微妙な10センチ。〜最終〜
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#11 [あき]
電話を切った後。

彼も、私に会いたいと思ってくれてたのかなって。
そう気付く。

もう遥か遥か昔。
今よりも、もっともっと遠く離れた距離にいた頃。
彼の助けてが
《腹へった。飯行く?》
だった。

今もそう。
前なら簡単に言えた言葉で、簡単に成し遂げられたそれも。
離れた街に暮らす今は、それが、彼の唯一の表現だったのかもしれない。
それを《疲れた》と自然に漏らす私の言葉で、彼は全てを飲み込んだ。
そう気付くのは、いつも遅かった。

⏰:09/07/08 02:13 📱:W65T 🆔:Uanw3whY


#12 [あき]
そうやって私達は。
日々を重ねるだけ重ねて、時間は全くさっぱり重ねなくなっていた。


だけど。
妙な自信と
妙な安定。

会わなくても、話さなくても。何年も繋ぎ合わた時間だもの。

たった数ヶ月で。

大切なものを
失いかけているなんて。
考えてもいなかった。

⏰:09/07/08 02:28 📱:W65T 🆔:Uanw3whY


#13 [あき]
―――――――

『じゃぁ。そろそろ帰るねっ。』

よいしょと立ち上がり、バックを肩にかけた。
ガチャガチャと、テーブルに散らばった、携帯、煙草をバックにしまって、くるっとお尻に持っていく。

『おうっ。気をつけろよ』

『うんっ。』

適当に返事をして、肩に食い込んだ紐を直した。


久しぶりに重ねた時間は、あっという間で。
特にたいした会話もしないで、特にたいした事もしないで。
タイムリミットだ。

⏰:09/07/08 13:15 📱:W65T 🆔:Uanw3whY


#14 [あき]
『体気をつけてね?』

『ぉおっ。…そっちも、無理すんなよ。』

『…うん。』

本当は、もっともっと話をしたかった。

もっともっと、話を聞いて欲しかったし。
もっともっと、話を聞いてあげたかった。
だけど。
そう思っていても、私達は、互いに、話出すきっかけがなくて。
結局、何も言えず、帰り際に、たった、二言、三言、そう交わすのが精一杯。

薄々、気づいていても、それ以上、お互いがお互いに、踏み込めなかった。

⏰:09/07/08 13:27 📱:W65T 🆔:Uanw3whY


#15 [あき]
昔の私達なら。
時間も忘れて、何もかもを忘れて、夢中で話た。
悩みや愚痴、怒りや、悲しさ、くだらなさすぎる言から、些細な出来事まで。
共に、怒って、共に泣いて、共に悩んで。共に笑った。少しでも様子が違えば
何があっただの
どうしただの
掘り返し掘り返して、結局、勢いに飲まれ、気付けば、一から百まで胸の中をぶちまけたのに。
いつしか、何も言わなくなったし。聞かなくなった。重ねすぎた、月日が、そうさせたのかもしれない。

何かあれば。
どうしようもなければ、言ってくる…

そんな妙な自信が。
私達の間に見えない壁を作ってしまったのだ。

⏰:09/07/08 13:37 📱:W65T 🆔:Uanw3whY


#16 [あき]
おもむろに立ち上がった、なおちゃんが、私の後ろに立つ。
背中から、ふわりとなおちゃんの匂いがした。

『んっ?なんか悪戯したでしょっ!』

くだらなさすぎる悪戯が大好きな、なおちゃん。
隙を見せると、かっこうの餌食にされるのだ。

『するかっ!』

『怪しいっ!』

私は、バックをポンポンと触ってみたり、背中に手を回してみたりと、悪戯の痕跡を探す。

『信用ねぇなぁ〃』

『ないねっ〃』

⏰:09/07/08 13:40 📱:W65T 🆔:Uanw3whY


#17 [あき]
『じゃぁね』

『おう』

パタンと扉を閉じた。
懐かしい廊下を渡り、懐かしい階段を静かに降りると、廊下に漏れる光に、おばさんの背中が見えた。

『遅くまで、お邪魔しました〃』

襖越しに、丸いおばさんの背中に声をかける。

『あら、帰るの?』

おばさんは、振り返ると、私に微笑みかけてくれた。うんと、微笑み、頭を下げる。

⏰:09/07/08 14:19 📱:W65T 🆔:Uanw3whY


#18 [あき]
『おじさん…どう?』

病に伏せて、最近は、おばさんの手がないと、何も出来なくなってきた、あの、私の記憶に残る、優しくて、大きなおじさん。

『ん?寝てるわよ〃』

『そっかっ〃』

『あきちゃん、こっち来て座る?』

おばさんは、疲れた体を、ゆりお越し、私を隣に呼び寄せた。

『いいよっ〃おばさんも疲れてるんだからっ!早く寝ないとっ〃』

⏰:09/07/08 14:25 📱:W65T 🆔:Uanw3whY


#19 [あき]
『大丈夫よっ。』

ふふふと笑う、おばさんの顔には、深く刻まれた溝。私は、笑うと、首を振った。

『今日は、なおちゃんがいるんだから。なおちゃんに任せてたらいいんだよっ。また来るからっ〃その時は、お茶ご馳走なるねっ。』

そう?と静かに微笑んだ、パジャマに薄い羽織りを着たおばさんに、おやすみなさいと笑って言った。

⏰:09/07/08 14:34 📱:W65T 🆔:Uanw3whY


#20 [あき]
静かに廊下を進む。
ギシギシと鳴る廊下は、昔から比べると、大きくなり、それが胸に響く。
広くて長い廊下の先に玄関。サンダルに足を入れた時。また後ろで、おばさんの声がした。

『あきちゃん?なおとの事、頼むわね…』

後ろを振り返ると、小さな体のおばさんが、私に笑いかけていた。

『あははっ〃』

私は、うん。とも、ううん。とも言えずに笑ってしまう。

⏰:09/07/08 14:40 📱:W65T 🆔:Uanw3whY


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