微妙な10センチ。〜最終〜
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#31 [あき]
原因は、業者との間で折り合わない資金問題。
何も言わないけれど。
私はわかっていた。
おまけに、この、強情っ張りに、この意地っ張りだ。
一度、城を築いてしまった人間は、また、誰かの城で奉公するなんて、考えられない。
一度、大きな城を夢見てしまった城主は、規模を小さくするなんて我慢ならない。
そうゆうもんなんだろう。
結局、なおちゃんは、城を持たず、看板だけの仕事をしながら、夜は資金調達の為に、バイトまで初めていた。
その日々の疲労や睡眠不足。
自宅に戻れば、慣れない介護。
全てが、計りしれないストレスとして、彼にのし掛かっていた。
:09/07/08 16:18
:W65T
:Uanw3whY
#32 [あき]
私もまた、大好きだった、仕事だったけれど。
見えてきた、会社への不信。不満、それが、計りしれないストレスになっていた。私達はお互い、口を開けば
【疲れた】【眠い】
【ダルい】
不平不満しか言わなくなっていた。
結局は、そんな、つまらない、無言に近い電話で終わってしまっていた。
それが今日。爆発寸前だった。互いに、相手にぶつけても仕方ないとわかっていても、なぜか、この夜、ぶつけ合ってしまったのだった。
:09/07/08 16:25
:W65T
:Uanw3whY
#33 [あき]
『なんかおかしいよっ!!なおちゃんの本業は何!?最近、夜の、訳のわかんないバイトばっかりで、朝に帰ってきて、昼まで寝て?仕事きちんと出来てないじゃんっ!!本業はどっちなワケッ!?一攫千金狙ってないで、コツコツ働いてよっ!!』
私が、好きだったなおちゃんは、毎日、毎日、キラキラした目で仕事をしていた。
私が尊敬していななおちゃんは、クタクタになりがらも、小さな城で、誰かの為に一生懸命に仕事をしていた。
それが、今は、夜な夜な、得意?のパソコンで、一攫千金を狙うようなバイトをして、本業の仕事が疎かになっている始末。
:09/07/08 16:34
:W65T
:Uanw3whY
#34 [あき]
『したくても、仕事がねーんだろ!?それにな、世の中、金なんだよ!!金が無けりゃ、何もできん!何の為にバイトしてるのか、わかるだろうがっ。』
『そんな、昼まで寝てるような、締め日に間に合わないような、ダレた人に誰が任せられるのよっ!!お客さん無くしたのは自分でしょっ!!今や、本業よりも、安定した収入のあるバイトが楽しくて仕方ないんじゃないのっ!?私にはそう見えるけどっ!!』
ただでさえ、小さな城で、顔見知りが顔見知りを紹介する繋がりで増えていった固定客。
場所が変われば、また一からやり直しな事はわかっていたはず。
それなのに、なおちゃんは、何もしなかった。
いや、しなかった訳じゃないんだろうけれど。
実を結ばなかったんだ。
結局、焦ったなおちゃんは、バイトの収入に頼るしかなかった。
その気持ちはわかる。
けど…何かが違う。
:09/07/08 16:41
:W65T
:Uanw3whY
#35 [あき]
『そんな、昼まで寝てるような、締め日に間に合わないような、ダレた人に誰が任せられるのよっ!!お客さん無くしたのは自分でしょっ!!今や、本業よりも、安定した収入のあるバイトが楽しくて仕方ないんじゃないのっ!?私にはそう見えるけどっ!!』
ただでさえ、小さな城で、顔見知りが顔見知りを紹介する繋がりで増えていった固定客。
場所が変われば、また一からやり直しな事はわかっていたはず。
それなのに、なおちゃんは、何もしなかった。
いや、しなかった訳じゃないんだろうけれど。
実を結ばなかったんだ。
結局、焦ったなおちゃんは、バイトの収入に頼るしかなかった。
