先輩と旅立ちの唄
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#101 [あかり]
「亮太とかも俺らの中学に越してきたよな〜?」

「あぁーあいつ面白い奴だったわ!(笑)」

身内話で盛り上がる大樹先輩とタクロウ先輩。

オオノリョウタ、顔どんなだったっけ、と頭の中で記憶を辿る私。

⏰:08/10/29 09:19 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#102 [あかり]
先輩たちが話しているように、私の住んでる島から、先輩たちの通っていた中学に転校する人は何人かいた。

私の同級生も、結構な数が島を後にした。

島から来た人は皆キャラクターが個性的らしく、
すぐにその中学のムードメーカーになるみたいだった。

⏰:08/10/29 09:23 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#103 [あかり]
ちなみに、島の同級生で、この高校に入学してきたのは
私と翔馬という男の子二人だけ。

大樹先輩と翔馬は同じサッカー部で
私もそこからちょくちょく大樹先輩の話は聞いていたから
この時初めて会話したが、彼の顔と名前は一致していた。

⏰:08/10/29 09:31 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#104 [あかり]
離島出身ということで
珍しい目で見られたり、入学当初から噂が立ったりするのは毎年恒例。

「あ、島の子のあかりちゃんだ。」
と、私も知らない同級生や先輩から
話しかけられることも何度かあった。

今回もそのノリだな、と解釈していた。

⏰:08/10/29 09:36 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#105 [あかり]
「あそこの島の方言、怖ぇよなあ〜。」
そう言い出すタクロウ先輩。

「何やったっけ、
『おい』と『わい』かな。」
付け加えて言う大樹先輩。

「えー何それ!(笑)」
これまで二人の身内話で黙っていた順也先輩という人が、
タイミングを狙っていたの如く、話に割り込む。

⏰:08/10/29 09:52 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#106 [あかり]
「自分のことを『おい』、相手を指す時『わい』って言うんぞ。なあ?」
大樹先輩が私の方を見て、確認を促してきた。

「あ、はい!…」
私は取り繕った笑顔で答えた。

「アハハハハ!」
改めて笑い出す順也先輩。

タクロウ先輩も、ニヤニヤしていた。

⏰:08/10/29 09:57 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#107 [あかり]
「あかりちゃん、寒いんじゃないの?こっち来たら?」
それまで黙っていた保健室の先生が口を開いた。

話す時、一人だけ遠くというのもあって、そう言ってくれたのだろう。

「いえ…」
小さくポツリと言った。

本当は少し寒かったのだが、先輩たちの近くに寄るのが恥ずかしくて、先生の言葉を遠慮した。

⏰:08/10/29 10:06 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#108 [あかり]
ソファーの上で、足をしっかり閉じて、両手を膝の上に置いていた私。

寒気から体は少しぶるぶる震えていた。

そんな私を、タクロウ先輩が体を全く動かさずじっと見ていた。

後の先輩二人と、保健室の先生は楽しく話をしていた。

「本当は寒いんでしょ?」
と、彼だけには見抜かれてる気がした。

⏰:08/10/29 10:14 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#109 [あかり]
キーンコーンカーンコーン…

昼休み終了のチャイムが鳴る。

「ほら、掃除の場所に行きなさーい!」
先生がストーブの前で、ぬくぬくとくつろいでいた三人に言う。

先生がそう言わないと、
三人は休み時間が終了しても居座りそうな勢いだった。

私はその間にそそくさと自分の教室に戻ろうとした。

⏰:08/10/29 10:22 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#110 [あかり]
保健室を後にして、ドクンドクンと鳴る心臓音のリズムに合わせて廊下を歩いた。

つい先程の、先輩たちとのやり取りが浮かぶ。

「ああ、恥ずかしかった…」

⏰:08/10/29 10:27 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#111 [あかり]
「タクロウ先輩に、島の方言笑われちゃった…」
ショックに感じたことを一番に思い返して、肩を落とす私。

他の人だったら普段は一緒にアハハと笑うのに、
彼だとなると、穴があったら入りたい気分にまでおちいった。

「『怖い』って思うんだ…
確かに可愛くない喋りだよね…」
方言は学校では出さぬまいと、ますます気持ちを固めた。

⏰:08/10/29 10:37 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#112 [あかり]
「あーあ、これが同じクラスの美奈子ちゃんや沙弥だったら
さっきのやり取りをきっかけに、先輩と親しくなれたんだろうな〜…。」

下向き加減で廊下を歩きながら、
その見た目と似たような気持ちを抱いた。

⏰:08/10/29 10:51 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#113 [あかり]
美奈子ちゃんという子は、キャピキャピした明るくて可愛いギャル風の女の子だ。

