先輩と旅立ちの唄
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#201 [あかり]
小春。
小さな春かあ。
150センチに満たない彼女の身長と
愛らしい顔なのに、おとなしくて物静かな性格。
名は体を表すとは、こういうことなのか。
「確か、小春先輩には彼氏はいないんだよね。
不思議だあ。一体どんな人が好みなんだろ。」
私は担当の先生にも少し上の空で、そんなことを考えていた。
:08/10/31 08:50 :SH705i :XycnrOFk
#202 [あかり]
その日の帰りの船の中―
一通のメールが届く。
「んっ?
日下部先生からじゃん!」
久しぶりの名前に少し驚く。
「こないだタクロウと偶然に会った時、お前のことを話しておいたよ。
向こうは笑顔で嬉しそうにしてたぞ! ―日下部―」
「ま、ま、まじぃ〜!?」
:08/10/31 08:58 :SH705i :XycnrOFk
#203 [あかり]
私はイスから飛び上がり、胸を高鳴らせながら返信をする。
「先生ありがとう!かなり嬉しい! ―あかり―」
「学校でも気軽に話しかけてごらんよ。 ―日下部―」
「えー!無理だよー!(>_<)
先輩、いつも友達と一緒にいるもん。 ―あかり―」
:08/10/31 09:03 :SH705i :XycnrOFk
#204 [あかり]
「先生、その時あいつとアドレス交換したから、
お前ともメールするように頼んでやろうか? ―日下部―」
「えぇー!?いいの〜?是非お願いしまーす!(ノ><)ノ ―あかり―」
携帯電話を閉じ、座ってた長イスにゴロンと寝転ぶ私。
「キャァァー!どうしよう!
話は一気に急展開だあっ!」
:08/10/31 09:09 :SH705i :XycnrOFk
#205 [あかり]
その日の夜―
日下部先生から、タクロウ先輩のアドレスが載せてあるメールが届く。
「二年の木村あかりです☆私のこと分かりますか?(>_<) ―あかり―」
何度もためらいながら、やっとの思いで送信ボタンを押す。
心臓はバクバクである。
20分くらい経った後―
先輩からの返信がきた。
:08/10/31 09:18 :SH705i :XycnrOFk
#206 [あかり]
「ぅん。分かるよぉ↑↑
ょろしくぅ〜(^_-)-☆ ―タクロウ―」
先輩からのメールは、中高生の女の子がよく使っている、小文字混じりの文体であった。
「先輩ってメールではこんな感じなんだぁ〜!」
その一つ一つが新発見であった。
:08/10/31 09:24 :SH705i :XycnrOFk
#207 [あかり]
それと、私が「木村あかり」という人物であることを、先輩の中できちんとインプットされている。
たったそれだけのことに、非常に幸せを感じた。
その後のメールのやり取りから、私は先輩からCDを借りることになった。
『0318』の先輩の靴箱に入れておくから、勝手に取っておいても構わないとのこと。
:08/10/31 09:33 :SH705i :XycnrOFk
#208 [あかり]
先輩の靴箱…
そこで行われる、
誰も知らない、私と先輩のやり取り…
その日の夜はとても嬉しくて嬉しくて、
布団の中で、早く明日の朝になることを待ちわびた。
:08/10/31 09:37 :SH705i :XycnrOFk
#209 [優]
:08/10/31 09:39 :SH904i :oFFOA4zI
#210 [あかり]
次の日―
午前のホームルームが終わって、私は足早に玄関へと階段を下り、
『0318』の靴箱を探し、見つけたと同時にパカッと開けた。
「あれぇ?まだCD入ってないやぁ。」
そこには先輩の靴が一足分、入ってるだけだった。
でも、今日も一日先輩が学校にいるということが
この中身から読み取れただけで、私には十分だった。
:08/10/31 09:46 :SH705i :XycnrOFk
#211 [あかり]
優さん
またまたご感想ありがとうございます!
めちゃくちゃ感激です!
特に甘い内容もなく、つまらない話ですが(笑)
優さんのように読んでくれる方がいると、やりがいを感じられます(^-^)
:08/10/31 09:50 :SH705i :XycnrOFk
#212 [あかり]
教室に戻り、いのちゃんに「入ってなかった!」と、報告した。
彼女には朝一番に、昨日の先輩とのメールの件を話していた。
「あかりちゃん、気ィ早いな〜!
まだまだこれからっしょ。」
「あ、そうだよね(笑)。」
:08/10/31 09:55 :SH705i :XycnrOFk
#213 [あかり]
5限目―
私はその時間一杯を、生理痛の為、保健室で過ごしていた。
終礼のチャイムが鳴り、教室まで戻ろうとする。
その途中、体操服に着替えたタクロウ先輩が、ダダダッと向こうから走って来た。
私の存在に気づいた先輩が、私の目の前で、ピタリと足を止める。
:08/10/31 10:07 :SH705i :XycnrOFk
#214 [あかり]
「あっ!あんなぁ、
今日CD忘れたけん、明日持ってくるわぁ!」
先輩らしいケラケラとした表情で、私に指を指しながらそう言った。
「あっ…は、はい!
