
頭の髪の毛が脱毛症になったんだ。
学校では、帽子の着用を許可して登校させてた。」
先生はそう作文の人の詳しい所載を教えてくれた。
:08/10/27 05:51 :SH705i :JJ7BuDlA
#19 [あかり]
「そうなんだ…」
用紙をじっと見つめたまま、私は悲しげな気持ちでつぶやいた。
字はお世辞にも、上手いとは言い切れないが、
気持ちがこもっているのは伝わっていた。
:08/10/27 05:54 :SH705i :JJ7BuDlA
#20 [あかり]
両親健在、家庭円満で
何不自由なく過ごしてきた私には、
この作文の人の辛さや寂しさなんて、
一生かけても分からない。
でも、きっとこの人も
私と同じように、
自分の病気を周知されるということに
苦しさを感じなから生きてるんだ。
私は、なんとなく
孤独感から解放されたような気分になった。
:08/10/27 06:00 :SH705i :JJ7BuDlA
#21 [あかり]
私はずっと
用紙から目を離さなかった。
途中までしか書いていなくて、
書き方も拙い内容だけれど、
私の中の作文コンクールで、
今まさに、一位に輝いた。
:08/10/27 06:05 :SH705i :JJ7BuDlA
#22 [あかり]
「先生、これ見て。」
私は文章の終わりの近くに
ぐじゃぐじゃと黒で塗り潰してある
毛虫みたいな落書きに気がついた。
「あいつ、提出になっても出さなかったけど、
何か書きたかったんだろうなあ…。」
先生が物寂しげにつぶやく。
書かなかった作文。
書けなかった作文か…。
:08/10/27 06:09 :SH705i :JJ7BuDlA
#23 [あかり]
それから私は、
志望校に合格した。
作文の人と同じ学校―
なんて思うこともないほど
嬉しさと楽しさでいっぱいで、
私は先生とのあのやり取りを、すっかり忘れていた。
ちなみに、先生は
あの作文を見せたのは
私が初めてだったと言う。
:08/10/27 06:13 :SH705i :JJ7BuDlA
#24 [あかり]
そして、今
私の目の前にいる人。
黒いニット帽を被っている。
帽子…
瞬時にあの時の先生の話を思い出した。
―この人が作文の人…!?―
:08/10/27 06:16 :SH705i :JJ7BuDlA
#25 [あかり]
先輩は、もう一人の人と
楽しそうに話しながら
渡り廊下を過ぎていった。
おそらく、教室のゴミ出し当番なのだろう。
先輩の姿が
ずっと脳裏に焼き付いていた。
:08/10/27 06:20 :SH705i :JJ7BuDlA
#26 [あかり]
小説を読む時、
登場人物を自分なりにイメージするように、
私も作品の人の人物像を
頭の中で作りあげていた。
なんとなく、身長は低くて、
がき大将みたいな感じを想像していた。
実際の先輩は、
高身長で、黒ぶち眼鏡をかけていて、
雰囲気も騒がしい感じではなかった。
:08/10/27 06:25 :SH705i :JJ7BuDlA
#27 [あかり]
それからは、
掃除時間にその先輩が通り過ぎるのを
楽しみにしながら、やり過ごしていた。
ごみ袋を片手に、
友達と話しながら歩く先輩の姿。
あの人は、どんな人なんだろうか?