地毛なのか染めたのかは分からないが、入学当初から茶髪であった。

愛嬌のよい性格のため、ささいなきっかけからでも先輩とも親しくなる。

彼女が知らない男の先輩と話している光景は、何度も目撃していた。

⏰:08/10/29 10:59 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#114 [あかり]
沙弥という子は、学年で一・二番に可愛いと評判で、その噂は三年生の男子にまですぐに広まったほどの子だ。

私とは出席番号が前後で、筆箱を忘れた私にすぐに気がついて、ペンを貸してくれたりと、心持ちも優しい。

天然な部分も見受けられて、男子からも女子からも「可愛い」と思われる愛らしい性格の持ち主だ。

⏰:08/10/29 11:08 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#115 [あかり]
沙弥自身には、中学の時から付き合っている彼氏がいて、
周りの男子にはまるで興味がなさそうだったのだが、
あのルックスと仕草と性格があればなあ〜と、私はいつも彼女を引き合いに出していた。

何もない島からやって来た私には、美奈子ちゃんや沙弥みたいな、華やかな雰囲気が欲しかった。

⏰:08/10/29 11:15 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#116 [あかり]
三学期も残り少し、という時期から、
同じクラスの亜矢子という子を中心としたグループから、
私は少し陰湿な扱いを受けることになった。

「あいつ天然ぶってさあ、絶対性格作ってるっしょ。
うぜーよなあ。」
教室で一人で座っていた私に聞こえるように、亜矢子はそう友達に言った。

⏰:08/10/29 11:27 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#117 [あかり]
亜矢子は自分のルックスに強く自信を持っていて、
自分より目立つ女の子は何より気に食わなかったみたいだ。

「可愛い」というだけで、何の非もない沙弥も、入学したての頃は陰で嫌な思いをされられていたらしい。

⏰:08/10/29 11:32 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#118 [あかり]
離島出身ということもあり、物珍しさから興味を持たれ、誰とでも仲良くなり、
他のクラスの可愛い女子グループから
「あかりちゃん〜!」と声をかけられたりもしていた。

見た目は亜矢子からしたら、私とは比べるほどではないと思っていただろうに、
私のこういう部分が気に入らなかったのだろうかと思ったりした。

⏰:08/10/29 11:41 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#119 [あかり]
まあ、私の性格はいびりの対象とするのには、格好のターゲットだったかも知れない。

物事を強く言えなく、態度もおどおどとしていた。

いつかこんな日がきても、おかしくないなと自分でも納得していた。

⏰:08/10/29 11:46 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#120 [あかり]
亜矢子に逆らえる者は誰もおらず、彼女とわりかし親しい子は、彼女といる時は冷たい目で私を見た。

その中には前タクロウ先輩に日下部先生のアドレスを書いた渡す時、付き添ってくれた女の子もいた。

⏰:08/10/29 11:51 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#121 [あかり]
「塩見先輩に近づこうとしとんのか。目敏い女やな。」
放課後、亜矢子を囲って、教室で数人で話している。

私は遠くの方で、黙々と課題のやり直しをしていたが、
自分の言われていることが気になって全く集中できなかった。

今すぐにでもその場を飛び出したかったが、
私のいない所でもっと陰口を言われる方が嫌で、
聞こえていないフリをして小さな牽制を送っていた。

⏰:08/10/29 12:02 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#122 [あかり]
亜矢子が関わっている時は、私の高校生活は、一気にどんよりとした面持ちになった。

体育の少人数サッカーの授業で、私にパスが回って来た瞬間、その場が一気に沈黙になる。

「プッ!サザエさん(笑)」
亜矢子は陰で、私に変なあだ名をつけていたみたいだった。

⏰:08/10/29 12:09 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#123 [あかり]
私はその頃はもう、早く一年生が終わって欲しくて欲しくて仕方がなかった。

亜矢子やそのグループの子を見る度、ひやひやと怯えていた。

こんな自分を情けないと思う余裕もないほど、私は彼女たちに恐怖を感じていた。

⏰:08/10/29 12:13 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#124 [あかり]
一年生最後のクラスマッチの日―

私は後期の体育委員だったため、係を色々とやらなければいけなかった。

しかし、その日ちょうど熱を出してしまい、それは立っていられないほどだった。

⏰:08/10/29 12:17 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#125 [あかり]
私は早めの段階で、よろよろとグラウンドを後にする。

