先輩と旅立ちの唄
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#301 [あかり]
「…諦めないといけないよねー。」

「もし俺が塩見さんの立場だったら、
江戸川さんからお前に乗り換えようとは思わないな(笑)。」

「もーっ!そんなことぐらい私も分かってるってばー!」

「アハハ。まあ後は別れるのを待つとか。」

「タクロウ先輩があの小春先輩に別れを告げるなんて、そんなの想像もつかないっ!」

⏰:08/11/04 04:59 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#302 [あかり]
「そんなのはわかんないぜ。どちらかというと、江戸川さんの方がベタ惚れという線もある。」

「もーっ。悲しくなるからこの話はやめよう…。」

「自分から話したんじゃん。」

「とにかく!これからどうしていいか分からないよ…。

ずっと、好きだったのにさ…。」

⏰:08/11/04 05:04 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#303 [あかり]
「まあ、心の中では何を思っても自由だぜ。」
かばんの中にあった紙パックのジュースに、ストローを挿そうとする翔馬。

「うん…。
私、せめて文化祭で先輩と写真撮りたいな…。」

「それくらいいいんじゃね。」
勢いよくジュースを飲む翔馬。

「ありがと。」
彼に聞こえないように、私は言った。

⏰:08/11/04 05:09 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#304 [あかり]
そして、
文化祭一日目―

この日は一日中、藍美と出店の販売員を担当した。

といっても、私たちがやったことは、カレーの食券を、
希望者にひたすらお金と引き換えに配る係だった。

二人で一つの机に、仲良く座っていた。
その近辺では、主に三年生たちが、焼きそばやかき氷などをせっせと売っていた。

⏰:08/11/04 14:51 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#305 [あかり]
「おーい、二人とも頑張ってるかーい。」

「あっ、いのちゃん。」

いのちゃんが、他のクラスの友達と共に、私たちの様子を見にやって来た。

「いのちゃん、写真撮ろう。あっ、皆で一緒に写真撮ろう。」

藍美にカメラを頼んで、思い出の瞬間をおさめたりしていた。

⏰:08/11/04 14:56 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#306 [あかり]
顔なじみの人や、そうでない人、先生であったり、
色んな顔ぶれが、私たちの元へ食券を求めにやって来た。

そんな時間をやり過ごしている時だった。

「あ、小春先輩だ…。」
江戸川小春先輩が、女友達と出店へ買いにとやって来た。

販売員と親しげに話している所から、先程のいのちゃんたち同様、
きっと様子を見に来たのだろう。

⏰:08/11/04 15:03 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#307 [あかり]
「藍美、小春先輩とタクロウ先輩、付き合ってるらしいよ…。」
昨日名美佳から告げられたばかりの事実を、私は藍美に話した。

「えっ、そうなの?
えーっ、エドコハ先輩は、もっと落ち着きのある人が好きなのかと思ってたー。」

私も、物静かな小春先輩のことだから、
てっきり大人な人じゃないと、合わないのかと思ってた。

タクロウ先輩は、大人びた見た目に似合わない、おちゃらけたやんちゃな人である。

⏰:08/11/04 15:12 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#308 [あかり]
タクロウ先輩のことは、一年の希緒ちゃんや、後輩の怜香みたいに「かっこいい」と思う人もいれば、
「何あれ。」「調子乗ってる。」と、その存在をあまり良く思わない人とに、はっきりと分かれていた。

「エドコハ先輩、あの人でいいんだーっ。」
こんな台詞を吐く藍美も、どちらかというと、後者の立場であろう。

そんなやり取りをしていると、今度はタクロウ先輩が友達と出店の方にやって来た。
方向は、小春先輩のいる所。

⏰:08/11/04 15:25 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#309 [あかり]
「タッちゃん。」
小春先輩が、先輩を愛称で呼んだ。

胸の奥が、ズキンと痛みだした。

少し離れた所にいた私にも、タクロウ先輩が、
明らかに"好きな人の目の前にいる"オーラになっているのが理解できた。

私はその光景を見るのをやめた。

⏰:08/11/04 15:30 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#310 [あかり]
「あっ、エドコハ先輩が塩見先輩にお好み焼きを食べさせてる…。」
ずっと二人の姿を見ていた藍美が言い出した。

私は思わずもう一度目をやった。

ちょうどタクロウ先輩が、私とは背中越しになっていて何も見えない。

でも、先輩はかがんでいた。
小さな小春先輩に、合わせるようにかと。
藍美の言うとおりの映像が浮かんだ。

⏰:08/11/04 15:39 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#311 [あかり]
ズキンズキンズキンズキン…

それからの私は、あまり明るい気持ちではいられなかった。

二人のあれだけのやり取りで、一気に現実を突き付けられたような気分になった。

文化祭一日目は少しブルーな思いと共に終了した。

⏰:08/11/04 15:43 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#312 [あかり]
その放課後―

「あかりちゃん。」
廊下で一人の女子に、声を掛けられた。

「あっ、佑里ちゃん。」
隣のクラスの、新坂佑里ちゃんという子だった。

佑里ちゃんとは、今年からひょんなことで仲良くなり、二人で図書館まで勉強しに行ったり、放課後一緒に行動したりしていた。

佑里ちゃんはおっとりとした外見が好を為すのか、男子に告白されて付き合うことが多かった。

⏰:08/11/04 15:51 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#313 [あかり]
「塩見先輩のドラム姿、かっこよかったよー。
上半身裸だったんだけど、意外と筋肉がついてて、ちょっとときめいちゃったね。」