私の中で興味が湧いた。
:08/10/27 06:30 :SH705i :JJ7BuDlA
#28 [あかり]
「あの帽子被ってる人、
いい匂いするよねぇ〜。」
先輩たちが消えて行った後、そう言い出すもう一人の子。
「うん、私も思った!」
同じ気持ちだったので、
笑顔で答えた。
渡り廊下には、まだ
先輩が身につけているであろう
香水の残り香が漂っていた。
:08/10/27 06:35 :SH705i :JJ7BuDlA
#29 [あかり]
向こうは私の存在を知らないが、
私は先輩のことを知っている。
先輩を初めて見た人は、
「あの人、何で帽子被っているんだろう?」
と、きっと疑問に思う所を、私は理由をだいたい把握している。
なんとも不思議な関係だった。
:08/10/27 06:47 :SH705i :JJ7BuDlA
#30 [あかり]
月も変わり、
掃除区域も変わった。
私のささやかな楽しみは、
区域移動とともになくなった。
「まあ、あの先輩が
作文の人って分かっただけでいいか。」
:08/10/27 22:43 :SH705i :JJ7BuDlA
#31 [あかり]
梅雨に入り―
やがて、台風の時期になった。
私の住んでいた離島は、
一度停電が起こると、ひどい時は一日中電気がつかない。
台風が接近した日曜日―
私は暗闇の中、通常の生活が送れることをじっと待っていた。
:08/10/27 22:51 :SH705i :JJ7BuDlA
#32 [あかり]
真っ暗な部屋で、退屈しのぎに
停電に備えて、あらかじめ充電しておいた
MDウォークマンを聴く。
孤独に耐える時間。
あの先輩を初めて見た時のことを思い出す。
:08/10/27 22:58 :SH705i :JJ7BuDlA
#33 [あかり]
なんとなく思い浮かんだ、のではなく、
あの人の姿を思い出したかった。
「先輩は、この台風をどう過ごしてるかな?」
「大丈夫かな、心配だな…」
:08/10/27 23:02 :SH705i :JJ7BuDlA
#34 [あかり]
脳内に、ひたすら好きな音楽が流れてくるが、
頭の中は気が気ではなかった。
あの作文用紙一枚で、
先輩の心の中の闇を見たように感じた。
「ずっと、寂しかったんだろうな…。」
:08/10/27 23:11 :SH705i :JJ7BuDlA
#35 [あかり]
「そういえば私、
あの先輩の名前を知らないなあ。」
「普段はどんな風に過ごしてるんだろう?」
「何かクラブはやっているのかな?」
もはや台風ということを忘れるくらい、
色んな疑問が、頭の中をよぎった。
:08/10/27 23:14 :SH705i :JJ7BuDlA
#36 [あかり]
そうして、夜中には家に明かりが戻り、
押し寄せてきた台風も、通り過ぎていった。
「また明日から学校だあ。」
:08/10/27 23:17 :SH705i :JJ7BuDlA
#37 [あかり]
それから私は、
先輩と同中だった子に、
先輩のことを尋ねてみた。
「帽子の先輩」といえば、
すぐに相手は頷いた。
「塩見 タクロウって人でしょ。
私、テニス部で一緒だったから。」
:08/10/28 03:32 :SH705i :dtU0GNBU
#38 [あかり]
タクロウ先輩…
テニス部…
新たな情報が、頭の中で交錯する。
自分の中で神秘めいていた存在である先輩に
少し近づけたみたいで嬉しかった。
:08/10/28 03:36 :SH705i :dtU0GNBU
#39 [あかり]
そして、色んな人からの情報により、
今は帰宅部らしい。
私は先輩のことを少しずつ知る度、
彼と話してみたいと思うようになった。
しかし同中でない、クラブの接点がない人と
交流を持とうとするのは、なかなか厳しいものである。
:08/10/28 03:41 :SH705i :dtU0GNBU
#40 [あかり]
ある月の掃除区域―
私たちの班は、進路指導室の担当になった。
渡り廊下の時と同じように、たくさんの人が行き交う。
外にあるごみ捨て場に行くには、
ここを通らなければならない。
:08/10/28 06:51 :SH705i :dtU0GNBU
#41 [あかり]
班の子と、笑い合いながら
清掃をする私。
皆で廊下に立って、雑談をすることが多かった。
:08/10/28 06:57 :SH705i :dtU0GNBU
#42 [あかり]
するとその時―
ごみ袋を持った友達と、
一緒にいるタクロウ先輩がこっちに近づいてくる。
ドキドキドキドキ…
:08/10/28 07:02 :SH705i :dtU0GNBU
#43 [あかり]
すれ違った時、それは今までより先輩を近くに感じて、
私の心臓は最高潮に高鳴った。
そのままごみ捨て場まで向かう二人。
私は先輩の後ろ姿を、
ずっとずっと見ていた。
:08/10/28 07:05 :SH705i :dtU0GNBU
#44 [あかり]
すれ違ったり、遠くの方で先輩の姿を見かけたりすれば、
ときめいたり、幸せを感じる日々が続いた。
隣のクラスの雪依ちゃんという子と仲良くなり、
お互いに自分の気になる人を打ち上けたりした。
:08/10/28 07:17 :SH705i :dtU0GNBU
#45 [あかり]
「私は、テニス部のマネージャーしてたら、
2年の和臣先輩って人が
気になるようになって来たの。
あかりちゃんは?」
「私は、ほら帽子被ってる先輩いるじゃん?
