微妙な10センチ。〜最終〜
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#706 [あき]
バックを掴み、部屋を飛び出した。
バタバタと降りる階段に、なおちゃんのお母さんが不思議そうに居間から顔を覗かせる。

『あきちゃ…』
『おばちゃん!お邪魔しましたっ!!』

目を丸くした、お母さんに声を掛けられて、私は、顔を背けて挨拶をする。
そのまま、バタバタと玄関を飛び出した。
そんな私の背中を、呆然と見送る姿が目に浮かぶ。
だけど、その姿は溢れる涙ですぐに消えた。

暗闇の中。
流れる景色の中、夢中でアクセルを踏み続けた。

⏰:09/10/31 04:26 📱:W64S 🆔:.0W.fEWM


#707 [あき]
なおちゃんが、誰と交際しようが、どこで何をしようが。私には怒る理由なんて、ない。
そんな事、この何年もわかっていた。だからこそ、耐えてきた。
なのに今夜は、この悔しさも、この悲しさも、とめどなく泪となって溢れ出てしまう。
この泪で消し去りたくなる。私の心の淡い灯火。

『なおとの馬鹿野郎!!』

ハンドルをガツンと殴ってみる。手の痛みの変わりに心が痛かった。

彼が放つ言葉の数々に一喜一憂して。
バカみたいに信じて。
それからずっと
心に灯され続けた消える事のない淡い光も。
その微かに光る灯火を信じて待ち続けた、私自身の存在も。
そんな私の時間も全てを否定されたように思えて。泪が止まらなかった。

⏰:09/10/31 04:48 📱:W64S 🆔:.0W.fEWM


#708 [あき]
コメ失礼します。
いつも読んでいます!
お互い求め合ってる様に感じました。
最後まで読みます。頑張って

⏰:09/10/31 14:39 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#709 [あき]
あきさん、いつも有難う! あきより。笑

⏰:09/10/31 21:36 📱:W64S 🆔:.0W.fEWM


#710 [あき]
――――――――

部屋は静かで、何もやる気が起きない。
ソファーに転がり、無音の中で、さっきの出来事を思い出す。
勢い余って飛び出したなおちゃんの部屋。
バタンと閉めた部屋の扉。バタバタと降りた階段の感触。
それらは、まだ手足に残っていた。
なおちゃんは、いつも、冷静沈着で。
いつも大人で。
私ばかりが子供扱いで。だけど、なおちゃんの隣は心地好くて。
わかっていたのに。
私は何を求めて何を間違って…
どうしてこんな事になってしまったんだろう。

⏰:09/10/31 21:43 📱:W64S 🆔:.0W.fEWM


#711 [あき]
なおちゃんの手を離したのは私。

幸せを掴む友人達を目の前に。
羨みそして自分の現実に焦り戸惑った。

いつまでもいつまでも。曖昧な言葉の向こう、微かに見え隠れする不安定な未来に夢見る歳でもない。
そう思った.
その瞬間、私は何かを見失って。
未来より、目の前の確実なる現実に手を伸ばしたのだ。
全てを過去にし、現実を掴み、確かなる未来を―…
あの瞬間、私はそう選んだ。


その結果がこの有り様で…

⏰:09/10/31 22:09 📱:W64S 🆔:.0W.fEWM


#712 [あき]
思い返しても。
あの時、あの瞬間…
いや、なおちゃんに恋した瞬間から。
私はただ、寂しかっただけ。
誰かに愛されているという[今]が欲しかっただけ。
掴んだ現実。
なのに、私の中は、いつも、なおちゃんで一杯だった。誰も入る余地なんてなかった。
すぐにわかったのに…引き返せば良かったのに。
弱虫の私は、引き返せなかった。
最悪最悪な女。

⏰:09/10/31 22:16 📱:W64S 🆔:.0W.fEWM


#713 [あき]
なおちゃんの口から聞かされた[現実]に、ただ、後悔の波が押し寄せる。
仕方ない
仕方ないんだ。
私が、西条さんのモノになったように。
なおちゃんが、誰かのモノになっても。
仕方ない。

そう自分に言い聞かせ
ソファーの上。
膝を抱え
子供の様に
ただ、泣きじゃくった―…

⏰:09/10/31 22:20 📱:W64S 🆔:.0W.fEWM


#714 [あき]
―――――――

あの夜から、なおちゃんとは、音信不通。
もしかしたら、なおちゃんは[彼女]といるのかもしれない。
そんな余念が、私を遠ざける。
あの真っ青携帯の女の時と同じ。
ただ、あの時と決定的に違う事。
それは―距離―あの頃すぐ傍で感じられたなおちゃんの生活が。
今の私達には、ここから北へ遥か数十キロの距離に憚られ、何も見えなかった。
意識は、北へと向かうものの、今夜もまた、反対側、遠く離れた南にいる、西条さんに縛られ身動きが取れないでいる。

⏰:09/10/31 22:29 📱:W64S 🆔:.0W.fEWM


#715 [あき]
『うん。…もう寝るしっ…〃うんっ。出来れば言うからっ…じゃおやすみなさい。』

電話を切り、溜め息が漏れる。

あれ以降も、まるで何事もなかったかのように、彼は毎日の電話を欠かさなかったし、毎日のように、私に愛を求めた。

私はというと。
まるで彼の愛に逆らうように、冷めた感情で、彼の愛を受け入れ。
言葉を発した。

許せなかった。

⏰:09/10/31 22:49 📱:W64S 🆔:.0W.fEWM


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