私がタクロウ先輩を好きなのを知っている彼女は、
自分が知ってる限りの情報をいつも教えてくれた。

私は今日ばかりはそれが切なくなり、先輩に彼女がいることを言った。

佑里ちゃんと小春先輩は、同中という関係であった。

⏰:08/11/04 15:56 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#314 [あかり]
「そっかぁ。あの二人がくっつくなんて、思いそうで思わなかったなあ〜。」

「私、これからどうしたらいいんだろうって…。」

「先輩のことはまだ好き?」

「略奪したいとは微塵も思わないけど…。」

私は応えるのに迷った。
私の先輩に対しての思いは、一体何であったのだろうか?

⏰:08/11/04 16:01 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#315 [あかり]
「いいんじゃない。遠くから見てるだけなら。
全然罪にならないよ。」
昨日の翔馬と似たようなことを、彼女も言った。

「…。」
私は黙って考えた。

⏰:08/11/04 16:04 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#316 [あかり]
「私ね。」
一時して、私は口を開いた。
うん、と佑里ちゃんが相槌をする。

「先輩と出会ってね、こんな人がいるんだあって思った。

皆に笑顔を振り撒いて。
自分は色々と辛く悲しいことがあったのにさ。

明日のステージ発表も、先輩が見てると思うから、一生懸命頑張った。
家でもたくさん練習した。

先輩がいるから、目の前の出来事が明るくなってる部分は多かったな。

私は先輩に、ただ『ありがとう』って言いたい。」

⏰:08/11/04 16:11 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#317 [あかり]
帰りの船の中―
今日一日で起こった、ありとあらゆることが思い巡ってきた。

タクロウ先輩と小春先輩のツーショット、
佑里ちゃんにタクロウ先輩への気持ちを告げた自分。

諦めてしまいたい思いと、諦めたくない思いとが頭の中で交錯する。
考えたくないけど、考えずにはいられない。
世の中は矛盾だらけだ。

「あっかりちゃん。」
そんな私を尻目なのか察したのか、明るく怜香が話し掛けてきた。

⏰:08/11/05 22:28 📱:SH705i 🆔:w2wy4Vzs


#318 [あかり]
「見てこれ。かっこいいよ。」

怜香は、上半身裸でピースをしてる、タクロウ先輩の写メを私に見せてきた。

「これは…?!」

「塩見先輩たちのライブの後に、友達が頼んで撮らせてもらったんだって。
私も転送してもらった。
あかりちゃんに喜ばせようと思って。」

「う、うん…。」
彼女持ちの先輩を直視できないという気持ちよりも、後輩の優しさに泣けてきた。

⏰:08/11/05 22:34 📱:SH705i 🆔:w2wy4Vzs


#319 [あかり]
「あかりちゃんいるでしょ?送るよ。」

「え…えっと…。」

戸惑いが走る。
それを所持する必要があるのだろうか…。
そこに映っている人は、違う女の人のことを思っている。

その時、
『思うくらいならいい』
翔馬と佑里ちゃんから、同時に叫ばれた気がした。

「うん!欲しい!」
私は決意した。
どんな先輩であろうと、やっぱり好きなものは好きだ。

⏰:08/11/05 22:43 📱:SH705i 🆔:w2wy4Vzs


#320 [あかり]
「怜香、付き合うってどういうことだと思う?」

「んー…、好き同士が一緒になるってことなんじゃない?」

「じゃあ、人を好きになることは?」

「私の場合は、あーこの人じゃなきゃダメだって…って感じ。」

⏰:08/11/07 03:06 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#321 [あかり]
「そっか…。」
私は敢えて、怜香にはタクロウ先輩に彼女がいることを言わなかった。
これ以上、人に会う度に説明するのが煩わしくなった。

「自分の好きな人に、彼女が出来たらどうする?」
今の自分の状況を、怜香に投げ掛けてみた。

「えーっ、時と場合によるけど、私だったら辛いけん諦めるかもー。
彼女にも悪いし。」

⏰:08/11/07 03:29 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#322 [あかり]
それが出来たらどんなに楽だろうか、と思った。
私も実際、少し前までは怜香と同じ意見であった。

未だに半分は、今の現実を飲み込めきれない思いが混じっている。

毎日毎日、ただ先輩の姿だけを、追いかけていた。
それが今、何故音を立てて崩れていかなければならないのかが、納得出来ずにいる。

⏰:08/11/07 04:25 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#323 [あかり]
怜香から送られてきたばかりの先輩の写メが、画面いっぱいに表示されている。

今まで、これといって先輩に何をしてもらった訳ではないが、
私はその存在に、深く感謝をしている。

それは彼女の有無一つで変えてはいけない気持ちだと思った。

「思うだけなら、ね…。」

⏰:08/11/07 05:08 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#324 [あかり]
次の日―
文化祭二日目。

学校から少し離れたところにある、公民館で行われた。

この日は、主に二年生のステージ発表であり、それ以外はカラオケ大会や、
ゲスト出演、劇団のお芝居などが披露される。

⏰:08/11/07 05:20 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#325 [あかり]
私たち二年三組の発表は、くじ引きで最後から二番目と決まっていた。