塩見タクロウ先輩。
何か、憧れちゃうな…」
:08/10/28 07:21 :SH705i :dtU0GNBU
#46 [あかり]
私自身、自分の体にコンプレックスを感じていて、
性格も内気な為、前へ前へと出ることが、とても苦手である。
それに対してタクロウ先輩は―
私から見る限りでは、
友達もたくさんいるみたいだし、
ムードメーカーという感じもしていた。
:08/10/28 07:29 :SH705i :dtU0GNBU
#47 [あかり]
私にはそんな先輩の姿が、
とても輝いて見えた。
辛い過去を乗り越え、
卑屈にならないで、周りに笑顔を配っている。
先輩は今の私の鏡だった。
:08/10/28 07:31 :SH705i :dtU0GNBU
#48 [あかり]
「ああ、あの人なら分かるよ。
あれ?和臣先輩と塩見先輩って同中じゃなかったかなあ?
それに、中学なら同じテニス部だったんじゃない?」
「本当?
私、あの人と話してみたいなあ。
自分の気持ちを伝えてみたい。」
:08/10/28 07:36 :SH705i :dtU0GNBU
#49 [あかり]
「そっかあ。
うーん、何かいい案はないかなあ。」
「私、手紙書いてみようかな!
言いたいことも簡潔にまとめられるし、
気持ちも伝わるだろうし。」
「うん、それいいかもね!
直接渡すのが恥ずかしかったら、私、和臣先輩に頼んでみるよ!」
:08/10/28 07:39 :SH705i :dtU0GNBU
#50 [あかり]
「本当に?
ありがとう。すっごく助かるよ〜!」
「いいのいいの。
それに私も、和臣先輩と話せるチャンスになるしね(笑)」
「お互い様々って訳だね(笑)」
:08/10/28 07:42 :SH705i :dtU0GNBU
#51 [あかり]
家から帰って―
夕飯や宿題、お風呂を済ませ、
先輩に手紙を書くため、机に向かう。
あれこれ迷んで、ハローキティのレターセットにすることにした。
少しでも乙女心を演出したかったのだ。
:08/10/28 07:48 :SH705i :dtU0GNBU
#52 [あかり]
「Dear タクロウ先輩、っと…」
色つきボールペンで、カラフルに仕上げる。
文の終わりには絵文字や顔文字を書き、精一杯かわいらしくする。
:08/10/28 07:52 :SH705i :dtU0GNBU
#53 [あかり]
学校の帰り、電車や船の中で携帯の新規メール機能を使って
作成しておいた手紙の内容を書き込む。
「先輩は私の憧れです」
「これからも、体調などには気をつけてください」
私の思いは、一枚半にぎっしり詰まった。
長すぎず、短すぎず、ほどよいと思った。
:08/10/28 07:58 :SH705i :dtU0GNBU
#54 [あかり]
「遂に、憧れの先輩に
私の存在が知られるんだあ…。」
布団の中で、
手紙が渡った後のことを考える。
「ああ、でも
なんて思われるかなあ…。
もしかしたら、
不快な思いさせるかも知れないや…。」
:08/10/28 08:03 :SH705i :dtU0GNBU
#55 [あかり]
手紙の内容には、
あの作文を読んだことを書いてある。
これこそが私が先輩に憧れを抱いた第一歩だから、
書かざるを得なかった。
知らぬ間に、自分の家庭内の事情と、病気の原因を知っている者がいる。
嫌な思いをさせないだろうか。
眠りに就く前で、心配になった。
:08/10/28 08:07 :SH705i :dtU0GNBU
#56 [あかり]
「でも、私が先輩の存在で勇気を貰ったから、
今度は私が先輩の力になれたらなあ。」
ベッドから起き上がり、
明かりをつけ、机に置いていた手紙をかばんの中に入れた。
「先輩がこの手紙を読んで、何か励みになれたらいいな。」
:08/10/28 08:11 :SH705i :dtU0GNBU
#57 [あかり]
次の日―
休み時間の合間に、隣のクラスに行き、雪依ちゃんに昨日書いた手紙を渡した。
「じゃあ、これを和臣先輩に渡してもらうように頼んでおくね。」
:08/10/28 08:14 :SH705i :dtU0GNBU
#58 [あかり]
ドキドキドキドキ…
授業中も緊張の波は鎮まらなかった。
「ああ、どうしよう。
今時ラブレターなんて、馬鹿にされるかな。」
昨日の決意も、いざ実践となると
膨らんだ風船を針で突いたように、一瞬でパンッと割れた。
:08/10/28 08:19 :SH705i :dtU0GNBU
#59 [あかり]
学校から帰って―
まだ緊張はおさまらなかった。
むしろ、今まで以上に大きくなった。
「手紙、もう先輩に渡ったのかな…。」
その時、メールの着信音が鳴った。
「あっ、雪依ちゃんだ。」
:08/10/28 08:22 :SH705i :dtU0GNBU
#60 [あかり]
「ごめぇん!
