微妙な10センチ。〜最終〜
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#117 [あき]
【なに?】
珍しくすぐに返事が戻ってくる。
これだけで、少しだけ気分が晴れてしまう自分が、本当に情けない。
【ひま?】
同じ文面を送り返す。
またすぐに返事が戻ってきた。
【だから何?】
【家に帰れないの…】
:09/07/25 20:37
:W65T
:tBOBuo2E
#118 [あき]
【意味がわかんね】
今の状況をかくかくしかじかと文面に綴る。
送信して数分で、また戻ってきた。
【タクシー呼べば】
そんな事言われる前から、わかってるし。
ただなんとなく、期待しただけ。
わかってた。
だけど
嘘でも、冗談でも、何だって良かった。
仕方ないなぁ。待ってろ。
そのたった一言を…期待しただけだった。
:09/07/25 21:33
:W65T
:tBOBuo2E
#119 [あき]
眠そうなフロントマンらしきおじさんに、鍵をもらうと、その古ぼけて寂れたホテルの部屋に荷物を置いた。
カビ臭い部屋には、一昔前の装飾品、そしてベッドが置いてあった。
ベッドに倒れ込む。
遥か昔。
夜の街、酔っ払いの私を何度も迎えに来てくれた。
恐怖の夜、遥か向こうにいた私を探し迎えに来てくれた。
もう迎えには来てくれない彼。
綺麗に整えられたホテルに佇む西条さん。
寂れたホテルに背を向けるなおちゃん。
いつから、どこで、何が変わったのか、わからなかった。
:09/07/25 21:45
:W65T
:tBOBuo2E
#120 [あき]
脱ぐ気力も体力も失ったスーツのポケットで、携帯が震える。
画面を見ると、名前が表記されていた。
―
『はいっ』
《お疲れ様です。無事に家につきましたか?》
電話を通して聞く声は、今の私には、罪だ。
それでも、明るく笑いながら、今の状況を伝える私に、西条さんは、そうだったのと、苦笑いをしながら、自分も今帰ってきたよと、あの優しい、なまりのある声で、そう言った。
:09/07/25 21:53
:W65T
:tBOBuo2E
#121 [あき]
お疲れ様から始まった電話は、この一週間の話になり、互いを労い、互いを認め合い、そして笑い合った。
《またこっちに来る時は教えて。飯でも奢るよ!》
『わかりましたっ〃ま…当分はないと思いますけどねっ〃』
《はははっ〃了解。じゃ、おやすみ》
『おやすみなさい』
そう言って電話を切った時、一時間が過ぎていた。既に時刻は、深夜を通り過ぎて、、深く深く街も人も眠りについている時間。
物音ひとつしない静寂。
私は、また一人になった…
:09/07/25 22:02
:W65T
:tBOBuo2E
#122 [あき]
携帯電話をテーブルに置いて、カビ臭い小さな浴室でシャワーを浴びた。
濡れた髪もそのままに、またベッドに倒れ込む。
倒れ込んだ先に手に取った、もうひとつの携帯電話。お気に入り待ち受け画面が記されているままだ。その携帯をベッドに放り投げて何かを諦める。
こんな夜をもう何日繰り返したんだろうか。
なのに、人間は、どんなに闇に包まれいても、お腹も減るし眠くもなる。
生きている以上、仕方ないのだけれど。
もう疲れた。
このまま朝になんて、こなきゃいいのに…
私は、またそう思いながら、また明日を迎える為に、今日を終わらすのだ。
自然と重くなる目と、体をベッドに任せた。
:09/07/25 22:31
:W65T
:tBOBuo2E
#123 [あき]
体が夢心地になり出した頃。頭の上で携帯電話が鳴った。手を伸ばし、眩しい画面を見つめる。
【どうにかなったのか?歩いてるとか言うなよな。馬鹿。】
愛想も何もない嫌みの文字に、もう遅いよなんて、思ったのに…
【馬鹿とはなんだ。どうにもならなかったから、近くのホテルに泊まったしっ。】
少し嬉しかった。
:09/07/25 23:21
:W65T
:tBOBuo2E
#124 [あき]
《あの時、迎えに来てくれなかったじゃん!!》
《迎えに来て欲しいなら、そう言え。》
《タクシー呼べばって言ったのは誰?》
《あれは、アドバイスだ。》
《あれは、迎えに来てって言ってるもんでしょぉ?》
《めんどくせ。どうにかするって言ったろうが》
《そこは空気読んでよっ!まっ言ったからって来ないでしょうがねっ。》
《俺は、どうにもならんな、行ってやるつもりでしたけど?》
:09/07/25 23:34
:W65T
:tBOBuo2E
#125 [あき]
あれから数日後。
ふとした電話でこう会話した。
なんだ‥
変わってないじゃん。
ただ私達には言葉が足りないだけなんだ。
私達、まだ、こんなにも楽しく話せるんじゃん。
普通に話せるんじゃん。
変わってないよね。
私達…
なのに、この寂しさはなんだろう。
そっか。
長く居すぎて。
私達、もっと必要な、大切な何かを失ってるんだ…
そう気付いた。
:09/07/25 23:42
:W65T
:tBOBuo2E
#126 [あき]
いつしか私達は、何も語らなくなったし、何も言わなくなった。
言葉を交わさなくても、何が言いたいのかを理解できるし、時間を重ねなくても、傍にいると思えていた。
それは、私達が、出会ったあの頃から。
再開したあの日から。
重ねた時間や、重ねた言葉が、歩いた道が、そうさせたに違いない。
あの頃みたいに、だらだらと電波を駆使して時間を重ねなくても
あの頃みたいに、長々と時間を重ねなくても。
私達は何かを共有していた。
それで満足していたんだ。
:09/07/26 01:48
:W65T
:G/V7tpkE
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