微妙な10センチ。〜最終〜
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#201 [あき]
この案件は、もう何年も私が担当してきた。
この地区だって、もう何回も足を運んだんだ。
勿論、ミスをした覚えはないし、トラブルだって起こした覚えはない。
なのに
突然に担当を外されたのは予想外の出来事だった。
今朝出社すると、なぜかそう決まっていた。
理由を聞いても他の仕事との兼ね合いだとしか言われなかった。
それ以上は、取り合ってはもらえなかった。
今更、そんな理由…

⏰:09/08/07 03:07 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#202 [あき]
『じゃ…何か、わからない事あったら聞いてね。』

そう締めくくって、全ての書類を、うろたえる彼女に手渡す。
バックからポーチを取り出して、部署をふらりと抜け出し、廊下の隅に追いやられた喫煙ルームのドアを開ける。

カチリと百円ライターで音を鳴らして、大きく吸い込んで、ふわりと煙りを吐き出した。
外は、今日も雨だった。

⏰:09/08/07 03:13 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#203 [あき]
仕方がない。
若手が入れば、誰かが追いやられる。私が、この部署に配属になった時だって、誰かの担当が私になったはず。

そう自分に言い聞かす。
社会ってのは、そうゆうもんだ。

と納得する。
クシャリと灰皿に押し付けると、私は、また自分に与えられた職務に戻る。

だけど。
これは、始まりに過ぎなかった―…

⏰:09/08/07 03:18 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#204 [あき]
『えっ…?』
まただ。
私なりに気合いの入っていた案件。かなり難しい案件で、何日もかけて下準備したのに。またまだまだ経験不足の後輩へ担当が変わっていた。


『私がっ!?』
もう何年も携わっていない、新人の頃に基本的な案件だからと、何度か担当させてもらった記憶がある。

『…休み…ですか?』
シーズンオフなのも、世間は大不況で仕事がないのも理解はしていた。だけど、私の職務には関係のなかった話。…のハズだった。

⏰:09/08/07 03:28 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#205 [あき]
何かがおかしい。
何年も担当してきた仕事が外され。
難しい案件が後輩に行き。簡単な案件が私に与えられる。
周囲は、忙しそうに、残業、休日出勤と慌ただしいのに、私には与えられた休日。
出社をしても、ごちゃごちゃと書かれている白板。
私の名前の欄は、つねに空白。いわゆるフリーという扱い。出張も、会議も、担当も。何も記されていない。
……まさか。
干されてる…?

そう気付いた時には
完全に、私は蚊帳の外になっていた。

⏰:09/08/07 03:34 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#206 [あき]
干される心当たりなんて到底無かった。
私は、問題児だったのかもしれない。
風雲児だったのかもしれない。
型破りだったのかもしれない。
だけど、与えられた仕事には一生懸命に取り組んできた。
勿論、ミスも沢山してきた。自覚はしている。
だけど…干される程のトラブルを起こした記憶なんてない。

どうして??
なんで??

⏰:09/08/07 03:39 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#207 [あき]
今日もまた、何もする事がなく、喫煙ルームに入っている。二本目の煙草に火をつけようとした時、懐かしい顔が覗かせた。

『…ご無沙汰してますっ〃』

『おーっ!あきぃ。元気っ!?』

彼女は、カチリと火をつけると、にこりと笑った。

『まあまあですかね〃』
目を合わせられず、私も二本目に火をつける。
新人の頃から、面倒かけっぱなしの、私が師匠と崇める大先輩。
彼女は、とうに違う部署へと移動して、なかなか顔を合わせなくなっていた。

⏰:09/08/07 03:44 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#208 [あき]
『相変わらずのハチャメチャかぁ?』

『何言ってんですかっ〃最近は、かなり真面目にやってますよっ。ミスもしてませんってばっ!』

そんな私に、あははと笑うと、彼女は、そっかそっかと頷いた。

『順調っ?』

くりっとした大きな目で、私の小さな目を見つめる。その目は、何もかもを知っている目だった。

『さすがですねっ〃耳に入ってますか?』

悪戯な笑顔で答えてみたけれど。その目に見つめられ、今にも泣き出しそうだった。

⏰:09/08/07 03:49 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#209 [あき]
『…なんだか、よくわかんないんですが、私、どうやら、只今、干されちゃってまぁすっ!!』

