言葉
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#1 [あい]
「しゅう」
この名前があたしが初めて声に出した言葉
今日も「ありがとう」「ごめんね」
いろいろな言葉の練習を始める…
しゅうありがとう
:09/02/07 13:03 :F706i :☆☆☆
#2 [あい]
小学1年生の時、あたしは病気によって耳が聞こえなくなった。
家族と話すのは紙に書く。
あたしが書いたら家族も書き返す。そんな会話。
中学生になった時手話を覚えた。毎日練習した。
:09/02/07 13:11 :F706i :☆☆☆
#3 [あい]
でも耳の聞こえない人達が通う学校。
友達はみんな耳が聞こえない人ばかり。
「あいおはよう。」
手話の会話で毎日が始まる。
高校受験の時、家族と話し合いあたしは高校を行かない事にした。
ボランティア。
耳が聞こえない人達と話にいく。
あたしは毎日そこに通う事にした。
紙芝居を作り手話でそれを伝える。
手話で手が疲れるくらいまで話をした。
:09/02/07 13:16 :F706i :☆☆☆
#4 [あい]
ある日夕方に家に帰ってる時だった。
歩いていたら1人の男の人がぶつかってきた。
あたしの顔を見ながら何かを言っている。
ちょっと怒ったような顔をしている。
短髪で髪をワックスで整え、制服を着ている。
ちょっと綺麗な顔をしているその人。
高校生?
タメぐらいかな?あたしはそう思いながら彼を見た。
:09/02/07 13:21 :F706i :☆☆☆
#5 [あい]
この人は何を言ってるんだろう…
あたしはノートを取り出しペンで書いた。
「ごめんなさい。」
ノートを渡した時、彼は不思議そうな顔をしていた。
「お前喋れねぇの?」
ゆっくり喋ってきた彼。
口の動きで何となくわかった。
あたしは頷いた。
:09/02/07 13:25 :F706i :☆☆☆
#6 [あい]
「耳が聞こえない。」
あたしはまたノートに書き彼に見せた。
驚いた感じの表情。
彼があたしからノートとペンを取って、何か書き始めた。
「俺、耳聞こえないやつ初めてなんだけど!」
その人の字はものすごくでかかった。
下に
「ぶつかってわりぃな。気をつけろよ。」
と書いてあった。
彼の顔を見たら
「じゃあな。」って手をあげて走って行ってしまった。
急いでるんだろうな…
これがあたしとしゅうの出会い
:09/02/07 13:30 :F706i :☆☆☆
#7 [あい]
あたしはその日の夜ノートを見ていた。
「道聞いてもいいですか?」
この文字を見せても
いつもあたしは素通りされる。
「ごめんなさい。」
あの人は素通りしなかった。
もっと嬉しかったのは
その人もノートに書いて答えてくれた。
初めての事だったから
すごい嬉しかった。
:09/02/07 13:37 :F706i :☆☆☆
#8 [あい]
それから数日過ぎた。
あたしはいつものようにボランティアが終わり
家に向かってる時だった。
肩を叩かれたから振り向いたら
あの時の人だった。
今日も制服を着ていた。
後ろには友達もいて、
学校帰りなのだろう。
手を上げて
「よぉ。また会ったな。」
って言っていた。
あたしは頷いた。
:09/02/07 13:49 :F706i :☆☆☆
#9 [あい]
「言ってる事わかんの?」
彼はそう言った。
あたしは笑いながらノートに書いた。
「口見れば何となくわかるよ。だからゆっくり喋って?」
そしたら…
「わかった。俺の名前はしゅう。お前は?」
「あたしはあい。」
ノートを見ながらしゅうは手でOKとやっていた。
友達の名前はこうすけ。
こうすけも不思議そうにあたしのノートを見ていた。
:09/02/07 14:27 :F706i :☆☆☆
#10 [あい]
しゅうとこうすけは
あたしの家から近い高校に通う1年生。
あたしとタメだった。
こうすけは彼女と待ち合わせをしてると言い
あたし達と別れた。
「帰らないの?」
ノートに書きあたしはしゅうに見せた。
するとしゅうは頷いた。
「ちょっと話そうぜ。」
あたし達は駅前のマックに移動した。
:09/02/07 22:59 :F706i :☆☆☆
#11 [あい]
しゅうは本当に綺麗な顔をした人だった。
あたしがわかるように
ゆっくりゆっくり話してくれた。
口は悪いけど、悪い人ではないってわかったよ。
「彼女いないの?」
あたしは聞いた。
「いるわけねぇだろ。いたらあいと今話してねぇよ。」
笑ってしゅうは言ってたけど…
それが嘘って事はすぐ知っちゃったんだよね。
:09/02/07 23:05 :F706i :☆☆☆
#12 [あい]
「アド交換しない?」
しゅうが言ってきてあたし達はお互いのアドを教えた。
耳が聞こえる友達。
小さい時にしかいた事がないから
あたしはすごく嬉しかったんだよ。
耳が聞こえなくなった時から出来たのはみんな耳が聞こえない人。
それが嫌な訳じゃないけど
あたしはいつの日か
耳が聞こえる人は遠い人って感じてたから…
しゅう…本当に嬉しかったんだよ。
:09/02/08 00:58 :F706i :☆☆☆
#13 [あい]
しゅうは毎日メールをくれた。
学校であった事、バイトの事、しゅうの趣味、嫌いな食べ物。
いろいろしゅうは教えてくれた。
その日あたしは休みだった。
日曜だったため、学生は休み。
町には私服でいる学生っぽい人達がいっぱい。
:09/02/08 01:06 :F706i :☆☆☆
#14 [あい]
あたしは本屋にいた。
雑誌を見ながらふっと窓を見るとしゅうがいた。
女の子と手を繋ながら。
あれ?彼女いないって言ってなかったっけ?
