先輩と旅立ちの唄
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#300 [あかり]
「小春先輩とタクロウ先輩、付き合ってるんだってーっ。」

「タクロウって、お前の好きな人?あの帽子の。

それはドンマーイっ。」

「ちょっとぉ、少しは慰めてよねーっ!」

「…だからドンマイって言ってんじゃん。」

「翔馬の意地悪っ!」

⏰:08/11/04 04:52 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#301 [あかり]
「…諦めないといけないよねー。」

「もし俺が塩見さんの立場だったら、
江戸川さんからお前に乗り換えようとは思わないな(笑)。」

「もーっ!そんなことぐらい私も分かってるってばー!」

「アハハ。まあ後は別れるのを待つとか。」

「タクロウ先輩があの小春先輩に別れを告げるなんて、そんなの想像もつかないっ!」

⏰:08/11/04 04:59 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#302 [あかり]
「そんなのはわかんないぜ。どちらかというと、江戸川さんの方がベタ惚れという線もある。」

「もーっ。悲しくなるからこの話はやめよう…。」

「自分から話したんじゃん。」

「とにかく!これからどうしていいか分からないよ…。

ずっと、好きだったのにさ…。」

⏰:08/11/04 05:04 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#303 [あかり]
「まあ、心の中では何を思っても自由だぜ。」
かばんの中にあった紙パックのジュースに、ストローを挿そうとする翔馬。

「うん…。
私、せめて文化祭で先輩と写真撮りたいな…。」

「それくらいいいんじゃね。」
勢いよくジュースを飲む翔馬。

「ありがと。」
彼に聞こえないように、私は言った。

⏰:08/11/04 05:09 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#304 [あかり]
そして、
文化祭一日目―

この日は一日中、藍美と出店の販売員を担当した。

といっても、私たちがやったことは、カレーの食券を、
希望者にひたすらお金と引き換えに配る係だった。

二人で一つの机に、仲良く座っていた。
その近辺では、主に三年生たちが、焼きそばやかき氷などをせっせと売っていた。

⏰:08/11/04 14:51 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#305 [あかり]
「おーい、二人とも頑張ってるかーい。」

「あっ、いのちゃん。」

いのちゃんが、他のクラスの友達と共に、私たちの様子を見にやって来た。

「いのちゃん、写真撮ろう。あっ、皆で一緒に写真撮ろう。」

藍美にカメラを頼んで、思い出の瞬間をおさめたりしていた。

⏰:08/11/04 14:56 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#306 [あかり]
顔なじみの人や、そうでない人、先生であったり、
色んな顔ぶれが、私たちの元へ食券を求めにやって来た。

そんな時間をやり過ごしている時だった。

「あ、小春先輩だ…。」
江戸川小春先輩が、女友達と出店へ買いにとやって来た。

販売員と親しげに話している所から、先程のいのちゃんたち同様、
きっと様子を見に来たのだろう。

⏰:08/11/04 15:03 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#307 [あかり]
「藍美、小春先輩とタクロウ先輩、付き合ってるらしいよ…。」
昨日名美佳から告げられたばかりの事実を、私は藍美に話した。

「えっ、そうなの?
えーっ、エドコハ先輩は、もっと落ち着きのある人が好きなのかと思ってたー。」

私も、物静かな小春先輩のことだから、
てっきり大人な人じゃないと、合わないのかと思ってた。

タクロウ先輩は、大人びた見た目に似合わない、おちゃらけたやんちゃな人である。

⏰:08/11/04 15:12 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#308 [あかり]
タクロウ先輩のことは、一年の希緒ちゃんや、後輩の怜香みたいに「かっこいい」と思う人もいれば、
「何あれ。」「調子乗ってる。」と、その存在をあまり良く思わない人とに、はっきりと分かれていた。

「エドコハ先輩、あの人でいいんだーっ。」
こんな台詞を吐く藍美も、どちらかというと、後者の立場であろう。

そんなやり取りをしていると、今度はタクロウ先輩が友達と出店の方にやって来た。
方向は、小春先輩のいる所。

⏰:08/11/04 15:25 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#309 [あかり]
「タッちゃん。」
小春先輩が、先輩を愛称で呼んだ。

胸の奥が、ズキンと痛みだした。

少し離れた所にいた私にも、タクロウ先輩が、
明らかに"好きな人の目の前にいる"オーラになっているのが理解できた。

私はその光景を見るのをやめた。

⏰:08/11/04 15:30 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#310 [あかり]
「あっ、エドコハ先輩が塩見先輩にお好み焼きを食べさせてる…。」
ずっと二人の姿を見ていた藍美が言い出した。

私は思わずもう一度目をやった。

ちょうどタクロウ先輩が、私とは背中越しになっていて何も見えない。

でも、先輩はかがんでいた。
小さな小春先輩に、合わせるようにかと。
藍美の言うとおりの映像が浮かんだ。

⏰:08/11/04 15:39 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#311 [あかり]
ズキンズキンズキンズキン…

それからの私は、あまり明るい気持ちではいられなかった。

二人のあれだけのやり取りで、一気に現実を突き付けられたような気分になった。

文化祭一日目は少しブルーな思いと共に終了した。

⏰:08/11/04 15:43 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#312 [あかり]
その放課後―

「あかりちゃん。」
廊下で一人の女子に、声を掛けられた。

「あっ、佑里ちゃん。」
隣のクラスの、新坂佑里ちゃんという子だった。

佑里ちゃんとは、今年からひょんなことで仲良くなり、二人で図書館まで勉強しに行ったり、放課後一緒に行動したりしていた。

佑里ちゃんはおっとりとした外見が好を為すのか、男子に告白されて付き合うことが多かった。

⏰:08/11/04 15:51 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#313 [あかり]
「塩見先輩のドラム姿、かっこよかったよー。
上半身裸だったんだけど、意外と筋肉がついてて、ちょっとときめいちゃったね。」

私がタクロウ先輩を好きなのを知っている彼女は、
自分が知ってる限りの情報をいつも教えてくれた。

私は今日ばかりはそれが切なくなり、先輩に彼女がいることを言った。

佑里ちゃんと小春先輩は、同中という関係であった。

⏰:08/11/04 15:56 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#314 [あかり]
「そっかぁ。あの二人がくっつくなんて、思いそうで思わなかったなあ〜。」

「私、これからどうしたらいいんだろうって…。」

「先輩のことはまだ好き?」

「略奪したいとは微塵も思わないけど…。」

私は応えるのに迷った。
私の先輩に対しての思いは、一体何であったのだろうか?

⏰:08/11/04 16:01 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#315 [あかり]
「いいんじゃない。遠くから見てるだけなら。
全然罪にならないよ。」
昨日の翔馬と似たようなことを、彼女も言った。

「…。」
私は黙って考えた。

⏰:08/11/04 16:04 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#316 [あかり]
「私ね。」
一時して、私は口を開いた。
うん、と佑里ちゃんが相槌をする。

「先輩と出会ってね、こんな人がいるんだあって思った。

皆に笑顔を振り撒いて。
自分は色々と辛く悲しいことがあったのにさ。

明日のステージ発表も、先輩が見てると思うから、一生懸命頑張った。
家でもたくさん練習した。

先輩がいるから、目の前の出来事が明るくなってる部分は多かったな。

私は先輩に、ただ『ありがとう』って言いたい。」

⏰:08/11/04 16:11 📱:SH705i 🆔:Of3VRH9k


#317 [あかり]
帰りの船の中―
今日一日で起こった、ありとあらゆることが思い巡ってきた。

タクロウ先輩と小春先輩のツーショット、
佑里ちゃんにタクロウ先輩への気持ちを告げた自分。

諦めてしまいたい思いと、諦めたくない思いとが頭の中で交錯する。
考えたくないけど、考えずにはいられない。
世の中は矛盾だらけだ。

「あっかりちゃん。」
そんな私を尻目なのか察したのか、明るく怜香が話し掛けてきた。

⏰:08/11/05 22:28 📱:SH705i 🆔:w2wy4Vzs


#318 [あかり]
「見てこれ。かっこいいよ。」

怜香は、上半身裸でピースをしてる、タクロウ先輩の写メを私に見せてきた。

「これは…?!」

「塩見先輩たちのライブの後に、友達が頼んで撮らせてもらったんだって。
私も転送してもらった。
あかりちゃんに喜ばせようと思って。」

「う、うん…。」
彼女持ちの先輩を直視できないという気持ちよりも、後輩の優しさに泣けてきた。

⏰:08/11/05 22:34 📱:SH705i 🆔:w2wy4Vzs


#319 [あかり]
「あかりちゃんいるでしょ?送るよ。」

「え…えっと…。」

戸惑いが走る。
それを所持する必要があるのだろうか…。
そこに映っている人は、違う女の人のことを思っている。

その時、
『思うくらいならいい』
翔馬と佑里ちゃんから、同時に叫ばれた気がした。

「うん!欲しい!」
私は決意した。
どんな先輩であろうと、やっぱり好きなものは好きだ。

⏰:08/11/05 22:43 📱:SH705i 🆔:w2wy4Vzs


#320 [あかり]
「怜香、付き合うってどういうことだと思う?」

「んー…、好き同士が一緒になるってことなんじゃない?」

「じゃあ、人を好きになることは?」

「私の場合は、あーこの人じゃなきゃダメだって…って感じ。」

⏰:08/11/07 03:06 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#321 [あかり]
「そっか…。」
私は敢えて、怜香にはタクロウ先輩に彼女がいることを言わなかった。
これ以上、人に会う度に説明するのが煩わしくなった。

「自分の好きな人に、彼女が出来たらどうする?」
今の自分の状況を、怜香に投げ掛けてみた。

「えーっ、時と場合によるけど、私だったら辛いけん諦めるかもー。
彼女にも悪いし。」

⏰:08/11/07 03:29 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#322 [あかり]
それが出来たらどんなに楽だろうか、と思った。
私も実際、少し前までは怜香と同じ意見であった。