明るく声を出してみた。
片手を上げて、あははと笑ってみせる。
彼女は、そんな私に、バカだこいつと笑っていた。

『…何でなんですかね…?』

指に挟んだ二本目の煙草が、ジリリと音を立てて、灰皿に落ちた。
彼女は、ふうっと細く白い煙を吐き出すと、灰皿にくしゃりと押し込んだ。

⏰:09/08/07 03:54 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#210 [あき]
『あきぃ?あんたの今の上司厳しい人よ?あの人は、ハッキリしてっからね。』

『わかります。丸か罰の人ですよね。で。私は罰が下された。…でも、身に覚えないです。』

そう答えた私に、彼女は、思いがけない事を言った。

『今、彼氏いる?』

突然の質問に、驚きながら、まさかと、苦笑いをしながら手を横に振った。

『…なら、○○の△△さんに心当たりは?』

(※○○→地方名
 ※△△→職種 )

⏰:09/08/07 04:01 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#211 [あき]
○○地方の△△って言ったら、当てはまる人を知っている。

『…一人知ってます。』

でも、まさか、会社に知れてるはずはない。
勿論、うちの会社が、取引先の人との恋愛が御法度なのは、もう何年も前から熟知している事だ。
私は、会社絡みの誰一人にさえ、彼との事は話ていない。言えるはずがない。

…だから、知られてるはずはない。

『その人とは、どんな関係?』

『…確かに、プライベートで連絡取ってますけど…どうしてそれを?』

⏰:09/08/07 04:07 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#212 [あき]
『バカだねぇ〃遊ぶんならバレないようにしなきゃっ!!うちの意味のわかんないこだわり、あきも知ってるでしょっ!!』

『…はぃ…だけど、どうして?』

西条さんとの事は、この春に寿退社したさえちゃん、そして、かつての仕事仲間であり、今やさえちゃんの愛する旦那様である、彼しか知らないはずだ。
まさか…この二人から…?

『噂が、彼女の耳に入ったんだろうねぇ。』

『だから…どうして、りょうこさんもご存知なんですかっ?』(※りょうこさん→先輩の名前)

⏰:09/08/07 04:13 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#213 [あき]
『○○地方の人だからって、あきも気抜いたねっ…』

りょうこさんの話をまとめると。
私の後、別の部署の別の人が、彼の地方に同じく中期出張に出向いた。
同じ地方なだけに、パートナーになる会社も同じだ。そこで、聞いて来た。

《先月、おたくの会社から来た美人さんと、うちの会社の男前がいい雰囲気だ》《本人が、嬉しそうに話てた。》


思わぬ所からの漏洩だった…

⏰:09/08/07 04:21 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#214 [あき]
『そんなの、出世を狙えば、いい蹴落とし材料じゃん。…にしても、まさか本人から漏れるとはねぇ。』

りょうこさんはため息をつきながら、二本目の煙草に火をつけた。
三本目を持つ指が震えているのを必死に抑える。

『…そんな、やましい関係じゃないですよ…ただ電話したり、メールしたり…』

『私は、いいと思うよ?ただね。仕事先ってのがマズいかった。あくまでも出張中に、出張先の相手だからさ。意味わかるよね?』

頷くしか出来なかった。

⏰:09/08/07 04:28 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#215 [あき]
『とりあえず、相手とよく話しな?もちろん、相手は悪気があってした訳じゃないって事も、わかってあげんだよ?そもそも、うちの会社がさぁ〜…』

りょうこさんは、その後も、会社に対する不平不満を私に投げかけた。
私は、それに頷き、時折、相槌を打ったけれど、特に頭には残らなかった。
最後に

『その彼の事好きなら、挫けちゃだめ。仕事も恋愛も、挫けたら終わり!踏ん張るんだよっ!』

そう言って、私の背中をポンと二回叩いて、彼女は、またねと部屋を出て行った。私は、はいと小さく返事して、彼女の背中を追うように、部屋を後にして、地獄の部屋の扉を開けた。

⏰:09/08/07 04:40 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#216 [あき]
定時になり、私はロッカールームの扉を開ける。
朝からの小雨は、とうとう本降りになったようだった。
私はシャツを脱ぎ、くるっと紙バックに入れた。
Tシャツをずぼりと頭からかぶり、続けて、脱いだスカートをハンガーに引っ掛ける。
デニムにずずっと足を入れて、足元をスニーカーに履き替えた。
最後にジッパーをさらりと羽織って。
バックから携帯電話を取り出し、画面を確認する。新着メール一件。