司会のMC、他のクラスの発表を、そわそわした様子で見る。

面白いと思ったものはありのまま笑い、凄いと思ったものには心から拍手していた。

⏰:08/11/07 05:25 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#326 [あかり]
私は去年のこの日を思い出した。

当時の二年四組の発表の時―
種類は分からないが、足でリズムを取るダンスを、クラス全員で踊っていた。


クラスの中央で、恥ずかしがりながら踊るタクロウ先輩。

私には、彼の姿しか映っていなかった。
ふいに涙も出ていた。
心の中で頑張れ、頑張れとひたすら声援を送っていた。

あれからもう一年か―
あの頃は、先輩の名前くらいしか、知らなかった気がする。

⏰:08/11/07 05:32 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#327 [あかり]
私たちの出番の前のクラスがステージに登場した時、
クラス一斉に席を立ち、準備室に直行していった。

「いよいよ、だね…。」

「ホントに。ドキドキするわ〜。」

いのちゃんと通路を歩きながら、高揚を抑えようとしていた。

⏰:08/11/07 07:35 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#328 [あかり]
舞台衣装のはっぴに着替え、自分たちの出番が来るまでの時を過ごしていた。

周りからは「どうしよう〜!」という声や、
数人で固まって、踊りの最終チェックの確認をしあったりしている。

私も藍美や他の子たちと一緒になって、ギリギリまで振付の練習をしていた。

⏰:08/11/07 08:05 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#329 [あかり]
「そろそろ時間です。」
生徒会の人からの、合図が来た。

私たちは、舞台の袖口までと静かに移動した。

会場は暗闇に包まれ、客席もシーンとしている。

遂に、その時が来た…。

⏰:08/11/07 08:10 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#330 [あかり]
今まで、本当に頑張って来た。
土日も学校に来て、体育館や屋外の渡り廊下を使って、皆でとことん練習に励んできた。

タクロウ先輩に、いいものを見せたくて必死でいた自分がいた。

先輩、私の思いはあなたに届きますか?―

⏰:08/11/07 08:16 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#331 [あかり]
まずは、翔馬を中心とした、男子数名で行われるダブルダッチ。

BGMは翔馬の好きなロックバンドの歌だった。

客席から「おぉ!」との歓喜の声や、パフォーマンスが行われる度に、拍手が送られていた。

舞台袖から、私たち女子が祈るように見守る。

⏰:08/11/07 08:20 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#332 [あかり]
縄に引っ掛かってしまうというシチュエーションが、2回ほどあった。

ミスといえばそれまでだが、本当に彼らはよくやってくれたと思う。
練習より、本番の方が上手くいったということが光栄であった。

ダブルダッチの披露が終わった。
いよいよ、私たちのソーラン節の成果を見せる時がやって来た。

⏰:08/11/07 08:29 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#333 [あかり]
主に立ち位置は、翔馬が最前列の真ん中、藍美が同じ列の右端、
いのちゃんが二番目の列の中央よりやや右より、といった具合だった。

私は三番目、最後列の中央であった。
こう決められた時、タクロウ先輩が気づいてくれないのではないかと不安があったが、
下手な踊りを前の方でやるよりマシだと自分に言い聞かせた。

⏰:08/11/07 08:35 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#334 [あかり]
舞台がまた真っ暗に染まった時、皆それぞれ決められた位置へとスタスタと向かっていった。

その時である―
クラスのぽっちゃりした木田くんという男子が、どういう訳か私の位置でスタンバイをしていた。

―ちょ、ちょっと…。

舞台がまたパッと明るくなった。
私は仕方なく、最後列の右端へと急いで移動した。

⏰:08/11/07 08:41 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#335 [あかり]
ああ、きっと私は、今一番目立たないポジションにいる―

元々決められていない配役にいたから、より一層悲しくなった。

自分が目立ちたい訳じゃない。
ただ、タクロウ先輩に、自分のことを見てほしいだけ―。

それでもその思い一つだけで、体いっぱいを使って精一杯ソーラン節を踊る。

突如、それは起こった。

⏰:08/11/07 08:48 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#336 [あかり]
突然、音楽が止まったのだ。
皆の動きが少しずつ止まり出す。

どうして…?
これはまたやり直し…?
私も心の中で困惑した。

すると、客席にいた三年生たちが、「頑張れーっ!」などの声を送ってくれていた。

音楽が再び流れ始めた。
客席も私たちに合わせて拍手を叩いてくれたり、「ソーラン!ソーラン!」と一緒に言ってくれていた。

今、会場全体一つになって、ソーラン節を表現している。

⏰:08/11/07 08:55 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#337 [あかり]
「ヤァッ!」
最後に両手に持っている鳴子を掲げ、大きな声を出し、この場を締めた。

お、終わった…。―

やるだけのことは、全て出し尽くした。

幕が下り、私たちは舞台を後にした。
鳴り止まない観客席からの拍手が心地良かった。

⏰:08/11/07 09:02 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#338 [あかり]
「ちょっと木田くん!私の所で踊ってたでしょ!」