未だに半分は、今の現実を飲み込めきれない思いが混じっている。

毎日毎日、ただ先輩の姿だけを、追いかけていた。
それが今、何故音を立てて崩れていかなければならないのかが、納得出来ずにいる。

⏰:08/11/07 04:25 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#323 [あかり]
怜香から送られてきたばかりの先輩の写メが、画面いっぱいに表示されている。

今まで、これといって先輩に何をしてもらった訳ではないが、
私はその存在に、深く感謝をしている。

それは彼女の有無一つで変えてはいけない気持ちだと思った。

「思うだけなら、ね…。」

⏰:08/11/07 05:08 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#324 [あかり]
次の日―
文化祭二日目。

学校から少し離れたところにある、公民館で行われた。

この日は、主に二年生のステージ発表であり、それ以外はカラオケ大会や、
ゲスト出演、劇団のお芝居などが披露される。

⏰:08/11/07 05:20 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#325 [あかり]
私たち二年三組の発表は、くじ引きで最後から二番目と決まっていた。

司会のMC、他のクラスの発表を、そわそわした様子で見る。

面白いと思ったものはありのまま笑い、凄いと思ったものには心から拍手していた。

⏰:08/11/07 05:25 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#326 [あかり]
私は去年のこの日を思い出した。

当時の二年四組の発表の時―
種類は分からないが、足でリズムを取るダンスを、クラス全員で踊っていた。


クラスの中央で、恥ずかしがりながら踊るタクロウ先輩。

私には、彼の姿しか映っていなかった。
ふいに涙も出ていた。
心の中で頑張れ、頑張れとひたすら声援を送っていた。

あれからもう一年か―
あの頃は、先輩の名前くらいしか、知らなかった気がする。

⏰:08/11/07 05:32 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#327 [あかり]
私たちの出番の前のクラスがステージに登場した時、
クラス一斉に席を立ち、準備室に直行していった。

「いよいよ、だね…。」

「ホントに。ドキドキするわ〜。」

いのちゃんと通路を歩きながら、高揚を抑えようとしていた。

⏰:08/11/07 07:35 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#328 [あかり]
舞台衣装のはっぴに着替え、自分たちの出番が来るまでの時を過ごしていた。

周りからは「どうしよう〜!」という声や、
数人で固まって、踊りの最終チェックの確認をしあったりしている。

私も藍美や他の子たちと一緒になって、ギリギリまで振付の練習をしていた。

⏰:08/11/07 08:05 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#329 [あかり]
「そろそろ時間です。」
生徒会の人からの、合図が来た。

私たちは、舞台の袖口までと静かに移動した。

会場は暗闇に包まれ、客席もシーンとしている。

遂に、その時が来た…。

⏰:08/11/07 08:10 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#330 [あかり]
今まで、本当に頑張って来た。
土日も学校に来て、体育館や屋外の渡り廊下を使って、皆でとことん練習に励んできた。

タクロウ先輩に、いいものを見せたくて必死でいた自分がいた。

先輩、私の思いはあなたに届きますか?―

⏰:08/11/07 08:16 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#331 [あかり]
まずは、翔馬を中心とした、男子数名で行われるダブルダッチ。

BGMは翔馬の好きなロックバンドの歌だった。

客席から「おぉ!」との歓喜の声や、パフォーマンスが行われる度に、拍手が送られていた。

舞台袖から、私たち女子が祈るように見守る。

⏰:08/11/07 08:20 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#332 [あかり]
縄に引っ掛かってしまうというシチュエーションが、2回ほどあった。

ミスといえばそれまでだが、本当に彼らはよくやってくれたと思う。
練習より、本番の方が上手くいったということが光栄であった。

ダブルダッチの披露が終わった。
いよいよ、私たちのソーラン節の成果を見せる時がやって来た。

⏰:08/11/07 08:29 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#333 [あかり]
主に立ち位置は、翔馬が最前列の真ん中、藍美が同じ列の右端、
いのちゃんが二番目の列の中央よりやや右より、といった具合だった。

私は三番目、最後列の中央であった。
こう決められた時、タクロウ先輩が気づいてくれないのではないかと不安があったが、
下手な踊りを前の方でやるよりマシだと自分に言い聞かせた。

⏰:08/11/07 08:35 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#334 [あかり]
舞台がまた真っ暗に染まった時、皆それぞれ決められた位置へとスタスタと向かっていった。

その時である―
クラスのぽっちゃりした木田くんという男子が、どういう訳か私の位置でスタンバイをしていた。

―ちょ、ちょっと…。

舞台がまたパッと明るくなった。
私は仕方なく、最後列の右端へと急いで移動した。

⏰:08/11/07 08:41 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#335 [あかり]
ああ、きっと私は、今一番目立たないポジションにいる―

元々決められていない配役にいたから、より一層悲しくなった。

自分が目立ちたい訳じゃない。
ただ、タクロウ先輩に、自分のことを見てほしいだけ―。

それでもその思い一つだけで、体いっぱいを使って精一杯ソーラン節を踊る。

突如、それは起こった。

⏰:08/11/07 08:48 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#336 [あかり]
突然、音楽が止まったのだ。
皆の動きが少しずつ止まり出す。

どうして…?
これはまたやり直し…?
私も心の中で困惑した。

すると、客席にいた三年生たちが、「頑張れーっ!」などの声を送ってくれていた。

音楽が再び流れ始めた。
客席も私たちに合わせて拍手を叩いてくれたり、「ソーラン!ソーラン!」と一緒に言ってくれていた。

今、会場全体一つになって、ソーラン節を表現している。

⏰:08/11/07 08:55 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#337 [あかり]
「ヤァッ!」
最後に両手に持っている鳴子を掲げ、大きな声を出し、この場を締めた。

お、終わった…。―

やるだけのことは、全て出し尽くした。

幕が下り、私たちは舞台を後にした。
鳴り止まない観客席からの拍手が心地良かった。

⏰:08/11/07 09:02 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#338 [あかり]
「ちょっと木田くん!私の所で踊ってたでしょ!」

私がステージ発表が終わって、一番にやったことは、
私を一番冴えない所へと追いやった、張本人を責めることであった。

「え、あ、そうなの?」

彼は上手いことはぐらかした。
私には分かる、心の中では目立ちたがり屋の彼は、隅の方で踊りたくなかったのだと。

私は普段、気が小さい為、人に怒鳴ったりという経験があまりないのだが、
この時ばかりは本当に怒りが来た。

翔馬から以前、木田くんは同級生から好かれていないと聞かされていたが、
きっとこういう姑息な行動と態度が、反感を呼ぶのだろう。

⏰:08/11/07 09:12 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#339 [あかり]
でも、ついさっきの出来事ではあるが、過ぎたことはしょうがないのである。

気を取り留め、私は先輩が自分のことを気付いてくれたことだけを願った。
でも、あんな場所じゃ…と、ネガティブにならずにいられない。

「あかりちゃん、お疲れー。」
いのちゃんのいつもの笑顔を見て、あまり深く考えるのをやめることにした。

⏰:08/11/07 09:17 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#340 [あかり]
文化祭二日目も、終盤に迫ろうとしていた。

司会の三年生二人だけとなった。

「最後に、先程のステージ発表の結果を報告します。
1位は、二年五組!」

同時に、ワァー!っという声が広がる。

私たちのクラスもそれとなく拍手をした。

⏰:08/11/07 09:22 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#341 [あかり]
「2位は、二年三組!」

えっ!、という声を私も周りも発していた。
私たちは満面の笑みで、自分たちに歓声の拍手を送った。

やった、2位だ…!
一生懸命にやれば、きっと何事も伝わるんだ。

⏰:08/11/07 09:27 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#342 [あかり]
「おめでとう!」
帰りのホームルームで、先生が賞状を、クラスを代表とした翔馬に渡す。

私たちは、もう一度教室内でその結果に喜んだ。

1位であることに越したことはないが、
音楽が突然止まるというハプニングも乗り越えたクラスの結束力が何よりも大きかった。

⏰:08/11/07 09:32 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#343 [あかり]
「翔馬、うちらやったね!」
帰りの船の中、二人でまた今日一日を振り返る。

「音楽が聞こえなくなった時は、本当どうしようかと思ったよ〜…。」

「俺も、まじでびびったわ。
でも、隣の方見たら、城山さんがそれでも踊り続けよんけん、
『え?やり直しじゃないんだ』って思った。」

「え、そうなの…?」
藍美、一人で凄いな…。

彼女を先頭にしたのは、クラスとして、かなり間違いではなかった。

⏰:08/11/07 09:39 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#344 [あかり]
次の日―
文化祭最終日。
体育祭が行われた。

皆大体、出番は二種目くらいのみである。

生徒会や体育委員、応援団は担当に忙しいが、
その他の人たちは、たいてい暇を持て余している。

⏰:08/11/07 09:46 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#345 [あかり]
私といのちゃんは、応援席で目の前の種目を見ていた。

全校男子で行われた、自由競争を見ている時であった。

最後尾前列辺りに、タクロウ先輩の姿があった。

⏰:08/11/07 09:49 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#346 [あかり]
パンッ。
ピストルの合図と共に、タクロウ先輩たちの走者が駆け出した。

数メートル先に置かれてあるカードをめくり、
マイクに向かってその指示を読み上げる。

「えっと…、校歌を歌う。」
タクロウ先輩の声が校庭中に響いた。

⏰:08/11/07 09:52 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#347 [あかり]
「あ〜あ〜、この胸に〜誓い〜合う〜我が母校〜」
適当にワンフレーズ歌って、ゴールまで走るタクロウ先輩。
見事一位になった。

応援席では笑いの渦が起こっていた。

「やべー、腹痛ぇ。
あの人おもしろすぎるわー。」
隣のいのちゃんも、抱腹絶倒という感じであった。

私も、いつまでも笑っていた。

⏰:08/11/07 09:57 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#348 [あかり]
こうして、体育祭も何なりと終了した。
結果などは対して気にならなかったが、やはり一位がいいというところが本音だ。
私たちの団は、これまた二位であった。

放課後―
まだ体操服のままで、過ごしていた。
私には一つだけ、やり残していることがある。

⏰:08/11/07 10:01 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#349 [あかり]
「名美佳…。」