【お疲れ。終わったら、また電話します。西条】

絵文字が、にこにこと私を見ていた。
私は、黙ってそれを見つめ、携帯を閉じた。

⏰:09/08/07 04:51 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#217 [我輩は匿名である]
頑張ってください(*´ω`*)

⏰:09/08/07 08:38 📱:P904i 🆔:QFrhfb9Y


#218 [あき]
匿名さん、ありがとうですっ。
―――

雑踏の中私は、いつものように、電車に乗り、いつもの駅へ降り立つ。
バス停で時間を見てみると、さっき出たばかりだった。駅前のコンビニにフラリと立ち寄って、コーヒーとサンドイッチを買った。コンビニの冷房は、濡れた体を一層冷やしてくれた。雨は一向に止む気配はなく、降り続いている。
仕方なく、雨宿りも兼ねて、バス停に戻る。
ベンチに座り、サンドイッチを頬張った。
行き交う人々、迎えの車、ぼうっと眺めていると、私の迎えが来る。
バスに乗り込んで、いつもの道のりを戻っていく。
ザーザーと雨がうるさかった。

⏰:09/08/07 20:33 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#219 [あき]
真っ暗な部屋に戻り、誰もいないのに、ただいまなんて言ってみたりして、パチンと電気をつける。
眩しさにくらくらした。
着替えもしないで、最近買い直した、まだ新しい匂いのするソファーに座ると……


何故か、涙が溢れてきた。

自分の甘さに。
悔しくて泣けてきた―…

⏰:09/08/07 20:37 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#220 [あき]
甘くて、大好きだった蜜の味に飽きた、小さな虫は、欲が出たんだろう。
その小さな虫は、違う味を求めて、フラフラと飛び立ってしまったのだ。
そこで、綺麗な模様の花に出会う。
バカな小さな虫は、あれは旨そうだと、吸い寄せられるように、その花にとまってみた。
とまったらもう最後。
その蜜は、ネバネバしていて、もがけば、もがく程に、体にまとわりついた。

永遠に逃げる事の出来ない。
大好きだった甘い蜜にも。
大切だったあのお花畑にも。
もう帰れない。

⏰:09/08/07 20:46 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#221 [あき]
《お疲れ様!》

『うん。お疲れさまでしたっ。』

《家?》

『そうですよっ。』

またいつもの電話。
今から小一時間は、この電話が続く。聞きたい事は、沢山あるのに、言い出せない自分に、腹立たしささえ覚える。
わかってる。
彼は悪くない。
悪くないけど…
どうしよう……

彼の声も遠い空の上だ。
そんな私に、彼はしばらくして気付いた。

⏰:09/08/07 20:51 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#222 [あき]
《何かあった?元気ないけどっ。》

『そうっ?疲れてるからかな…』

《ちゃんと寝ないとダメじゃん〃》

『……寝てるしっ!!最近は特にっ!!』

《……》

『あ…ごめんなさい…』

⏰:09/08/07 20:55 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#223 [あき]
これは、完全なる八つ当たり。
西条さんは、あのホテルの夜と同じだとすぐに気づいた。

《…イライラしてんねっ…。また男?》

また?
またって何?

『違いますよっ。ちょっと仕事でねっ…〃ごめんなさいっ。』

《…隠さなくてもいいじゃん。》

『そんなんじゃないってばっ!!』

⏰:09/08/07 20:59 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#224 [あき]
《………》

無言の電話口。

嫌な空気。
この流れ。
完全にアレじゃん。

『…あははは〃本当に、そんなんじゃなくて、仕事でトラブルあって、イライラしてましたぁ〃ごめんなさいっ。そっちはぁ?雨ですかっ??』


私は、明るく切り返した。この流れを断ち切ろうとしたんだ。

⏰:09/08/07 21:02 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#225 [あき]
なのに、彼は、小さく溜め息をついた。
その溜め息が、気分を変えようとした私の気持ちを、さらに苛立たせる。

《……今日、どうして何も連絡くれなかった?待ってたのに。》

連絡…
ああ。メールの返事か。

あれ以降、私達は、仕事中、合間を見てはメールのやり取りをしていた。
今日は、そういえば、一度も返信していなかった。

『仕事で…』

《なら終わってからでも返信くれりゃいいのに。》

これ以上、苛立たせないでっ!!
そう叫びそうになった。

⏰:09/08/07 21:07 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#226 [あき]
《男と会ってたの?》