わざわざありがとうございます!」
:08/10/31 10:10 :SH705i :XycnrOFk
#215 [あかり]
「先輩に初めて話し掛けられちゃった…。」
動きの速くなる心臓を押さえながら、階段を上る。
私に向けられたさっきの先輩の笑顔が、ずっと、頭の中から離れられない。
:08/10/31 10:15 :SH705i :XycnrOFk
#216 [あかり]
次の日―
休み時間の合間に、先輩の靴箱を開けてみると、
約束どおりCDが入っていた。
私はそれを手に取り、教室に戻ると、ケースを割らないようにと、
持っていた袋の中に入れて、かばんの中にしまった。
:08/10/31 10:20 :SH705i :XycnrOFk
#217 [あかり]
CDを返す時は、メールの時決めておいたように、
また先輩の靴箱の中に入れておいた。
それ以降、先輩とは特に進展もなく、
普段と変わらない日常を過ごしていた。
私の先輩に対しての思いは、「好き」と「憧れ」が合わさった感じであったので、
自分から積極的にアタックやアピールというのには
かなり恐れ多く、気も引けて出来ずにいた。
:08/10/31 10:28 :SH705i :XycnrOFk
#218 [あかり]
ある日の船の中―
後輩である福島怜香という子と話していた。
島の子で、私と同じ高校に通っている一年生は、
彼女ともう一人の男の子だけである。
そういう境遇もあって、
帰りは毎日彼女とお喋りをするようになった。
:08/10/31 10:39 :SH705i :XycnrOFk
#219 [あかり]
「遠足の時に司会やった、小松先輩と塩見先輩、かっこいいよなぁー。
怜香は小松先輩の方がタイプかな〜!(笑)」
「あはは。小松先輩、面白いもんねっ。」
「一年生の間じゃあ、あの二人は人気あるねぇ。
隣のクラスの日高ちゃんっていう子なんか、
塩見先輩に本気で片思いしてるって聞いた。」
「へ、へぇ…。」
胸の奥から微かに、ズキンという音が聞こえた。
:08/10/31 10:48 :SH705i :XycnrOFk
#220 [あかり]
全く面識もなく、どんな子かも知らないが、
私はヒダカチャンというその子のことが、
今後話すことがあっても、好きになれそうもない気がした。
私は先輩を初めて会った時、「私が彼を見つけた」ような気分に浸った。
それが先輩を司会を行ったことによって、
一年生の女の子たちにとって「皆の先輩」みたいな感じになったのが、
無性に寂しかった。
:08/10/31 10:58 :SH705i :XycnrOFk
#221 [あかり]
月日は経ち―
その月、私たちの班は教室掃除の担当だった。
私はいのちゃんと二人で、ごみ捨てに行くことにした。
私は室内をひたすら掃除するより、
移動できるような係を好んでいた。
タクロウ先輩と、どこかですれ違うかも知れないという、可能性に期待していた。
:08/10/31 11:05 :SH705i :XycnrOFk
#222 [あかり]
二人でごみ捨て場まで行き、燃えるごみを出す。
この場所の清掃は、三年生が担当区域である。
渡されたごみを、数名の三年生の手によって、分別される。
:08/10/31 11:11 :SH705i :XycnrOFk
#223 [あかり]
その日は普段あまり出ない、燃えないごみの袋も持って来ていた。
燃えるごみを出し終えた後、次は不燃物処理場へと足を運ぶ、私といのちゃん。
その場所に近づいてみると、楽しそうな男女の話し声が聞こえる。
:08/10/31 11:16 :SH705i :XycnrOFk
#224 [あかり]
そこには―
タクロウ先輩と一年の女の子の姿が…。
女の子が私たちの存在に気がついて、こちらを振り向く。
その顔は―
いつかの体育委員の集まりの時、会話をした原 希緒ちゃんだった。
「あ、こんにちはです!」
希緒ちゃんは、あの時と同じ笑顔で、私に挨拶をした。
:08/10/31 11:21 :SH705i :XycnrOFk
#225 [あかり]
その後、再び二人はまた会話をし出した。
私といのちゃんは、燃えないごみの分別をする。
希緒ちゃんは可愛い顔のつくりをしているが、
ショートヘアで、喋り方や振る舞いも少々男の子っぽいのだが、
耳から聞こえる先輩との会話では、いつもより声のトーンを下げ、気品よく話しているような気がした。
:08/10/31 11:27 :SH705i :XycnrOFk
#226 [あかり]
あの光景を見てから、午後からの授業、放課後と、
一気に淀んだ気分でやり過ごした。
帰りの船の中で、怜香に尋ねてみる。
「一年三組の原 希緒ちゃんって分かる?」
:08/10/31 11:32 :SH705i :XycnrOFk
#227 [あかり]
「うん、分かるよ。
明孝もクラスが違うけど、その子と話す仲だもん。」
明孝とは、彼女の同級生で、同じ高校に通うもう一人の男子である。
「へぇ、そうなんだー。
希緒ちゃんって、どんな子なの?
明るくて、いい子そうに見えるけど。」
:08/10/31 11:41 :SH705i :XycnrOFk
#228 [あかり]
「とんでもない。
ナルシストで自分のことを自慢げに話すから、
女子からは嫌われてるよ。」
「えぇ!そうなの?