最近できたのかな?
あたしはそう思ってた。
でも何だか切なかった。
:09/02/08 01:16 :F706i :☆☆☆
#15 [あい]
しゅうはノートに書いてでしか、手話でしか話せないあたしを避けないでくれた人。
仲良くなった人。
何でだろう〜…
わかんないけど何か悲しい。
その日しゅうから
いつものようにメールがきた。
:09/02/08 01:19 :F706i :☆☆☆
#16 [あい]
【今日マジで暇だった。ずっと家にいたし。】
嘘つき…
あたしは返さなかった。
【シカトか?てか俺、手話練習する事にしたから。】
またきたしゅうからのメール。びっくりした。
【どうして急に?】
【お前ともっともっと話したいから。】
こんな事言うの…ずるいよね。
:09/02/08 01:27 :F706i :☆☆☆
#17 [あい]
しゅう、あたし知ってるんだからね。
彼女がいる事…
手繋いで歩いてるの見たんだからね…
胸が締め付けられるような痛み。
何故かわからないけど
痛かった…
これが恋って気づくのに
そんな時間かからなかった。
:09/02/08 01:34 :F706i :☆☆☆
#18 [あい]
もうすぐで夏。
【今から会おうぜ?】
しゅうからのメールであたし達は会う事に。
場所は駅近くの公園。
あたしが着いた時にはもうしゅうがいた。
「こんばんわ。」
手話であたしにそう言ってきたしゅう。
「こんばんわ。待った?」
あたしも手話で返す。
しゅうは横に首を振った。
:09/02/08 01:37 :F706i :☆☆☆
#19 [あい]
「ごめん。まだそんな覚えてねぇから、わかんない時は口見て?」
あたしは頷いた。
「ねぇ、しゅう彼女いるんでしょ?」
あたしは聞いた。
「えっ?ごめん、わかんねぇ。」
あたしはノートに書いた。
それを見たしゅうは
「何で?」
って手話で聞いてきた。
:09/02/08 01:41 :F706i :☆☆☆
#20 [あい]
「「…」」←手話
「…」←手話なし
【…】←メール
カッコこれにします
:09/02/08 01:42 :F706i :☆☆☆
#21 [あい]
【…】ノートもこれで。
:09/02/08 01:44 :F706i :☆☆☆
#22 [あい]
【あたしこの前見た。しゅうが女の人と手繋いで歩いてるの。】
「「そっか。」」
【最近できたの?】
しゅうは下を向く。
あたしは肩を叩き、しゅうはあたしを見る。
「「前からなの?」」
あたしが聞くとしゅうは頷いた。
:09/02/08 01:47 :F706i :☆☆☆
#23 [あい]
「「何で嘘付くの?」」
「「何でかな…。何となくだよ。」」
手慣れてないからかな。しゅうは間違えながら手話であたしに言った。
「「意味わかんないよ」」
「〜…………」
しゅうは何か言っている。
手話無しで、しかも口の動きが早くてわからなかった。
:09/02/08 02:00 :F706i :☆☆☆
#24 [あい]
「「何?ゆっくり喋って。わかんない。」」
そしたらしゅうは言ってきた。
「彼女いるって言ったらお前アド交換してくれなかっただろ?」
しゅうはあたしの目をじっと見ている。
:09/02/08 10:29 :F706i :☆☆☆
#25 [あい]
「お前と仲良くなりたかったんだよ。耳が聞こえない奴、手話練習する。全部初めてで…」
しゅうは言うのやめた。
「「何?」」
でもしゅうは何も言わない。
「「何?」」
あたしはまた聞いた。
そしたらしゅうは…
「「俺何かドキドキしてんだよ。」」
:09/02/08 10:40 :F706i :☆☆☆
#26 [あい]
胸が痛い…
ドキドキしてるのはあたしの方だよ。
「「俺、もっとあいの事知りたい。」」
何て言っていいのかわからない。
「「俺、彼女と別れるよ。」」
「「待って!!それはあたしの事好きって事?」」
あたしは何を言ってるんだろう。
すごく恥ずかしかった。
:09/02/08 15:38 :F706i :☆☆☆
#27 [うた]
頑張ってください。
:09/02/08 23:21 :SH905i :o8HLUpm.