『何言ってんですかっ!?〃仕事終わって、真っ直ぐ帰ってきましたよっ。』

《じゃ、どうして返信が無かった?》

『だからそれはっ…たまたま携帯を見なかっただけでっ。』

《何で見ないのっ?》

『だからっ……』

ああ。
ダメだっ。
イライラマックスだっ…

⏰:09/08/07 21:11 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#227 [あき]
『ねぇ。西条さん…?職場で、私の事何か話た?』

《何を?》

『だからっ。私とこうやってプライベートで連絡してるって事!』

《言ったよ?》

『言ったのっ!?』

《まぁね〃仲良い奴に話てたら、そこに、上司がいてね、良かったなって!うちの会社の専属になってくれんかなぁって言ってたよっ!あははは〃》


…あははは…〃
じゃねーだろっ!!

⏰:09/08/07 21:16 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#228 [あき]
『それっ…かなり困るんですけど…』

冷静さを保ちながら、やっと出た言葉だった。

《えっ?どうしてさ?》
脳天気な彼は、聞き返してくる。

『あのね…うちの会社は、そうゆうの、かなり厳しくてね。仕事関係者と、プライベートでうんぬんは、バレたら、かなりマズいのよ。だから言わないでっ。』


《…でもさ、こっちでは話広まったとしても、そっちまでは届かないっしょっ。》


こいつ。
どこまで素っ頓狂なんだっ!!

⏰:09/08/07 21:21 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#229 [あき]
『届いてるから、止めてって言ってんでしょっ!?』

思わず、叫んでいた。
そんな私に、彼は、一瞬たじろいだように見えたけれど、さすが大人だ。
冷静に切り返してくる。

《…そっか〃早いねぇ…〃》

『…笑い事じゃないんだけどっ。』

《でも、どうして、そっちに流れたんだろ?》

『あのさ、西条さんと私がペア組んだように、その他にも、うちからそっちに行く事、あるでしょ!?
そっち側の誰かが、こっち側の誰かに話たんでしょっ…名前は出さなくても、そんなの調べりゃ、すぐわかるって。』

こいつ…
事の重大さに気づいちゃいねぇ…

⏰:09/08/07 21:30 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#230 [あき]
《そっか…恐らくあいつが喋ったんだな…。》

『とにかくっ…田中さんか山田さんか、アナタが誰に話たかは、知らないけどさ、困るんだよっ。これからは、何も言わないでねっ。』

《どうして困るの?恋愛は自由なんじゃない?会社がダメだなんて、そんな話聞いた事ないけど。》

『もちろん恋愛は自由だけど、うち的には、仕事に支障がでるから駄目だって事なんじゃないっ?』

《君も、公表すりゃいいじゃんっ〃隠すよりかは良いと思うけどっ。》

『……そうゆう問題じゃなくってさ…。』

駄目だ。
話にならない…
この人…おばかさん?

⏰:09/08/07 21:40 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#231 [あき]
『そもそも、私は嫌なの。
私は、狭く深くの付き合いをしてきた人間だからさ。仕事仲間。知人。友人。友達。親友。そうやって分けて、それなりの付き合いをして、生きてきたの。だからね、仕事関係者に、プライベートな事を詮索されるのは嫌なの。
それにね、私にも、それなりの立場とか、作り上げたキャラとかがあって…
そゆうの、壊したくないのね?
とにかく、本当に困るんだっ…仕事もしづらくなるし…』

理解を得ようと、今まで言わなかった思いの全てを話ていた。
なのに、さすがに
だから干されました。
とは言えなかった弱い私。悲しい性である。

⏰:09/08/07 21:53 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#232 [あき]
だけど、話は終わらなかった。ただ、秘密にしたい。
そう理解を求めようと、必死に伝えた私の思いは、彼の何かに触れた。
それは突然だったー…