亜矢子たちにまた後で何か悪口を言われるだろうなと思うと、体調不良とは言え、非を作ってしまった自分が悔しかった。

目頭を熱くし、保健室へと向かう所だった。

⏰:08/10/29 12:25 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#126 [あかり]
玄関の前で、今学校を来たばかりの
他のクラスの城山藍美ちゃんという子と鉢合わせになった。

「あ、藍美ちゃん。おはよう。」
彼女と数回、顔を合わせたことのある私は声を掛けた。

「おはよ。どうしたの?熱っぽいね。」
怪訝そうな顔で、彼女は私に言った。

⏰:08/10/29 12:34 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#127 [あかり]
「うん。熱があって。
クラスマッチだけど早退しようと思って。」

「そっかあ。気をつけて帰ってね。」

「藍美ちゃんは今来たみたいだけど、どこか悪かったとか?」

⏰:08/10/29 12:36 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#128 [あかり]
「ううん。
私、しょっちゅうこんなんだから〜。
欠席・早退もよくするし。」

笑顔でそう藍美ちゃんは言っていたが、
彼女の瞳の奥の悲しげな表情を、私は見逃さなかった。

「そっかあ。
じゃあ、私の分までクラスマッチ、頑張ってね。」
あまり深く話を掘らない方がよいと察知し、
私は彼女とそこでさよならを言った。

⏰:08/10/29 12:41 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#129 [あかり]
「うん。じゃあね。」
彼女は手を振りながら、体育館へと向かった。

彼女の明るい栗色の毛を、日射しが照らした。

「藍美ちゃんって、どこか不思議なオーラを漂わせている存在だよなあ。」
彼女を見る度いつも感じていたことを、私は心の中で再度確認した。

⏰:08/10/29 12:45 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#130 [あかり]
そんなこんなで、
私の高校一年間は終了した。

亜矢子たちのいびりが始まってから、私にはクラスで心から仲が良いと感じる子はいなかった。

やっとの思いで三学期は過ごしていた。

⏰:08/10/29 13:37 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#131 [あかり]
冬休み、先生の送別式の日―

式が終わった後、各教室には、二年次のクラスの貼り紙が出されていた。

黒板の前に、わあっとクラス中の人が集まる。

⏰:08/10/29 15:32 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#132 [あかり]
私も自分の名前がどこにあるのか探した。

「新クラスは二年三組か。」

そのクラスに、亜矢子の名前がないか、恐る恐る見渡してみた。

良かった。彼女はどうやら五組のようだ。

亜矢子と親しかった子も、全員私とは違うクラスになっていた。

⏰:08/10/29 15:39 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#133 [あかり]
ずっと気掛かりだったことが羽を着けたように飛んでいき、私はホッと一息をついた。

二年になれば、もう亜矢子たちを気にしなくて良さそうだ。

わざわざ別のクラスの冴えない女子に
いちゃもんをつけるほど、彼女たちも暇人ではあるまい。

⏰:08/10/29 15:45 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#134 [あかり]
「あ!翔馬も同じクラスじゃん!」
クラス名簿をよく見ると、幼なじみで唯一の同中の男子の名前もあった。

そして、もう少しまじまじと見つめると、
『城山藍美』の名前も、同じクラスの中で発見した。

⏰:08/10/29 15:53 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#135 [あかり]
学校から帰って―
自分の部屋で、ベッドでごろごろしながら、翔馬にメールを送る。

「翔馬!二年になったら、私たち、同じクラスだね☆
よろしく(^O^) ―あかり―」

「おー分かった。よろしくなー。 ―翔馬―」

⏰:08/10/29 15:59 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#136 [あかり]
「城山藍美ちゃんも同じクラスみたいだよ☆
藍美ちゃん、可愛いよね!
私、仲良くなりたいな〜(≧∀≦) ―あかり―」

「えぇー。全然可愛くねーし。
お前のその変なキャラを、あっちは受け入れてくれるかな(*_*)(笑) ―翔馬―」

「相変わらず女子には厳しいね!
失礼ね!絶対仲良くなるんだから! ―あかり―」

⏰:08/10/29 16:06 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#137 [あかり]
私は春休みの間に、パーマをかけたり、化粧の練習をしたりした。

それらのほとんどは、一年次の沙弥の影響だ。

少しでも明るい高校生活を送りたくて、自分なりに努力をしようとした。

⏰:08/10/29 16:16 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#138 [あかり]
そして、始業式―。
新しいクラスの出席番号順で、体育館に列で並ぶ。