私がステージ発表が終わって、一番にやったことは、
私を一番冴えない所へと追いやった、張本人を責めることであった。

「え、あ、そうなの?」

彼は上手いことはぐらかした。
私には分かる、心の中では目立ちたがり屋の彼は、隅の方で踊りたくなかったのだと。

私は普段、気が小さい為、人に怒鳴ったりという経験があまりないのだが、
この時ばかりは本当に怒りが来た。

翔馬から以前、木田くんは同級生から好かれていないと聞かされていたが、
きっとこういう姑息な行動と態度が、反感を呼ぶのだろう。

⏰:08/11/07 09:12 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#339 [あかり]
でも、ついさっきの出来事ではあるが、過ぎたことはしょうがないのである。

気を取り留め、私は先輩が自分のことを気付いてくれたことだけを願った。
でも、あんな場所じゃ…と、ネガティブにならずにいられない。

「あかりちゃん、お疲れー。」
いのちゃんのいつもの笑顔を見て、あまり深く考えるのをやめることにした。

⏰:08/11/07 09:17 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#340 [あかり]
文化祭二日目も、終盤に迫ろうとしていた。

司会の三年生二人だけとなった。

「最後に、先程のステージ発表の結果を報告します。
1位は、二年五組!」

同時に、ワァー!っという声が広がる。

私たちのクラスもそれとなく拍手をした。

⏰:08/11/07 09:22 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#341 [あかり]
「2位は、二年三組!」

えっ!、という声を私も周りも発していた。
私たちは満面の笑みで、自分たちに歓声の拍手を送った。

やった、2位だ…!
一生懸命にやれば、きっと何事も伝わるんだ。

⏰:08/11/07 09:27 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#342 [あかり]
「おめでとう!」
帰りのホームルームで、先生が賞状を、クラスを代表とした翔馬に渡す。

私たちは、もう一度教室内でその結果に喜んだ。

1位であることに越したことはないが、
音楽が突然止まるというハプニングも乗り越えたクラスの結束力が何よりも大きかった。

⏰:08/11/07 09:32 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#343 [あかり]
「翔馬、うちらやったね!」
帰りの船の中、二人でまた今日一日を振り返る。

「音楽が聞こえなくなった時は、本当どうしようかと思ったよ〜…。」

「俺も、まじでびびったわ。
でも、隣の方見たら、城山さんがそれでも踊り続けよんけん、
『え?やり直しじゃないんだ』って思った。」

「え、そうなの…?」
藍美、一人で凄いな…。

彼女を先頭にしたのは、クラスとして、かなり間違いではなかった。

⏰:08/11/07 09:39 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#344 [あかり]
次の日―
文化祭最終日。
体育祭が行われた。

皆大体、出番は二種目くらいのみである。

生徒会や体育委員、応援団は担当に忙しいが、
その他の人たちは、たいてい暇を持て余している。

⏰:08/11/07 09:46 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#345 [あかり]
私といのちゃんは、応援席で目の前の種目を見ていた。

全校男子で行われた、自由競争を見ている時であった。

最後尾前列辺りに、タクロウ先輩の姿があった。

⏰:08/11/07 09:49 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#346 [あかり]
パンッ。
ピストルの合図と共に、タクロウ先輩たちの走者が駆け出した。

数メートル先に置かれてあるカードをめくり、
マイクに向かってその指示を読み上げる。

「えっと…、校歌を歌う。」
タクロウ先輩の声が校庭中に響いた。

⏰:08/11/07 09:52 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#347 [あかり]
「あ〜あ〜、この胸に〜誓い〜合う〜我が母校〜」
適当にワンフレーズ歌って、ゴールまで走るタクロウ先輩。
見事一位になった。

応援席では笑いの渦が起こっていた。

「やべー、腹痛ぇ。
あの人おもしろすぎるわー。」
隣のいのちゃんも、抱腹絶倒という感じであった。

私も、いつまでも笑っていた。

⏰:08/11/07 09:57 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#348 [あかり]
こうして、体育祭も何なりと終了した。
結果などは対して気にならなかったが、やはり一位がいいというところが本音だ。
私たちの団は、これまた二位であった。

放課後―
まだ体操服のままで、過ごしていた。
私には一つだけ、やり残していることがある。

⏰:08/11/07 10:01 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#349 [あかり]
「名美佳…。」

「ん?何、あかり?」

「あのね、私、まだタクロウ先輩と写真撮ってないんだ…。」

「体育祭の時、声かけなかったの?」

「うん、話し掛けづらくて…。」

⏰:08/11/07 10:04 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#350 [あかり]
「そっかあ…。まだ校内にいるんやない?
きっと今ホームルーム中かも。
うちらのクラス、早く終わったけんさ。」

「う、うん…。」

「私一緒に付き添おうか?
シャッター係がおらんといけんでしょっ。」

「名美佳…、ありがとう!」

⏰:08/11/07 10:08 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#351 [あかり]
私と名美佳は、玄関で先輩がやって来るのを、待ち伏せすることにした。

三年生はホームルームの終わりか遅いのか、下校する人がぽつぽつとしかいなかった。

私たちは話をしながら、ひたすら先輩の登場を待つ。

「髪型整えなきゃ。」
そう言って二人で一旦トイレに入り、もう一度出てきた時だった。

⏰:08/11/07 10:12 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#352 [あかり]
体操服姿で、タクロウ先輩がスタスタ帰ろうとしている、後ろ姿が見えた。