《さっきから、黙って聞いてりゃ、困る困るって……じゃ、俺って一体なんなわけ?迷惑なわけ?…なんなんだよっ!》

突然、彼が聞いた事もないような、激しい怒りを露わにして電話口で叫んでいた。突然の事に、体が萎縮する。

《君は、俺の事を一体どう思ってんだっ!!いい加減にしろよ!!俺が、どんなに我慢してんのか、君は気付いてくれてるのかっ!?》

怒りが頂点に達していたのか…
彼は、その後。

私を
私という人間を。

否定し続けたー…

⏰:09/08/07 22:02 📱:W65T 🆔:pu1DvuhY


#233 [あき]
『…ごめんなさい。』

やっと冷静さを取り戻してくれた西条さん。
無言の電話に向かって、それしか言葉が出てこない。

《…君は俺の気持ちをわかっちゃいない。》

『…ごめんなさい。』

《…ほらな、何を聞いても、何を言っても、わかりません。ごめんなさい。そればっかりだ…》

『…ごめんなさい…』

《…いつまで敬語?》

『………』

《…少しくらい、俺を見てくれよっ…》

最後に、そう言って、電話は切れた―…

⏰:09/08/08 00:03 📱:W65T 🆔:YYIFW1UU


#234 [あき]
切れた携帯電話を、テーブルに置く。ドクンドクンとこめかみが脈打つ。また、いつもの頭痛が始まった。そのままソファーに横になる。ぐったりとした体は、まるで鉛のように重く、自分の意志では自由が利かなかった。

《それはおかしい!》
《普通は…》
《違うっ!!》

《俺を見てくれよ》

何を言っても、どう言っても、否定的な答えしか言ってはくれなかった彼に。
最後に卑怯な言葉を残し、一方的に切られた話に。


この雨に。
私の頭痛は酷くなるばかりだった…

⏰:09/08/08 00:11 📱:W65T 🆔:YYIFW1UU


#235 [あき]
《昨日はごめんね。仕事で疲れててイライラしてたんだ。》

《いえ…》

《会社では何も言わないようにするねっ。》

《うん。お願いします。》

そう言って、また元通り。彼は優しい声で、暖かいなまりで、私に笑いかけた。
だけど。
突然の彼の噴火。
そして私への執着。
これはスタートに過ぎなかった。
少しづつ、私は彼に呑み込まれて行った。
気付かないうちに、じわりじわりと。

⏰:09/08/09 22:24 📱:W65T 🆔:OLCk8BEI


#236 [あき]
相変わらず、私は職場では浮いた存在。

極端に減らされた仕事。
極端に増やされた休日。

もう誰しもが、私を好奇の目で見ているんじゃないかと、体が萎縮するばかり。上辺では、仲の良いふりをして、陰では何を言ってるのかわからない。
そんな毎日。

体力も神経もすり減らす毎日。

そんな毎日を知らない西条さんは、相変わらず、夜になると電話を寄越してきた。
昼も夜も
何事もないように、笑って話す、そんな自分に疲れていた。

⏰:09/08/09 22:31 📱:W65T 🆔:OLCk8BEI


#237 [あき]
なおちゃん。
自然と彼からも遠退いた。
昔の私なら、一番に彼の元へと逃げて、泣いて、そして乗り越えてきた。
だけど、今回ばかりは、そうはいかないと、無意識の中でそう知っていたのだろう。恐らく。それは
自分が、彼を裏切ってしまったんじゃないかという、後ろめたさー…
彼を頼ってしまったら
私を想ってくれる西条さんを傷つけてしまうんじゃないかという。
後ろめたさ−…
結局、答えを出せない自分は、自分自身の首を絞め続けただけ。

⏰:09/08/09 22:55 📱:W65T 🆔:OLCk8BEI


#238 [あき]
だけど、いつまでもそんな状況は続かなかった。
それは、突然に訪れた。

私の思わぬ所で、動き出したそれを、私には止める事は出来なかった。

またいつものように、夜の電話が鳴る。
いつもの…


―ピッ
『はいっ。お疲れ様ですっ〃』

《来週、そっち行くよっ!!今度は、俺が出張っ!会えるぞっ!〃》


突然の事だった。

⏰:09/08/09 23:01 📱:W65T 🆔:OLCk8BEI


#239 [あき]
『出張っ!?西条さんも出張するんですかっ!!』

《あるさっ。〃俺だって、昔は何度もそっち行ってるよっ。》

『いつ!?』

《来週の木曜日から、日曜日までの4日間っ!!あき、嬉しいかっ!?》

『…う…うん…』



正直
困った……

⏰:09/08/09 23:12 📱:W65T 🆔:OLCk8BEI


#240 [あき]
『でも会えるかなんて。』

《どおして?》

『…違うから。』

西条さんが、来る地方は、私の隣県。
同じ○○圏には変わらないから、地方の彼にすれば、一緒なのかもしれないが、隣県は隣県だ。

おまけに、私が住む街。
いや、せめて、私が生きてる街まで範囲を広げたとしても、彼が来る隣県からは、車で高速道を三時間。新幹線なら、二駅向こう。空港なら、大型国際空港と、しがない国内空港。
いくら隣県とは言えども、違うのだ。
彼はそう説明する私に、そうかと呟いた。