各新クラスの先生の発表や、その先生方の挨拶を済ませたりした後、新しい教室へと上がることに。

その途中で、一年間同じクラスになるであろう女の子と目が合った。

⏰:08/10/29 16:22 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#139 [あかり]
「私、木村あかり。よろしくね!」
笑顔で私から話し掛けた。
「あたしは猪谷 尚。よろしくね〜。」

彼女は切れ長の目をしていて、女っ気もさほどなく、ボーイッシュな感じだった。

印象的な彼女の苗字から、私は『いのちゃん』という愛称で、彼女を呼ぶことにした。

⏰:08/10/29 16:28 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#140 [あかり]
「いのちゃん、今日お昼ご飯一緒に食べよう!」

「いいよー。
あたしの同中の子もいるけどさぁ、いい?」

「うん!」

一年の時、結果的にクラスメートに良縁がなかった私は、
いのちゃんという新しい友達が新鮮で、新しい一年間にとてもワクワクした。

⏰:08/10/29 19:36 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#141 [あかり]
二年三組―

見たことのない顔がたくさん。
隣の席に座ってる男子も、一体どんな人物なのか分からない。

そして、この上の階には新三年生たちがいる。
つまり、これからはタクロウ先輩を見れる機会が、
もっと増えると期待しても良いのだ。

私は満面の笑みになりながら、新しい担任の先生が来るのを、席に座ってじっと待った。

⏰:08/10/29 19:45 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#142 [あかり]
ガラッ。
先生が教室に入る。

私語を止めたり、姿勢を正すクラス一同。

「これから一年間、よろしくな。」
簡単な挨拶を終わらせた後、初めてのクラスでの出欠を取る。

「…木村あかり。」
「はい。」

⏰:08/10/29 19:50 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#143 [あかり]
「城山藍美。」

先生がそう呼ぶが、返事が聞こえない。

クラスに一つだけ、空白の机があって、
どうやら彼女の席のようだった。

「城山は欠席か〜。」
先生が名簿にチェックのようなものをつける。

「藍美ちゃん、今日来てないのかぁ。」
ふと窓の景色を見ると、雲一つない綺麗な空だった。

⏰:08/10/29 19:57 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#144 [あかり]
昼休み―
私といのちゃんと彼女の同中の子の三人は、
今いる棟と、目の前にある理科棟とをつないでいる、
外の渡り廊下で昼食を取ることにした。

ふと見上げると、三年生の階がよく見える。
今日の青い空に続いて、最高の景色だと思った。

⏰:08/10/29 20:05 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#145 [あかり]
「ねぇ、いのちゃん。
昼ご飯はいつもここで食べようよ!」

「うん、いいよー。
ここあったかいしねー。
光合成しそうな勢いだわー。」

「アハハ!
いのちゃん植物じゃん!(笑)」

もしかしたら、先輩の姿を見れるかも知れない楽しみと、
仲の良い友達とご飯を食べる二つの楽しみ。

私は久しぶりに、お母さんのお弁当の美味しさを実感した。

⏰:08/10/29 20:11 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#146 [あかり]
掃除の班も、いのちゃんと一緒で、心細さもなく、
そこからまた友達の輪がどんどん広がっていった。

帰りの船の中では、翔馬と「今日、教室でこんなことがあったよね」とか、
それぞれ友達間であった出来事などを話して、笑いあっていた。

⏰:08/10/29 20:17 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#147 [あかり]
「去年のクラスの雰囲気とは全然違うな!
一年の時は…亜矢子たちが怖くて、自分の教室なのに、居づらかった。

新しいクラスは、いのちゃんっていう心強い友達も出来たし、
翔馬もいるし、皆優しいし。
本当に良かった良かった。」

⏰:08/10/29 20:20 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#148 [あかり]
ある日の休み時間。
私はいのちゃんの席までいって、
前の席の人のイスを借りて彼女と二人で話していた。

「いのちゃんは好きな人とかいるの?」

「いる訳ないよ〜。
あかりちゃんはー?」

⏰:08/10/29 20:28 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#149 [あかり]
「私ね、三年の塩見タクロウ先輩って人のことが好きなんだ!

