微妙な10センチ。〜最終〜
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#792 [あき]
《はぁ??悪いのはどっちだよ!?開き直るのかっ?!》
西条さんの怒号に再び小さく小さくなった体。震える手を必死に押さえ、なおちゃんを見る。なおちゃんの口が
〈大丈夫だ〉
静かに動いた。
そして
〈頑張れ〉
そう動いた。
私は頷き、また大きく深呼吸をする。
負けない。そう思った。惨敗続けたこの勝負も。今は、なおちゃんがいる。
それだけで強くなれた気がしていた。
:09/12/14 01:21
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#793 [あき]
『お願いだから、私を解放して下さい。…わ…私はっ…!!貴方の物じゃないの!!ちゃんと意思があるのっ!!もう別れてよっ!!!うんざりだしっ!!!』
その言葉を発した時、興奮したのか、何故か涙が溢れてた。
すぐに、なおちゃんの気配を感じる。
【よく言った。あとは、もう電話を切ればいい。】
そう走り書きをした後、ソファーの前にしゃがみこみ、震えながら、泣き出す私のヘタレっぷりを覗き込んでは、指差し笑っていた。
:09/12/14 01:38
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#794 [あき]
《おまっ…!!何だその言い種っ…》
『だから別れるっ!!ばいばいっ!!』
慌てて電話を切る。
恐怖をソファーに投げ、逃げるように目の前にしゃがみ込んだ体に震える体を埋めた。
『大馬鹿者。』
すっぽり収まった私の体をそう言って、頭をポンポンと叩くその手は、優しくて暖かくて。また涙が出てきた。
『うぇ……ごめん……怖かったよぉ…』
『知るか』
そう言いながら、なおちゃんは、黙って私の震えを受け取めてくれていた―…
:09/12/14 01:53
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#795 [あき]
――――――――
『…まただ…しつこい…』
『まじもんだな。』
『……うん。』
『はぁ。俺が出る?』
『却下。余計ややこしい。』
あの別れ話から、数時間。ソファーの上では、分刻みで、携帯電話が震えていた。見なくても相手は誰かわかる。
震える携帯電話をちら見しながら
『私、刺されるかな。』
『刺されちまえ。』
『……はい…すみません…』
さっきから、なおちゃんとは、こんな会話ばかり。
:09/12/14 01:59
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#796 [あき]
西条さんは、もう意地になっているしか思えなかった。私と別れたくないんじゃない。
ただ、意地になっているだけ。
『…どうしよ…』
一向に、鳴り止まない携帯電話。
『さぁ。でも、このまま無視してたからって、収まるとは思えないけどな。』
『…私も思います…』
二人でそれを見つめる。
どうしろってんだよ!!くそーっ!!!
:09/12/14 02:03
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#797 [あき]
西条さんが、諦める事はひとつ。聞いてきた過去の恋愛経験。
《俺さ、浮気されたら、もう許せない。》
彼の性格。異常な束縛心。それらを総合すると、やはりこれしかない。どうせ怒ってるんだ。怒り狂って、私が捨てられた事にすりゃ、話は早い。
《俺、女運なくて…いつも浮気されちゃう。》
まさかまさかだけれど?過去の彼女達も、もしかしたら、これが最終的手段だったのかもしれない。私が、挑もうとしている事で、今はそう思えてならないけれど。
どうせ傷付けたんだ。
とことん傷付けて、恨まれなきゃ。
私は西条さんからの呪縛も解けないし。
震える携帯電話を見つめ、西条さん自身にも申し訳ないような気がしてきた。
:09/12/14 02:27
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#798 [あき]
『あの…』
この決断をなおちゃんに言うか言おまいか悩みながら声を発した。なおちゃんは、私の顔を見るなり、呆れたように笑った。
『はぁ…だから、俺は初めから言ったろ?』
『……でも…やっぱり、傷付けるよね。トドメ刺しちゃうよね…』
もじもじと、ライターを鳴らす私に、なおちゃんは、言った。
『だろな。』
『…これしかないのかな…』
『知らん。』
『………』
:09/12/14 02:34
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#799 [あき]
携帯電話を見つめる。
相変わらず、分刻みで震え続けるそれは、西条さんの怒りでもあり、叫びにも聞こえた。
このままじゃいけない事だけは、わかる。
『……やる。』
『ほーか。』
携帯電話を握りしめ。
次の電話を待つ。
握りしめて直ぐ様、それは鳴った。
『鳴ったぞ?出るか?』
『よしっ…出る。』
なおちゃんの部屋で、ジャッジが着かなかった勝負。これが、本当の最終ラウンド。
心の中で、ゴングが鳴り響いた。
:09/12/14 02:42
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#800 [あき]
―――――――
『はいっ。』
《…どうして電話に出ないんだよっ!!》
『…出先だって言ったしっ。それに、もう別にいいでしょっ!!関係ない!!』
先ずは、強気作戦。
しかし、相変わらずのびびりヘタレっぷり満開の私の手は、しっかりと、なおちゃんの膝を掴んでいた。
《…はぁ?本気なのか?》
『まだ言ってんの?本気だってば!!』
膝を握る手に力が入る。なおちゃんは、いてぇわとジェスチャー。
そして、貸せと手を差し出した。
:09/12/14 02:47
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#801 [あき]
私は、首をプルプルと横に振り、待ってとジェスチャー。
これは、最終手段。
いや。出来る事なら使いたくない。
本当は話し合いで、円満解決したいんだもの。
『私に、どうしろって言うの?』
《どうもしない。本気かって聞いてんだよ。あきは、これでいいのかって?このまま、さよならしていいのかって。》
突然の敵…いや、西条さんの優しい声。
哀しそうな声に
完全に強気発言で応戦体制に入っていた戦意は喪失しそうになる。
『そ…それでいいっ!』
それを慌てて奮い起こした。
:09/12/14 02:55
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