微妙な10センチ。〜最終〜
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#727 [あき]
白い錠剤。
これは今の私には、無くてはならないものとなった。
ただの鎮痛剤―…
苦痛を和らげてくれるそれは、私には何事にも変えられないものとなった。
それが…
この白い錠剤を飲み干さないと落ち着かなくなった。
一錠…二錠…三錠…
無意識に飲んでしまう。
今は少しチクッとした事に反応し。
一度に四錠…飲み干した。
:09/11/16 20:54
:W64S
:u8G2/lLk
#728 [あき]
依存―…
依存なんて言葉が当てはまるのかはわからない。ダークなイメージが強いこの言葉。
自分には関係のない世界だと思っていた。
なのに。
間違いなく、今の私は本来の目的すら見失い、用途を見失ったまま。目の前の白い錠剤を飲み続けている。
持ってないと落ち着かない。
飲まないと落ち着かない。
異常なまでの量を、一度に何度も…
飲み干した。
:09/11/16 21:01
:W64S
:u8G2/lLk
#729 [あき]
一度に四錠飲み干した体はドクンドクンと脈動が激しくなり、それが全身に伝わる。
『きた…』
視界は、一瞬ぐにゃりと曲がるけれど、これは、すぐにハッキリと見える。
次に体温が急上昇し、胸がカッと暑くなる。
そして、私の精神は
それらを全身で受け止めて。
そして、何故か安らいだ。
:09/11/16 21:09
:W64S
:u8G2/lLk
#730 [あき]
そんな裏の姿を見せず、笑顔で出社する。
隙を見つけては、錠剤を多量に飲み、また笑顔を作る。
『痩せたよねぇ!』
外に出て、交わす会話の中に自分自身の体の変化を知らされる。
勿論自覚はしてない。
なんなら、相変わらずの子豚体系だと思っているけれど、最近は、必ずそう声を掛けられた。
昔から体重の変動は激しい方。
忙しくなれば痩せるし、悩みがあれば痩せる。
だけど、直ぐに元通り。
いつもの事と、そんな言葉すら特に気にもしなかった。
:09/11/16 21:27
:W64S
:u8G2/lLk
#731 [あき]
西条さんとは相変わらずの関係を続けていて。
なおちゃんとも、相変わらずで―…
だけど、考えたって何も解決しない事は明確で。
もはや私には、どちらも煩わしくて、どうでも良くなっていた。
ただ、日々
流されるがまま過ぎていて。
淡々と過ぎていた。
:09/11/16 21:50
:W64S
:u8G2/lLk
#732 [あき]
――――――――
何気無い昼下り。
簡単にコンビニおにぎりで昼食を済ませ、いつもと変わらず、与えられた書類に目を通し、与えられた仕事に取りかかる。
ふとデスクの横、コピー機の前に立つ後輩の蒼白い顔が気になった。
『大丈夫?顔色悪いよ?』
声をかけてみる。
後輩は、そんな私の声に昔からひどくて。と小さな声で苦笑いをした。
ああ。あれか。
『鎮痛剤あるよ?飲む?』
そう言ってデスクの引き出しからポーチに入れた錠剤を差し出した。後輩は、助かりますと苦笑いをして一錠受け取ると、給湯室に向かったのだろう。うねりをあげるコピー機をそのままに、私の前から立ち去った。
:09/11/17 01:47
:W64S
:hcsGFdM6
#733 [あき]
(生理痛ねぇ…〃)
そんな後輩の背中を見送り、可哀想にと少し肩をすくめ、再びデスクに戻り、書類に向かう。ボールペンを握り、はたと手が止まった。
……
………
視線をデスクの隅。
毎年、出入り業者に貰い、強制的に配布される可愛げも何もない無機質な月めくりカレンダーに移す。
……
………
:09/11/17 01:56
:W64S
:hcsGFdM6
#734 [あき]
引き出しを開け、スケジュール帳を開いた。
がさつな性格の私でも、何故か昔からこれだけは欠かさない。
日々のスケジュールは勿論の事、何らかしらの形で、日々の生活を記してきていた。
感想であったりメモであったり…
一冊のノートには、私の日々が記されている。
ペラペラとめくり、目的の文字を探す。
今月はまだ、目的のものを見つけられない。
ページをめくって、先月、先々月の自身のスケジュールを確認する。やはり先月、先々月もまた、目的のメモ書きは見つけられなかった。やっと見つけた目的の文字が最後に記されていたのは…
三ヶ月も前だった。
:09/11/17 02:12
:W64S
:hcsGFdM6
#735 [あき]
(………)
三ヶ月前には、ハッキリと日付にはマル印、その数日後には、バツ印がついている。
これもまた私の昔からの癖で、私だけの決まった印。
その文字(印)が、三ヶ月前を最後に、今まで記されていない。
スケジュール帳をパタリと閉じて、静かに引き出しに収める。
再びカレンダーを見つめ、今月も、あともう少しで終わる頃だと改めて気付いた。
心臓がバクンと鳴り、ドキンドキンと脈を打った。
:09/11/17 02:24
:W64S
:hcsGFdM6
#736 [あき]
―――――――
感じた事のない恐怖。
物音ひとつしない冷めた部屋のソファー、暗闇の中、ただ、ただ体を抱える。外はザーザーと本降りの音がしていた。
『…まさか…』
本能なのか、潜在意識の中にあった憧れなのか、自然と手がお腹に伸びる。
『…はは…まさかぁ〃無理だしっ!』
意識が拒絶し、伸ばした手をハラハラと振り払い、意識を多量に飲み干し続けた錠剤を見つめる。
『……いや、こっちでもマズイよね…』
:09/11/17 22:41
:W64S
:hcsGFdM6
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