帽子被ってる先輩だよ、見たことあるかな?」

「ああ、その人なら知ってるよ。
だって、あたしが街行った時、いつもその人が友達とタバコ吸いながら
たむろしてんの見るもん。」

「…え!それ本当!?」

「うん、間違いないよ。」

⏰:08/10/29 20:33 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#150 [あかり]
「そうなんだ…
先輩、タバコ吸ってたりするんだあ…」

「まあ、学校でも真面目そうな雰囲気はないよね。」

「うん。そうかもね。」

いのちゃんの話を聞いて、私はますます先輩との距離を感じた。

⏰:08/10/29 22:00 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#151 [あかり]
私なりに、中高生らしいランクをつけるなら、
タクロウ先輩は派手でイケイケな上層部、
私はせいぜい何の変哲もない中層あたりの部類である。

いつかの保健室での出来事みたいに、先輩や先輩の友達を目の前にすると、
あの人たちは、自分とは別世界にいるように感じて、
緊迫という縄に絡まり、ほどこうとして、もがき続ける自分がそこにいる。

⏰:08/10/29 23:10 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#152 [あかり]
「…私なんか、先輩とは釣り合わないよね。」

「私はあかりちゃんみたいに、その人に特別な感情は抱いていないから、
釣り合うとか釣り合わないとかはわかんない。」

「…。」

「てか、あかりちゃんはどうしたいの!?
塩見先輩と付き合いたいの?」

「へっ!?」

⏰:08/10/29 23:16 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#153 [あかり]
「まあ、そんな風になれたら嬉しいけどさ…。
たぶん、てかきっと無理だよ。」

「ふぅん。
私は未成年で喫煙してるイメージしかないけど、
あの人のどこが良かったわけ。
てか、いつ好きになったの。」

「うーん…。」
私は腕を組み、目を閉じ、人差し指を額に当てて、改めて考えてみた。

⏰:08/10/29 23:22 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#154 [あかり]
私は今までの先輩との出来事を思い返してみた。

それをいのちゃんの前で、ブツブツと喋る。

彼女は時々相槌をしたり、しなかったりしていた。

彼女の質問の答えがなかなか返ってこないからか、
途中から、指遊びをし始めた。

⏰:08/10/29 23:31 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#155 [あかり]
「んー。何で好きなのかは分かんないや。
先輩と出会う前は、私、見た目も中身も、
真面目な人がタイプだと思ってたのにさ。

例えば、同じクラスの高橋くんとか。

あー同級生でしかも同じクラスだったら、毎日見れるドキドキとか楽しみとかあったんだろうなー。」

⏰:08/10/29 23:47 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#156 [あかり]
「そんなこと言ってたら、好きな人すらいないあたしはどうなるのよ(笑)

それに、あかりちゃんはすごいなって思った。

だって、向こうは最初は全然あかりちゃんのこと知らなかっただろうに、
今ではほら、少なくとも存在は認識されてんじゃん。

少しずつであろうと、確実に距離は縮まってるさ〜。」

⏰:08/10/29 23:59 📱:SH705i 🆔:Ttf/sAA6


#157 [あかり]
「…うん!
私も私なりに頑張ってるよね!」

「…急にポジティブになりやがってーこんにゃろ(笑)」

「アハハ!
いのちゃん、これから一年間よろしくね。」

⏰:08/10/30 01:24 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#158 [あかり]
その数日後。
新入生歓迎遠足の日―

私は目的地まで、いのちゃんと二人でお喋りをしながら歩いていた。

途中で、ふと後ろを見ると、一人で歩いてる城山藍美ちゃんの姿が目の前にあった。

⏰:08/10/30 01:29 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#159 [あかり]
「藍美ちゃん!」
私は俯き加減な彼女に声を掛けてみた。

私は彼女と歩く歩幅を合わせながら、何か話題はないかと、頭の中をフル回転にして考えた。

「藍美ちゃんはどんな音楽が好き?」

⏰:08/10/30 01:36 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#160 [あかり]
「んー。そうだな〜、
私はマイナーなアーティストが結構好きかな。」

彼女のこの一言は、私のヨロコビの着火剤となった。

「本当っ!?
私ね、普段インディーズバンドばかり聴いてるんだあ!」

心の中の大きな打ち上げ花火が、パーンッと上がる。

⏰:08/10/30 01:42 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#161 [あかり]
私は中学の頃から、物事の興味や関心が
音楽というものに全てといっていいほど注がれていった。

そして今の自分には、マイナーロックバンドが
絶妙にマッチしているという結果に行き着いた。

高校に入ってからも、通学中や帰りの電車・船の中、
家に帰っても、課題そっちのけでひたすら好きな音楽を聴いていた。

⏰:08/10/30 01:57 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#162 [あかり]
「じゃあ、ビートソルジャーズは知ってる?」

「うーん…?」

「じゃあねじゃあねっ、
ホーム・スウィート・ホームは?」

「うーん…?」

「赤アフロはどうかな?」
「うーん、たぶんわかんないかもー。」

⏰:08/10/30 02:03 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#163 [あかり]
「そっかぁ!
じゃあ、私のオススメの曲をMDに録音した奴をプレゼントするよ〜!」

