微妙な10センチ。〜最終〜
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#281 [あき]
『出れば?…出れん相手?』

西条さんが冷たい空気に変わる。
ビクリと体が固まった。
怖い。
そう感じた。

『じゃ。ごめんなさい』

そう言って、受話ボタンを押した。


これが、私の始まりだった。

⏰:09/08/14 01:22 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#282 [あき]
―ピッ
『はいっ?』

《何してる?》


私が大好きだった声。

聞きたくて、聞きたくて、どうしようもなかった時、聞けなかったのに。
諦めると、こうやって聞かされる。
本当に卑怯だよ。

『出掛けてる。なにっ?』

右側。無言の西条さん。
体の左側がとても痛い。

無意識に冷たい声で返事した。

⏰:09/08/14 02:03 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#283 [あき]
《あっそ。ならいいや。》

なおちゃんは、また、相変わらず一方的に要件をまくし立てた。
私は、相槌を打って適当に返事する。

『わかったから。とにかく、また電話するよっ。』

《おぅ。帰ったら電話して。》

『わかった。』

そう言って、半ば強引に電話を切った。
細くため息をついて、反射的に顔中の筋肉を上に持ち上げる。
にっこり微笑んで、右側。西条さんを見た。

⏰:09/08/14 02:09 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#284 [あき]
『ごめんなさい〃友達が…』

時間にして、5分。
そう言って、西条さんの顔を見た瞬間に、私は、体が萎縮した。
前を見据える西条さんの顔が、怒りに満ちているのがわかり、ハンドルを握る腕に力が込められているのがわかる。

『…また男だろ?』

その声は、まるで地獄の底から響いてくるような。
とても低い声。

『…友達…です…』

体を硬直させながら、私はそう呟いた。

⏰:09/08/14 02:14 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#285 [あき]
『それは男?』

『…うん…』

『なんて?』

『…用事だよ。』

西条さんは、無言で私の言葉を受け入れる。
数秒黙って私の言葉を、噛み砕いた。

『彼氏いるならそう言えよ!!俺を騙してたのか!!』

『違うっ!!彼氏なんていないっ!!』

また彼は噴火した。
あの優しく微笑んでくれる彼はいなかった。

⏰:09/08/14 02:20 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#286 [あき]
荒々しく車は進む。
恐怖で体が固まり、言葉を失った。
それでも、その中で、必死に私は、西条さんの怒りを静めようと言葉を探した。

『友達にしたら、親密な間柄を感じれる会話だったけどねっ!!?』

『だからっ!!それは…仲良いからっ!』

『その彼だろっ?あきが好きな奴はっ!!』

『今は違うっ!ねぇ。怖いって。スピード緩めて…』

⏰:09/08/14 02:24 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#287 [あき]
高速道を、猛スピードで走り抜ける車。
怒りを露わにする西条さんを必死になだめながら、私は、怒りの右側と恐怖の前方を確かめる。

『この先っ!!カメラあるからっ…ねぇっ!!怖いってばっ!』

車は、急ハンドルで高速道、インターチェンジを抜けた。突然の事に、体を支えきれず、なんとかの原理ってやつだろう。いとも簡単に私の体は、ベンチシート横、運転席に座る西条さんにぶつかった。
とっさに起き上がろうとした私の肩を、西条さんは、力一杯に抱き寄せ、その肩に指が食い込んだ。
私は、国道を西に向かう間、力ずくのまま、その胸の中にすっぽりと収まっていた。

⏰:09/08/14 02:35 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#288 [あき]
遥か昔、痛めた腰が、無理な体制を強いられている私をズキズキと打っている。だけど、肩を掴む力が弱まる気配はなく、しばらくこのままで過ごしているしかなかった。
私の視界には肩を掴んだまま、無表情、無言で、車を走らせる西条さんしか見えない。
国道を西に進んで、しばらくすると車が、急に左に折れどこかに入って、止まった。

『降りるよ。』

『…はいっ…』

体を起こして、やっと窓の外を見渡す。
どこだかわからない。
薄暗い地下駐車場。
即座に助手席のドアが開けられ、私は彼に手を引っ張られた。

⏰:09/08/14 02:46 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#289 [あき]
引っ張られるように、車を降りて、その薄暗い場所に立って。ようやく、ここがどこだか理解できた。
理解出来たと同時に、更に西条さんに恐怖を覚える。

『ちょっと…なにっ…やめてよ…』

『いいからっ。』

握った手に強く引かれて私は、そのまま引きずられるように中へと入って行った。

⏰:09/08/14 02:52 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#290 [あき]
部屋に入り、無言のまま強く握られた手を投げ出される。投げ出された私の体は、今度は強く引き寄せられる。苦しくて、もがけばもがく程、彼の力は強くなり、離してと言えば言う程絡まりついた。

腰に回された腕は強く私を抑えつけ、顔を持たれた手は顎を抑える。

必死に顔を背けても、荒々しい彼の唇で抑えつけられた。昨夜のあの優しく包み込んでくれるような暖かさはなかった。
抵抗すればする程、力は強くなる。嫌だと叫ぶと腕をまた掴まれた。

⏰:09/08/14 03:03 📱:W65T 🆔:0SdBI476


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