微妙な10センチ。〜最終〜
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#357 [あき]
《どうして、そんな意地になる?まさか、本当に男といるのか?》
しまった…!!
彼は冗談のつもりだったのかっ!ミスった!!
『あははは〃なってないしっ〃』
不機嫌モードに入るっ!!
やばいやばいやばい…
《……ならいいけど。》
ああ。アウトだ…。
完全にスイッチオンだね。
ご不満モードだよね?
ご立腹モードになるんだよね?
でも、さすがに今はやめてよね?あとでまた、きっちり聞くから。
今だけは、私のこの楽しい時間を取り上げないでよね…
:09/08/26 00:24
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:7GfJ8U0o
#358 [あき]
《何時頃帰るんだ?》
『…わかんないっ。』
《んな訳ないだろっ?》
『だって、久しぶりに会うから。この後も、どこか行くかもっ…』
《で、朝帰りか?》
『そんな訳ないじゃんっ。』
小さく、こそこそと言い合いをしていると、さえちゃんが御手洗から戻ってきた。
私の前に座り、不思議そうな顔をした。
聞かれたくない!
とっさにそう感じた。
:09/08/26 00:29
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#359 [あき]
『ともかくっ!帰ったら、また電話するからっ〃友達いるし、切るね?』
《おいっ。待て!どうして切りたがるんだよっ?何時に帰るのか聞いてないぞ?》
『だからっ…今、遊んでるからっ。また帰ったら電話するから〃』
《…そうかよ。そうやって男と遊んでろよっ!!》
『だからっ!!そんなんじゃないってばっ…』
ーピッ。プープー…
また切られた。
いつもこうなる。
いつも、いつも、いつも、いつも……イライラして、咄嗟に煙草に手を伸ばす。はたと、自分が居る場所、目の前の彼女に、気づいて、私は、またバックにそれをしまう。グビリとカフェオレを飲んで、気分を落ち着かせると、目の前の、彼女に笑いかけた。
:09/08/26 00:38
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#360 [あき]
『何?どしたっ…?』
案の定、さえちゃんは、綺麗なハンカチをバックにしまうと、私の顔を覗き込む。
『何がっ?〃何でもないよっ〃』
私は、笑って答える。
だけど、自分自身、もう、指が、せわしなくトントンとテーブルを叩いている事にも、気分が煙草を吸いたくてソワソワしている事にも気づいていた。
『そろそろ、出ようかっ〃?』
さえちゃんが、そう言ってくれる。私は、何事もないように、そうだねと微笑み、席を立った。
次、どこ行こうかなんて話をしながら、さえちゃんと打ち合わせ。
その間も、ずっとバックの中で振るえ続ける携帯電話を無視し続けていた。
:09/08/26 00:45
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#361 [あき]
互いの愛車に乗り込んで、さえちゃんの愛車が、カフェの駐車場をスルリと抜け出し、大通りに向かう。数台後ろを、私が追うように車を動した。大通りの信号、スルリとさえちゃんの車は直進して行った。私の前で、信号は赤に変わる。どんどんと前へ進む彼女の愛車を見送りながら、ハンドルを握り溜め息をついた。携帯電話をバックから取り出した。
−不在着信−
ピカピカとランプが点滅していた。見なくても相手が誰かわかる。片手で画面を操作してみて、着信履歴を確認する。今朝、掛かってきたさえちゃんからの着信履歴はすっかり消えていた。
仕方がないので、発信履歴から、さえちゃんの名前を探した。
:09/08/26 14:01
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#362 [あき]
場所はわかるから、気にせず先に向かってと、さえちゃんに伝えると、すぐに電話を切った。
すると、待ってたかのようにまた携帯電話が震える。
しばらく見つめて、諦める様子のない着信に、私が諦める。
−ピッ。
『…はいっ。』
《…どうして電話出ない?》
不機嫌を露わにして彼は言った。
『…ごめんなさい。マナーモードにしてたから。気付かなかった。』
これは、ありきたりな理由で
最近、彼によく使う言い訳。
とっさについた嘘。
:09/08/26 14:28
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#363 [あき]
《どうしてマナーにする必要がある?》
『…カフェだしっ。友達と会ってるから…』
《だったら、まずそう言えよ。こっちは心配するだろ?》
『…ごめんなさい…』
本当は、言いたい事は、山ほどある。だけど、自分の気持ちを押し殺した。彼が、こうなったら私は何も言わさせてもらえない。
ただ [ごめんなさい] この六文字しか受付けてはもらえないのだ。それが、わかるから、この場を終焉にする為には私は全てを飲み込むのだ。
運転中だからと電話を切った。
どんよりとした空から、ポツポツと雨が降り出した。
:09/08/26 14:45
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#364 [あき]
目的地に着いた時には、しとしと降りしきる雨となっていて、私は、濡れないように、玄関へと走った。
『お邪魔しまーすっ。』
勝手知ったる他人の家。
二人が付き合いだした頃から、この家には、よく遊びに来た。
洋風な建物に真っ白な壁。
外観には似合わず、殺伐とした部屋は、彼女が出入りをするようになって、見る見る変わった。玄関を開けると、エプロン姿のさえちゃんが、降ってきたねぇ!と笑顔で出てきた。
『やだよねーっ。』
『食べてくでしょ?彼も、あきが来るって連絡したら喜んでたよーっ!!早く帰って来るって〃』
『うんっ。〃』
:09/08/26 15:04
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:7GfJ8U0o
#365 [あき]
エプロン姿のさえちゃんは、とても綺麗だった。
本当に幸せそうだった。
そんな彼女の横に立っていると、私まで幸せな気分になれる。
そしてまた
心底、羨ましいと思えた。
私も幸せになりたい。
より一層、強く思った。
強く強く。自分もこうなりたい。そう願った−…
今思えば、この頃から、私自身が壊れていって。
大切なものを失い始めていて。
もうどうしようもなくなった
未来(今)の私がいる。
:09/08/26 15:36
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:7GfJ8U0o
#366 [あき]
久しぶりの再会は、時間を忘れて真夜中まで盛り上がる。
時刻は日付も変わり、テーブルの上には、いくつもの缶ビールが転がり、いくつものお菓子の袋が開いて、ウーロン茶の雫がテーブルを濡らしていた。
一人はソファーで地響きを奏でながら、完全に伸びている。
『…寝ちゃたねっ〃』
『うんっ。まっ…楽しかったんでしょっ〃』
さえちゃんは、聖母のような微笑みで、淡い色の大きなブランケットを彼にフワリとかけた。彼の寝顔にクスリと笑うと、ポンポンとお腹を叩いた。
:09/08/26 15:47
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