「ん?何、あかり?」

「あのね、私、まだタクロウ先輩と写真撮ってないんだ…。」

「体育祭の時、声かけなかったの?」

「うん、話し掛けづらくて…。」

⏰:08/11/07 10:04 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#350 [あかり]
「そっかあ…。まだ校内にいるんやない?
きっと今ホームルーム中かも。
うちらのクラス、早く終わったけんさ。」

「う、うん…。」

「私一緒に付き添おうか?
シャッター係がおらんといけんでしょっ。」

「名美佳…、ありがとう!」

⏰:08/11/07 10:08 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#351 [あかり]
私と名美佳は、玄関で先輩がやって来るのを、待ち伏せすることにした。

三年生はホームルームの終わりか遅いのか、下校する人がぽつぽつとしかいなかった。

私たちは話をしながら、ひたすら先輩の登場を待つ。

「髪型整えなきゃ。」
そう言って二人で一旦トイレに入り、もう一度出てきた時だった。

⏰:08/11/07 10:12 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#352 [あかり]
体操服姿で、タクロウ先輩がスタスタ帰ろうとしている、後ろ姿が見えた。

私は思わず名美佳を置いて、近くまで走った。
名前を呼ぼうとするが、緊張からなかなか声が出ない。

しかし、このままでは先輩が帰ってしまう―

⏰:08/11/07 10:15 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#353 [あかり]
「し…、塩見先輩っ!」
やっと言えた。
思っていたより、小さい声になっていた。
それと同時に、背伸びをして、彼の肩を叩いていた。

先輩の名前を名字で呼んだのは、不快な馴れ馴れしさをなくす為である。

「しゃ…写真一緒に撮って下さい…。」
振り返って目の前にいる彼に向かって、言った。

⏰:08/11/07 10:20 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#354 [あかり]
「はい、チーズ!」
名美佳のシャッター合図と共に、二人並んでいる所が、カメラの中に瞬間におさまった。

先輩はそれから、無言でその場を立ち去るかのように、靴に履きかえ、帰っていった。

「ありがとうございます」と言いそびれた私には、
その態度が怖く感じた。

⏰:08/11/07 10:28 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#355 [あかり]
「やっぱり写真なんて、うざかったかな…。
先輩には、小春先輩がいるしさ…。
先輩、さっき一言も話さなかった…。」

「そんなことないよ!
塩見先輩、写真撮る時あかりの身長に合わせて屈んでくれてたし、ピースもしてたよ。
本当に面倒臭かったら、嫌そうな振る舞いすると思うな。」

「う、うん…。」

とにもかくにも、全ては写真が物語っていることであろう。
私は現像するのが、楽しみな、不安でたまらないような気分であった。

⏰:08/11/07 10:35 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#356 [あかり]
「じゃーんっ。」
文化祭も遠い昔のように感じた昼休み、藍美が一枚の写真を見せてくれた。

藍美と彼女の意中の相手の、克次先輩のツーショット写真である。

その周りには彼女の手で、ハートマークが赤い油性ペンで書かれていた。

「克次先輩とも今メールのやり取りしてるんだあ。」
携帯で文章を作成しだす藍美。

⏰:08/11/07 10:43 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#357 [あかり]
「城山さんが、ラクビー部の高島さん?に、手紙渡してる所を見た。」
と、翔馬から聞いていたので、今の状況は、何となく予測は出来ていた。

それにしても藍美は…
タイミングを上手く掴めるというか、良い方向に持っていくのが巧み、という子である。

一年以上思い続けている私よりも遥かに、好きな人に近づききれていた。

⏰:08/11/07 10:52 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#358 [あかり]
「あかりは?
塩見先輩とどうだった?
せめて写真は撮りたいって言ってたじゃん。」

「あ、うん。
撮ったことは撮ったよ…。」

「やったねぇ!
頑張ったじゃん、あかり!

何せ憧れの先輩だもんねっ。」

「うん…。」

"憧れの先輩"か―
一年以上、私は一体何をして過ごしてきたのか…情けなくなった。

⏰:08/11/07 10:58 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#359 [あかり]
ある日の放課後、職員室まで課題のやり直しを提出しに行った時であった。

「木村先輩っ!」
ふいに誰かに呼ばれた気がした。

「あっ…、竜樹くん!」
振り返ると、一年生の阿倍野竜樹くんという人がそこにいた。

私たちは、前期の体育委員の集まりがきっかけで、
学校で会った時は話す程度の仲になっていた。

⏰:08/11/07 18:25 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#360 [あかり]
「お久しぶりっすね!
先輩たち、もうすぐ修学旅行ですよね?
オーストラリアとか、まじスケールでかいっすよね〜!」

「うん、そうだよ!
だから、準備に大忙しなんだ!」

「お土産お願いします!(笑)」

「うん、分かった!
でっかいコアラ連れて戻ってくるわ(笑)」

⏰:08/11/07 18:33 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#361 [あかり]
「聞いてくださいよ、
最近部活で、翔馬さんがやたら俺のこといじるんすよ。」

「アハハ。竜樹くんはいじめがいがありそうやけんねっ(笑)。」

「えーっ、俺結構しっかりしてるっすよ!
そういやぁ、木村先輩、アドレス教えてくださいよ!」

「あ、まだ交換してなかったっけ?
じゃあ私、翔馬から聞いとくね!」

「あざーっす!」

⏰:08/11/07 22:44 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#362 [あかり]
「じゃ、俺、部活行って来ます。」

「うん、分かった!またね!」

一旦、職員室を出ようとした彼が、また振り返る。

「あ、木村先輩!」

「?」

「先輩、最近髪切ったっすよね。カワイイっすよ。」

⏰:08/11/07 22:54 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#363 [あかり]
「あーかーりっ。」

「わぁ!藍美!いたの?」

今度は藍美と鉢合わせ。

「ついさっき来たの。
今の男の子、地元の子?」

「ううん、高校で仲良くなったの。」

「なんか、カッコ可愛いって感じ〜♪
背も高いし、しかもあかり、仲よさ気じゃんっ。」

⏰:08/11/07 22:59 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#364 [あかり]
「うん。面白くて明るい子だよっ!」

「…彼なんかどう?」

「…え?」

「彼を恋愛対象として見るのはどう?」

「…えぇっ!」

⏰:08/11/07 23:03 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#365 [あかり]
「塩見先輩はさ、彼女いるじゃん。
遠くから見るっていうのもいいと思うけど、
私、最近あかり見てて心から笑ってないと思うのね…。

もしかしたら辛いんじゃないかなって。
新しい出会いや予期せぬ出来事が、自分を変えてくれることもあるよ。」

「…藍美。
心配させてたんだね、ごめんね…。」

「ううん、全然。最終的にはあかりが決めることだから。」

「私、私は…。」

⏰:08/11/07 23:09 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#366 [あかり]
「本当にわかんないんだ、自分でも…。

先輩のこと、いっそのこと忘れたいって思っても、
いざその姿を見るとやっぱり出来ないし、
付き合いたいとか思ってないつもりだったのに、
いざ先輩が他の女の人のになると、無償に悲しくて、辛くて、寂しくて…。

私の中にも、嫉妬心があったんだね。」

「うんうん…。
私も克次先輩に彼女がいたら、きっとあかりくらい悩んでると思うよ…。

だからさ、だから、二人で一緒に幸せになろう…。」

⏰:08/11/07 23:15 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#367 [あかり]
「翔馬ー、阿倍野竜樹くんってどう思うー?」

帰りの船の中。
今日は、いつも話題にあまり出ない人を中心とした会話。

「ん?あいつは一年の中じゃ中心人物って感じだし、
いつもふざけたことやってて、皆の笑い誘ってるよ。

俺、あいついつもおちょくってる(笑)」

⏰:08/11/07 23:24 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#368 [あかり]
今日の藍美の苦しそうな表情を思い出す。
私のこと、いつもずっと気にしてたんだ。

片思いなんて、私一人だけの問題かと思ってた。
でも、そうじゃないということが分かった。

客観的に見たら、今の私の恋は、もう終わってるのだろうか?
『思うだけなら勝手』っていうのも、実際、虚しいものがあるよ…。

⏰:08/11/07 23:30 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#369 [あかり]
「翔馬。」

「何?」

「私ね、幸せになりたいの。」

「うん。俺も。」

「だから、もっと視野を広げることにする。」

「うん?」

「タクロウ先輩だけが、男じゃない…よね…。」

「あ?ああ、まあ。」

⏰:08/11/07 23:35 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#370 [あかり]
私のいいたいことを察したのか、翔馬が口を開く。

「そういや、竜樹から何回かお前の地元の時のこととか、クラスでの様子とか聞かれたことあるわ。」

「え?私のこと気にかけてくれてるんだ。嬉しいな。」

「まあ、あいつは普通にいい奴だと思う。」

「うん。」

⏰:08/11/07 23:42 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#371 [あかり]
それから帰宅して、晩ご飯の前に、船の中で翔馬から教えてもらった、
竜樹くんのアドレスにメールを送る。

「二年の木村です(^O^)
登録よろしくね☆
修学旅行のお土産、どんなのがいい?(゜▽゜) ―あかり―」

数分で返信はきた。

「こちらこそよろしくっす!何でもいいっすよぉ!食い物でも残る物でも! ―竜樹―」

⏰:08/11/07 23:52 📱:SH705i 🆔:Xo6TOlQk


#372 [あかり]
それから、会話は途絶えるどころか、弾んでいくばかりだった。

「翔馬さん、ソーラン節の時、皆裸足なのに、一人だけ体育館シューズ履いてましたよねぇ?
先頭の真ん中だから、余計目立ってました(笑) ―竜樹―」

「そうそう!(笑)皆であれは笑ったなぁ〜。
翔馬はめっちゃ後悔してたけど(笑) ―あかり―」

「木村先輩、一番後ろの端の方で踊ってましたよね?
俺、ちゃんと気付いてましたよ!頑張ってましたね。 ―竜樹―」

⏰:08/11/08 00:01 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#373 [あかり]
「竜樹くん、私のこと見てくれてたんだ…。」