可愛いし、人懐っこい性格だから、周りから好かれてるのかと思ってた。」
怜香からの意外な情報に、私は目を丸くして驚いた。
私の目からは、あの子がそんな風には見えなかった。
それと同時に、ライバルになるかも知れない子が、
なかなかの不評で、ホッとする自分もいた。
:08/10/31 11:52 :SH705i :XycnrOFk
#229 [あかり]
「今日あの子が、タクロウ先輩と話してる所を見たんだ。」
「男タラシだからねー。
かっこいい人には自分から近づいて行ってるよ。」
「先輩が希緒ちゃんを好きになるとか、ないかな?」
「んー、ないんじゃない?
先輩からしてみたら、希緒ちゃんなんかガキだよ、ガキ。」
:08/10/31 11:57 :SH705i :XycnrOFk
#230 [あかり]
「アハハ(笑)。」
怜香の強気な発言に、私は笑った。
彼女は気の小さい私とは違い、ずばずばと物事を言う。
私はそんな彼女を、いつも羨ましいと思っていた。
年齢は私の方が一つ上だが、長年島で一緒にいたこともあり、対応は同級生と全く変わらなかった。
ちなみに島に住んでると、年上にでも、タメ口で話すのが自然なのである。
:08/10/31 12:04 :SH705i :XycnrOFk
#231 [あかり]
「原 希緒ちゃん―
タクロウ先輩のことを、どんな風な目で見ているのだろうか?
仮に二人が付き合うとかなったとしても、ここに怜香という、
一緒にブツブツ文句言える相手がいるから、いいっか。」
:08/10/31 12:10 :SH705i :XycnrOFk
#232 [あかり]
そして、真夏日も続く中、学期末試験も無事に終了し、学校は夏休みに入った―
私は長期休暇を兼ねて、隣の県に住んでいる、いとこの姉の元を訪ねることにした。
黒田未央という人で、私は未央姉と呼んでいる。
美容専門学校生ということもあり、服装や髪型もお洒落で、自慢の身内だった。
:08/10/31 12:22 :SH705i :XycnrOFk
#233 [あかり]
一人暮らしの未央姉の部屋に、数日間お泊りをさせてもらうことになった。
未央姉の住んでいる街は、田舎育ちの私からしてみれば、断然に都会に見え、
彼女に色んなお店などを案内してもらう度、自分もいつかはこんな所に住みたいと憧れた。
買い物から帰宅して―
買ったものを整理しながら、未央姉は言う。
「あ、今日の夜は、あたしの彼氏とその友達と、その後輩とか、色々来るけん。」
:08/10/31 12:31 :SH705i :XycnrOFk
#234 [あかり]
「うん、分かった。
未央姉の彼氏、どんなんだろー。
写真もプリクラも見せてくれないんだもんっ。」
「ブッサイクだから、あんま期待しないでー!(笑)
あかりと同い年の子も来るよ。」
「本当?仲良くなろうっと。」
:08/10/31 12:35 :SH705i :XycnrOFk
#235 [あかり]
夜になり―
ピンポーン、とチャイムが鳴る。
「あ、来た来た。」
未央姉が玄関まで、そそくさと立ち寄る。
「いらっしゃーい。」
未央姉がドアを開けた瞬間、がやがやという声が部屋からも聞こえ出した。
:08/10/31 12:39 :SH705i :XycnrOFk
#236 [あかり]
「こんばんはー!」
「おじゃましまーっす!」
部屋に続々と人が入る。
入って来る人来る人が、お姉さん・お兄さんという感じがして、少し緊張した。
「あかり、これがあたしの彼氏。」
未央姉が紹介する男の人を見た。
:08/10/31 12:47 :SH705i :XycnrOFk
#237 [あかり]
「あかりちゃん、初めまして。」
ファッション雑誌に載っても、おかしくはないような風貌と身なりだった。
彼はいわゆるお兄系という系統で、全体を決めていた。
「あかりちゃん、高二なんだって?
そこにいる彼が、あかりちゃんと同級生だよ。」
彼氏の人は、一人の男の子を指差す。
:08/10/31 12:54 :SH705i :XycnrOFk
#238 [あかり]
私は彼と目が合った―
「こいつな、高校で同じ部活の後輩やったに。
俺は今年で卒業したけどな。」
「あ、初めまして。
木村あかりって言います。」
私はその男の子に向けて、自己紹介をした。
「…初めまして。
…堀之内悠介です。」
彼は私に視線を合わせることなく、ぼそぼそと言った。
:08/10/31 13:05 :SH705i :XycnrOFk
#239 [あかり]
「悠の奴、なかなかのイケメンやろぉ!?
