微妙な10センチ。〜最終〜
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#46 [あき]
ふと携帯電話が目に入った。
あれからしばらくの時間が経ってる。
すっかり着信履歴からも、発信履歴からも、名前が消えていた。
おもむろに握り、短縮番号ゼロを押す。
声を聞きたくなった。
バカでもアホでもいい。
なんでもいいから、なおちゃんの声が聞きたくなった。
:09/07/09 21:59
:W65T
:XNcN9gtw
#47 [あき]
私が求めていた声は、なかなか繋がらない。
ふと時間を見ると、21時を過ぎた頃。
ああそうか。
もう繋がらないか。
私は、電話を切った。
なおちゃんは、バイトに行ったんだ。
そう自覚した時、何だか、言いようのない疲労感が襲ってきた。
嫌な事があると、彼の声が聞きたくなる。
悲しい事があると、彼の声が聞きたくなる。
いつまで、彼に頼るんだろう。
私は、彼がいないと、何も出来ないのかな。
そう思えた。
:09/07/09 22:05
:W65T
:XNcN9gtw
#48 [あき]
結局、なおちゃんからのコールバックも無かったおかげで、私は、彼の声を聞くどころか、彼に一週間の留守を伝える事もなく出発をした。
ここから、少しづつ、私達の歯車がきしみ出して行く。
本当に、じわりじわりと、きしみだす歯車だった。
:09/07/09 23:51
:W65T
:XNcN9gtw
#49 [あき]
―――――――
渡されたチケットを駆使して、早朝に出発したはずの私は、目的地に舞い降りた時は、もうジワリと汗ばむ程の気温だった。
移動中の夢心地さが、まだまだ残るけれど、一週間分の荷物をガラガラと引きずり、食い込む程の重いバックを肩にかけて、私は、教えられた場所へと向かう。
ロータリーへと入ると、数台もの車が、停まっている。その間をすり抜けて、周囲を見渡し、らしき車を探す。
:09/07/10 00:00
:W65T
:VckcM2.Y
#50 [あき]
一台のワンボックスカーが目に止まった。
私は、ふざけんなと怒りたくなるくらいの持参した重い荷物を引きずりながら、よたよたと歩み寄る。車の社名を確認すると、間違いなく、聞いてた社名だ。
だけど、それと同時に
後ろのトランクドアを上げて、それを日除け変わりに座り。
サングラスをかけて、くわえ煙草。
手足のスラリと伸びた、なんとも胡散臭い男性が、私の視界に入る。
『あの…西条さんですかね…?』
:09/07/10 00:08
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:VckcM2.Y
#51 [あき]
渡された資料と同時に、迎えの人として聞いていた名前を、とりあえず言ってみる。
胡散臭い男は、すっくと立ち上がり、ちび助の私には迫力満点の威圧感を出しながら、私の名前を確認した。今度は私が返事をして頷く。
『遠いところ、お疲れ様でした。宜しくお願いします〃』
胡散臭い…いや西条さんは、くわえていた煙草を、携帯灰皿にくしゃりと押し込むと、サングラスを取って微笑んだ。
その衝撃はEXI○Eのあ○しばりだった。
:09/07/10 00:21
:W65T
:VckcM2.Y
#52 [あき]
『お待たせしてすみません。』
あまりの衝撃に吹き出しそうになるのを、ぐっとこらえて、私はそつない挨拶をする。
そんな私に、西条さんは、笑顔を向けて
『いえいえ。時間通りですよ』
と…言ったはず。
いや。私も標準語とは言いませんが、さすがに、仕事中は、なるだけイントネーションには気をつけて話ますよ。
それをこのお方は、爽やかな笑顔で、一瞬躊躇する程の方言。
あまりのダブルパンチに腰が砕けるかと思った程だった。
:09/07/10 00:29
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:VckcM2.Y
#53 [あき]
まあ、そんな事は、彼自身、もちろん気付いてない訳で。
立ち尽くす私の手に握りしめられた、一週間分の荷物を、乗せますよと言うように、手を差し出してくれた。
私は、放心に近い状態で、バックを渡す。
細い体が、重い荷物を軽々とトランクに詰め込んでくれた。
『とりあえず、今日は、エリアを経由してホテルまでお送りします。それでよろしいですか?』
(※何度も言うが、おそらく、彼はそう言ってると解釈した。)
『はい。今日の予定は、特に急ぎではなかったはずなので、お任せします。』
会話が成り立ってるか不安だったが、そう答えてみた。
:09/07/10 00:36
:W65T
:VckcM2.Y
#54 [あき]
なんとか、成り立ったみたいだった。
西条さんは、一世風靡したヨ○様ばりの微笑で、運転席に回る。
チンピラかと思ったら
ゴルフの、り○う君?スマイルで。
美しい日本語を使うかと思ったら、なまり万歳で。
もやしかと思ったら、大根で。
挙げ句にヨ○様ですか…
私は、あまりの衝撃に、運生まれたての仔羊のような足腰で(※実際は違うけど、そんな気分)なんとかヘナヘナと車に乗り込んだ。
:09/07/10 00:45
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:VckcM2.Y
#55 [あき]
この衝撃的な彼。西条さんが、後に、私と、なおちゃんの別れ道のキーマンになってくる。
まだまだ、この時は、そんな事は、蚊の脳みそサイズ程思ってもいない。
私の未来は…
あの懐かしい田舎街で。
口が悪くて、偉そうで。
へんこつ野郎で、ついてけないけど、本当は寂しがり屋で優しい…
あいつの隣にあると、まだまだ思っていた。
:09/07/10 00:54
:W65T
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