微妙な10センチ。〜最終〜
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#521 [あき]
『でぶーっとして、本当見苦しいぞっ。』

『……うっせ。どうせ、デブですからっ…。』

そんな私に、なおちゃんは、よくわかってるじゃないかと、何やら勝手に満足をして、ふむふむと納得をした。

『ほれっ!いい加減に起きろ!仕事行けっ!』

そして、私の背中をパチンと叩く。
その力は、かなり本気なのか、叩かれた背中はヒリヒリした。

『痛いっ!!』

⏰:09/09/28 19:19 📱:W64S 🆔:AzvUcxQs


#522 [あき]
『…いつまで、ぐじぐじ言ってんだよっ。』

今になってヒリヒリした背中が熱を帯びて暖かさを感じる。

『…わかってるよ…』

ソファーに座り、立ち上がったままの彼を見上げる。
泣きすぎて、化粧もぐちゃぐちゃで、目も顔もパンパンに腫れて、もう、見るも不様なぶさいくな顔。
鼻水ですらズルズルになった私の姿。
そんな私の目をまっすぐに見つめ言った。


それは、私が欲しかった。

全ての言葉が詰まっていた何よりの言葉。

⏰:09/09/28 19:35 📱:W64S 🆔:AzvUcxQs


#523 [あき]
『まぁ、こんな事でクビになんて、ならんとは思うけど。もし、クビになったら…次の面倒くらい見てやっから。
だから…安心しろ。
行ってこいっ。』

そう言って、なおちゃんは、じゃあな。ブサイクちゃんと言ってリビングを後にした。
私は突然の言葉に、うんうんと返事をしながら、溢れる涙が止められなかった。
ガチャリと玄関が閉まる音がして。
その音に、私は言いそびれた言葉を言う。

『…ありがとうね…なおちゃん。助かった…』

⏰:09/09/28 19:50 📱:W64S 🆔:AzvUcxQs


#524 [あき]
私は、顔をバシャバシャと洗って、真新しいスーツに袖を通し、玄関を飛び出す。

胸に響く彼の言葉。
『大丈夫だ』
『安心しろ』

この二言が流れ続けた私の涙をピタリと止め、彼の温もりが支えとなってくれていた。

⏰:09/09/28 19:58 📱:W64S 🆔:AzvUcxQs


#525 [あき]
ただ、なおちゃんが傍にいてくれるだけで。
私は救われる。
他の誰でもない。
なおちゃんなんだ。
誰も変わりは出来ないんだ。

どんなに心細くても。
どんなに悲しくても。
どんなに不安でも。
彼が傍にいてくれるだけで。
私は、それだけで、安心した。

そして…彼の言葉ひとつで、私は強くなれる。

どうして。
私は、なおちゃんじゃなくて。
西条さんを選んだんだろう…。

⏰:09/09/28 20:06 📱:W64S 🆔:AzvUcxQs


#526 [あき]
重い気分の中、私は会社の重い重い扉を開いた。昨夜の緊急招集の慌ただしさが、まだ残る社内に、数名の上司が残っていた。

社内の空気が、ピシリと走り、そして上司達の視線が私に突き刺さる。
真っ直ぐに所長のデスク前へと向かい、頭を下げた。

『…この度は申し訳ございませんでした。』

頭を下げ、泣いてはいけないと自分に言い聞かせ、ただひたすら頭を下げた。

⏰:09/09/28 20:10 📱:W64S 🆔:AzvUcxQs


#527 [あき]
『うん。警察は、大丈夫なのかな?』

『…はい。被害届けは出して来ました。』

『そっか。とにかく、詳しい話はまた後にして、今日からの一週間の書類は、改めて集めなおしたから。とにかく、君の代わりがいないから、気持ち入れ替えて、今から行ってくれっ。新幹線。間に合うよな?』

上司は、精一杯の優しさを私に向ける。
私の運命は、この一週間の仕事を終えた時に決まるんだと感じる。

『…はい…。行ってきます。
申し訳ございませんでした。』

私は、上司に再び頭を下げて、次にインテリメガネ女上司のデスクの前に立った。

⏰:09/09/28 20:15 📱:W64S 🆔:AzvUcxQs


#528 [あき]
『…申し訳ございませんでした。』

再び、同じ台詞を言いながら、精一杯頭を下げた。
いつも、ピシリとしていたインテリメガネ女上司の髪が乱れているのは、昨夜の大騒動の表し。

『とにかくっ、間に合って良かった。もう三十分報告が遅れてたら、コンピュータシステムが落ちちゃうから、もう手遅れだったんだから、もっと大変な事態になってたわよ!』

『…はいっ…。申し訳ございません…』

インテリ女上司は、そんな私に、苦笑いをしながら、肩をポンと叩いて

『後の事は任せなさい。大丈夫よ』

と小さく笑った。

⏰:09/09/28 20:21 📱:W64S 🆔:AzvUcxQs


#529 [あき]
だけど、彼女の《大丈夫よ》は、全く効力を示さなかった。

いや。
彼女なりの大丈夫よ。は…
うん。
大丈夫だったんだ。

だけど。
それは

私にとっては、地獄の始まりにしか過ぎず。

益々、私の運命を狂わせた。

⏰:09/09/28 23:20 📱:W64S 🆔:AzvUcxQs


#530 [我輩は匿名である]
あげ 

⏰:09/10/02 11:58 📱:PC 🆔:☆☆☆


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