でもなー、こんな風にシャイな奴やし、
高校も男子高やけん、彼女が出来んのよな〜。
あ、俺の名前秋人ね(笑)。」
買ってきたお菓子の袋を開けながら、秋人さんが説明する。
彼の言うように、悠介くんはとても整った顔立ちをしていた。
眼球の大きな目、高くてスーッとした鼻、分厚い唇、爽やかなオーラや服装。
私の学校に転校して来たら、間違いなくたくさんの女の子からの、熱烈アプローチを受けるだろうと思った。
:08/10/31 13:16 :SH705i :XycnrOFk
#240 [あかり]
その後、未央姉と秋人さんの馴れ初め話や、学校での出来事などを聞いたりしていた。
一時して、持ち込んだお菓子の量が予想以上に足りず、数人でコンビニまで買い出しを行くことになった。
未央姉は秋人さんと女友達と楽しそうに歩いていて、
私は同級生の悠介くんの元に近寄ってみた。
:08/10/31 13:25 :SH705i :XycnrOFk
#241 [あかり]
「秋人さん、とても気さくでいい人だね。」
「…うん。」
「私は隣の県から今やって来たから、
悠介くんと出会ったのも、これも何かの縁だね。」
「…あ、そなんだ。
…こっちの人じゃないんだ。」
「うんっ。」
「…。」
「…。」
そこで会話は途切れ、コンビニに着くまで沈黙が続いた。
:08/10/31 13:30 :SH705i :XycnrOFk
#242 [あかり]
数日後―
私は悠介くんと図書館で勉強をすることになった。
その日は実家に用事のあった、未央姉からの提案である。
「一人で部屋でするよりはかどるし、寂しくないでしょ。
わかんないとこがあったら、成績優秀の悠介くんに教えてもらんなさい。」
:08/11/01 17:17 :SH705i :a4gM.aaM
#243 [あかり]
未央姉が書いてくれた、図書館までの地図を見ながら歩く。
紙の右下には、緊急時のため、と悠介くんの携帯番号が書かれていた。
私はそこに掛けるまでもなく、何なりと図書館までたどり着いた。
そこには悠介くんの姿が、すでにあった。
:08/11/01 17:25 :SH705i :a4gM.aaM
#244 [あかり]
「ごめんね、お待たせっ。」
駆け足で彼の元へ寄る私。
「…うん。」
「今日一日、私に付き添う形になっちゃってごめんね。」
「…別に、部活は朝に終わって暇だし。
家に居ても、勉強あんまり集中できないから。」
彼は相変わらず、私の目を見て話さずに、会話する。
改めて近くに立つと、二人の身長差が際立つことに気がついた。
:08/11/01 17:37 :SH705i :a4gM.aaM
#245 [あかり]
彼もまた、男の子なんだ―
常日頃、同級生の男の子を特に意識して接しない私は、
私服姿の彼と二人きりという状況に少しばかり緊張し始めた。
タクロウ先輩は、これよりもう少し高いよなぁ―
夏休みに入ってから、一度も会っていない、意中の相手を思い浮かべる。
:08/11/01 19:09 :SH705i :a4gM.aaM
#246 [あかり]
私たちは、中へと入り、
空いている席に、向かい合わせになるような形で、座った。
西洋風の、少し洒落た外観同様、館内も、それを思わせるような雰囲気だった。
私は夏休みの課題を取り出した。
悠介くんも、それらしいものから、取り掛かろうとする。
少し離れた席では、初老の男性が、文庫本を読んでいた。
:08/11/02 19:32 :SH705i :VokpdkiI
#247 [あかり]
一言も会話することなく、黙々と課題に取り組む私たち。
男の子と一緒に勉強するのなんて、あまりない経験だから、
最初は彼を意識しながら私であったが、次第と問題に集中して解いていた。
そろそろ他の教科をしようかと思った時、未央姉からのメールが届いた。
「無事に行けた?悠介くんによろしく言っておいて。 ―未央―」
:08/11/02 19:44 :SH705i :VokpdkiI
#248 [あかり]
「うん、今一緒に勉強してるよ。
分かった、伝えとく! ―あかり―」
「勉強頑張って。
帰り、あかりの好きなロールケーキ買ってくるね。 ―未央―」
やったあ、と心の中で喜ぶ私。
中にプリンが入った奴ね、と未央姉に注文した。
幼稚園くらいの女の子が、ワァーっといいながら、館内を走っていた。
:08/11/02 19:54 :SH705i :VokpdkiI
#249 [あかり]
プリンの部分を頬張っている自分の姿を想像すると、
同じように、顔もにやけて来た。
そんな私の姿に気づいたのか、悠介くんがちらっとこっちを見た。
私は恥ずかしくなり、咄嗟にページを乱雑な手でめくった。
:08/11/02 20:01 :SH705i :VokpdkiI
#250 [あかり]
それからして―
時計を見てみると、夕方の16時に差し迫ろうとした。
私は彼の前まで手を延ばし、
そろそろ出る?と、声に出さずに言った。
彼も出るか、といいながら、勉強道具をかばんの中にしまい始めた。
近くにいた初老の男性はいつ席を立ったのか、もう居なかった。
私は消しゴムから出たかすを、机の下へ落ちるように掃った。
:08/11/02 20:12 :SH705i :VokpdkiI
#251 [あかり]
「うーん。今日はすごく課題がはかどったよ〜。」
図書館の近くのカフェの中で、
私は冷たいカフェラテを飲みながら、彼に言った。
「…俺も。数学はもう終わりそう。」
コーヒーの中に入れた砂糖をスプーンで掻き混ぜながら、
視線はそれを見るようにして、彼は言った。
図書館から出て、この店に入ろうと言い出したのは私だが、
落ち着いた店内は、お客は私たちが一際若いようで、二人とも少しそわそわしていた。
:08/11/02 20:22 :SH705i :VokpdkiI
#252 [我輩は匿名である]
もしかして種子島の方ですか(^ω^)?