私は思わず名美佳を置いて、近くまで走った。
名前を呼ぼうとするが、緊張からなかなか声が出ない。

しかし、このままでは先輩が帰ってしまう―

⏰:08/11/07 10:15 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#353 [あかり]
「し…、塩見先輩っ!」
やっと言えた。
思っていたより、小さい声になっていた。
それと同時に、背伸びをして、彼の肩を叩いていた。

先輩の名前を名字で呼んだのは、不快な馴れ馴れしさをなくす為である。

「しゃ…写真一緒に撮って下さい…。」
振り返って目の前にいる彼に向かって、言った。

⏰:08/11/07 10:20 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#354 [あかり]
「はい、チーズ!」
名美佳のシャッター合図と共に、二人並んでいる所が、カメラの中に瞬間におさまった。

先輩はそれから、無言でその場を立ち去るかのように、靴に履きかえ、帰っていった。

「ありがとうございます」と言いそびれた私には、
その態度が怖く感じた。

⏰:08/11/07 10:28 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#355 [あかり]
「やっぱり写真なんて、うざかったかな…。
先輩には、小春先輩がいるしさ…。
先輩、さっき一言も話さなかった…。」

「そんなことないよ!
塩見先輩、写真撮る時あかりの身長に合わせて屈んでくれてたし、ピースもしてたよ。
本当に面倒臭かったら、嫌そうな振る舞いすると思うな。」

「う、うん…。」

とにもかくにも、全ては写真が物語っていることであろう。
私は現像するのが、楽しみな、不安でたまらないような気分であった。

⏰:08/11/07 10:35 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#356 [あかり]
「じゃーんっ。」
文化祭も遠い昔のように感じた昼休み、藍美が一枚の写真を見せてくれた。

藍美と彼女の意中の相手の、克次先輩のツーショット写真である。

その周りには彼女の手で、ハートマークが赤い油性ペンで書かれていた。

「克次先輩とも今メールのやり取りしてるんだあ。」
携帯で文章を作成しだす藍美。

⏰:08/11/07 10:43 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#357 [あかり]
「城山さんが、ラクビー部の高島さん?に、手紙渡してる所を見た。」
と、翔馬から聞いていたので、今の状況は、何となく予測は出来ていた。

それにしても藍美は…
タイミングを上手く掴めるというか、良い方向に持っていくのが巧み、という子である。

一年以上思い続けている私よりも遥かに、好きな人に近づききれていた。

⏰:08/11/07 10:52 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#358 [あかり]
「あかりは?
塩見先輩とどうだった?
せめて写真は撮りたいって言ってたじゃん。」

「あ、うん。
撮ったことは撮ったよ…。」

「やったねぇ!
頑張ったじゃん、あかり!

何せ憧れの先輩だもんねっ。」

「うん…。」

"憧れの先輩"か―
一年以上、私は一体何をして過ごしてきたのか…情けなくなった。

⏰:08/11/07 10:58 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#359 [あかり]
ある日の放課後、職員室まで課題のやり直しを提出しに行った時であった。

「木村先輩っ!」
ふいに誰かに呼ばれた気がした。

「あっ…、竜樹くん!」
振り返ると、一年生の阿倍野竜樹くんという人がそこにいた。

私たちは、前期の体育委員の集まりがきっかけで、
学校で会った時は話す程度の仲になっていた。

⏰:08/11/07 18:25 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#360 [あかり]
「お久しぶりっすね!
先輩たち、もうすぐ修学旅行ですよね?
オーストラリアとか、まじスケールでかいっすよね〜!」

「うん、そうだよ!
だから、準備に大忙しなんだ!」

「お土産お願いします!(笑)」

「うん、分かった!
でっかいコアラ連れて戻ってくるわ(笑)」

⏰:08/11/07 18:33 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#361 [あかり]
「聞いてくださいよ、
最近部活で、翔馬さんがやたら俺のこといじるんすよ。」

「アハハ。竜樹くんはいじめがいがありそうやけんねっ(笑)。」

「えーっ、俺結構しっかりしてるっすよ!
そういやぁ、木村先輩、アドレス教えてくださいよ!」

「あ、まだ交換してなかったっけ?
じゃあ私、翔馬から聞いとくね!」

「あざーっす!」

⏰:08/11/07 22:44 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#362 [あかり]
「じゃ、俺、部活行って来ます。」

「うん、分かった!またね!」

一旦、職員室を出ようとした彼が、また振り返る。

「あ、木村先輩!」

「?」

「先輩、最近髪切ったっすよね。カワイイっすよ。」

⏰:08/11/07 22:54 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#363 [あかり]
「あーかーりっ。」

「わぁ!藍美!いたの?」

今度は藍美と鉢合わせ。

「ついさっき来たの。
今の男の子、地元の子?」

「ううん、高校で仲良くなったの。」

「なんか、カッコ可愛いって感じ〜♪
背も高いし、しかもあかり、仲よさ気じゃんっ。」

⏰:08/11/07 22:59 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#364 [あかり]
「うん。面白くて明るい子だよっ!」

「…彼なんかどう?」

「…え?」

「彼を恋愛対象として見るのはどう?」

「…えぇっ!」

⏰:08/11/07 23:03 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#365 [あかり]
「塩見先輩はさ、彼女いるじゃん。
遠くから見るっていうのもいいと思うけど、
私、最近あかり見てて心から笑ってないと思うのね…。

