先輩と旅立ちの唄
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#391 [あかり]
タクロウ先輩と、その男友達の人が、一緒に帰ろうとしていた。
「あっ…!」
私はつい、声に出して言ってしまった。
幸いにも、それは隣の竜樹くんに聞こえまでの大きさだった。
タクロウ先輩は私たち二人に気がついたようで、私は先輩と目が合ってしまった。
でも、すぐに彼は顔を逸らし、そのまま友達と校門の方へ歩いて行った。
:08/11/10 00:00 :SH705i :Fbl.ErEw
#392 [あかり]
「あの人と知り合いなんすか?
遠足の時、司会やってた人ですよね?」
タクロウ先輩たちが消えたと同時に、竜樹くんが話を振った。
「あ、うん。少し…。」
私は顔を地面にやったまま、答えた。
心臓の鼓動がまだおさまらない。
先輩のことは、あまり考えないようにしていたのに―。
:08/11/10 00:07 :SH705i :Fbl.ErEw
#393 [あかり]
今日は小春先輩と一緒じゃないんだ…―
ふとそんなことが頭の中を過ぎった。
「先輩?大丈夫っすか?」
竜樹くんの言葉で、また我に戻る。
「うん!全然!
ちょっとぼーっとしちゃった!」
明るい声で返事をした。
:08/11/10 00:11 :SH705i :Fbl.ErEw
#394 [あかり]
「先輩はー、気になってる人とかいるんですか?」
「…えっ?」
突然の彼の質問に、私の声は必要以上に大きく発した。
彼とは普段、こういう話をすることはない。
以前、堀ノ内悠介くんから聞かれた時とは、また違う動揺であった。
私はその場でフル回転で考えた。
一体、どう答えればいいのだろうか―
:08/11/10 00:16 :SH705i :Fbl.ErEw
#395 [あかり]
さっき、竜樹くんの歌声を聴いた時、
"うっとりとする"とはこういうことなのかと、改めて理解した。
彼は私より一つ年下だけど、そうとは思わさせないくらい、見習いたいほど大人な意見をたくさん持っていた。
人間にはいくら好きでも、「合う」「合わない」があると思っている。
私は竜樹くんとは、同じような波長が漂っていると、感じていた。
:08/11/10 00:25 :SH705i :Fbl.ErEw
#396 [あかり]
それに比べて―
一年以上も片思いしていたタクロウ先輩とは―
私ははっきり言って、彼とは「合わない」であるだろうと、
初めて話した時から、その答えに自分でも納得していた。
一緒にいる時の二つの異なる空気が、溶け合うことなく反発しようとしているのが、それを物語る。
そんなのは努力次第だと思われるかも知れないが、
人生とは時に、自分の力だけではどうしようもならない物事がある。
特に男女間のフィーリングが、いい事例であろう。
:08/11/10 00:36 :SH705i :Fbl.ErEw
#397 [あかり]
それを十分承知していたつもりで、私は先輩に思いを寄せていた。
でも―
決して報われることのない自分の気持ち。
決して交わることのない平行線は、私の方の線が、
そろそろ折れかけている所だった。
先輩には、誰もが羨む彼女がいる。
私が陰で思うことに、何の意味があるのか―
:08/11/10 00:42 :SH705i :Fbl.ErEw
#398 [あかり]
以前、翔馬が言っていたことを思い出す。
「竜樹の奴さ、最近お前とメールするようになって、何か嬉しそうにしてたぞ。
あいつから普段女子のこととか全然聞かんから、俺もびっくりしとる訳。
相手がお前やけん、尚更やし!(笑)。
…あいつ、かわいい後輩やけんさ、真剣に向き合ってやってくれないか。」
:08/11/10 00:49 :SH705i :Fbl.ErEw
#399 [あかり]
最高の部分は、意味深な台詞だった。
日頃あまり、翔馬から真面目な話をすることはないから、私はより、その意見を受け止めていた。
竜樹くんも、私のことを決して悪く思っていないのだから、こうして接してくれているのだろう―
タクロウ先輩と出会って初めて、彼以上に、もっと色んなことを知りたいと思う男性が現れた。
:08/11/10 00:56 :SH705i :Fbl.ErEw
#400 [あかり]
「あ、えっと…えーっと…。」
そんなことを考えながら、言葉にならない思いを、
どう表現していいか分からずにいる私。
「あ、俺、変なこと聞いちゃったようですね…。
困らせたようで、すいません…。」
それから、二人の間に、沈黙の空気が流れる。
:08/11/10 01:00 :SH705i :Fbl.ErEw
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