微妙な10センチ。〜最終〜
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#347 [あき]
待ち合わせの時間より数十分早く、約束のカフェへと私は車を滑らせた。
ちらりと周囲を確認しても、まだ彼女は到着していないみたい。この時間はたまらない。
愛しい人に会える待ち時間。
ドキドキワクワクが止められない。
待つこと数分。
また、約束の時間より数十分早く彼女の愛車が駐車場へ入ってくるのが見えた。
ついついニンマリとしてしまう。彼女は私の愛車を直ぐに見つけ、幸せ一杯の笑顔で手を振りながら、すぐ傍に愛車を停めた。私は、その笑顔にニンマリしたまま手を振り、助手席に投げ置いたバックを掴み、車を降りる。
『久しぶりっ!!〃』
『久しぶり〃』
私達は、まるで恋人同士の様に少し照れ笑いをしながら、歩み寄った。
:09/08/25 20:00
:W65T
:1iFCvnmU
#348 [あき]
カフェに入り、昔は庭に面したオープン席が私達の定位置だったけれど、今日は程よい空調の整った店内の隅に座った。
いつものランチをオーダーすると、一息。
スタッフが席を離れるやいなや、私はニヤニヤしたまま一言。
『…まずは、おめでとうっ!!〃』
『うんっ〃ありがとうっ〃』
照れ臭そうに微笑むさえちゃんは本当に綺麗だった。
妻になり、母になるさえちゃんは輝いていた。
久しぶりに彼女を綺麗だと心底思えた。
『こっちでいいのっ?』
『いいって〃』
:09/08/25 20:07
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:1iFCvnmU
#349 [あき]
新人駆け出し時代、一緒にランチをしていた頃は、よくフタリで、いろんな店を発掘しては楽しんだ。
食の好みが似ていた私達は、よく雑誌を見てはめぼしい店をチェックしたもんだ。
だけど、唯一の問題がコレ。
《タバコ吸えないと、休憩した気分になれない〃》
私が、ことある毎に嘆いた愚痴。否喫煙者の彼女は、そんな私に笑っていた。
最終的に、私達が、数々の発掘した場所の中でも、好んでこのカフェに来るには理由があった。
勿論、雰囲気、味共にお気に召したのだけれど、ここは、いまの世間には珍しく、ランチタイムでも、庭に面したオープン席のみ喫煙が出来たのだ。
今日、こを選んだのは彼女だった。なのに、座った席がいつもと違う。
恐らく彼女はそれを言ってるんだろう。
:09/08/25 20:20
:W65T
:1iFCvnmU
#350 [あき]
『この店、久しぶりだよねっ〃懐かしい!
なのに、なんか気使わせてごめんねっ。』
『なにそれっ。〃』
沢山いた同期の中、たった数年で私達だけが生き残った。
そのまま、数年であれよあれよと、互いに似合った部署へ移動を命じられた。
おまけに、互いに忙しくなり、社内でも顔を合わせる事も減った。
昔は、よく二人で日、時間を合わせてはこうやってランチに出かけたもんだ。
:09/08/25 20:28
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:1iFCvnmU
#351 [あき]
『二人の子供は、私の子供同然なんだからっ!!私だって、赤ちゃん大切にしなきゃっ〃』
あははと笑う、私にさえちゃんは、ありがとう。と、また言って微笑んだ。
『おたく様の旦那は元気!!?〃最近、会わないんだけどっ〃』
『元気だよ。彼も会いたがってるよ?〃』
さえちゃんの旦那様は、うちの会社の提携会社の社員さん。
ただ、私が部署移動してしまった為に、なかなか彼とも会わなくなってしまったのだ。
昔は、夜、よく二人のデートに乱入しては、三人で朝まで飲んだくれたけれど、それすらここん所、ご無沙汰だった。
:09/08/25 20:40
:W65T
:1iFCvnmU
#352 [あき]
お気に入りのパスタに、お気に入りのリゾット。
お気に入りのピッツア。
ちょっとしたサラダにちょっとしたスープ。
それらを久しぶりに堪能しながら、久しぶりの対面は、バカな話に盛り上がるだけ、盛り上がった。
さえちゃんの幸せ全開の話は、心底、私をニヤニヤさせた。
私の仕事の愚痴話は、彼女も一緒になって怒ってくれた。
久しぶりに彼女と食べる
チョコレートケーキは、本当に美味しかった。
私自身、本当に久しぶりに
心底楽しい時間だった―…
:09/08/25 20:53
:W65T
:1iFCvnmU
#353 [あき]
『あきは?最近どうなのよっ?』
食後の珈琲の湯気に包まれながら、さえちゃんは言った。
『うーん…とくに?何もないっ〃』
なおちゃんの事。
西条さんとの事。
本当は沢山報告しなきゃいけないけれど、幸せ全開の彼女には、どうしても言い出せなかった。
『そう?なんか言いたげじゃんっ。なおちゃんとは、相変わらず?』
:09/08/25 23:23
:W65T
:1iFCvnmU
#354 [あき]
『…相変わらず…ってか、最近は全くかなっ〃』
はははと視線を外し、またスプーンで、温かいカフェオレをくるりと回しす。
『んー?また喧嘩してんのっ?』
さえちゃんの天使の微笑みは、私の胸のダムを決壊させる。
だけど、この気持ちを、彼女にどう伝えればいいのか言葉が見つからないでいた。
『喧嘩…した方がラクだよっ。喧嘩すらしなくなった。』
『んっ?』
『…ううんっ〃』
出てしまった言葉を、私は、紅茶と一緒に喉に流し込んで、美味しいと微笑んだ。
さえちゃんは、少し不安げな顔で、珈琲を手に取り、そうだねと微笑んでくれた。
:09/08/25 23:36
:W65T
:1iFCvnmU
#355 [あき]
紅茶ー×
カフェオレー○
――――――――――
そんな時、バックで携帯電話が振るえた。相手は予想がつく。
この電話に出なかったら、大事になってしまう。
とっさに携帯電話を探した。
案の定、ブーンと不愉快な音を立ててる画面が記す名前に、私は、静かに小さくため息をついた。
『ごめんねっ〃ちょっとだけっ。いい?』
さえちゃんに声を掛けて、私は携帯電話を指す。
私が慌てて受話ボタンを押すと同時にさえちゃんは、気にしないでと微笑むと、御手洗を指差し席を立った。
ー西条さんー
画面にはそう記されていたのだった。
:09/08/26 00:08
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:7GfJ8U0o
#356 [あき]
『はいっ』
《何してる?》
突然に始まるこの言葉。
『今はカフェ!〃友達とランチに行くって昨日言ったじゃんっ〃』
それでも、私は彼の機嫌を損ねないように、細心の注意を払った言葉で答える。
《といいつつ男といるんだろ?あきは、ちょっと放っておくと、すぐに遊びに行くからなっ。》
もう、ウンザリ。
せっかくの楽しかった時間が、一瞬にして泣きたい気分になる。
『女の子だって。元同期で、結婚して辞めた子!〃話た事あるでしょぉ?〃』
:09/08/26 00:16
:W65T
:7GfJ8U0o
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