心の底から嬉しかった。
自分でも、地味で目立たない奴だと思ってたから。

「ありがとう。来年は、竜樹くんたちの出番だね!私、しっかり竜樹くんのこと見るから!o(^-^)o ―あかり―」

⏰:08/11/08 00:07 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#374 [あかり]
「あーかりちゃんっ。」

「あ、怜香。」

テスト期間真っ只中。
この日は、午前で学校が終わった。
帰りの船の中。

「あー最近何かときめきがないっ。
同じクラスの男子とはこないだ別れたばっかだし。」

「佐藤くんだっけ?
いい感じに見えたけど。」

「あいつ、ああ見えて女にだらしないだよねー。
怜香はもっと、尽くしてくれる人がいい。」

⏰:08/11/08 00:18 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#375 [あかり]
「あ、ねえねえ。
阿倍野竜樹くんって分かる?一年二組だっけ?」

「うん。隣のクラスだし、話したこともあるよ。

優しいし、面白いよねー。

女子からも人気あるよ。
告った子もいるって聞いた。」

「そうなの?
竜樹くんは、誰かと噂になったりしないの?」

⏰:08/11/08 00:27 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#376 [あかり]
「うん、ああ見えて硬派な感じ。
しかも自分からは、女子にあんま話し掛けないんよ。」

「へぇぇ〜。
それは本当に意外だなあ。」

「何々どうしたのー?
阿倍野くんのこと、いいと思った?」

「えっ!いや、最近メールしてるから…。」

⏰:08/11/08 00:37 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#377 [あかり]
「へぇーっ!阿倍野くんとメールのやり取りとか羨ましー。」

「あ、うん、まあ…。」

「…。
塩見先輩、彼女いるんでしょ。」

「えっ、何でそれを…。」

⏰:08/11/08 00:46 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#378 [あかり]
「あかりちゃん、最近塩見先輩の話めっきりしないなーと思って。

そしたら、日高ちゃん、前言った塩見先輩に片思いしてる子ね、
その子たちらが、先輩が女の先輩と付き合ってるーって騒いでて。

まあ、その相手が江戸川小春先輩だから、皆手も足も出せないみたい。」

「あ、そか…。
もう一年生にまで噂広がってるんだっ。」

「お似合いなような似合わないような、よく分からんカップルだよねー。」

「アハハッ…。」

⏰:08/11/08 00:53 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#379 [あかり]
「…。」
怜香がこっちをじーっと見つめる。

「ん!何?」

「誰かに取られる前に、早くしないとと思ってー。
近頃、原 希緒ちゃんも阿倍野くんに、積極的に話し掛けに行ってるし。

まあ、あの子はないと思うけど。」

「うん、それはタクロウ先輩の件で肝に命じてる…(笑)。
私、これでいいのかな。」

⏰:08/11/08 01:05 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#380 [あかり]
「そんな馬鹿正直に生きなくていいと思うよー。
ランダムでいいんだよ、恋愛は。」

「うんっ。
もっと高校生活を謳歌したいなあ!(笑)」

「私もあかりちゃんと阿倍野くんがくっつくように協力するわあ!」

「えっ、気早いって怜香っ!(笑)」

⏰:08/11/08 01:46 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#381 [あかり]
「一組の福島さんも離島の人ですよね?
こないだ明孝と三人で話しましたよ♪ ―竜樹―」

今日も家に帰ってから、竜樹くんとひたすらメールのやり取りをする。

「竜樹くん、原 希緒ちゃんとも仲良いんだって?
前期の体育委員で一緒だったしね。 ―あかり―」

さっき、怜香が言っていたことが気になって彼に尋ねてみた。

⏰:08/11/08 01:54 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#382 [あかり]
「そこまで話したことないっすよ! ―竜樹―」

「そうなんだっ。希緒ちゃん可愛いよねっ。 ―あかり―」

ああ、私何てこと言ってるんだろ…。

「そうすか?
てか、先輩が修学旅行中はメール出来ないっすねー(>_<) ―竜樹―」

ドキドキ…。
竜樹くんは、いつも嬉しいこと言ってくれるなあ…。

⏰:08/11/08 02:01 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#383 [あかり]
「帰ったらまたすぐに送るよ!
私たち、明日もテストあるのに、ずっとメールしてるね!(@_@)(笑) ―あかり―」

「あっ、迷惑やったらすいません!(>_<)
先輩、明日放課後時間ありますか? ―竜樹―」

「どうせ勉強はかどらないから気にしないで♪(笑)
うん、何も予定はないよ〜? ―あかり―」

「あ、じゃあまた明日になったら連絡しますっ(^O^)/ ―竜樹―」

⏰:08/11/08 02:10 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#384 [あかり]
次の日―
中間テスト最終日。

苦手な教科に苦戦しながらも、何とか乗り切った。

午前中で終わった為、
放課後いのちゃんとのんびり昼食を取りながら、過ごしていた。

「あかりちゃん、携帯鳴ってるよ。」
メロンパン片手にいのちゃんが、私の携帯に指を差す。

⏰:08/11/08 03:13 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#385 [あかり]
「テストお疲れっす!<(__)>
俺今体育館の玄関のトコにいるんで、来てもらっていいですか? ―竜樹―」

昨日約束してたとおりに、竜樹くんからメールがきた。

「会うことになってた後輩からだった。」
いのちゃんに説明をする。

「お、まじで。じゃああたしは、隣のクラスに遊びにでも行ってこようかな。」食べかけのメロンパンをしまう彼女。

「ありがと、いのちゃん。」
私たちはその場を整えて、教室を出ることにした。

⏰:08/11/08 19:24 📱:SH705i 🆔:KtWTMKlI


#386 [あかり]
「竜樹くんっ!」
メールで言っていたとおりの場所に、彼がいた。

彼の存在を見るやいなや、玄関で靴に履きかえた私は走っていった。

「先輩、お疲れさまでーす。今日コレ持って来たんですよ。」
そう言い出した彼の体に、アコースティックギターが包まれていた。

⏰:08/11/09 23:19 📱:SH705i 🆔:i7UtH6lg


#387 [あかり]
「先輩、ギター始めたいって言ってましたよね?
俺、中学の時からやってっから、何か参考になればいいなーって。

今日まだテスト期間中やったんで、朝コレ持って学校来たら
周りから、すげー白い目で見られましたよ(笑)。」

そう言って、愛らしい目でギターを見つめる彼。
その視線から、きっと、かなりこれをやり込んでいるのだろう。

「私の為にそんな…わざわざ有り難う!すっごく嬉しいな。」

「いえいえ。
放課後は毎日部活だし、こんな時じゃないと、木村先輩と一緒にいれないですから。」

⏰:08/11/09 23:27 📱:SH705i 🆔:i7UtH6lg


#388 [あかり]
「えっ…。」
体中の血液が、逆流するかのようにどぎまぎした。

「先輩、エンドロールガーデン好きって言ってましたね。

えっと、『シューティングスター』、歌い出しどんなんやったっけ…。」

フレーズを思い出すかのように顔を仰ぎ、弾き語りをし出す彼。

歌声は地声より少し高音で、甘い声をしていた。

私はその姿をすぐ隣で、正座を崩したような姿勢で、一緒に口ずさみながら聴いていた。

⏰:08/11/09 23:38 📱:SH705i 🆔:i7UtH6lg


#389 [あかり]
こんな人の隣で毎日過ごせたら、幸せだろうな―
そんなことを考えながら、歌っている彼の顔をじっと見つめていた。

「…と、こんな感じですかね。」
気がついたら一曲歌い終わっていて、私は一瞬ハッとしたが、すぐにその場で、ぱちぱちと拍手をした。

「歌もギターも上手いね!私がギター買ったら、教えて欲しいなー!」

⏰:08/11/09 23:43 📱:SH705i 🆔:i7UtH6lg


#390 [あかり]
「いいですよ、俺でよければ。一緒にやりましょうよ。」

「うん!よろしくね!」
口約束にしたくない思いで、私は強く言った。

時々、下校する人が、私たちの方に視線をやる。
三年生が多かった。

竜樹くんがオススメのギターのメーカーを、私に教えてくれている時だった。

⏰:08/11/09 23:55 📱:SH705i 🆔:i7UtH6lg


#391 [あかり]
タクロウ先輩と、その男友達の人が、一緒に帰ろうとしていた。

「あっ…!」
私はつい、声に出して言ってしまった。
幸いにも、それは隣の竜樹くんに聞こえまでの大きさだった。

タクロウ先輩は私たち二人に気がついたようで、私は先輩と目が合ってしまった。

でも、すぐに彼は顔を逸らし、そのまま友達と校門の方へ歩いて行った。

⏰:08/11/10 00:00 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#392 [あかり]
「あの人と知り合いなんすか?
遠足の時、司会やってた人ですよね?」
タクロウ先輩たちが消えたと同時に、竜樹くんが話を振った。

「あ、うん。少し…。」
私は顔を地面にやったまま、答えた。

心臓の鼓動がまだおさまらない。
先輩のことは、あまり考えないようにしていたのに―。

⏰:08/11/10 00:07 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#393 [あかり]
今日は小春先輩と一緒じゃないんだ…―

ふとそんなことが頭の中を過ぎった。

「先輩?大丈夫っすか?」
竜樹くんの言葉で、また我に戻る。

「うん!全然!
ちょっとぼーっとしちゃった!」
明るい声で返事をした。

⏰:08/11/10 00:11 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#394 [あかり]
「先輩はー、気になってる人とかいるんですか?」

「…えっ?」
突然の彼の質問に、私の声は必要以上に大きく発した。
彼とは普段、こういう話をすることはない。

以前、堀ノ内悠介くんから聞かれた時とは、また違う動揺であった。

私はその場でフル回転で考えた。
一体、どう答えればいいのだろうか―

⏰:08/11/10 00:16 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#395 [あかり]
さっき、竜樹くんの歌声を聴いた時、
"うっとりとする"とはこういうことなのかと、改めて理解した。

彼は私より一つ年下だけど、そうとは思わさせないくらい、見習いたいほど大人な意見をたくさん持っていた。

人間にはいくら好きでも、「合う」「合わない」があると思っている。
私は竜樹くんとは、同じような波長が漂っていると、感じていた。

⏰:08/11/10 00:25 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#396 [あかり]
それに比べて―
一年以上も片思いしていたタクロウ先輩とは―