:08/11/02 20:37 :D902iS :x3aj0gGQ
#253 [あかり]
>我輩は匿名であるさん
いえ、全く違いますね
あそこほど大きな島ではないですm(__)m
:08/11/02 20:51 :SH705i :VokpdkiI
#254 [あかり]
「未央姉がね、今日はありがとうって。
そうそう、悠介くんとこの男子高って、有名進学校なんでしょ?
東大に進学してる人も、たくさんいるらしいね。
私、びっくりしちゃったー。
じゃあ、秋人さんも何気に頭いいんだね(笑)」
「…ああ、まあ。
俺はたいしたことないけど。」
「進路はもう決めてあるの?」
「学部はまだ迷ってるけど、とりあえず国公立を目指してる。」
「そうなんだ!私も見習わなきゃ!」
:08/11/02 21:09 :SH705i :VokpdkiI
#255 [あかり]
「悠介くんが私の学校にいたら、きっとモテモテだっただろうなぁ〜!
えっ、好きな人とかはいないのー?」
「…いや、そんなのとは全然縁ないよ。男子高だし。」
「友達の紹介とかは?」
「…何それ。」
「…。」
私は敢えて説明をしなかった。
:08/11/02 21:27 :SH705i :VokpdkiI
#256 [あかり]
「…いるの?」
「んっ?」
「…好きな人、いるの?」
初めて彼から質問をされて、私は少し驚いた。
「私?
うん!一年くらいずっと好きでいる男の先輩がいるんだ〜、
本当一方的な片思いだけどねー、アハハ。」
「…そなんだ、いるんだ。」
:08/11/02 21:36 :SH705i :VokpdkiI
#257 [あかり]
「うんー。」
表情では笑っていたが、
改めてこの一年を振り返ると、これといったアクションをかけられず
先輩を遠くから見ているだけの日々に、少し虚しさを覚えた。
「悠介くんはどんな人がタイプなの?」
私は話の方向を少しそらした。
「…明るい人、かな…。」
丸顔を気にしている私は、彼のシャープで小顔な輪郭を、羨ましいと思いながら見ていた。
:08/11/02 22:02 :SH705i :VokpdkiI
#258 [あかり]
彼のような顔立ちの少年は、どのような人に恋をするのだろうか―
「明るい人かあ。
うーん、どんな人かなあ。」
私は未央姉や、学校でとにかく自分が明るいと感じる女の子の名前を言ってみた。
「…な感じ…。」
その途中で、彼がぼそぼそとつぶやいた。
「んっ?何か言った?」
「…何でも。」
彼がそう返したので、私は特に気にしないことにした。
:08/11/02 22:11 :SH705i :VokpdkiI
#259 [あかり]
カフェを出た後、私たちは店の前でアドレスを交換して、それから解散することになった。
一人、未央姉の部屋まで帰る途中、
先程話題に出たからであろうか、タクロウ先輩の顔が浮かんだ。
先輩、今頃何してるかな―
夕方の涼しい風が、そよいだ。
:08/11/02 22:50 :SH705i :VokpdkiI
#260 [あかり]
「んーっ。最高ーっ。」
未央姉が切ってくれたロールケーキを食べながら、悦に浸る私。
未央姉は予定より早く実家から戻ってきたらしく、
一応渡されていたスペアキーを使うことなく、私は帰宅した。
「駅の中にあるケーキ屋さんの、新商品買ってきた。
今日、悠介くんとどうだった?」
うん、これにして良かった、と未央姉も食べながら言っていた。
:08/11/02 23:20 :SH705i :VokpdkiI
#261 [あかり]
「お互い黙々と課題やってた。
図書館の帰り、カフェで少し話したよ。」
「あかり、あの子とくっついちゃえばいいのに。
あ、そうしたら、ちょっと遠距離になっちゃうわねー。」
「へへへ変なこと言わないでよ未央姉っ!