もしかしたら辛いんじゃないかなって。
新しい出会いや予期せぬ出来事が、自分を変えてくれることもあるよ。」

「…藍美。
心配させてたんだね、ごめんね…。」

「ううん、全然。最終的にはあかりが決めることだから。」

「私、私は…。」

⏰:08/11/07 23:09 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#366 [あかり]
「本当にわかんないんだ、自分でも…。

先輩のこと、いっそのこと忘れたいって思っても、
いざその姿を見るとやっぱり出来ないし、
付き合いたいとか思ってないつもりだったのに、
いざ先輩が他の女の人のになると、無償に悲しくて、辛くて、寂しくて…。

私の中にも、嫉妬心があったんだね。」

「うんうん…。
私も克次先輩に彼女がいたら、きっとあかりくらい悩んでると思うよ…。

だからさ、だから、二人で一緒に幸せになろう…。」

⏰:08/11/07 23:15 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#367 [あかり]
「翔馬ー、阿倍野竜樹くんってどう思うー?」

帰りの船の中。
今日は、いつも話題にあまり出ない人を中心とした会話。

「ん?あいつは一年の中じゃ中心人物って感じだし、
いつもふざけたことやってて、皆の笑い誘ってるよ。

俺、あいついつもおちょくってる(笑)」

⏰:08/11/07 23:24 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#368 [あかり]
今日の藍美の苦しそうな表情を思い出す。
私のこと、いつもずっと気にしてたんだ。

片思いなんて、私一人だけの問題かと思ってた。
でも、そうじゃないということが分かった。

客観的に見たら、今の私の恋は、もう終わってるのだろうか?
『思うだけなら勝手』っていうのも、実際、虚しいものがあるよ…。

⏰:08/11/07 23:30 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#369 [あかり]
「翔馬。」

「何?」

「私ね、幸せになりたいの。」

「うん。俺も。」

「だから、もっと視野を広げることにする。」

「うん?」

「タクロウ先輩だけが、男じゃない…よね…。」

「あ?ああ、まあ。」

⏰:08/11/07 23:35 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#370 [あかり]
私のいいたいことを察したのか、翔馬が口を開く。

「そういや、竜樹から何回かお前の地元の時のこととか、クラスでの様子とか聞かれたことあるわ。」

「え?私のこと気にかけてくれてるんだ。嬉しいな。」

「まあ、あいつは普通にいい奴だと思う。」

「うん。」

⏰:08/11/07 23:42 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#371 [あかり]
それから帰宅して、晩ご飯の前に、船の中で翔馬から教えてもらった、
竜樹くんのアドレスにメールを送る。

「二年の木村です(^O^)
登録よろしくね☆
修学旅行のお土産、どんなのがいい?(゜▽゜) ―あかり―」

数分で返信はきた。

「こちらこそよろしくっす!何でもいいっすよぉ!食い物でも残る物でも! ―竜樹―」

⏰:08/11/07 23:52 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#372 [あかり]
それから、会話は途絶えるどころか、弾んでいくばかりだった。

「翔馬さん、ソーラン節の時、皆裸足なのに、一人だけ体育館シューズ履いてましたよねぇ?
先頭の真ん中だから、余計目立ってました(笑) ―竜樹―」

「そうそう!(笑)皆であれは笑ったなぁ〜。
翔馬はめっちゃ後悔してたけど(笑) ―あかり―」

「木村先輩、一番後ろの端の方で踊ってましたよね?
俺、ちゃんと気付いてましたよ!頑張ってましたね。 ―竜樹―」

⏰:08/11/08 00:01 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#373 [あかり]
「竜樹くん、私のこと見てくれてたんだ…。」

心の底から嬉しかった。
自分でも、地味で目立たない奴だと思ってたから。

「ありがとう。来年は、竜樹くんたちの出番だね!私、しっかり竜樹くんのこと見るから!o(^-^)o ―あかり―」

⏰:08/11/08 00:07 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#374 [あかり]
「あーかりちゃんっ。」

「あ、怜香。」

テスト期間真っ只中。
この日は、午前で学校が終わった。
帰りの船の中。

「あー最近何かときめきがないっ。
同じクラスの男子とはこないだ別れたばっかだし。」

「佐藤くんだっけ?
いい感じに見えたけど。」

「あいつ、ああ見えて女にだらしないだよねー。
怜香はもっと、尽くしてくれる人がいい。」

⏰:08/11/08 00:18 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#375 [あかり]
「あ、ねえねえ。
阿倍野竜樹くんって分かる?一年二組だっけ?」

「うん。隣のクラスだし、話したこともあるよ。

優しいし、面白いよねー。

女子からも人気あるよ。
告った子もいるって聞いた。」

「そうなの?
竜樹くんは、誰かと噂になったりしないの?」

⏰:08/11/08 00:27 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#376 [あかり]
「うん、ああ見えて硬派な感じ。
しかも自分からは、女子にあんま話し掛けないんよ。」

「へぇぇ〜。
それは本当に意外だなあ。」

「何々どうしたのー?
阿倍野くんのこと、いいと思った?」

「えっ!いや、最近メールしてるから…。」

⏰:08/11/08 00:37 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#377 [あかり]
「へぇーっ!阿倍野くんとメールのやり取りとか羨ましー。」

「あ、うん、まあ…。」

「…。
塩見先輩、彼女いるんでしょ。」

「えっ、何でそれを…。」

⏰:08/11/08 00:46 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#378 [あかり]
「あかりちゃん、最近塩見先輩の話めっきりしないなーと思って。