私ははっきり言って、彼とは「合わない」であるだろうと、
初めて話した時から、その答えに自分でも納得していた。

一緒にいる時の二つの異なる空気が、溶け合うことなく反発しようとしているのが、それを物語る。

そんなのは努力次第だと思われるかも知れないが、
人生とは時に、自分の力だけではどうしようもならない物事がある。

特に男女間のフィーリングが、いい事例であろう。

⏰:08/11/10 00:36 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#397 [あかり]
それを十分承知していたつもりで、私は先輩に思いを寄せていた。

でも―
決して報われることのない自分の気持ち。
決して交わることのない平行線は、私の方の線が、
そろそろ折れかけている所だった。

先輩には、誰もが羨む彼女がいる。
私が陰で思うことに、何の意味があるのか―

⏰:08/11/10 00:42 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#398 [あかり]
以前、翔馬が言っていたことを思い出す。

「竜樹の奴さ、最近お前とメールするようになって、何か嬉しそうにしてたぞ。

あいつから普段女子のこととか全然聞かんから、俺もびっくりしとる訳。

相手がお前やけん、尚更やし!(笑)。

…あいつ、かわいい後輩やけんさ、真剣に向き合ってやってくれないか。」

⏰:08/11/10 00:49 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#399 [あかり]
最高の部分は、意味深な台詞だった。

日頃あまり、翔馬から真面目な話をすることはないから、私はより、その意見を受け止めていた。

竜樹くんも、私のことを決して悪く思っていないのだから、こうして接してくれているのだろう―

タクロウ先輩と出会って初めて、彼以上に、もっと色んなことを知りたいと思う男性が現れた。

⏰:08/11/10 00:56 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#400 [あかり]
「あ、えっと…えーっと…。」
そんなことを考えながら、言葉にならない思いを、
どう表現していいか分からずにいる私。

「あ、俺、変なこと聞いちゃったようですね…。
困らせたようで、すいません…。」

それから、二人の間に、沈黙の空気が流れる。

⏰:08/11/10 01:00 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#401 [あかり]
何か話さなければ、と焦る。
でも、全く違う内容に持っていくのも、むしろもっと気まずくさせると思った。

私は、いつもうじうじして、自分からぶつかっていくのを、いつも避けて過ごしてきた。

こんな自分を、本当はずっと変えたいと思っていた。
きっかけを待っていた、どんな小さなことでもいいから―

⏰:08/11/10 01:07 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#402 [あかり]
自分の本当の気持ち―

日に日に、竜樹くんの存在が、大きくなっていってるような気がした。

それは、決して先輩への思いが、報われないからという理由ではないことを、願いたい―

フッと、今度は藍美の顔が浮かんだ。
藍美、私、新しい自分に出会いたい―

⏰:08/11/10 01:13 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#403 [あかり]
「私ね…。」
シーンとした空気の中、口を開いたのは、私からだった。

「私、竜樹くんと、もっと話したり、一緒にいたいなって思って…るんだ…。」

あっ!と思った時には、既に遅かった。
自分でも何故こんなことを口走ったのか、分からなかった。

⏰:08/11/10 01:20 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#404 [あかり]
「えっ!?」
彼が驚く。
唐突なことを言ってしまったので、引かれただろうか。

でも、後悔はしていない。
むしろ、すっきりしている。
はっきりしない自分とは、もう決別したかった。

どうにでもなっちゃえ―
半分投げやりな思いで、目をつむった。

⏰:08/11/10 01:24 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#405 [あかり]
「俺、めっちゃ嬉しいっす!
木村先輩が、俺のことそんな風に思っててくれてたなんて。」

「えっ?」
予想外の彼の言葉と嬉しそうな表情に、私はふいをつかれた。

「俺、こう見えても、女の人とはどう接していいかわかんないんすよ?

でも、そんなこと言ってたら、いつまでも木村先輩と距離縮まんないじゃんって。
最近はホント頑張ってましたよ(笑)」

⏰:08/11/10 01:31 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#406 [あかり]
竜樹くんが話すことを、隣で心臓をバクバクにしながら聞いていた。

相変わらず彼は、私をドキドキさせるのが上手い―

「俺、本当はもっと時間が経ってから言おうと思ってたんですけど…

先輩のこと、ずっといいなと思ってて…

よかったら、俺と付き合ってくれませんか?」

⏰:08/11/10 01:44 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#407 [あかり]
「あかり、さっきから顔が赤いわよ。
熱でもあるんじゃない?」
晩御飯を食べながら、私の額に、母が手を当ててきた。

「熱はないみたいね。」

家に帰ってからも、ずっと竜樹くんから言われた告白の言葉が、頭の中で反復していた。

⏰:08/11/10 01:54 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#408 [あかり]
帰りの船の中で、翔馬と怜香には、今日の出来事を話さなかった。

付き合ってください―

彼のその気持ちに、まだ返事は出していない。
どちらに転ぶにしても、中途半端な思いが、一番傷つけると思ったからだ。

したがって、翔馬たちにも、まだ報告するべきではないと考えた。

自慢めいたものにしたくないし、竜樹くんのことは大切にしたいからこそ、より。

⏰:08/11/10 02:02 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#409 [あかり]
お風呂に入っている時も、部屋にいる時も、布団の中で眠りに就こうとした時も、竜樹くんのことばかり考えていた。

私にとって、彼の存在とは…?
ただのよく話す、後輩の一人…?

ちょっと前までは、そうであったかも知れない。

でも、この頃は…
一人の、男性…―

⏰:08/11/10 02:12 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#410 [あかり]
次の日―
休み時間のことだった。

「ンフフ。
私、克次先輩と付き合うことになったから〜!」
藍美からの、突然の発表。

「えぇぇ〜!!
それははおめでとう!よかったね、藍美!」
私は感極まった声で、彼女を祝福した。

⏰:08/11/10 06:50 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#411 [あかり]
「告白したのは、克次先輩からだよ。」
そう言って、藍美は口を開けたお菓子の袋を、私に差し出した。

「本当に!?藍美は、すごいね。好きな人を振り向かせるなんて。」
お菓子をつまみながら、私は彼女に感心した。

もしも私が、藍美だったら、タクロウ先輩ともっと仲良くなれたのだろうか―?

⏰:08/11/10 07:00 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#412 [あかり]
「メールの内容は大事だね〜。顔文字とか、めっちゃかわいいの使いまくるの。」

「アハハ。」

「あかりはどう、最近?
例の一年の男子とは。」

「えっ!」

⏰:08/11/10 07:05 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#413 [あかり]
「昨日、告白…されたよ…。」
藍美にだけは、今後のことを相談してみようと思った。

「あれま!それは急展開!
返事したの?」
藍美がふいに、お菓子の袋を床に落とす。
ゆっくりとした体勢で、それを拾い上げる。

「あ、まだ…。
どうしたらいいんだろって。」
ふと、翔馬がクラスの男子と輪になっているのに視線をやった。
彼は笑っていた。

⏰:08/11/10 07:17 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#414 [あかり]
「彼のことはどう思ってるの?好きなの?」

「…気になってる存在ではあるよ。」

「じゃあ問題ないじゃんっ!」

「えっ!藍美ったら!」
あっけらかんと即答した彼女に、私は笑った。
彼女のこんなところに、魅力を感じるというのはある。

⏰:08/11/10 07:24 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#415 [あかり]
「ん?何?おかしい?」

「私、つい最近までタクロウ先輩のことが好きだったんだよ。一年以上も…。

それなのに、すぐに他の人好きになるなんて、
先輩への思いなんて、その程度だったのかって…。」
改まったような面持ちで、私は言った。

それは、私が一番気にかけている部分であったかも知れない。

⏰:08/11/10 07:33 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#416 [あかり]
「んー…」
目を閉じて、藍美が腕を組み出した。

「あのさぁ!」
そして、自分の意見なりのを言う。

「例えばさ、付き合ってる人がいて…んで、別れたとするでしょー?

極論だけど、私は他に好きな人が5日後に出来ようが、5年後に出来ようが、変わらないと思うの。

ただ出会った日が遅かったか早かったかの違いだけで。

でも、すぐに付き合ったりすると、すぐに終わるパターンが多いのは確かだね。」

⏰:08/11/10 07:52 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#417 [あかり]
「うん、うん。」
私は藍美の話を、傍らで拍子をとりながら聞いていた。

「自分のこと、真剣に見てくれる人を大事にする人生にしたいね。」
私は窓の景色を見ながら、独り言のように彼女に言った。

昨日、竜樹くんと見た空と、同じ青さだった。

⏰:08/11/10 16:54 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#418 [あかり]
「あかりちゃん、今日中学校に遊びに行ってみない?」
帰りの船の中―
怜香からの提案だった。

「うんっ、いいかもねー。
久しぶりに日下部先生にも会いたいし。」

船が着いた後、私と怜香は歩いて母校を訪ねた。

⏰:08/11/10 20:04 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#419 [あかり]
「大原せんせーっ!」
職員室に入った途端、怜香が顔なじみの先生の所に、駆け寄る。

「おぉー!怜香、あかり!
元気しとったかぁ?」

「うん!元気ー!
先生、怜香がいなくて寂しいんじゃない?」
怜香が先生に抱き着く。

「おうおう。お前らが卒業してから、少しは静かになったかのう。」

⏰:08/11/10 20:16 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#420 [あかり]
「おー!何か懐かしいのがおるなぁー!」

「日下部先生!」
今、職員室に入って来たばかりの、元担任の先生に気づく。

「あかり!久しいのぉ。
ん?少し大人っぽくなったんじゃないかあ?」

⏰:08/11/10 20:29 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#421 [あかり]
しばらく私と怜香は職員室でたむろしていた。

中学の時は、昼休みになるとしょっちゅう遊びに来ていたものだ。

私と怜香は、高校の時の様子を話したり、中学の時の思い出話を、
室内にいる先生たちに話し出したりしていた。

「怜香お腹空いちゃったかも。そろそろご飯食べに帰ろうかな。」
気がつけば、外の景色はすっかり暗くなっていた。

⏰:08/11/10 20:42 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#422 [あかり]
「私も。今日の夕飯何だろー?」
ディスク用のイスから立ち上がり、怜香と帰る準備をしようとしていた。