私、一応好きな人いるしっ!」
「あら、それは初耳。」
:08/11/02 23:27 :SH705i :VokpdkiI
#262 [あかり]
こうして、未央姉宅へのお泊りは、楽しく過ぎていった。
一日中部屋でゴロゴロ過ごす日もあれば、
未央姉に外食に連れて行ってもらったり―
数日後、私は実家に帰ることにした。
未央姉が駅まで車を出してくれた。
窓の景色を見ながら、私はここであった様々な出来事を、思い返してみた。
:08/11/03 19:19 :SH705i :yfrWS1oo
#263 [あかり]
秋人さんのバイト先での面白い人の話や、
未央姉と食べた焼肉の味、
悠介くんが、恋愛経験ゼロって言ってたこと―
冬休みもまた、来れたら来ようと心の中で思った。
:08/11/03 19:43 :SH705i :yfrWS1oo
#264 [あかり]
車は数十分して駅に着き、
そこで、未央姉に別れを告げる。
それから、広い駅の中を歩き、改札口をくぐり抜けて、少し経った後、やって来た新幹線に乗り込んだ。
あと少ししたら、夏休みの補習が始まる。
タクロウ先輩の姿が、少しでも見れるといいな―
車内のアナウンスが鳴り響いた。
:08/11/03 22:00 :SH705i :yfrWS1oo
#265 [あかり]
久しぶりの我が家に帰宅―
その日の晩は、お母さんがご馳走を振る舞ってくれた。
未央姉の彼氏を見たこと、時々手伝いをした話などを、食卓に持ち込んだ。
へえ、そうとポテトサラダを皿に取り寄せながら言う母。
私は唐揚げを何個も頬張った。
:08/11/03 22:36 :SH705i :yfrWS1oo
#266 [あかり]
そして、補習の日へとなった―
久しぶりに、クラスの皆と顔を合わせる。
「いのちゃーん!元気してたー??」
「おう、あかりちゃん。
おかげさまで元気ピンピンやわ。」
夏休みの間に、いのちゃんは、髪を少し切っていたようだった。
:08/11/03 22:48 :SH705i :yfrWS1oo
#267 [あかり]
「藍美っ!」
今度は一人で座っていた、藍美の席へと近づく。
「あかりー!久しいねえ。
あ〜っ、補習とかやってられんわあーっ。
でも、好きな人に会えるかと思うと、嬉しいかなあ。」
「藍美、好きな人いるの!?」
彼女が何気なく言った言葉に、私は逃さなかった。
:08/11/03 22:56 :SH705i :yfrWS1oo
#268 [優]
:08/11/03 22:59 :D902iS :QxfIhSEg
#269 [あかり]
「いるいる〜。
三年五組の高島克次先輩。」
あ、その人知ってる、と私は一言もらした。
一年の最初の頃、部活見学でラグビー部も訪れに行った時、
私に向かって、「この子、マネージャーの瞳さんに似てる。」と、何度も言ってきたので、覚えていた。
学校でも時々見かけたことがあり、その度に厳つい人だなと思っていた。
:08/11/03 23:05 :SH705i :yfrWS1oo
#270 [あかり]
優さん
いつもコメントを残してくれて、本当にありがとうございます
<(__)>
胸が踊るほど、とても嬉しいです。
今日は時間の許す限り、更新したいと思います(^_^)
:08/11/03 23:09 :SH705i :yfrWS1oo
#271 [あかり]
「克次先輩、かっこいい〜!」
藍美は最高潮の笑顔を、私に見せる。
こんなにときめいている彼女を見たのは初めてだ。
克次先輩という人は、ラグビー部ということもあり、体はいつも黒く焼けていて、体格も良く、ガッチリしていた。
目つきも決していいとは言えず、彼に喧嘩を挑んでくる人はいないのではないかと思う。
:08/11/03 23:18 :SH705i :yfrWS1oo
#272 [あかり]
「私ね、ソフトマッチョって感じの人がいいの!
かっこよくない?」
藍美が一年の時に交際していた同級生の男子も、
確かに色黒で、ガタイが良かった。
「うーん…」
彼女の問い掛けに、私はたじる。
私が思いを寄せているタクロウ先輩は、高身長ではあるが、なかなか痩せていた。
「もやしっ子」の代名詞が、似合う人物であった。
:08/11/03 23:26 :SH705i :yfrWS1oo
#273 [あかり]
視力が悪く、普段も裸眼で過ごす私は、
その事実を知ったのは先輩を好きになってから随分後で、
先輩の細さには少しびっくりした。
そこから先輩を見る目が変わった訳ではないのだが。
体型重視で異性を選ぶ、藍美の恋愛の価値観だけは、
私には唯一理解できなかった。
:08/11/03 23:33 :SH705i :yfrWS1oo
#274 [あかり]
「文化祭の時にアタックするの!」
決意を私に示す藍美。
夏休みが終われば、文化祭の準備に取り掛かり、
それが一ヶ月もすれば、本番が始まる。
学校中が、文化祭一色になる季節。
今日の放課後も、クラスでの出し物を決める話し合いが行われる予定だ。
:08/11/03 23:39 :SH705i :yfrWS1oo
#275 [あかり]
文化祭かあ…―
私も、先輩と何か思い出が出来るといいけど―
まだ来ぬ学校行事に、別の意味で胸が膨らむ。
「あかりも頑張ろうよ!
塩見先輩のこと、好きなんでしょ?