やっぱり和臣先輩をいざ前にすると渡せなかったよぉ(;_;)
ごめんねっ ―雪依―」
「ううん、全然気にしないで!
むしろ、やっぱり渡さなくて良かった。
やっぱり手紙なんて、恥ずかしいや〜(>_<) ―あかり―」
:08/10/28 08:26 :SH705i :dtU0GNBU
#61 [あかり]
「本当?
役に立たなくてごめんなぁ…。
先輩とお近づきになれるといいねo(^-^)o ―雪依―」
「うん。
手紙は自分で処分するね。
うん、今はそれが一番の望みだけど、
やっぱりいざ目の当たりにすると、動転しちゃうっ(+_+;) ―あかり―」
:08/10/28 08:31 :SH705i :dtU0GNBU
#62 [あかり]
「そんなもんだよぉ。
私も部活で、和臣先輩といつま全然話せないもん〜(T_T) ―雪依―」
「お互いがんばろうね!
今日は無理なお願いしちゃって本当にごめんね。
じゃあ、また明日☆ ―あかり―」
:08/10/28 08:34 :SH705i :dtU0GNBU
#63 [あかり]
良かった、良かった。
なんとなく安堵した。
「やっぱり急には怖いや。
今は遠くから見るだけで満足、かな…。」
私の生まれて初めてのラブレターは、ごみ箱行きとなった。
:08/10/28 08:39 :SH705i :dtU0GNBU
#64 [あかり]
時は過ぎ、文化祭の季節となった。
違うクラスにも友達がたくさん出来て、
手紙失敗事件のことも忘れていた。
そして、最終日の体育祭当日―
:08/10/28 08:46 :SH705i :dtU0GNBU
#65 [あかり]
グランドを移動してる時だった。
中央にタクロウ先輩の姿。
思わず目が見開く。
先輩と目が合ってしまった。
初めてのことだった。
:08/10/28 08:51 :SH705i :dtU0GNBU
#66 [あかり]
その時、私の中で
色んな思いが駆け巡った。
「私は向こうのことを知ってるのに、
向こうは私のことをこれっぽっちも知らない。
やっぱり今の状況は、寂しいな…」
「よし、やっぱり何か行動に移そう。」
:08/10/28 08:55 :SH705i :dtU0GNBU
#67 [あかり]
「これもまた、あの作文から始まった、一つの運命に違いない。」
「ん。まてよ、作文…?
そうか、最初からこうすれば良かったんだ!」
私は頼るべき人を思い出した。
:08/10/28 09:00 :SH705i :dtU0GNBU
#68 [あかり]
好きな人や友達のことを誰かに相談する時、
相手が共通の知り合いであればあるほど、
話はスムーズに進んだり、よりよい方向へと導く。
「あいつはあんな奴だから、こういう行動を取ればいいんじゃない?」
納得する回数も多い。
:08/10/28 09:05 :SH705i :dtU0GNBU
#69 [あかり]
帰りの船の中―
私はある人にメールを送信した。
「先生、久しぶり。
先生がいつか私に教えてくれた人、塩見タクロウって人でしょ?
学校でたまに見かけるよ。 ―あかり―」
中3の時の担任の先生である。
:08/10/28 09:09 :SH705i :dtU0GNBU
#70 [あかり]
「うん、そうだ。
でも、あんまりジロジロ見ないでやってくれないか。
あいつも、気にするだろうからさ。 ―日下部―」
「ううん、そうじゃなくて。
私、あの人と話してみたい。
私があの人の姿を見て、
強いパワーを貰ってるんだってこと、教えてあげたいな。 ―あかり―」
:08/10/28 09:13 :SH705i :dtU0GNBU
#71 [あかり]
「お前はやっぱり偉いなあ。
じゃあ、お前からあいつに先生のアドレスを教えておいてくれないか?
あいつからメールがきた時、お前のお前を伝えておくよ。 ―日下部―」
「うん、分かった!