その時、
「おー、そうそう!こないだタクロウとばったり会ったぞ!」
日下部先生が、思い出したかのように言い出した。

「…えっ?」
胸の奥で、懐かしい感覚が疼いた。

⏰:08/11/10 20:51 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#423 [あかり]
「あいつ学校帰りだったみたいでさ。
声かけたら、そそくさと立ち去るようにしてさあ。」
「ふーん…。」

「あ、女ん子が一緒にいたなあ。背の小さい子。」

「あ…。」

きっと小春先輩だ―

ズキン―
忘れようと励んでるつもりなのに、まだ痛む心がある―

⏰:08/11/10 20:56 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#424 [あかり]
怜香と中学校から帰る。
秋の夜風は、少し冷たかった。

空を見上げて、一番星を探そうとした。
田舎の星空は綺麗だ。すぐに見つかった。
一番星どころか、たくさんの星が、もうぽつぽつと広がっていた。

怜香が隣で、あー寒い、とぼやいていた。

⏰:08/11/10 21:01 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#425 [あかり]
カップルで下校―
普通、真っすぐ別れないで、どちらかの家に行くよね―

「ねぇ、怜香。
タクロウ先輩と小春先輩、どこまでいったと思う…?」
彼女に聞いてもどうしようもないことを、私は分かっていながら質問した。

⏰:08/11/10 21:04 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#426 [あかり]
「んー。最後までいってんじゃなーい?わかんないけど。
タクロウ先輩も18だし、経験があってもおかしくないっしょー、てか自然。

あんな可愛い人と二人きりになって、襲わない方がありえんっ。」

「アハハ…。」
少し前までは、三日くらいは沈み続けるほど、落ち込んだかも知れない。

でも今は、だいぶ心に余裕が出来ている。

竜樹くん―
私、前に進みたい。

⏰:08/11/10 21:10 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#427 [あかり]
「怜香。」

「うん?」

「私もいつまでも、後ろめいてちゃダメだよね。」

「?」

「私ね、昨日竜樹くんに告白されたんだ。
まだ答え出してないんだけど、明日、OKの返事、出すことにする。」

⏰:08/11/10 21:13 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#428 [あかり]
次の日の放課後―
私は竜樹くんとこないだ一緒にいた、体育館の玄関の所にいた。

昨日の夜、メールで、彼とまたここで会うよう約束を交わしていた。

今日は私の方が、先に来ていた。
私は彼に言う言葉を、頭の中で覚えるように何度も繰り返していた。

既に心臓の脈は、早く打っていた。

⏰:08/11/10 21:24 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#429 [あかり]
「先輩っ。」
しばらくして、竜樹くんがやって来た。

彼は私の隣に座った。
いつもより、静かな感じがした。

当たり前か。
今日は大事な話をするために誘ったんだから―

⏰:08/11/10 21:38 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#430 [あかり]
「…。」
「…。」

お互い最初の言葉が出ない。
嫌、私は思ってることを言いたいのだが、恥ずかしさからと緊張からか、
喉につっかえてしまい、そのままでいた。

もっとしっかりしなきゃ―
決めたんだ、一歩前に踏み出すって―

⏰:08/11/10 22:24 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#431 [あかり]
「…あのねっ!

えっと、こないだは告白してくれてありがとう。

私もね、この頃、日に日に竜樹くんの存在が大きくなってきてたんだ。

だから、気持ちを言ってくれたの、すごく嬉しかった。

私、全然可愛くないし、性格も…だけど
これからもっと竜樹くんと一緒に過ごしたいな!

んーと、んと…
だから、…よろしくお願い…します。」

⏰:08/11/10 22:32 📱:SH705i 🆔:Fbl.ErEw


#432 [あかり]
体は竜樹くんの方に向けていたが、下向き加減で思いのままを伝えた。

生まれて初めて、ここまで正直な気持ちを誰かに言えたのかも知れない。
まじまじと言うのは照れ臭いけど、心境は何だか悪くない。

むしろ、いい感じ。

⏰:08/11/11 02:06 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#433 [あかり]
「ははっ…まじ…すか…。」
竜樹くんは、胸を撫で下ろしながら、感嘆した様子でいた。
だんだん顔の表情が明るくなっていくのが分かった。

「あー俺、今日フラれるんじゃないかって思ってて…。

まじ…嬉し…。

歳は俺の方が一つ下だけど、大切にしますんで。」

「う、うん…。」
真面目な顔をして言う彼に、顔の体温が、だんだん熱くなっていった。

⏰:08/11/11 02:15 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#434 [あかり]
そして、私と竜樹くんの交際が始まった―

竜樹くんは、ほぼ毎日部活に明け暮れていたから、
家に帰ってからの、メールや電話のやり取りを毎日したり、
休日、一緒に図書館で勉強したりと、楽しい時間は流れていった。

やっと、私にも幸せが訪れたんだ―
心からそう思った。

⏰:08/11/11 02:22 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#435 [あかり]
「いよいよ後少しで修学旅行だねーっ!
克っちゃんへのお土産何にしよう!?

あかりは阿倍野くんに何あげたいー?」
藍美がお土産パンフレットみたいなものを眺めながら、そう言ってきた。

藍美は克次先輩と付き合うようになってから、
彼のことを"克っちゃん"という愛称で呼ぶことにしたみたいだ。

⏰:08/11/11 02:27 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#436 [あかり]
「あーん!
旅行中は克っちゃんと会えないし、連絡取れないや。」

「あはは。その分日本では出来ない体験を、存分にしてこようよ。」

「あ!修学旅行終わったらさ、Wデートしようよ!」

「うんっ、いいねー!楽しみなことがいっぱいだぁー!」

⏰:08/11/11 02:30 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#437 [あかり]
「ねぇねぇ!
もう竜樹くんとはチューしたの?」

「ななな何言ってんの藍美っ!?
まだ付き合ったばっかだよ!?」

「ありゃりゃー。まだかぁ〜。
そりゃ旅行前に是非とも拝んとかないとー。寂しいよー。」

「そんなっ…永遠の別れじゃないんだから(笑)。」

⏰:08/11/11 02:35 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#438 [あかり]
「私も後一週、間克っちゃんにチューせがみまくろーっと。」

「何も私の前で宣言しなくても(笑)」

「でも実際さ、そばにいれるだけで幸せっていうか…
キャハッ、城山さん清純派〜!(笑)」

「もー、言ってることの意味わかんないよ(笑)
一年の時は、藍美がこんな壊れた奴とは思いもしなかったよ!(笑)」

⏰:08/11/11 02:41 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#439 [あかり]
「…ありがとね。」

「え!?」

「私さぁ、一年の時、欠席や早退が多かったっていってたじゃん?
二年の最初の頃も、それは少し続いてたのね?

今まで話さなかったけど、精神的なことが影響してた…のよ。

でも、あかりと仲良くなってから、学校のこと楽しくなかった訳じゃないけど、休むのもったいなーって思うようになって!

出席率も多くなったのです〜めでたしめでたし!」

⏰:08/11/11 02:49 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#440 [あかり]
藍美は笑いながら言っていたが、目が涙で少し滲んでるのが分かった。

「そんな、こちらこそ。
私も二年になって、藍美やいのちゃんと友達になって、すっごく楽しいよ!」

藍美の休みが多いのは、体調不良だけかと思っていたが、明るい彼女も彼女なりに、色々とあるんだと思った。

今年は、悪いことを探す方が難しいくらい、良い一年になっている。

⏰:08/11/11 02:56 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#441 [あかり]
その日の帰りの船の中―
怜香の恋の相談を聞いていた。
同じクラスに、気になる人が出来たらしい。

「希緒ちゃん、阿倍野くんに教科書借りたりとかしてるよー。
まあでも、今はどちらかというと、四組の石上くんの方がお気に入りみたい。

あかりちゃん、付き合ってること隠してないで、周りに公表したらー?」
途中で怜香が、私にこんなアドバイスをしてきた。

⏰:08/11/11 03:04 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#442 [あかり]
「うーんでも、私自信ないし…。
『何であの人なん?』って中傷に耐えられる精神は持ってないよ…(笑)。」

私と竜樹くんは、一部を除いて、周りに秘密にしながら付き合うことにした。
私がそうしたいと彼に望んだ。

「ま、あかりちゃんがそれでいいなら、ね。

それに、事実を知らないで阿倍野くんに近寄ろうとしてる、希緒ちゃん見てるの楽しい(笑)」

「れ、怜香…。アハハ…。」
希緒ちゃん、ごめんなさい。

⏰:08/11/11 03:11 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#443 [あかり]
その時、私の携帯が鳴る。

「お、彼氏からかー?
いいなぁーラブラブで。」冷やかす怜香。

「今週末、良かったら俺の家で遊びませんか?(ノ゚O゚)ノ
ちょうど親いないんすよ!
修学旅行始まったらしばらく会えなくなるので(>_<) ―竜樹―」

ドキドキドキ…。
初めての竜樹くんの家…。

⏰:08/11/11 03:20 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#444 [あかり]
私はその誘いをOKすることにした。

竜樹くんと付き合うようになって、一緒にいる時間が増えてから、
それでも足りず、もっともっと近づきたいと思うようになってきた。

彼氏の家に行くということは、今までにないくらい気が動転するが、
当日は、私のこの思いを、伝えようと決めた。

溢れんばかりの好きという気持ちが、あるということ。

⏰:08/11/11 03:29 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#445 [あかり]
土曜日―
電車が彼の住んでる街に到着すると、竜樹くんが既に駅で待っていた。

竜樹くんは中距離で学校に通っていた。

竜樹くんの地元は、私のいる島とは違って、色んなお店があるのでワクワクした。

「行きましょうか。」
そう言うと、竜樹くんは私の手を取って歩き出した。

⏰:08/11/11 03:37 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#446 [あかり]
私服の竜樹くん―
何回か見たけど、彼のセンスは好きだなぁ…―

少し、香水をつけてるみたいだ―
鼻がツンとせず、程よく漂ってる―

今日の私の服、これで良かったかな―

色んなことを考えてしまう。

⏰:08/11/11 03:41 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#447 [あかり]
「家行く前、DVDでも借りて行きましょうか。」

私たちは、レンタルショップへと向かった。

「何か観たいのありますー?」
竜樹くんが、店内にを物色しながら、私に聞いてくる。

「うーん、『名探偵ドイル』とか、『ドラ太郎』が観たいなあ。
あ、後ね『リュックモンスター』。
チューピカ大好きなんだっ。」
私は自分の好みのアニメを色々言った。

⏰:08/11/11 03:56 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#448 [あかり]
「ぶはっ!
付き合ってるもん同士が観るのって言えば、普通恋愛もんとかじゃないんですか?
何ですかそのムードなしのセレクションは(笑)」
竜樹くんは、腹を抱えて笑い出した。

「ご、ごめんー!
私、恋愛ドラマや映画にはめっきり疎くて…。

えっと、今流行ってるのは『タクシー男』だっけ?
それ観よっか〜!」

「『バス男』ですよ!(笑)
もういいっす、リュクモンゲットだぜーでも観ましょか(笑)」

⏰:08/11/11 04:04 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#449 [あかり]
「う…(笑)。ごめんね…。
でも、嬉しい。アニメの方が好きだから…(笑)。」

「いえいえ(笑)。
まあ、こういう所がまた好き、なんですよねっ!