#28 [あい]
うたさん
ありがとうございます
:09/02/09 00:12 :F706i :☆☆☆
#29 [あい]
「「何言ってんだよ!」」
焦った感じのしゅう。
そりゃあいきなりこんな事聞かれたら焦るし、困るよね。
「「ごめん」」
あたしは謝った。
そしたらしゅうは困ったような顔で髪をくしゃくしゃにかき、あたしを見た。
「好きと言うか、今は気になる存在。」
:09/02/09 00:15 :F706i :☆☆☆
#30 [あい]
しゅうの口はハッキリそう言っていた。
"気になる存在"
初めて男の人にそう思ってもらえた。
あたしはしゅうに聞いた。
「「彼女とどれぐらい付き合ってるの?」」
しゅうはノートを取り書き始めた。
【1年半】
:09/02/09 00:19 :F706i :☆☆☆
#31 [あい]
あたしは少しショックだった。
1年半…
あたしは彼氏ができた事がないから、その長さにもびっくりした。
「「やっぱ嘘でしょ?」」
「「何が?」」
「「あたしの事気になるって事。」」
しゅうは返事を返してこない。
ちょっとして、しゅうが手を動かした。
:09/02/09 00:26 :F706i :☆☆☆
#32 [あい]
「「何でお前そんな事言うの?」」
しゅうは怒ってた。
どうしよう〜…何て言えばいいんだろう。
わかんないのか、しゅうは手話を止めてゆっくり話し出した。
「どんな想いで俺がお前に気になるって言ったと思ってんだよ。嘘?ふざけんな。」
そのまましゅうは鞄を持って店を出て行った。
:09/02/09 00:33 :F706i :☆☆☆
#33 [あい]
間違えました。
鞄を持って公園を出て行った。
:09/02/09 00:35 :F706i :☆☆☆
#34 [あい]
謝らなきゃ。
でもあたしはその場から動けなかった。
しゅうが行っちゃってから1時間ぐらいは公園にいたと思う。
帰ろう。帰ったらメールを送って謝ろう。
そう考えてた時…
:09/02/09 22:30 :F706i :☆☆☆
#35 [あい]
前から走って来る人。
しゅうだった…
息をきらしている様子。
「「ごめん。」」
しゅうは手話で謝ってきた。
「「何でしゅうが謝るの?」」
「女1人残して俺だけ行っちゃって。」
あたしは首をふった。
:09/02/10 07:53 :F706i :☆☆☆
#36 [あい]
「「ごめんね。あたしひどい事言った。」」
あたしは手話を続けた。
「「でも思うの。そんな長く付き合ってる人がいるのに、あたしを気になるって…」」
「「早くない?って聞きたいんだろ。」」
あたしの話がまだ終わってないのに
しゅうが手話で言ってきた。
:09/02/11 09:19 :F706i :☆☆☆
#37 [あい]
「「確かにお前と俺、知り合って全然時間たってねぇ。彼女の事本気だったよ。」」
慣れない手話。
間違えながらもしゅうはあたしに伝える。
「「でも、お前と会ってからずっとお前の事ばっか考えてる。気になってるって気づいた。」」
あたしはしゅうを見た。
:09/02/11 09:24 :F706i :☆☆☆
#38 [あい]
恥ずかしそう…
またあたしは胸が痛くなってきた。
ドキドキしてる。
「「好きとか、気になるとかに早い、遅いとか関係ないと思う。」」
どうしよう…
「「だから、あいの事いっぱい知りたい。仲良くなりたい。」」
そんな嬉しい事言わないで…
「「俺は彼女と別れる。」」
:09/02/11 09:28 :F706i :☆☆☆
#39 [あい]
泣きそう。
あたしは泣かないよう我慢した。
「「だから、お前にメールしていいよな?遊び誘ってもいいよな?」」
あたし…
「「今言った事嘘じゃねぇから。」」
しゅうが好き。
:09/02/11 09:33 :F706i :☆☆☆
#40 [あい]
しゅうは本当に彼女と別れた。
しゅうとはいっぱい会うようになった。
「「お前バカかっ。」」
しゅうの口癖。
「「恥ずかしいから。」」
