微妙な10センチ。〜最終〜
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#21 [あき]
『あの子、あきちゃんに沢山迷惑かけてるかけてると思うけど、これからも、あの子の事、助けてやってね』
『そんな事ないよ〃』
それには、強く首を振った。私の方こそ、沢山、彼に助けてもらったんだ。
『おばさんも、無理しないでね。』
『ありがとうね』
外まで見送ろうとしてくれた、おばさんの優しさを断って、私は車に乗った。
キラキラとした星空が、ここがどんな田舎町なのかを教えてくれる。
私には何がしてあげられるんだろう。
そう、星空に問い掛けてみた。
:09/07/08 14:49
:W65T
:Uanw3whY
#22 [あき]
真夜中、流れる景色を、駆け抜けて、私が暮らすこの街に辿り着いたのは、なおちゃんの町を出発してから、かれこれ数時間。
暗闇の冷たい玄関を開けて、パチンと電気をつけると、ベッドにバックを放り投げた。
寝室に置いてある小さなソファーに腰を下ろすと、煙草に火を付ける。
今回もまた
結局、何も言えなかった。
結局、何も聞けなかった。
その虚しさだけが、胸中を締め付ける。
ジリジリと燃える筒が、煙たかった。
:09/07/08 14:57
:W65T
:Uanw3whY
#23 [あき]
しばらくして、ごそごそとバックのポケットを探る。
【今、着いたよっ。おやすみなさい!】
可愛い絵文字も、ハイテクデコメも、何もない。
シンプルな文面を、作って送信しておいた。
返事が返って来ないのは、千も承知なので、ぽいっとテーブルに置くと、私は、ごそごそと、バックの中身を、明日の通勤用バックに入れ替える。
今度はいつ会えるんだろう。
そんな事を考えながら、バックのポケットをまさぐっていた。
:09/07/08 15:02
:W65T
:Uanw3whY
#24 [あき]
『…なんだこりゃ?』
バックのポケットの奥底から、身に覚えのない紐がはらりと落ちてきた。
色気もへったくれもない、麻が組まれた、それを手に取り、しばらく睨めっこ。
自然と記憶が蘇る。
この紐…
見た事がある…
あれだ…
昔、昔、手先が器用な彼が、作っていた。
いつしか、私達の間で、流行った。
【一本いっとく?ミサンガ】
だ…。
:09/07/08 15:08
:W65T
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#25 [あき]
もしかして。
あの時、私の後ろに立ったのは…
バックにこれを
入れたんだ…
なーんだよっ!!
可愛くないったりゃありゃしない!〃
素直に、渡してくれたらいいのにっ!〃
それは、昔に比べたら、色も何もない。
飾りもなにもない。
ただの麻の紐った。
『手…抜きすぎだし…〃』
小さな小さな、その紐に、ぷぷぷっと笑って…
ジワリと胸が、暖かくなった。
:09/07/08 15:13
:W65T
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#26 [あき]
このまま、何も言わなかったら、彼は何か言ってくるかな?
《ポケット見ろ》
《なんで?》
《いーから見ろ!!》
《やだよ。理由は?》
《うざっ!!〃》
なんて言うのかな?
想像したら、笑える。
そんな、なおちゃんも見てみたいけれど、そんな事をしたら、間違いなく、次回、会った時にコテンパンに抹殺される。
私は、携帯を握りしめて、短縮番号ゼロを押した。
:09/07/08 15:20
:W65T
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#27 [あき]
そうすると、珍しく、数回のコールで、繋がる。
―ピッ♪
《おうっ》
『なに?これっ〃素直じゃないなぁ〃』
《くれくれうるさいから、わざわざ、忙しーい合間をぬって、作ってやったんだろ?》
『にしても、手抜きすぎじゃない?』
《あほぅ。シンプルが一番。てか…その形が一番難しいんだぞっ!》
『……ありがと…〃本当、嬉しい。』
《おお。じゃな。寝るぞ!》
呆気ない会話。
だけど、何時間も会話した気分になる。
暖かい気持ちになった。
この夜は、久しぶりに寂しくも悲しくも辛くもない夜だった。
:09/07/08 15:29
:W65T
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#28 [あき]
そのミサンガは、携帯ストラップとして、私の携帯に今でも、ぶら下がっている…。
仕事柄、アクセサリーは厳禁だった私は、不器用ながらに、必死に、携帯ストラップにアレンジしたのだ。
《また無くしたなんて、ウジウジ泣かれたら、たまんねえから、二度と無くすなよな》
言われた通り、私は、今度は切れないように、携帯に繋げた部分を、布用ボンドでガチガチに固めてしまったのだ。
切れないように…
宝物を無くさないように。
結果、頑丈に固められた、ストラップは、ハサミを使わないと取れない状態になった。
ハサミなんて…
ぶちっと切ってしまうなんて。
まだ、私には出来ない。
:09/07/08 15:38
:W65T
:Uanw3whY
#29 [あき]
そうやって、少しづつ、心の距離に負けそうになりながら、だけど、必死に繋ぎ合わせようと、もがいていた私達。
だからこそ。
歯車が狂い出すのは。
本当に些細なきっかけだった。
そこからは、ガタガタと不快な音を鳴らしながら、バラバラになっていった私達の歯車。
そして、リズムを崩し、バラバラになった歯車は、呆気なく止まってしまった。
まさか。
私達の間に、終演があるなんて
知りもしなかった―…
:09/07/08 15:51
:W65T
:Uanw3whY
#30 [あき]
―――――――――
『ねぇ……バイト辞めれば?』
《……あきも、仕事辞めれば?》
『そんな簡単に出来るわけないじゃん。』
《俺だってバイトそう簡単に辞めれるわけねーだろ?》
『……』
《……》
虚しい沈黙。
最近、なおちゃんは、イライラしている。
順調かと思っていた、新しい城の着工が遅れに遅れていたからだった。
最悪、計画自体が無くなるまでの瀬戸際に立たされていた。
:09/07/08 16:12
:W65T
:Uanw3whY
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