「本当に?
うん、じゃあ、楽しみに待ってるね。」

「近いうちに学校で渡すね!」

⏰:08/10/30 02:06 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#164 [あかり]
藍美ちゃんとそんなやり取りを交わしていたら、
あっという間に目的地まで到着した。

改めて列の順番に並んでいる時、私はあることに気がつく。

「…ごめーん。
いのちゃんそっちのけで話してた(笑)」

「ハハハ、気にせんでいいよ。
なんかすっごい楽しそうやったね。」

⏰:08/10/30 02:15 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#165 [あかり]
歓迎会の場所は、毎年同じ球技場。

先生の合図で、列を乱さないようにゲートをくぐる。
球場全体に、最近の曲らがBGMとして流れる。

⏰:08/10/30 02:20 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#166 [あかり]
全校生徒が球場内に入り、揃って腰を下ろした。

場内全体がしーんと静まる。

今年の司会者の登場を待っていた。

毎年三年生二人で行われている。
去年は当時生徒会長だった人と、その友達の人だった。

⏰:08/10/30 02:25 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#167 [あかり]
遠くのゲートの方から、
ダァーッと二人組が駆けてくる。

一人は女の人…?と一瞬思ったが、
他校のブレザーで女装している、あの時保健室で遭遇した中にいた順也先輩だった。

そしてもう一人は…
いつもと変わらない格好をしている、タクロウ先輩だった…。

⏰:08/10/30 02:30 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#168 [あかり]
「う、うそ…。
本当に…?」
予想外の出来事に、思わず目を見開く私。

前の方で座っていたいのちゃんが、後ろを振り返って私にアイコンタクトを送る。

⏰:08/10/30 02:34 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#169 [あかり]
「三年五組の小松順也でーす!」

「同じく三組五組の塩見タクロウでーす!」

「今年の司会は僕たち二人です!
最後まで頑張るので、暖かく見守っててくださいね〜!」

⏰:08/10/30 02:37 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#170 [あかり]
順也先輩は、ラグビー部に所属しているが、
学年一小柄で、体型も華奢である。

高身長のタクロウ先輩と並ぶと、凸凹さが際立つ。

順也先輩は、どちらかというと目立ちたがり屋な性格で、特に女子からの視線を気にしている。

今回の司会も、進んで立候補したのか、喜んで引き受けたに違いない。

⏰:08/10/30 17:47 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#171 [あかり]
「で、こないだ…
だったんですよぉっ!」

ウケを狙おうと、自分が面白いと感じた話を、トークをする順也先輩。

全校生徒の間に、ぽつぽつと笑いが起こる。

「そろそろ場も和んで来たようですねっ!(笑)
じゃあ、これからもっと盛り上がるように、
ショートコントをしたいと思いま〜す!」

⏰:08/10/30 18:05 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#172 [あかり]
「ショートコント『エロエロの実』。」

大人気少年漫画の、パロディーのようだった。

「あ!あそこにエロエロの実が落ちてるぞ!」

「食べてみようぜー!」
「食べてみようぜー!」

パクっ。

⏰:08/10/30 18:09 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#173 [あかり]
「うっ…うぅ…。」
「う…う…。」

苦しむそぶりを見せる二人。
やがで、覚醒のシーンに入る。

「アーンアハーン。」
「アンアンアンアン。」
お互い向き合って、性行為のポーズをし出す二人。

場内からは、ドッと笑いが起きる。

⏰:08/10/30 18:16 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#174 [あかり]
私も、タクロウ先輩が下ネタをやっているのかと思うと、軽くショックではあったが、
目の前で楽しそうに、司会をやる先輩の輝かしい姿にずっと釘づけだった。

先輩の頑張ってる姿に応えたくて、精一杯自分も笑ったり喜んだりしようと思った。

⏰:08/10/30 18:22 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#175 [あかり]
クイズやゲーム、色々な企画が行われ、
やがて昼食の時間となった。

司会の二人の解散の合図とともに、
全校生徒が場内のあちこちへと散らばる。

私はいのちゃんの元へと駆け寄った。

⏰:08/10/30 21:51 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#176 [あかり]
「いのちゃんっ。」

「おう、あかりちゃん。
あの先輩、司会やったなあ。」

「うん〜!
もうびっくりしちゃったよ〜!」

「二人の司会、すげー面白かったわ。
あたしも塩見先輩に惚れちゃおうかしら(笑)」

「えぇ〜!
ダ、ダメだよお!」

⏰:08/10/30 21:55 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#177 [あかり]
「嘘々。
あたし、もっと上品な人がタイプだし〜。」