照れたり、恥ずかしい時には頭をかく。
「「もうちょっといよう。」」
:09/02/11 10:25 :F706i :☆☆☆
#41 [あい]
ちょっと甘えん坊のしゅう。
あたしはどんどんしゅうの事を知っていった。
それに、どんどんしゅうの事を好きになっていった。
しゅうと出会って、季節はもう冬。
もうすぐでクリスマス。
町はイルミネーションで綺麗だった。
:09/02/11 10:28 :F706i :☆☆☆
#42 [あい]
12月25日、クリスマスはしゅうと過ごす事になった。
24日はあたしはボランティアでクリスマス会をやる。
サンタの格好をして、ケーキを食べたり、あたしが作った紙芝居などを見せる。
しゅうはバイト。
ピザ屋でやっていて、配達が大変になるかもって言ってた。
しゅうはどんどん手話を覚えていって、もうほとんどの会話は手話でできるようになった。
:09/02/11 19:23 :F706i :☆☆☆
#43 [あい]
あたしはこの日クリスマスにあげるプレゼントを買いに来ていた。
あたしはもう決まっていた。
ピアス…
しゅうはピアス集めが趣味だったから、あたしはピアス売り場に来ていた。
どれにしよう…
悩んでる時、1人の人が見ているピアスに目がいった。
:09/02/11 19:26 :F706i :☆☆☆
#44 [あい]
見ている人と目が合った。
「ごめんなさい。見てどーぞ。」
口の動きでわかった。
あたしはノートに
【ありがとうございます。そのピアスいいですね。】
その人はノート見て手話で言ってきた。
「「耳聞こえないの?」」
:09/02/11 19:29 :F706i :☆☆☆
#45 [あい]
「「手話できるんですか?」」
あたしも手話で返す。
「「うん。お母さんが耳聞こえないから。プレゼント探し?」」
あたしは頷いた。
「「じゃあ一緒に見ない?」」
:09/02/11 19:32 :F706i :☆☆☆
#46 [あい]
彼女が見ていたピアス。
見た瞬間にこれにしようと思った。
しゅうは左に2個付けてるからそのピアスともう1つ別のを買った。
プレゼント用に箱に入れてもらい可愛いラッピング。
店に出て、彼女にお礼を言って帰ろうと思った。
「「よかったら話さない?」」
:09/02/11 19:39 :F706i :☆☆☆
#47 [あい]
あたし達は喫茶店に入った。
彼女の名前は千尋。
1つ上の高校2年生。
「「彼氏にプレゼント?」」
袋に指差し、聞いてきた。
「「違うよ。彼氏じゃないけど、男の人。」」
「「そっか。何かいいね。その人の事好きなの?」」
あたしは頷いた。
:09/02/11 21:33 :F706i :☆☆☆
#48 [あい]
「「明日過ごすの?」」
「「はい。」」
千尋はケーキを食べながら、いいね、いいねって。
「「千尋ちゃんは彼氏いないの?」」
「「いないよ。でも、好きな人はいるんだ。その人にあげようと思って。」」
千尋もピアスを買っていて、それを見ながら嬉しそうに言ってた。
:09/02/11 21:43 :F706i :☆☆☆
#49 [あい]
「「絶対喜ぶよ。頑張って!」」
ちょっと悲しそうな顔をする千尋。
「「どうしたの?」」
「「好きな人と話した事ないの。」」
千尋の話はこうだった。
その人は違うクラスの人で、サッカー部のエース。
そりゃあモテる人で、高校入学してすぐ一目惚れしてずっと好きなんだって。
:09/02/11 22:19 :F706i :☆☆☆
#50 [あい]
「「いつも休み時間にはその人の周り女の子ばっかでね。話かけらんない。」」
「「でもプレゼント買ったんだし、渡さなきゃ。」」
「「あたし頑張る!!あいちゃん、ありがとう。」」
それからもいろいろ話してアドレスを交換して、あたし達は別れた。
:09/02/11 22:38 :F706i :☆☆☆
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