ありがとう先生。
明日、先輩の教室まで訪ねてみる! ―あかり―」
:08/10/28 09:17 :SH705i :dtU0GNBU
#72 [あかり]
次の日―
午前から曇り空で、
午後からは雨が降り出した。
放課後になり、
二年の棟に一人で行くのは勇気がいるので
クラスメートに同行してもらうことにした。
:08/10/28 09:25 :SH705i :dtU0GNBU
#73 [あかり]
渡り廊下の窓から見る外の景色―
学校内全体も、いつもより暗く感じた。
手には先生のアドレスを書いた紙。
いつもより高い私の体温が、紙に伝っていく。
:08/10/28 09:26 :SH705i :dtU0GNBU
#74 [あかり]
初めて来た二年生の棟―
新鮮と、緊張が走る。
学年毎で、上履きの色が違っていたから、
女子の紫色、男子の茶色のそれを見るほど、
心臓の鼓動は大きくなった。
「きゃあ、どうしよう…!」
:08/10/28 09:33 :SH705i :dtU0GNBU
#75 [あかり]
近くを通りかかった、女の先輩に声を掛けてみた。
「あのっ、塩見タクロウ先輩はいますか?」
女の先輩は「ちょっと待ってね」と言って、
先輩の教室まで行き、様子を見てくれた。
:08/10/28 09:38 :SH705i :dtU0GNBU
#76 [あかり]
「タクロウ君、居る?
え、今5組の方?」
女の先輩の声が聞こえる。
そして、女の先輩は今度は5組の教室のドアを開け、「タクロウ君、後輩が呼んでる。」
と、説明してくれた。
私とクラスメートの子は、ちょうど5組の教室の前で立っていた。
:08/10/28 09:43 :SH705i :dtU0GNBU
#77 [あかり]
ドックン、ドックン…
遂に、先輩と初めての会話の時。
ドアから高身長の先輩が、にょきっと出てきた。
私はクラスメートの子の少し後にし、
先輩の前まで歩いて行った。
:08/10/28 09:46 :SH705i :dtU0GNBU
#78 [あかり]
151センチの私と、
180近い先輩。
私は顔を上げて先輩と対面した。
「あ、あの…
中学校の日下部先生がメールするように、って…。」
アドレスを書いた紙を渡す。
:08/10/28 09:49 :SH705i :dtU0GNBU
#79 [あかり]
「へぇ!?
日下部先生がぁ?
ほーい。
分かりました〜。」
想像していたよりも、ひょうきんに受け答えされて
驚きはあったが、嫌な顔をされなくて幸いだった。
私の少ない説明でも、特に何も考えず疑わず、
即答する先輩を面白いと思った。
:08/10/28 09:53 :SH705i :dtU0GNBU
#80 [あかり]
「ああ、緊張したあ〜。」
教室まで戻りながら、クラスメートの子と、
さっきのやり取りのことを思い返す。
「でもあの先輩、優しそうだったね。」
「…。
うん!そうだね!」
着いてきてもらったのが、この子で良かったと思った。
:08/10/28 09:58 :SH705i :dtU0GNBU
#81 [あかり]
数日後―
日下部先生にメールを送信してみることに。
「アドレス書いた紙、渡したよ。
どう?連絡あった? ―あかり―」
「うーん、まだきてないなあ。 ―日下部―」
:08/10/28 10:13 :SH705i :dtU0GNBU
#82 [あかり]
「向こうから連絡なし、か…。
うーん、あの性格的に、
これからも送りそうにはないなあ。」
メール作戦も、半ば失敗に終わった。
でも私にとって、少しでも先輩と会話できたこと、
少しでも私の存在を知られたことが、何よりも大きかった。
:08/10/28 10:19 :SH705i :dtU0GNBU
#83 [あかり]
次の月―
掃除区域が、また先輩を初めて見かけた場所となった。
前と同じ子で、渡り廊下を清掃する。
―先輩がまた通るといいな…―
:08/10/28 10:22 :SH705i :dtU0GNBU
#84 [あかり]
私の願いが叶ったのか、
友達と一緒にいる先輩がやって来た。
前と違う所は、
先輩も少なからず私のことを認識している、という所である。
自然と先輩と目が合う。
すぐに向こうからフッと視線を逸らされる。
:08/10/28 10:28 :SH705i :dtU0GNBU
#85 [優]
:08/10/28 10:36 :SH904i :EpRRxK2o
#86 [あかり]
優さん
感想ありがとうございます!
とても嬉しいです<(__)>
よかったらこれからも見ていって下さい!