年上なのに、変に子供っぽいというか…幼稚園児?」
「その言い方はひどいよー!

ふーんだ。じゃあ、ついでに『カスタードパンマン』もよろしく。」

⏰:08/11/11 04:10 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#450 [あかり]
会計を済ませ、それからまた歩き出し、彼の家の近くまで来ると、
最寄りのコンビニでお菓子やジュースを買って、店を後にした。

そして、数分後―
阿倍野宅に到着。

「うわぁっ。綺麗なお家だね。」

「昨日から両親旅行行っててさ。俺、一人っ子だし、今誰もいないよ。」
ポケットから鍵を取り出し、竜樹くんがドアを開ける。

⏰:08/11/11 04:20 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#451 [あかり]
「どうぞ。何もないとこですけど。」

「おじゃましまーす。」

二人で玄関にあったスリッパに履き変える。

「リビング行きましょ。テレビも大きいし。」
竜樹くんの誘導のまま歩く。

⏰:08/11/11 04:24 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#452 [あかり]
「わぁ…居間広いねー!」
「まあ、そこのソファーにでも座っといてください。
俺、ジュースをコップに汲みますんで。」

「あ!私も手伝うよー!」

「いえいえ、わざわざ起こしいただいた身分なんで、まあ、ゆっくりしていってください。」
ダイニングキッチンの方へと移動した竜樹くん。

⏰:08/11/11 04:32 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#453 [あかり]
「本当?何か悪いねー。
じゃあ私は、観たいDVDの順番を決めようっと。」

「俺、最初はドイルがいいなー(笑)。」
キッチンの方から話かける彼。
2リットルペットボトルの、蓋を開けている。

「あっ、竜樹くんも一応こういうのに興味があるんだねっ。」

「いや、その中じゃそれが一番まだマシかなって…(笑)。」

「…。
『カスタードパンマン』にしよーっと。」

「わぁー!ごめんなさい!失礼なこと言いました!」

⏰:08/11/11 04:42 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#454 [あかり]
「嘘々。私も最初はドイルが観たいと思ってた。」

「やったぁ。」
オレンジジュースをついだコップを二人分持って、竜樹くんがこっちに来た。

「どうぞ。」
一つを私の目の前の位置に、テーブルに置いた。

それと同時に、彼もソファーに座った。

⏰:08/11/11 04:52 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#455 [あかり]
「犯人あの人っぽくない!?」

「俺も思った!」

DVDを観ながら、それにツッコミを加える二人。

「なんちゅう殺害動機やっ(笑)」

「現実ではありえないよねー(笑)」

⏰:08/11/11 05:37 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#456 [あかり]
「ギター弾いていいっすか?」

「あ、うん!」

何巻分か見終わって、彼はそろそろ痺れを切らしたのか、DVD鑑賞はそこで中断した。

二階の部屋から、ギターを持って来た。
こないだ見たのと、同じだった。

⏰:08/11/11 05:50 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#457 [あかり]
「ねぇねぇ、『カルガモ』弾いてっ。」

「赤アフロのですか?
えーっと、…」

思い出すような感じで、彼が伴奏の部分を弾く。

うんうん、そんな感じ、と隣で私が言う。

一曲歌い終わると、私がじゃああれはー?といった風にどんどんリクエストしていった。

⏰:08/11/11 06:05 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#458 [あかり]
「…先輩。」

「うん?何?」

「今日、良かったら泊まっていきませんか…?
あ、着替えとかは貸すんで。」

「えっ?えと…。」

「突然すいません。
でも俺、今日先輩をこのまま帰すのは惜しいです。

もっと先輩と一緒にいたいです。」

「う、うん…。」

⏰:08/11/11 06:13 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#459 [あかり]
嬉しい、ただそれだけだった

「じゃあ、お言葉に甘えてそうしちゃおうかな…。

私、お母さんに連絡するね。」

「やった…!ありがとうっす!」

「ううん、こちらこそ。迷惑かけちゃうけど。」

私は今日一晩、竜樹くんの家にいることになった。

⏰:08/11/11 14:43 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#460 [あかり]
私はお母さんに電話で用件を伝えた。
私の家は比較的緩い。
あっさり了承をもらえた。

「うん、分かった、だってー。」

「お礼に、今日借りたDVD、好きなだけ観ていいっすから(笑)。」

「はーい(笑)。」

楽しい一日になりそうだ。

⏰:08/11/11 14:51 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#461 [あかり]
「今日、夜何食べます?
出前頼みますか?それとも、どっか食べに行きますか?」

「うーん、そうだなぁ…。
私、今日はずっとここにいたいな。

あ!竜樹くんが何か作った奴が食べたい。」

「俺は主夫っすか(笑)。

いいですよ、チャーハンとかでいいなら。」

「わーい!」

⏰:08/11/11 14:59 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#462 [あかり]
だんだんと私たちは、お菓子をつまみながら、話をするようになった。

最初はお互いのクラスであった面白いこと、竜樹くんの部活での出来事、翔馬のこと、ずっと二人で笑い合っていた。

私は夏休み、未央姉の所に遊びに行ってたことも話した。
クリスマスはあそこみたいなお洒落な街でデートしたいな、と言った。

そうしましょ、と彼も約束してくれた。

⏰:08/11/11 15:08 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#463 [あかり]
「あのね…、一つ聞いていい?」

「ん?一つと言わず何でも。」

「すっごく今更なんだけど、何で私なのかな、っていつも思ってて。
一年生にも、可愛い子たくさんいるしさ。

体育委員の集まりの時にも、希緒ちゃんや江戸川小春先輩みたいな、他にもっといい子いたのに。」

私は前から疑問に思ってたことを、この際と思い尋ねてみた。

⏰:08/11/11 15:14 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#464 [あかり]
「俺、体育委員の時の前から、先輩のこと知ってたんすよ。」

「え!どうして?」

「ん?学校で時々見かける程度でしたけど。

その時から、いつもニコニコして可愛いなあーって。
そんで、あの集まりがあって、『あ!あの人もいるじゃん!』って思って。
何とか近づこうと必死でしたよ(笑)。」

「そ…そなんだ…。嬉しいな…。」
ありのままを話す彼に、照れる私。

⏰:08/11/11 15:24 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#465 [あかり]
「同級の女子とか、賑やかなんばっかなんで、ちょいきついっすね。
原さんも、なかなか騒がしい人なんで、ぶっちゃけ苦手っす。

えーと、江戸川さん?陸部のマネージャーしてましたよね。
あの人はー…ちょっとわかんないっす、すいません(笑)。

俺、先輩みたいに落ち着いてる人がいいっす。
だったら誰でもいいって訳じゃないけど。」

⏰:08/11/11 15:30 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#466 [あかり]
「先輩も、俺みたいなガキでいいんですか?」

「そんなことないよ!どちらかと言うと私の方が子供だし!」
私は今日借りたDVDの方を見た。

そうみたいですね、彼は笑いながら言った。

「竜樹くんは、私からしてみたら、文句なしの最高の恋人だよ。」
今日くらいは恥ずかしいくらいの台詞を言おうと思った。

⏰:08/11/11 15:42 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#467 [あかり]
時間はあっという間に過ぎていった。
楽しい時は決まってこうだ。いくらあっても足りないと思うほどである。

晩ご飯は、竜樹くん特製かに玉チャーハンなるものだった。

美味しくて、私はスプーンでパクパク食べた。
その光景を、彼は笑いながら見ていた。

⏰:08/11/11 16:01 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#468 [あかり]
「風呂どうしますー?
着替えとか、持ってないですよねー?」

「うーん、そうなんだよね。
明日、家に帰ってから入ろうかな。」

「じゃあ、寝る時はスエット貸します。
服は、洗濯しときますね。
明日には乾くやろ。」

「ありがとう。」

「じゃあ俺、風呂入って来ます。
まあ、ゆっくりしてってください。」

⏰:08/11/11 16:11 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#469 [あかり]
彼が入浴している間、私は居間に置いてあったカタログを見たり、テレビドラマを観てたりしてた。

「お待たせー。」
30分くらいして、彼がお風呂から出てきた。


タオルで髪を拭きながら、上はTシャツ、下は短パンジャージといった格好をしていた。

⏰:08/11/11 21:15 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#470 [あかり]
「はい、これ。寝巻き代わりに。」
そう言う彼から、上下灰色のスエットを渡された。

「脱衣所で着替えていいっすよ。」
その場所まで案内される。

「脱いだ奴は、洗濯機の中に放り込んどいてください。洗濯するんで。」
彼はそう説明すると、私一人にしてドアを閉めた。

⏰:08/11/11 21:27 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#471 [優]
あかりさん

