微妙な10センチ。〜最終〜
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#577 [あき]
車に飛び乗り、逃げるように、駐車場を抜け出た。
(中毒…か…〃)
確かに、あの薬剤師の言う通りだった。
初めて、あのおじさんと会話した時に勧められた、薬局で扱う中で一番強いと言われたこの錠剤。なんだか成分が、普通の鎮痛剤とは違うらしい。
裏面には
【一回一錠。一日二回が目安。六時間以上あけて下さい】
と書かれたその錠剤をおじさんは、飲み方には気をつけてと、念を押して、渡してきたのだ。
飲んでみると確かに、効能は今まで出会ったどの鎮痛剤よりも抜群で、私とは相性ばっちりだった。
:09/10/05 04:29
:W64S
:e7EPmjxo
#578 [あき]
その相性ばっちりの、麗しの鎮痛剤。
最近では、三日に一回。24錠入のそれを買いに来ている。
余りにも効能が良すぎて。
初めては守っていたそれも。
二錠、三錠…少しづつ量は増え。
六時間…五時間…少しづつ間隔は短くなった。
そして、今や私はまるでサプリメントのように飲み干しているのだ。
勿論、痛みを抑えたいからであって、決してサプリメントにしている訳ではないけれど、自分でも自覚していた。
:09/10/05 04:30
:W64S
:e7EPmjxo
#579 [あき]
初めは頭痛だけだった。これは持病。
わかっていた。
頻度が増すにつれ、仕事を抜け出し、一度病院にも行った。
安全で、かつ的確な処方された頭痛薬。
いつもの様に常備薬と、いざという時の頓服。一週間分のそれらを手にしたけれど、この二種類は、あっと言う間に無くなった。
それでも、治まる気配のない頭痛に、仕方なく、また抜け出し病院に行く。
更に強い薬が処方された。
だけど、また処方された一週間を、あっという間に飲み干した。
もう、付き合いきれないと思った。
そう何度も何度も、抜け出せない。
:09/10/06 18:38
:W64S
:FhOlVLWI
#580 [あき]
本来なら通院すべき事なのかもしれないが、たかが頭痛。
病院に行く事をやめた。
そして通勤路にある、小さな薬局へと入ったのが…今の始まり。
その時、薬剤師に勧められ手にした鎮痛剤は全く効力を示さず、簡単に飲み干した。
二度目…三度目…通い続け、これなら、これは、と飲み続けたが、全く効力を示さなかった。
四度目にして、そこの薬剤師は、私に薬を渡さなくなった。
同じ台詞。
《貴女の体は病院に行って根本から治さないと駄目だ。》
:09/10/06 18:45
:W64S
:FhOlVLWI
#581 [あき]
仕方なく、私は場所を変えた。
そう。それが、さっきのドラッグストア。
初めて会った時。
あのおじさん薬剤師は、常備している薬が効かなくなったと説明すると、この運命的な錠剤を教えてくれる。
なにやら、他の錠剤とは成分が違うと言いながら、飲み方には注意してくれと。
そう一言添えて、私に差し出した。
いざ、飲んでみると他の錠剤より少し大粒で飲み辛かったそれは、面白いくらいに、即座に私から苦痛を取り除いてくれた。
よくテレビで聞く台詞。
スーッと痛みが引く。
まさしく、こんな感じ。
:09/10/06 18:53
:W64S
:FhOlVLWI
#582 [あき]
やっと出会えたと思った。
しかし、さすがに私も成分が違うだの、少し大粒だの、少々お高めだので…始めは躊躇した。
けれど、時間が経つにつれ、痛みは増すばかりで、気付けばもう頭痛どころか、胃痛。胃痛どころか、あっち。あっちどころか、こっち。
とまぁ、その名の通り、あっちこっちに激痛を覚え始めた私の体。
その度に万能なこの錠剤ちゃんは、痛みを緩和し続けてくれた。
だけど、そうなってくると、たった一箱、24錠では追いつかない。
わかっていた…
飲み過ぎだって…
だけど、唸るような痛みには耐えられなかった。
:09/10/06 19:09
:W64S
:FhOlVLWI
#583 [あき]
―――――――
『…ゲホッ…』
今日もまた、痛みに耐え兼ねて、トイレに走る。
そして、痛みに悲鳴を上げている私の体は、胃袋の中の全てを吐き出した。
吐き出したそれを涙眼で見て、思わず声が漏れた。
『…あちゃ…』
吐き出した液体が赤く染まっている。
それを見ない事にして、ふらふらと立ち上がり私はフロアに戻った。
:09/10/06 19:14
:W64S
:FhOlVLWI
#584 [あき]
『どこ行ってたの!?早く済ませてよねっ!お昼行けないじゃないっ!』
『はいっ…。先にどうぞっ〃残りは、私がやっておきますからっ。』
『ったく…無理なら、担当外してもらえばっ!?』
『ははは…〃頑張りますっ。』
相変わらず、大御所達の愛の鞭は集中的に私に降り注ぐ。
そして、事ある毎に意味ありげな言葉を投げつけられる。
気付かないフリをしていても。
辞めろ、辞めろ、と目が私を睨み付続けていた。
:09/10/06 19:21
:W64S
:FhOlVLWI
#585 [あき]
ふと、デスクの上、携帯電話がチカチカと光っている。
目を盗み、確認ボタンを押す。
【いい加減にしろよなっ!!昨日も今日も連絡取れないじゃないか!】
丁度、彼にしてみれば、朝の休憩時間。
怒りに満ちた文章に、私は指を動かす。
【ゴメンなさい。昨日は疲れて寝てしまってた。今朝は早かったから起こしたら悪いと思って。今日は会社にいるから、電話出来ないかも。】
:09/10/06 19:25
:W64S
:FhOlVLWI
#586 [あき]
すると、直ぐ様携帯電話が震えた。
【何度もちゃんとしろって言ってるだろ!お前は約束も守れないのかっ!待つ身にもなれ!少しは俺の気持ちも考えろ!】
…まただ。
そう感じたけれど。
私はまた、周囲の目を盗み指を動かす。
【ごめんなさい。今、仕事中だから。また今夜電話します。】
パタンと携帯を閉じて、与えられた仕事に向かう。
きゅっと縮み、じんじんしくしくと胃が鳴っていた。
:09/10/06 19:30
:W64S
:FhOlVLWI
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