先輩と旅立ちの唄
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#611 [あかり]
その瞬間、彼がピタリと動きを止める。
「自分からしてって言わないと、もうやめちゃうよ。
いいの?」
彼が命令口調になる。
首を横に振りながら
「もっと…して…。」
と、私はお願いした。
彼の指を動かすスピードが、さっきよりも速くなった。
:08/11/24 18:05 :SH705i :KS/NgqI2
#612 [あかり]
途中で頭がのぼせてきて、両足もがくがくとなる。
我慢しきれずに、喘ぐ声も漏れてしまう。
「…今日はこの辺でおしまい。」
行為は、いつも数十分で終わる。
こんなやり取りが、何日か続いた。
:08/11/24 18:13 :SH705i :KS/NgqI2
#613 [あかり]
その日も、彼のすることと態度は、同じであった。
その行為中、私は遂に泣き出してしまった。
彼がこんな風になってしまったことよりも、
彼をこんな風にしてしまった自分が悲しかった。
動きを即座にやめる彼。
「ごめん…。」
:08/11/24 18:18 :SH705i :KS/NgqI2
#614 [あかり]
「俺、自分に自信がなくて…。
先輩に、いつも触れてないと不安で…。
傷つけてしまったよね…。
ごめん、ごめんなさい…。」
「ううん、悪いのは私だよ…。
私、もう塩見先輩のことは何とも思ってないから…、忘れるから…。」
:08/11/24 18:23 :SH705i :KS/NgqI2
#615 [あかり]
それからの私たちは、より関係が深くなったと思う。
彼は前以上に、穏やかで優しくなった。
相手を思いやるとは、こういうことなのかと、解ったような気がする。
バレンタインも、奮闘して作ったクッキーとショコラを、彼に渡した。
彼はいびつな形を気にせず、喜んでくれた。
日常に、平凡な笑顔が溢れていた。
そして、三年生の卒業も目前に控えている時だった。
:08/11/24 22:38 :SH705i :KS/NgqI2
#616 [あかり]
「克次先輩から、もう一度付き合って欲しいって言われたー。」
放課後、屋外の渡り廊下で、藍美に相談をされた。
私たちは自販機で買った、ココアの缶を手に持っていた。
「まじで!?この学校も、もう卒業するっていうのに、
藍美のこと、本当に好きなんだね。」
「うーん…。
でも私はやっぱり、ヨリを戻す気なーい。
何か…違うんだもん。」
そう言った後、藍美がココアを飲み干した。
:08/11/24 22:49 :SH705i :KS/NgqI2
#617 [あかり]
「それじゃあしょうがないね。
人間には相性というものがあるから。」
「うん、断るつもりー。
当分男はいいや。
あかりはいいよねー。
年下クンとラブラブで。
ねぇねぇ、
どこまでいってんのよー?」
:08/11/24 22:53 :SH705i :KS/NgqI2
#618 [あかり]
「えっ、な、何言ってんの藍美っ…。」
「あーあー、何にも知らなさそうな顔して、男を色々知っちゃってるのねー。
城山さん、なーんか寂しっ。」
「ブッ!!」
「これからも、彼氏と仲良くね。」
「うんっ。」
:08/11/24 23:08 :SH705i :KS/NgqI2
#619 [あかり]
卒業式前日―
放課後、その予行練習が行われた。
在校生出席は、毎年二年生だけである。
後ろの席から、先輩たちの晴れ舞台を見ることになる。
起立や着席、一礼の確認、進行の手順などを一通りやっていた。
:08/11/24 23:49 :SH705i :KS/NgqI2
#620 [あかり]
私はその間、タクロウ先輩の姿を、意識して見ないようにした。
練習は一時間ほどで終わって、生徒は解散をした。
放課後、私は一人で学校の近くのコンビニに、お菓子を買いに行った。
日が暮れるのもすっかり早くなってきた。
駅に向かっている時だった。
:08/11/24 23:55 :SH705i :KS/NgqI2
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