コメントありがとう
ございます

⏰:08/11/11 21:33 📱:D902iS 🆔:Eo33jFa2


#472 [あかり]
優さん

こちらこそ
優さんのような方がいてくれて、本当嬉しいです。
今度は感想板を利用させていただきますね<(__)>

⏰:08/11/11 22:28 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#473 [あかり]
せっせと着替える私。
少しぶかぶかだった。

スエットから彼の匂いが少しした。
私の好きな匂い。

「着替えたよー。」
5分してから、再び居間に行く。

「歯磨きますか?歯ブラシ出します。洗顔も使ってください。」
座ってた彼が立ち上がって、また洗面台のある脱衣所へと二人で移動した。

⏰:08/11/11 22:36 📱:SH705i 🆔:tkcuL6d2


#474 [あかり]
シャコシャコシャコシャコ…

二人分の歯を小刻みに磨く音が、脱衣所内に響き渡る。

私は洗面台の棚に置かれている、あらゆるものを見ていた。

コップの中に入っている数人分の歯ブラシ、
男物の洗顔、T字型剃刀、ワックス、ハンドソープなどなど…。

洗顔はこれ使って、と彼に言われたものは、おそらく彼の母が使っているだろう。

今日初めてこの家に来たが、もう何年も暮らしているような気分に浸った。

⏰:08/11/12 04:21 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#475 [あかり]
ガコンガコン…


洗濯機の動く音が、居間にも聞こえてくる。
さっき竜樹くんが、私の服を洗うために起動させた。

「俺の部屋行く?」

「うん。」

広くて立派な家を、二人で持て余していた。

⏰:08/11/12 08:03 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#476 [あかり]
「どうぞ。汚い部屋ですけど。」

「おじゃましまーす。」

12畳くらいの広さで、床はフローリングだった。
中央に灰色のカーペットが敷いてあり、その上に白いテーブルがある。

部屋の左奥に、アルミ性のシングルベッドがあった。
布団カバーなどは、全て青で統一されている。

「寝る時一緒でいいですか?ちょいと狭いかも知れないですけど。」
彼がベッドを見ながら言った。

⏰:08/11/12 08:38 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#477 [あかり]
「あ、うん。」
少し声が裏返った返事をしたかも知れない。

当たり前か―
私たちは付き合ってるんだから―

私はベッドの奥の方へと行って、体を横にした。
続いて、彼がベッドに入る。
私たちは顔を向き合っているような体勢になっていた。

これまで以上の至近距離だった。

⏰:08/11/12 09:01 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#478 [あかり]
「今日一日、どうでしたか?
退屈しなかったですか?」

「ううん、めっちゃ楽しかった!また来たいなー。」

「是非。親、仕事上あんまりいないこと多いし。」

「寂しくないの?」

「小さい頃はそうでしたけど、今はもう慣れました。
それに、これからは先輩を思う存分詰め込められるしね(笑)。」

⏰:08/11/12 15:27 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#479 [あかり]
「フフフ。それを言うなら連れ込めるでしょ(笑)。
私をどこの箱に収納しようとするのよ(笑)。」

「あ、ヤベ…日本語間違えちった…。」

「フフフ、フフフ。
しっかりしてるけど、時々抜けてるよね。」

「うるせー(笑)。」

⏰:08/11/12 15:39 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#480 [あかり]
私はいつまでも笑っていた。

その時―
彼が真顔になる

私も次第に、表情が固まってくる。

「キス…してもいい?」

⏰:08/11/12 18:11 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#481 [あかり]
旅行前にチューくらいしときなよ〜―
藍美が冗談めいて言ってたのを思い出す。

いざ、そういう雰囲気になると、全く笑える状態ではない。

「うっ、うん…。」
しどろもどろになりながら、彼の要求を飲み込む。

⏰:08/11/12 18:19 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#482 [あかり]
彼は上半身を起こし、私の方に前のめりになって来る。

自分の右手を、私の左頬に添えた。

顔の顔がぐんぐん近づくてくる。

私は瞼を心持ち強く閉じた―

その瞬間―
彼の唇と、私の唇が合わさった。

私たちは、初めてキスをした。

⏰:08/11/12 18:30 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#483 [あかり]
彼がその唇を離しては、私の唇に優しく押し当てる。

その繰り返しの何度目かで、私は目を開けてみた。

彼と視線が重なる―
今更ながらこの状況に緊張してしまい、体が硬直していく。

キスが終わっかと思ったその後、彼は私の体に架けてあった布団をめくった。

⏰:08/11/12 19:18 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#484 [あかり]
「あかり…っ。」
年下の彼が、初めて私を呼び捨てで呼ぶ。

彼が、私の左の首筋を這う。
少しくすぐったくて、小さく、ひゃっ、という声を出してしまった。

そして、さっき私の頬に触れていた右手を、私が着ているスエットの中に入れてきた。

⏰:08/11/12 19:29 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#485 [あかり]
その腕は、ぐんと私の背中の方にまで回った。

ブラジャーのホックを、片手でパチンと外す。

それから、彼の右手は、私の左胸に触れる。

彼が手を動かす度に、私の口から、あっ、という声が、何度も漏れる。

今まさに、未知の世界に飛び込もうとしている、そんなエクスタシーを感じていた。

⏰:08/11/12 19:37 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#486 [あかり]
嫌ではなかった―
ただ、普段優しい彼の、こんな一面にいざ出くわすと、何かは分からない恐怖があった―

このまま抵抗しないとどうなるのか―
なろうとする結果を、今の私は望んでいるのだろうか―

涙が少しばかり出そうになった。
「いやっ。」と一言、ふいに漏らしてしまった。

それと同時に、体も僅かほど左に傾けた。

⏰:08/11/12 19:47 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#487 [あかり]
彼の動きが止まった―

「あ…ごめ…。」
そのまま体を起こし、ベッドの上に座る体勢になった。

「洗濯、もう終わったよな。
干してくる。」
そう言い残して、部屋を後にした。

私は布団をまた被り、その中で体を丸めた。
心臓の音が、嫌になるほど騒がしかった。

⏰:08/11/12 20:15 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#488 [あかり]
ギィーッ―
ドアを開ける音で、彼が戻ってきたのが分かった。

私は布団の中に潜ったままだった。

ギシッ。
彼はベッドに座ったみたいであった。
その重みが私の方にも伝わった。

「さっきはすいませんでした…。」

⏰:08/11/12 20:28 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#489 [あかり]
「…。」
私は言葉が出なかった。

「俺、こんなんじゃダメっすよね。」

違う、そうじゃないの。
ただ、まだ心の準備が―

「続きはつか、ね…。」
体を起こして、彼の隣に座った。
彼の顔の表情が、明るくなった気がした。

⏰:08/11/12 21:49 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#490 [あかり]
初めてのお泊りの夜は、彼に包まれながら眠りに就いた。

彼の中は、布団もいらないんじゃないかというくらい、暖かかった。

これでいい―
これがいいんだ―

夢の中でも、私は噛み締め続けていた。

⏰:08/11/12 23:25 📱:SH705i 🆔:FpZ7JzEk


#491 [我輩は匿名である]
>>100-200
>>200-300
>>300-500

⏰:08/11/15 14:20 📱:F706i 🆔:☆☆☆


#492 [あかり]
>我輩は匿名であるさん

アンカーありがとうございますm(__)m

また更新したいと思います。

誤字脱字が多くてごめんなさい(>_<)

⏰:08/11/15 17:25 📱:SH705i 🆔:2pDbajnE


#493 [優]
誤字脱字なんて
あたしの方が
しょっちゅうですよ
あかりさん
更新待ってます

⏰:08/11/15 21:23 📱:D902iS 🆔:APiCvIn6


#494 [あかり]
優さん

コメント有難うございます!!(*^O)ノ

今から更新したいと思いますp(^^)q

タロージローにウケました(笑)

⏰:08/11/16 01:43 📱:SH705i 🆔:qd3N09Qw


#495 [あかり]
次の日―
彼の中で、パッと目が覚めた。
彼はまだ寝ているようだった。

その寝顔をジーッと見つめていた。

神様…
私の運命の人は、この人なんですか…?―

⏰:08/11/16 01:48 📱:SH705i 🆔:qd3N09Qw


#496 [あかり]
私ももう一度、眠ることにした。
安らかなこの一時を、もう少しだけ味わっておきたい。

再び目を覚ました時―
彼は隣にいなかった。

部屋にもいなくて、私はとりあえず一階の居間へと下がった。

⏰:08/11/16 01:51 📱:SH705i 🆔:qd3N09Qw


#497 [あかり]
「あ、起きました?
洗濯物、夜干しで乾いてましたよ。」
キッチンで何やら作業をしながら、話す彼。

見ると私の服が、ソファーの上に置かれていた。

「ありがとう。洗顔と歯磨きしてくるね。」
私は洗面台へと向かった。

⏰:08/11/16 01:59 📱:SH705i 🆔:qd3N09Qw


#498 [あかり]
「それにしても先輩、結構寝てましたねー。
ほっぺつんつんしても、反応なかったから、起こさんどこーって思いましたよ(笑)」

時刻は朝の10時過ぎ―
私たちは、居間で少し遅めの朝食を取った。

竜樹くんが、トーストとハムエッグを作ってくれていた。

「う…。本当は早くに起きたけど、竜樹くん起こしたくなかったから、二度寝したんだよ!」

⏰:08/11/16 02:10 📱:SH705i 🆔:qd3N09Qw


#499 [あかり]
「先輩。」

「ん?」

「また来てくださいね。」

「ん?うん、もちろん!」

「修学旅行、気をつけて行ってくださいね。
俺にとっての一番の土産は、笑顔で帰ってきた先輩ですから。」

「う、うん!
何だか照れるね…ありがと。」

⏰:08/11/16 02:20 📱:SH705i 🆔:qd3N09Qw


#500 [あかり]
穏やかな時間は、瞬く間に過ぎていった。

昼過ぎに支度をして、二人で手をつないで駅まで歩いた。

改札口を通り抜けた後も、竜樹くんにずっと手を振り続けていた。

電車の中でも―
ずっとメールのやり取りをしていた。

⏰:08/11/16 02:25 📱:SH705i 🆔:qd3N09Qw


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