その気持ちはわかる。
けど…何かが違う。
:09/07/08 16:42
:W65T
:Uanw3whY
#36 [あき]
『あきに、俺の苦労がわかるかよっ!!』
この台詞には、グサリときた。
だけど、負けられなかった。
『わかんないね!!全くわかんないっ!!』
『お前は、何だかんだ言っても、保証されてる仕事だ。安定もしてるだろうよ!!グダグダ文句言ってるけど、俺にしたら、甘っちょろいわっ!!』
『保証されてた仕事を辞めたのは誰よっ!!自分でするんだって意気込んだのは誰!?それが、今は何よっ!!負け犬になってんじゃないわよっ!!!今のなおちゃん、全然っっ!!かっこよくないんだからっ!!!』
:09/07/08 16:47
:W65T
:Uanw3whY
#37 [あき]
『はぁっ!!?負け犬?』
『負け犬じゃんっ!!こっちで、ちょっと、うまく行ったからって、調子乗って!結局、今がこれじゃんかっ!!店も持たずに、フラフラして、バイトして。』
もう、止まらない。
酷い言葉を投げつけているのは頭では理解しても、心が止まらない。
『だから、それは新しい店の資金だって言ってんだろっ!!』
『そもそも、店キャパを広げる意味あるのかって言ってんの!いーじゃんかっ!!今までみたいに、小さくても、目立たなくても、しっかりと構えてたら良かったじゃないっ!!結局、欲でしょ!!土地があるから広くしたいからだけでしょっ!!』
:09/07/08 16:55
:W65T
:Uanw3whY
#38 [あき]
『…あきはどうなんだよ…俺の事、偉そうに言えんのかっ!!毎日毎日、駒みたいに、言いように使われてよっ!!利用されてるだけなの気づけよなっ。嫌なら嫌って言えばいいだろ!!それを後で、グチグチ言いやがって。そんなに嫌なら辞めちまえよっ!!』
『簡単に言わないでよっ!!不満はあっても、好きだから辞められないんでしょ!!それは、なおちゃんが一番知ってるじゃんっ!!』
私が、この仕事が好きな事は、知ってるはずなのに。
辞めろと簡単に言う、なおちゃんが信じられなかった。許せなかった。
『本当に好きなのか?今のあきの仕事が、本当にやりたい仕事だったのかっ!?俺にはそう見えないけどねっ!!』
:09/07/08 17:01
:W65T
:Uanw3whY
#39 [あき]
またまたグサリと刺さった。
確かに。あれから、数年。
気付けば、私は、叩き上げられるように、部署を移動していた。
入社した時は、憧れた職種につけた事で夢中だった日々も。
年数を重ねる事により、もうワンランク、もうワンランク上への試験を受けさせられ、
今や、ほとんど、書類と格闘するだけの、会社を飛び出せば、どこか違う地方の支部へと向かわされ、会議室に閉じ込められる。
増える資格と共に、立つ場所が変わってしまったのだ。
私が本当にやりたい、憧れた仕事とは、どこか、違う日々を送っていた。
:09/07/08 17:10
:W65T
:Uanw3whY
#40 [あき]
何も言い返せなくなった。
悲しくなった。
お疲れ様って言いたかっただけの電話は。
バイト、頑張ってねって言いたかっただけの電話は。どうして、こんな事になってしまったんだろう。
『……もうやめよう。楽しくないもん。なおちゃん、そろそろ行かないと、いけないんでしょ?』
《ほらな。都合が悪くなりよ、逃げる。相変わらず、変わんねーよな!!》
『…そだね。ごめんね。言い過ぎた。ぢゃっ。切るね。』
この日の夜を境に
私達は、しばらく連絡を断った。
何度もあった、連絡を取らない日々とは違う。
言いようのない闇が、私達を包んでいたからだった。
:09/07/08 17:17
:W65T
:Uanw3whY
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