:08/10/28 13:20 :SH705i :dtU0GNBU
#87 [あかり]
渡り廊下は行き来の場、だから
少なくとも二回は先輩が通る。
先輩が通り過ぎていった後は、また戻ってくるその時を、
心の中はドキドキしながら、外見ではそれがばれないように
床を掃きながら待ち構えていた。
:08/10/28 13:30 :SH705i :dtU0GNBU
#88 [あかり]
目が合ったり、
敢えて相手を見ないようにしたりしたり…
言葉を交わさないやり取りを、繰り返していた。
そんなささやかな日々を繰り返していた時だった。
:08/10/28 13:39 :SH705i :dtU0GNBU
#89 [あかり]
いつものように、もう一人の子と半分ずつ床を掃いていた。
二年生の教室がある方から、騒がしい声がする。
:08/10/28 13:45 :SH705i :dtU0GNBU
#90 [あかり]
「ワ〜キャハハハハ!」
二年生の男子数人が、卓球のピンポン球を使ってサッカーをしていた。
その範囲は、私たちが清掃している渡り廊下まで広がった。
その中に、タクロウ先輩の姿もあった。
:08/10/28 13:49 :SH705i :dtU0GNBU
#91 [あかり]
一人の人がタクロウ先輩にパスを渡した。
タクロウ先輩が球を蹴りながら走る。
方角的に、私のいる方へとそれは向かっていた。
先輩が私とぶつかりそうになる。
:08/10/28 13:51 :SH705i :dtU0GNBU
#92 [あかり]
「あ!ごめ〜ん!」
私にそういいながら、衝突になりそうになる寸前で、走る方向を変えた先輩。
先輩たちはサッカーに夢中で、そのまま楽しそうに走り続けて、渡り廊下を後にした。
「びっくりしたあ…。
ぶつかるかと思ったあ…。」
動悸がずっと止まらない。
「先輩、すごく近かった…。」
:08/10/28 13:57 :SH705i :dtU0GNBU
#93 [あかり]
先輩からしてみたら、
何気ない一瞬だとしても、私にとっては嬉しかった。
こんな小さな出来事でも
「先輩に話しかけられた」と私の中でカウントされる。
:08/10/28 15:30 :SH705i :dtU0GNBU
#94 [あかり]
「ずっと掃除区域がここだったらいいのになあ…!」
実現しないと分かっていても、
中高生らしい願いを抱いていた。
床をモップで磨き上げれば上げるほど、
私の先輩に対しての思いはより輝きを増した。
:08/10/28 22:07 :SH705i :dtU0GNBU
#95 [あかり]
全校集会があると、必死で先輩の姿を探したり、
二年生たちが教室移動してるのを見かけると、その中に先輩の姿もないか目で追ったり…
今の私には、これ位が精一杯で、これ位で十分満足だった。
:08/10/28 22:12 :SH705i :dtU0GNBU
#96 [あかり]
季節もすっかり冬になり―マフラーやカイロが手放せなくなった。
私はその日の昼休み、
生理痛のため保健室へと向かった。
冷たい廊下を体を少し丸めた状態で、
早歩きで歩いた。
:08/10/28 22:44 :SH705i :dtU0GNBU
#97 [あかり]
「失礼します。」
伏し目がちにドアを開けたが、正面を向いてなくても、室内の状況が理解できた。
タクロウ先輩と先輩と仲良しの男の先輩二人が、ストーブを囲って座っていた。
その近くに立っている保健室の先生。
:08/10/28 22:48 :SH705i :dtU0GNBU
#98 [あかり]
とりあえず私は、ドアの近くのソファーに座った。
四人からは離れた距離にいる。
性格が明るくて、イケてる感じの子なら、
笑顔で一緒に暖まろうと近くに行くのだろうが、
至って普通で、喋りもうまくない私にはそんな勇気は毛頭なかった。
:08/10/28 22:55 :SH705i :dtU0GNBU
#99 [あかり]
私は生理痛の時や、精神的に嫌なことがあった時、保健室を利用する。
その度に二・三年生の男子が
明らかにサボりにここを利用しているのが見受けられる。
タクロウ先輩やその友達たちも、その代表だった。
先輩たちはいうなれば、学年の中では派手で目立つ方だった。
:08/10/28 23:05 :SH705i :dtU0GNBU
#100 [あかり]
「君さあ、あの離島出身の子だよね?」
その中にいた大樹先輩という人が、私に話しかけてきた。
大樹先輩とタクロウ先輩は、同じ中学の友達である。
話はそこから私の住んでる島のことになった。
:08/10/29 09:13 :SH705i :Ttf/sAA6
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