「アハハ。
確かに二人の司会、下ネタも結構あったし、下品なところも多かったね。」

「堅苦しいのよりは断然マシだけど〜。」

⏰:08/10/30 21:59 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#178 [あかり]
「いのちゃんっ。」

「…ん?」

「前さ、いのちゃんが
『先輩のこと、いつから好きになったの。』
って聞いてくれたじゃん。
私、あれからその答えを、ずっと自分なりに考えてたの。」

「うん。」

⏰:08/10/30 22:07 📱:SH705i 🆔:1IWP4LrY


#179 [あかり]
「私ね、先輩を初めて見た時、なんていうか、
時間が一瞬、止まったような感じがしたの。
ううん、止まってた。

外からの音や光も一切閉ざされてさ、
すごく不思議な感覚だった。

私は前もって作文を通して先輩のことを知っていなかったとしても、
私は先輩に恋をしてたと思う。

私は、先輩を好きになる運命だったんだなぁ、って。
さっき、司会をしてる先輩の姿を見ながら、改めてそう感じた。」

⏰:08/10/31 03:01 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#180 [あかり]
「そっか。
なんか、いいじゃん。」

「エヘヘ。
人を好きになるって、自分でもよくわかんないね。

何で、その人じゃないといけないんだろうって思う。」

「理屈じゃないんだよ。」

「あ、理系得意のいのちゃんらしい言葉(笑)。」

⏰:08/10/31 03:07 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#181 [あかり]
その後、歓迎遠足は無事に終了した。

二人の司会ぶりは好評で、帰りながらも、
「楽しかった」「面白かった」の声がちらほら聞こえた。

私も帰りの船の中で、翔馬と今日一日の感想を話し合いながら、「司会が良かった」という意見で合致した。

⏰:08/10/31 06:13 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#182 [あかり]
「あかりちゃん。
はい、これ。」

数日後の休み時間―
席に座って、次の授業の準備をしていたら、
藍美ちゃんから手紙を渡される。

「この間はMDプレゼントしてくれてありがとうね。

私、エンドロールガーデンっていうバンドがすごく好みだったかな。

お礼にあかりちゃんに手紙書きました。」

⏰:08/10/31 06:18 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#183 [あかり]
「わあ!ありがとう!
読んだら返事書くねー!」

「うん。
あ、それから私のことは『藍美』でいいよ。」

「分かったあ!
私も呼び捨てでいいよ!」

「じゃあ、これからも仲良くしようね。」

⏰:08/10/31 06:22 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#184 [あかり]
授業開始のチャイムが鳴り、藍美が自分の席に戻る。

いてもたってもいられなくて、私は授業中にさっき貰った手紙を読む。

お菓子作りが得意だから、MDのお返しに何か焼くよ、とか、今度遊びに行こうなど
かわいらしい字で書かれていた。

私は生まれて初めての『手紙交換』に、嬉しさでいっぱいになった。

⏰:08/10/31 06:30 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#185 [あかり]
その日から、藍美と私の仲は急速に発展した。

休日に二人で遊びに出かけるようになったり、
メールや手紙交換も頻繁にやり取りしていた。

彼女は欠席することが度々あったので、理由は聞かないものの、
その日一日は、心配と彼女がいない寂しさがあった。

⏰:08/10/31 06:41 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#186 [あかり]
ある日の体育の時間―

休憩中、藍美と二人でお喋りをする。

「よく人から髪染めてるって言われるけどさー、
これ地毛なんだよねー。」

「えっ、そうなんだ!」

彼女の発言に、友達の私自身も驚いた。

学年一明るい髪の毛を手に取り、藍美はじっと毛先を見つめていた。

⏰:08/10/31 06:47 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#187 [あかり]
「こんな髪の色してるからかな、『なんで派手なグループとつるまないん?』っても言われるね。

『君、そこのグループで満足なんだ。』ってね(笑)。」

「私も一年の時、藍美はてっきりハシモト ミヤビちゃんや
イノウエ リカちゃんたちと仲良しなのかと思ってたよ〜。」

⏰:08/10/31 06:55 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#188 [あかり]
「私、ああいう人たち苦手なの。

頭からっぽで、ただキャーキャー馬鹿騒ぎしてるだけの女共って感じじゃん。」

「アハハ。
私はいつもあの人たちのこと、かわいらしくて羨ましいって思ってたから、
そういう発想はなかったけど、自分に劣等感を感じる必要はないのかもね。」

⏰:08/10/31 06:59 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#189 [あかり]
「去年私と同じクラスだった、神田亜矢子分かる?

