微妙な10センチ。〜最終〜
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#287 [あき]
高速道を、猛スピードで走り抜ける車。
怒りを露わにする西条さんを必死になだめながら、私は、怒りの右側と恐怖の前方を確かめる。

『この先っ!!カメラあるからっ…ねぇっ!!怖いってばっ!』

車は、急ハンドルで高速道、インターチェンジを抜けた。突然の事に、体を支えきれず、なんとかの原理ってやつだろう。いとも簡単に私の体は、ベンチシート横、運転席に座る西条さんにぶつかった。
とっさに起き上がろうとした私の肩を、西条さんは、力一杯に抱き寄せ、その肩に指が食い込んだ。
私は、国道を西に向かう間、力ずくのまま、その胸の中にすっぽりと収まっていた。

⏰:09/08/14 02:35 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#288 [あき]
遥か昔、痛めた腰が、無理な体制を強いられている私をズキズキと打っている。だけど、肩を掴む力が弱まる気配はなく、しばらくこのままで過ごしているしかなかった。
私の視界には肩を掴んだまま、無表情、無言で、車を走らせる西条さんしか見えない。
国道を西に進んで、しばらくすると車が、急に左に折れどこかに入って、止まった。

『降りるよ。』

『…はいっ…』

体を起こして、やっと窓の外を見渡す。
どこだかわからない。
薄暗い地下駐車場。
即座に助手席のドアが開けられ、私は彼に手を引っ張られた。

⏰:09/08/14 02:46 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#289 [あき]
引っ張られるように、車を降りて、その薄暗い場所に立って。ようやく、ここがどこだか理解できた。
理解出来たと同時に、更に西条さんに恐怖を覚える。

『ちょっと…なにっ…やめてよ…』

『いいからっ。』

握った手に強く引かれて私は、そのまま引きずられるように中へと入って行った。

⏰:09/08/14 02:52 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#290 [あき]
部屋に入り、無言のまま強く握られた手を投げ出される。投げ出された私の体は、今度は強く引き寄せられる。苦しくて、もがけばもがく程、彼の力は強くなり、離してと言えば言う程絡まりついた。

腰に回された腕は強く私を抑えつけ、顔を持たれた手は顎を抑える。

必死に顔を背けても、荒々しい彼の唇で抑えつけられた。昨夜のあの優しく包み込んでくれるような暖かさはなかった。
抵抗すればする程、力は強くなる。嫌だと叫ぶと腕をまた掴まれた。

⏰:09/08/14 03:03 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#291 [あき]
掴まれた腕は、そのまま力任せにベッドへと投げられた。自分の体が一瞬宙に舞ったような感覚。
そのままドサリと体がベッドに沈まると、西条さんの体がのしかかる。
荒々しい唇は逃げても逃げても私を捕らえる。
必死に許しをこい、両手足を、ばたつかせて抵抗しても、やはり適わなかった。そして腕を抑えつけられ、頭を抑えつけられた瞬間。

あの恐怖が蘇った。
あの夜。知らない海辺の。あの恐怖が…
蘇ってしまった。

⏰:09/08/14 03:10 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#292 [あき]
『やだ…やだっ…なおちゃん!!』

治まっていた症状。
フラッシュバック−…

パニックになって口走った私。だけど、その言葉に更なるパニックを起こしたのは紛れもなく彼自身だった。

『俺は祐介だっ!』

ドスンと私の真横で、大きな音が鳴った。
彼が怒りに合わせて、ベッドに拳を振り下ろしたのだ。その音と拳でまたビクリと体が固まった。

『…ごめんなさい。あきが悪いからっ…殴らないでっ…』

⏰:09/08/14 03:28 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#293 [あき]
フラッシュバック。
湧き出てくる記憶。

あの浜辺の地獄。
幼少期、父親に殴られ続けた日々。
目の前にいるのは、

怒りに満ちたお父さん?あの時の狂った彼奴?

怖い
怖い
怖い…

力が抜ける。
そんな私の体に、西条さんは荒々しく被さった。
昨日の夜は、優しく包み込むように暖かかく感じたその温もりを。今は、ただただ、人形のように、私は体を委ね続けた。

⏰:09/08/14 03:37 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#294 [あき]
全てが終わり人形だった私は抜け殻になった。
今、私は西条さんに抱きしめられているのか、捕らわれているのか。
それすら、わからなかった。
天井を見つめる。
優しい、なおちゃんの笑顔。暖かい雫が頬を静かに伝った。だけど、それを拭う力さえ残してはいなかった。

西条さんは、黙ったまま時折、私に口づけた。その唇は優しく柔らかいもので、私は微笑み返す。彼は、私を好きだと言って、また私の体を強く抱き締めた。

⏰:09/08/14 04:00 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#295 [あき]
世間は夕刻。
今日はこのまま、ここにいたいと言い出した彼に、私は頷く。
ベッドの上、いつまでも私を離そうとはしない西条さんに、苦笑いをしながら、どこにも行かないよと言った。
シャワーを浴びて、ルームサービスを取り、余り美味しくない夕食を取る。
テレビを付けて、たははと笑う。

『あきは、その…なおちゃんを忘れられる?』

テレビを見つめながら、そう囁く彼。

⏰:09/08/14 04:08 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#296 [あき]
『…西条さんは私の何がいいの…?』

そう、呟いた私に彼は、わからないと笑った。

『ただ…あきが居なくなると、本当に自信無くす。』

『そっか。』

私は微笑むと、彼が望むように、体を彼に傾ける。
肩に頭を乗せると、彼は優しく私を抱き寄せて、髪をポンポンと撫でた。

⏰:09/08/14 04:18 📱:W65T 🆔:0SdBI476


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