そしたら、日高ちゃん、前言った塩見先輩に片思いしてる子ね、
その子たちらが、先輩が女の先輩と付き合ってるーって騒いでて。

まあ、その相手が江戸川小春先輩だから、皆手も足も出せないみたい。」

「あ、そか…。
もう一年生にまで噂広がってるんだっ。」

「お似合いなような似合わないような、よく分からんカップルだよねー。」

「アハハッ…。」

⏰:08/11/08 00:53 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#379 [あかり]
「…。」
怜香がこっちをじーっと見つめる。

「ん!何?」

「誰かに取られる前に、早くしないとと思ってー。
近頃、原 希緒ちゃんも阿倍野くんに、積極的に話し掛けに行ってるし。

まあ、あの子はないと思うけど。」

「うん、それはタクロウ先輩の件で肝に命じてる…(笑)。
私、これでいいのかな。」

⏰:08/11/08 01:05 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#380 [あかり]
「そんな馬鹿正直に生きなくていいと思うよー。
ランダムでいいんだよ、恋愛は。」

「うんっ。
もっと高校生活を謳歌したいなあ!(笑)」

「私もあかりちゃんと阿倍野くんがくっつくように協力するわあ!」

「えっ、気早いって怜香っ!(笑)」

⏰:08/11/08 01:46 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#381 [あかり]
「一組の福島さんも離島の人ですよね?
こないだ明孝と三人で話しましたよ♪ ―竜樹―」

今日も家に帰ってから、竜樹くんとひたすらメールのやり取りをする。

「竜樹くん、原 希緒ちゃんとも仲良いんだって?
前期の体育委員で一緒だったしね。 ―あかり―」

さっき、怜香が言っていたことが気になって彼に尋ねてみた。

⏰:08/11/08 01:54 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#382 [あかり]
「そこまで話したことないっすよ! ―竜樹―」

「そうなんだっ。希緒ちゃん可愛いよねっ。 ―あかり―」

ああ、私何てこと言ってるんだろ…。

「そうすか?
てか、先輩が修学旅行中はメール出来ないっすねー(>_<) ―竜樹―」

ドキドキ…。
竜樹くんは、いつも嬉しいこと言ってくれるなあ…。

⏰:08/11/08 02:01 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#383 [あかり]
「帰ったらまたすぐに送るよ!
私たち、明日もテストあるのに、ずっとメールしてるね!(@_@)(笑) ―あかり―」

「あっ、迷惑やったらすいません!(>_<)
先輩、明日放課後時間ありますか? ―竜樹―」

「どうせ勉強はかどらないから気にしないで♪(笑)
うん、何も予定はないよ〜? ―あかり―」

「あ、じゃあまた明日になったら連絡しますっ(^O^)/ ―竜樹―」

⏰:08/11/08 02:10 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#384 [あかり]
次の日―
中間テスト最終日。

苦手な教科に苦戦しながらも、何とか乗り切った。

午前中で終わった為、
放課後いのちゃんとのんびり昼食を取りながら、過ごしていた。

「あかりちゃん、携帯鳴ってるよ。」
メロンパン片手にいのちゃんが、私の携帯に指を差す。

⏰:08/11/08 03:13 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#385 [あかり]
「テストお疲れっす!<(__)>
俺今体育館の玄関のトコにいるんで、来てもらっていいですか? ―竜樹―」

昨日約束してたとおりに、竜樹くんからメールがきた。

「会うことになってた後輩からだった。」
いのちゃんに説明をする。

「お、まじで。じゃああたしは、隣のクラスに遊びにでも行ってこようかな。」食べかけのメロンパンをしまう彼女。

「ありがと、いのちゃん。」
私たちはその場を整えて、教室を出ることにした。

⏰:08/11/08 19:24 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#386 [あかり]
「竜樹くんっ!」
メールで言っていたとおりの場所に、彼がいた。