私さ、陰口とか言われてたりしてさ、あの時は辛かったなあ。」

「ああ、すっごい自分に自信持ってる人でしょ?
でもさー、実際本人ブロッコリーみたいな頭ですから!みたいな〜!(笑)

いかにも性格悪そうだし、嫌いな人も多いと思うから大丈夫だよ。
私もその内の一人だし(笑)。」

「うん!ありがとう!
そうだよね、ブロッコリーだよね!」

⏰:08/10/31 07:13 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#190 [あかり]
二年になって―
去年の孤独感が嘘のように感じられた。

友達と一緒にトイレに行ったり、放課後の教室でのお喋り、
女子高生らしい毎日を送っている。

お日様を見てみた。
いつもより眩しかった。
物事が、良い方向へ進んでいってる気がした。

⏰:08/10/31 07:25 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#191 [あかり]
それからもクラスの雰囲気にも慣れ、従順な日々を過ごしていた。

私はクラスの係決めで、前期の体育委員に立候補していた。
一年の最後のクラスマッチを、最後までやり遂げたかったとの思いで。

放課後―
全学年・全クラスの体育委員の集まりがあった。

⏰:08/10/31 07:33 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#192 [あかり]
ホームルームが早く終わったこともあって、
私は集合時間より早く教室に着いた。

一人の女の子がイスに座っていた。
上履きの色と初々しい表情からして一年生だった。

「こんにちはー。」
私は笑顔で声を掛けた。

⏰:08/10/31 07:43 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#193 [あかり]
「こんにちは!」

彼女の顔をよく見ると、くりくりとした大きな瞳、
発色のよい唇、美少女と思わせる顔立ちをしていた。

「私は一年三組の原 希緒といいます!
先輩の名前は何ですか?」

はきはきとしていて、元気な喋りで私にそう言った。

⏰:08/10/31 07:50 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#194 [あかり]
「希緒ちゃん、珍しい名前だね。

私は二年三組の木村あかりって言います。」

そこから話は広がり、学校は慣れた?とか、
担任の先生は誰?とか希緒ちゃんに聞いていたりしていた。

⏰:08/10/31 07:54 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#195 [あかり]
「あのぅっ、歓迎遠足の時に司会やった、
塩見タクロウ先輩ってチョーかっこいいですよねぇ!」

「…えっ?」
突然、彼女から先輩の名前が出て、私は驚く。

「私、塩見先輩みたいに黒ぶち眼鏡掛けてる人、
もうチョーチョー好きなんですよぉっ。」

希緒ちゃんの大きくて綺麗な瞳が、更にキラキラと輝く。

⏰:08/10/31 08:01 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#196 [あかり]
「うん、そうだね。
かっこいいねっ。」

私は合わせる感じで彼女に言った。

思えば、遠足の司会という大々的なことをしたのだから、
先輩の存在は、全校生徒に知れ渡ったということになる。

⏰:08/10/31 08:08 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#197 [あかり]
例えば、掲示板などにあるの中傷が書かれていたりすると、
違う人もその人に対して、同じように悪く思っている風にとらえてしまう。

これもまた、一つの人間心理らしい。

希緒ちゃんの話を聞いて、一年生の他にも、
あれ以来先輩に片思いをしてる子もいるだろうなと感じた。

私はそこで初めて、先輩には司会をやらないで欲しかったと、ヤキモチを妬いた。

⏰:08/10/31 08:19 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#198 [あかり]
そんなことを思っているうち、
やがて、次々と同じ体育委員であろう人たちが入って来た。

私はそのメンバーの中にいた、ある女の先輩に目をやった。

タクロウ先輩と同じクラスの、江戸川小春先輩という人である。

⏰:08/10/31 08:25 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#199 [あかり]
私は初めて見た時から、彼女の可愛らしさに同性であるものの惹かれ、
学校でその姿を見かける度、ポーッとしてしまう程見入ってしまう。

こんなに近くに小春先輩がいて、同じ空間にいるなんて、
タクロウ先輩の時とは違う、ドキドキ感が少しあった。

⏰:08/10/31 08:32 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


#200 [あかり]
「小春ちゃんの爪、かわいい〜。」
隣にいた女の先輩が言う。

そう言われた小春先輩は、両手を自分の目の前で広げ、「そうかな。」と恥ずかしげに小さな声でいった。

彼女の名前にピッタリの、ピンク色のマニキュアが、全ての爪にコーティングされていた。

私はそれを後ろの席から見ていた。

⏰:08/10/31 08:41 📱:SH705i 🆔:XycnrOFk


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