微妙な10センチ。〜最終〜
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#171 [あき]
外を歩けば、車道側を歩き、どこに着いても、必ずドアを開けてくれる。
いつの間にか終わっている、お会計。
全てが大人だった。
こんなの、別に望んでもいない。
気が引ける。恐縮する。
だけど…だけど、女だもん。こんな扱い、悪い気はしない。

こんな気持ち…
私、いつから忘れてたんだろう…

そっか。
口も態度もピカイチ悪いけど、何気ない仕草や、何気ない事。それに優しさを感じれた。
だから、それで良かった。だって、私は、なおちゃんと居られるだけで、幸せだったから。

それだけで良かった日々だったんだ。

私、女だったんだ…

⏰:09/07/31 20:25 📱:W65T 🆔:ZWrhOOXQ


#172 [あき]
今朝、始発に乗っても、この街に着いたのは、なんとか午前中。限りある時間を、ふんだんに満喫した。
周りはネオンがつき、人影もパラパラになりだした頃、そろそろ、私の住む場所へと向かう最終便がこの街から出て行く時間。
もちろん、そうなるのは覚悟の上で、駅まで愛車で出てきた。前回失敗したのをもとに、最終便で帰っても、自宅には戻れる準備万端なのだ。
彼が送ってきた、チケットは片道分。
少なくとも、そろそろ駅に行かないと、窓口が閉まる。

『…今日は楽しかったですっ。』

『うん。俺も。』

微妙な空気が車内に流れる。
駅に向かおうと言い出せない自分は、ほとほど弱いと痛感した。

⏰:09/07/31 20:35 📱:W65T 🆔:ZWrhOOXQ


#173 [あき]
※※※※※
余談

送られてきたのは三日間の往復チケットでした。

>>160
参照。

だけど、さすがに、それはと、すぐさま返品。
日帰りならと伝えると後日、彼から、片道切符が送られてきたワケです。

※※※※※※※※※

⏰:09/07/31 20:43 📱:W65T 🆔:ZWrhOOXQ


#174 [あき]
駅へと車が進む。
何故か無言の彼。
気まずい私。
彼は前を見据え、私は横の流れる景色を見ていた。

『…やっぱり送らないとけない?』

方言でポツリと言われた言葉に、ドキンとした。

『本当は、このまま連れて帰りたいくらい君を離したくない。もう会えなくなるのがわかるから。
だから、せめて、もう一日。一緒にいて欲しい…』

そう言って、ハンドルを握る手が私の手に触れた。
自然と彼の左手に、力が入り、握られた私の右手を包み込んだ。

⏰:09/07/31 20:54 📱:W65T 🆔:ZWrhOOXQ


#175 [あき]
車は駅を通り過ぎ、街の中を走り抜けた。
何も言えなかった。
どんどん背中で小さくなっていく、駅。
だけど、小さくなったかと思えば、また突然現れる駅。彼は、それでも、ロータリーには入れず、また駅を通過した。
何度も何度も、駅を通過しては、また駅を目指す。
さすがの私も、道を覚えたぞと、苦笑いをしたくなる。もう何周したんだろうか。車内の時計を見ると、とうとう、つい一分前、最終便がこの街を出発してしまっていた。
その間、沈黙が流れる車内で、音楽だけが、聞こえる。

『……ごめん。』

そう言う彼に、私は、泊まる所探さないとね。と笑って言った。彼は、握っていた手を離すと、柔らそうな髪をくしゃりと掴んで、これじゃ拉致だと溜め息をついた。監禁かもねと笑う私に、俺は、笑えないと苦笑した。
そして、ありがとうと言った。

⏰:09/07/31 21:07 📱:W65T 🆔:ZWrhOOXQ


#176 [あき]
『まさか、拉致られるとはっ〃明日、休み取ってて、良かったですよっ。ともかくだっ。こうなった以上、ド○キありますか?着替え買わなきゃっ。』

『こここら30分くらいかかるけど。』

『へーっ。あるんだっ〃』

『コラッっ〃あるさっ!バカにすんなよっ。』

『はいはいっ。』


車は、深夜も営業している大型ショップへと向かう。本当は、ドキドキしていた。バクバクしていた。
笑ってないと、潰されそうだった。
仕事は休みだった。
勿論、こうなるなんて予想していなかった。
ただ、こんな遠い街に来て、深夜に帰宅するんだ。
朝起きれる自信がなかった。だから、久しぶりに貯めてた有給を使ってただけ。念のためだ。念のため…

⏰:09/07/31 21:21 📱:W65T 🆔:ZWrhOOXQ


#177 [あき]
念のため…
念のため…

何の?

帰ってた…

ってた…?

私、本当に、帰るつもりだった…?


答えが出せなかった。

だから、笑ってないと、押し潰されそうだった。

⏰:09/07/31 21:22 📱:W65T 🆔:ZWrhOOXQ


#178 [あき]
―――

どうぞ、ごゆっくりと、着物を着たおばさんが笑顔を残し、襖が閉まる。
二人並んで、部屋を見渡す。すぐさま、暑いねと、西条さんが冷房のスイッチを探す。私は、何がやってるのかなとテレビのスイッチを押した。
何かしてないと、気まずさでおかしくなりそうだった。

数十分前。
せっかくだから、お勧め温泉ないの?の私の冗談に、彼はあるよと言って、この温泉街に車を走らせた。
まさか、飛び込みなんて無理でしょうと笑う私に、彼は任せとけと一件の宿に入って行った。
バカなと焦りながらも、彼の背中を見送る事数分。大きくまるサインをしながら、意気揚々と車に戻ってきたのだ。

こいつ…何ものなんだっ!!

⏰:09/07/31 21:30 📱:W65T 🆔:ZWrhOOXQ


#179 [あき]
『ここの女将さんと、ちょっとした知り合いでさ。にしても、部屋あって良かった。』

『あっそうなんですか…〃』

お茶をすする私達。
熟年夫婦かよっ!!

『でも一部屋…』

『いや、そこまでは無理言えないだろ?』

何故、そんなに、当たり前のように、だけど、どこか満足げなんだっ!!

『で…ですよねーっ〃』

ああ。
私って、本当弱いな。

⏰:09/07/31 21:34 📱:W65T 🆔:ZWrhOOXQ


#180 [あき]
『ここの温泉、かなりいいよ。お肌ツルツルになるからっ!!』

『うんっ…』

『とりあえず、風呂入ってきたら?』

『後でいいです〃先に行ってきたらどうですか?』

今夜。私は、どうされちまうんだろう。
彼がお風呂に行く間に
柔軟体操をしっかりして、いざという時の飛び蹴り、もしくは関節技、なんだったら、ボディーブローの練習をしておきたかった。

※いや、実際には、運動音痴なもんで、出来ませんけどね。

⏰:09/07/31 21:40 📱:W65T 🆔:ZWrhOOXQ


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