そういえば、克次先輩と塩見先輩、同じクラスだねーっ。
なんか嬉しい。」
:08/11/03 23:43 :SH705i :yfrWS1oo
#276 [あかり]
昼休み―
私は藍美と購買、それから自販機へと足を運ぶ。
彼女とは昼食を取るグループが違うが、この行動は二人の日課であった。
タクロウ先輩とすれ違えるかな―
ひそかな私の期待。
:08/11/04 00:07 :SH705i :Of3VRH9k
#277 [あかり]
自販機で紙パックのジュースを買っている時、
少し離れた所から、友達と一緒にいるタクロウ先輩の姿が見えた。
ドキンドキンドキンドキン…
久しぶりの先輩の姿に、体全身で、緊張する。
夏休み前と変わっていない先輩の外見に、私は何故か安心感を覚えた。
:08/11/04 00:13 :SH705i :Of3VRH9k
#278 [あかり]
先輩は、昼食は友達と外で取っているようで、
一年の時から、その移動中をしょっちゅう見ていた。
私がお母さんに弁当を作らなくていいと言ったり、
毎日飲み物を買っていたのも、
先輩が廊下を通り掛かるこの瞬間を、一目でも見たいという、淡い希望を抱いていたからだ。
:08/11/04 00:19 :SH705i :Of3VRH9k
#279 [あかり]
私の狙いどおり、先輩は毎日その時間帯に、この場所に、姿を現しにやって来る。
補習の日であろうと、それは変わらなかったようだ。
「タクロウ先輩いた…。」
階段を上がりながら、教室へと戻る途中、藍美にぼそぼそと言った。
:08/11/04 01:32 :SH705i :Of3VRH9k
#280 [あかり]
私はこの日から、日記をつけることにした。
先輩の卒業まで残り半年ということで、
先輩と過ごす貴重な時間を、少しでも書き留めておきたいという気持ちからであった。
家にあった大学ノートを、それ用にすることにした。
先輩をどこどこで見たとか、どんな些細なことでも、ノートに記そうと決めた。
:08/11/04 01:40 :SH705i :Of3VRH9k
#281 [あかり]
最初ページに、今日一日の出来事や、感じたことなどを書き込む。
ペンが思わず進む。
『今日は通り掛かったタクロウ先輩を見ただけど、とても嬉しかった。』―
:08/11/04 02:48 :SH705i :Of3VRH9k
#282 [あかり]
夏休みの補習も終了し、
学校は二学期に入った―
学校全体で、文化祭に向けての準備に取り掛かろうとしていた。
毎年一年生は展示、二年生はステージ発表と決まっていた。
三年生は受験ということもあって、クラス一丸で何かすることはない。
私のクラスは、皆でソーラン節を踊ることへと進行した。
:08/11/04 02:53 :SH705i :Of3VRH9k
#283 [あかり]
放課後、クラス一体で柔剣道場へと移動し、ひたすら練習へと励む。
私は藍美と水野名美佳という子と、いつも三人で固まって踊りに励んでいた。
名美佳は「三年三組の坂下幸弘先輩がかっこいい〜。」と私と藍美に話していて、
したがって、私たちは自分たちのことを"先輩に恋する三人組"などと総称していた。
:08/11/04 03:04 :SH705i :Of3VRH9k
#284 [あかり]
「先輩にこの踊りが届けばいいのになーっ!」
私は両手に持っていた鳴子を天井にかざしながら、二人に言った。
「私も克次先輩の為に踊るーっ!」
私に続くように、藍美も同じポーズを取る。
「アハハ。二人とも熱いねえ。
うちは片思いってほどじゃないからー。
顔ファンって奴かな。」
名美佳が私たち二人を、見届けるような感じで言った。
:08/11/04 03:10 :SH705i :Of3VRH9k
#285 [あかり]
名美佳は笑っていたが、私のその気持ちは、彼女が思ってる以上に真剣であった。
生まれてこの方、学校でのイベント事などには、
「他の誰かがやってくれるだろう」という気持ちで、自分から積極的に取り組むことはなかった。
本番はタクロウ先輩たち三年生が、ステージの目の前の席で座っている。
下手な踊りは見せられないと焦った。
:08/11/04 03:20 :SH705i :Of3VRH9k
#286 [あかり]
「翔馬っ!
そっちの練習の方はどう?」
帰りの船の中、間食に菓子パンを食べていた翔馬に話し掛ける。
「んーっ。やっぱり難しい。」
いつもより低いテンションで、彼は言った。
翔馬を含むクラスの一部男子で、ソーラン節の前に、ダブルダッチという長縄を使ったパフォーマンスも、やることが決まっていた。
ソーラン節だけでは尺が短いということと、
クラス全員で踊れるほどステージが広くないということと、
会場を一際湧かせるためということからだった。
:08/11/04 03:32 :SH705i :Of3VRH9k
#287 [あかり]
「お互い頑張ろうねっ。
私、タクロウ先輩の為に踊るんだ。」
今日藍美が言った台詞を、そっくりそのまま発した。
「何だそれ(笑)。
本番、二つとも上手くいくといいよなー。」
「うん。」
明日の練習は、今日よりもっと打ち込もうと思った。
:08/11/04 03:37 :SH705i :Of3VRH9k
#288 [あかり]
文化祭も目前に差し迫った頃―
帰りのホームルームで、そのパンフレットが配布された。
放課後、藍美の席でそれを一緒に眺める。
各ゲームのメンバー紹介、体育祭の団長紹介など、様々なことが書かれていた。
「あかり、これ見て。」
藍美がある所に指を差した。
:08/11/04 03:44 :SH705i :Of3VRH9k
#289 [あかり]
『Dr.塩見タクロウ』
そこには意中の先輩の名前があった。
どうやら友達とバンドを組んで、ライブを行うようであった。
ボーカル、ギター、ベースの名前もそれぞれあった。
他にも数組のバンド名と、そのメンバーの名前が書かれていた。
同級生の名前もあった。
:08/11/04 03:49 :SH705i :Of3VRH9k
#290 [あかり]
「先輩、ライブするんだぁ…。」
「何か見た目も楽器出来そうな感じだよねーっ。
アハハっ!バンド名『インキン・パーク』だってさー!
