微妙な10センチ。〜最終〜
最新 最初 🆕
#36 [あき]
『あきに、俺の苦労がわかるかよっ!!』


この台詞には、グサリときた。
だけど、負けられなかった。

『わかんないね!!全くわかんないっ!!』

『お前は、何だかんだ言っても、保証されてる仕事だ。安定もしてるだろうよ!!グダグダ文句言ってるけど、俺にしたら、甘っちょろいわっ!!』

『保証されてた仕事を辞めたのは誰よっ!!自分でするんだって意気込んだのは誰!?それが、今は何よっ!!負け犬になってんじゃないわよっ!!!今のなおちゃん、全然っっ!!かっこよくないんだからっ!!!』

⏰:09/07/08 16:47 📱:W65T 🆔:Uanw3whY


#37 [あき]
『はぁっ!!?負け犬?』

『負け犬じゃんっ!!こっちで、ちょっと、うまく行ったからって、調子乗って!結局、今がこれじゃんかっ!!店も持たずに、フラフラして、バイトして。』

もう、止まらない。
酷い言葉を投げつけているのは頭では理解しても、心が止まらない。

『だから、それは新しい店の資金だって言ってんだろっ!!』

『そもそも、店キャパを広げる意味あるのかって言ってんの!いーじゃんかっ!!今までみたいに、小さくても、目立たなくても、しっかりと構えてたら良かったじゃないっ!!結局、欲でしょ!!土地があるから広くしたいからだけでしょっ!!』

⏰:09/07/08 16:55 📱:W65T 🆔:Uanw3whY


#38 [あき]
『…あきはどうなんだよ…俺の事、偉そうに言えんのかっ!!毎日毎日、駒みたいに、言いように使われてよっ!!利用されてるだけなの気づけよなっ。嫌なら嫌って言えばいいだろ!!それを後で、グチグチ言いやがって。そんなに嫌なら辞めちまえよっ!!』


『簡単に言わないでよっ!!不満はあっても、好きだから辞められないんでしょ!!それは、なおちゃんが一番知ってるじゃんっ!!』

私が、この仕事が好きな事は、知ってるはずなのに。
辞めろと簡単に言う、なおちゃんが信じられなかった。許せなかった。

『本当に好きなのか?今のあきの仕事が、本当にやりたい仕事だったのかっ!?俺にはそう見えないけどねっ!!』

⏰:09/07/08 17:01 📱:W65T 🆔:Uanw3whY


#39 [あき]
またまたグサリと刺さった。

確かに。あれから、数年。
気付けば、私は、叩き上げられるように、部署を移動していた。
入社した時は、憧れた職種につけた事で夢中だった日々も。
年数を重ねる事により、もうワンランク、もうワンランク上への試験を受けさせられ、
今や、ほとんど、書類と格闘するだけの、会社を飛び出せば、どこか違う地方の支部へと向かわされ、会議室に閉じ込められる。
増える資格と共に、立つ場所が変わってしまったのだ。
私が本当にやりたい、憧れた仕事とは、どこか、違う日々を送っていた。

⏰:09/07/08 17:10 📱:W65T 🆔:Uanw3whY


#40 [あき]
何も言い返せなくなった。
悲しくなった。
お疲れ様って言いたかっただけの電話は。
バイト、頑張ってねって言いたかっただけの電話は。どうして、こんな事になってしまったんだろう。

『……もうやめよう。楽しくないもん。なおちゃん、そろそろ行かないと、いけないんでしょ?』

《ほらな。都合が悪くなりよ、逃げる。相変わらず、変わんねーよな!!》

『…そだね。ごめんね。言い過ぎた。ぢゃっ。切るね。』

この日の夜を境に
私達は、しばらく連絡を断った。
何度もあった、連絡を取らない日々とは違う。
言いようのない闇が、私達を包んでいたからだった。

⏰:09/07/08 17:17 📱:W65T 🆔:Uanw3whY


#41 [ゆか]
ずっと読んでました。
頑張って下さい(´;ω;`)

⏰:09/07/08 18:21 📱:SH903i 🆔:☆☆☆


#42 [あき]
ゆかさん。有難うございます。
―――”

あの言い争いの夜から、連絡を断つ日々。
だけど、私にとっては、会えない日々も、話せない日々も、いまや何の違和感でもなかった。
私達の関係に置いて、そんな事は特別でもなんでもなかったから。
私は、ただただ日々に追われていた。

⏰:09/07/09 21:37 📱:W65T 🆔:XNcN9gtw


#43 [あき]
出張に出張を重ね。
月の半分以上を仕事に費やし、休日は一人で過ごす。私の生活スタイル。

ただ、隙間を埋めるように重ねていた時間が無くなっただけ。

もう何年も、変わる事のないその着信音が
その日
その週
鳴らなくても…

私には。
代わり映えのない日々だった。

⏰:09/07/09 21:42 📱:W65T 🆔:XNcN9gtw


#44 [あき]
そんな時。
思いもよらない転機が私に訪れた。

突然、割り当てられた一週間の出張。

《明日から一週間。○○地方に飛んで。はいっ。これ》

有無も言わさず、ニコリと微笑む、おっかない上司に手渡された、大量の資料に、往復チケット。

《えぇっ!!や…》

だとは言わせてはもらえない。
悲しい、ただの平社員で雇われの身。

⏰:09/07/09 21:50 📱:W65T 🆔:XNcN9gtw


#45 [あき]
重い資料を両肩に抱え、背中にのしかかる重圧。
私は、全てを抱えて、帰路についた。
ソファーに身を投げ出し、ため息が漏れた。

さすがに、一週間はキツい。ヒドい。長い。いや…長すぎる。

手渡された二枚のチケットを確認。
印字された文字は
明日の始発に始まり
一週間後の最終便。

どんだけ働かすんだよ…

やっとの思いで出た言葉は、虚しく消えた。

⏰:09/07/09 21:56 📱:W65T 🆔:XNcN9gtw


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194