彼の存在を見るやいなや、玄関で靴に履きかえた私は走っていった。

「先輩、お疲れさまでーす。今日コレ持って来たんですよ。」
そう言い出した彼の体に、アコースティックギターが包まれていた。

⏰:08/11/09 23:19 📱:SH705i 🆔:i7UtH6lg


#387 [あかり]
「先輩、ギター始めたいって言ってましたよね?
俺、中学の時からやってっから、何か参考になればいいなーって。

今日まだテスト期間中やったんで、朝コレ持って学校来たら
周りから、すげー白い目で見られましたよ(笑)。」

そう言って、愛らしい目でギターを見つめる彼。
その視線から、きっと、かなりこれをやり込んでいるのだろう。

「私の為にそんな…わざわざ有り難う!すっごく嬉しいな。」

「いえいえ。
放課後は毎日部活だし、こんな時じゃないと、木村先輩と一緒にいれないですから。」

⏰:08/11/09 23:27 📱:SH705i 🆔:i7UtH6lg


#388 [あかり]
「えっ…。」
体中の血液が、逆流するかのようにどぎまぎした。

「先輩、エンドロールガーデン好きって言ってましたね。

えっと、『シューティングスター』、歌い出しどんなんやったっけ…。」

フレーズを思い出すかのように顔を仰ぎ、弾き語りをし出す彼。

歌声は地声より少し高音で、甘い声をしていた。

私はその姿をすぐ隣で、正座を崩したような姿勢で、一緒に口ずさみながら聴いていた。

⏰:08/11/09 23:38 📱:SH705i 🆔:i7UtH6lg


#389 [あかり]
こんな人の隣で毎日過ごせたら、幸せだろうな―
そんなことを考えながら、歌っている彼の顔をじっと見つめていた。

「…と、こんな感じですかね。」
気がついたら一曲歌い終わっていて、私は一瞬ハッとしたが、すぐにその場で、ぱちぱちと拍手をした。

「歌もギターも上手いね!私がギター買ったら、教えて欲しいなー!」

⏰:08/11/09 23:43 📱:SH705i 🆔:i7UtH6lg


#390 [あかり]
「いいですよ、俺でよければ。一緒にやりましょうよ。」

「うん!よろしくね!」
口約束にしたくない思いで、私は強く言った。

時々、下校する人が、私たちの方に視線をやる。
三年生が多かった。

竜樹くんがオススメのギターのメーカーを、私に教えてくれている時だった。

⏰:08/11/09 23:55 📱:SH705i 🆔:i7UtH6lg


#391 [あかり]
タクロウ先輩と、その男友達の人が、一緒に帰ろうとしていた。

「あっ…!」
私はつい、声に出して言ってしまった。
幸いにも、それは隣の竜樹くんに聞こえまでの大きさだった。

タクロウ先輩は私たち二人に気がついたようで、私は先輩と目が合ってしまった。

でも、すぐに彼は顔を逸らし、そのまま友達と校門の方へ歩いて行った。

⏰:08/11/10 00:00 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#392 [あかり]
「あの人と知り合いなんすか?
遠足の時、司会やってた人ですよね?」
タクロウ先輩たちが消えたと同時に、竜樹くんが話を振った。

「あ、うん。少し…。」
私は顔を地面にやったまま、答えた。

心臓の鼓動がまだおさまらない。
先輩のことは、あまり考えないようにしていたのに―。

⏰:08/11/10 00:07 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#393 [あかり]
今日は小春先輩と一緒じゃないんだ…―

ふとそんなことが頭の中を過ぎった。

「先輩?大丈夫っすか?」
竜樹くんの言葉で、また我に戻る。

「うん!全然!
ちょっとぼーっとしちゃった!」
明るい声で返事をした。

⏰:08/11/10 00:11 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#394 [あかり]
「先輩はー、気になってる人とかいるんですか?」

「…えっ?」
突然の彼の質問に、私の声は必要以上に大きく発した。
彼とは普段、こういう話をすることはない。

以前、堀ノ内悠介くんから聞かれた時とは、また違う動揺であった。

私はその場でフル回転で考えた。
一体、どう答えればいいのだろうか―

⏰:08/11/10 00:16 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#395 [あかり]
さっき、竜樹くんの歌声を聴いた時、
"うっとりとする"とはこういうことなのかと、改めて理解した。

彼は私より一つ年下だけど、そうとは思わさせないくらい、見習いたいほど大人な意見をたくさん持っていた。

人間にはいくら好きでも、「合う」「合わない」があると思っている。
私は竜樹くんとは、同じような波長が漂っていると、感じていた。

⏰:08/11/10 00:25 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#396 [あかり]
それに比べて―
一年以上も片思いしていたタクロウ先輩とは―

私ははっきり言って、彼とは「合わない」であるだろうと、
初めて話した時から、その答えに自分でも納得していた。

一緒にいる時の二つの異なる空気が、溶け合うことなく反発しようとしているのが、それを物語る。

そんなのは努力次第だと思われるかも知れないが、
人生とは時に、自分の力だけではどうしようもならない物事がある。

特に男女間のフィーリングが、いい事例であろう。

⏰:08/11/10 00:36 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#397 [あかり]
それを十分承知していたつもりで、私は先輩に思いを寄せていた。

でも―
決して報われることのない自分の気持ち。
決して交わることのない平行線は、私の方の線が、
そろそろ折れかけている所だった。

先輩には、誰もが羨む彼女がいる。
私が陰で思うことに、何の意味があるのか―

⏰:08/11/10 00:42 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#398 [あかり]
以前、翔馬が言っていたことを思い出す。

「竜樹の奴さ、最近お前とメールするようになって、何か嬉しそうにしてたぞ。

あいつから普段女子のこととか全然聞かんから、俺もびっくりしとる訳。

相手がお前やけん、尚更やし!(笑)。

…あいつ、かわいい後輩やけんさ、真剣に向き合ってやってくれないか。」

⏰:08/11/10 00:49 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#399 [あかり]
最高の部分は、意味深な台詞だった。

日頃あまり、翔馬から真面目な話をすることはないから、私はより、その意見を受け止めていた。

竜樹くんも、私のことを決して悪く思っていないのだから、こうして接してくれているのだろう―

タクロウ先輩と出会って初めて、彼以上に、もっと色んなことを知りたいと思う男性が現れた。

⏰:08/11/10 00:56 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#400 [あかり]
「あ、えっと…えーっと…。」
そんなことを考えながら、言葉にならない思いを、
どう表現していいか分からずにいる私。

「あ、俺、変なこと聞いちゃったようですね…。
困らせたようで、すいません…。」

それから、二人の間に、沈黙の空気が流れる。

⏰:08/11/10 01:00 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


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