まじウケるーっ。」
それは大人気洋楽バンドの名前を、一文字変えた総称であった。
自分の好きな人の下品で小学生みたいな一面を感じると、私はあまり笑えなかった。
:08/11/04 03:56 :SH705i :Of3VRH9k
#291 [あかり]
「あ、そろそろ行くー?」
藍美が時計を見て言った。
「あ、うん。そうしよっか。」
パンフレットを閉じる私。
先生が今日のホームルームの時間で、
「生徒会が食べ物の販売員を募集しているらしい。」
と言っていたのに対して、
私たちは興味をそそられ、それをやることにした。
二人で集合場所となっている教室まで行く。
:08/11/04 04:03 :SH705i :Of3VRH9k
#292 [あかり]
既に、教室にはたくさんの人でにぎわっていた。
販売員希望の中に、他のクラスの男子たちの顔も見える。
「きゃあっ、あかり。
あそこに克次先輩がいる!」
私にだけ聞こえるように、藍美は話した。
藍美が見つめる向に目を向けると、藍美の好きな克次先輩の姿があった。
「先輩もこのメンバーにいるんだあ!ラッキ〜!」
:08/11/04 04:09 :SH705i :Of3VRH9k
#293 [あかり]
二人で係まで登録をし、また教室へと戻った。
「一生の思い出に残る文化祭にしようね。
あかりも塩見先輩ともっとお近づきになれるといいねっ。」
「うん―。」
彼女のたくましさに、私は背中を押されたようだった。
文化祭は、先輩に絶対声を掛けるぞ―
決心した。
:08/11/04 04:14 :SH705i :Of3VRH9k
#294 [あかり]
文化祭開催が、もう明日へとなった日だった。
放課後、私は自分の席で、持っていた本を読んでいた。
周りには数人しかいなくて、とても静かであった。
「あかりっ。」
教室を入って来たやいなや、名美佳が私の方へと駆け寄ってくる。
:08/11/04 04:21 :SH705i :Of3VRH9k
#295 [あかり]
「ん?どうしたの名美佳?」
彼女の異様な表情に、私もすぐに異変を察知した。
「ちょっと廊下で話そうっ。」
周りに聞こえないようにか、彼女は話す場所を変えたがった。
私たち二人は廊下へと移動した。
:08/11/04 04:24 :SH705i :Of3VRH9k
#296 [あかり]
「あのね…。さっき女の先輩と話してた時に聞いたんだけどね…。」
「…?うん。」
「塩見…先ぱ…、かの…女が…いるんだって…。」
「え…。う、嘘…。」
名美佳からの思わぬ情報に、私は全身で震え上がった。
:08/11/04 04:28 :SH705i :Of3VRH9k
#297 [あかり]
「相手はね…、同じクラスの…江戸川…小春先輩…。」
「あ…。」
聞いたことのある名前で、それは私が同性で憧れを抱いている人だった。
体育委員の集まりの時にいた、三年生の中でも、特に可愛い容姿をしている先輩。
「そ、そうなんだ…。」
私は小さい声で、精一杯の返事をした。
:08/11/04 04:34 :SH705i :Of3VRH9k
#298 [あかり]
「ごめんね…。黙っていようかなって最初思ったけど、
やっぱり友達として、真実は伝えようって…。」
自分が悪いことでもしたように、謝る名美佳。
「ううんっ。むしろ本当のことが分かって嬉しいよ。
私がいつまでも気持ちを行動に移さないで、ただ遠くから見てるだけっていうのがいけないんだよね。
先輩に彼女が出来ても、全然おかしくないやーっ。」
彼女の優しさに、私は精一杯応えた。
:08/11/04 04:40 :SH705i :Of3VRH9k
#299 [あかり]
「江戸川小春先輩、すっごい可愛いよねー。」
帰りの船の中、翔馬に一番に話し掛けた言葉。
「陸上部のマネージャーの人だっけ。
サッカー部の練習の時、よく見るわ。
えーっ。ちょっと鼻がでかい。」
「…あんたねぇ、一体どんな人だったら可愛いって思うのよ!?」
「そりゃ俺だって、栗原沙弥さんは可愛いとは思ってるわ。」
「…。」
:08/11/04 04:49 :SH705i :Of3VRH9k
#300 [あかり]
「小春先輩とタクロウ先輩、付き合ってるんだってーっ。」
「タクロウって、お前の好きな人?あの帽子の。
それはドンマーイっ。」
「ちょっとぉ、少しは慰めてよねーっ!」
「…だからドンマイって言ってんじゃん。」
「翔馬の意地悪っ!」
:08/11/04 04:52 :SH705i :Of3VRH9k
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