⏰:09/08/09 23:20 📱:W65T 🆔:OLCk8BEI


#241 [あき]
《…あきは、俺に会いたいって思ってはくれんの?》

『いや…そうゆう事じゃなくって。』

またこの流れだ。
うんざりしてきた。

先ほど、彼、が【そうか】と呟いたのは、決して私の説明に納得したからの返事ではない。
私の説明を聞いて、私の気持ちを、勝手に納得しての【そうか】なのだ。
今回ならば、恐らく、彼の思考はこうなった。
せっかくの吉報。
自分は嬉しい。
あきは、喜ばない。
会いたくないのか。
好きじゃないから。
男にまだ未練があるから…
俺はこんなにも好きなのにーっ!!
どうして、お前は俺を見ないんだーっ!!

となっただろう。間違いないっ。

⏰:09/08/09 23:32 📱:W65T 🆔:OLCk8BEI


#242 [あき]
《何が違う?》

ほらね。きた…

『だから、西条さんが来るのは同じ○○圏だけど、隣県であってさ…。違うじゃない?そりゃ、こっちに来るって言うなら話は違うけどさっ。隣県だし、お互い仕事あるし。会えるかなって思っただけで。』

ねえ。私の主張は、間違ってますか?
誰か教えて下さい。

《…俺は、そんな事を聞いてんじゃないよ、会いたいとは思ってくれんのって事を聞いてんの。》

だから、私はそうゆう問題じゃなくってさ。
私の言ってる意味が、伝わらないなぁ…

『私は、会いたい会いたくないの前に、会えるか会えないかの話をしてるんだよね…』

もう、こうなったら
西条 祐介。
止まりませんよ。

⏰:09/08/09 23:41 📱:W65T 🆔:OLCk8BEI


#243 [あき]
『会えるかなって思っただけで。』

ねえ。私の主張は、間違ってますか?
誰か教えて下さい。

《…俺は、そんな事を聞いてんじゃないよ、会いたいとは思ってくれんのって事を聞いてんの。》

だから、私はそうゆう問題じゃなくってさ。
私の言ってる意味が、伝わらないなぁ…

『私は、会いたい会いたくないの前に、会えるか会えないかの話をしてるんだよね…』

もう、こうなったら
西条 祐介。
止まりませんよ。

⏰:09/08/09 23:41 📱:W65T 🆔:OLCk8BEI


#244 [あき]
《…会いたくないんだね。》

ほらほらぁっ!
出ましたよ。
ミスター、マイナス思考!!

『だから、そうじゃなくって…』

《…俺ばっかりが浮かれてるのか。》

いよっ!!
キングオブ、マイナス思考っ!!

『…だからぁ…』

《どうせ、あきは、俺の事好きじゃないからなっ…》


……あんたが大将っ!!

⏰:09/08/09 23:46 📱:W65T 🆔:OLCk8BEI


#245 [あき]
『…会いたいとは思いますよ?』

《なら、それでいいだろ?…なぁ、俺の事好き?》

『…だからそれは…』

《まだわからない…か。》

『はい…。』

《……》
『……』

負けました。完敗です。
そして今夜も頭痛と乾杯です。
ともかく、気づけば、延々と私は、彼の独断会を受講して、来週、彼とまた再会をする事になっていた。

⏰:09/08/10 00:04 📱:W65T 🆔:AU/RUY7o


#246 [あき]
わからない。
本当に、わからないんだ。いや、正確に言うと、わからなくなったんだ。
彼は、【好き】という言葉に理由付けはないという。理由なんていらないという。それは、そう。気持ちの問題だからと。
私は、だからこそわからない。と主張する。

どう言った感情が
どう言った行動が
好き。で。
何が
愛。
なのか…

わからないから。
彼の問う問題に、私は答えられないんだ。
私は誰が好きで。
誰を愛しているのか…
わからない。

⏰:09/08/10 00:11 📱:W65T 🆔:AU/RUY7o


#247 [あき]
もちろん、私なりに答えを出そうと必死だった。
数少ない友人達に、必死にすがりついた。
だけど
誰に聞いても、答えは一緒だった。
新しい恋をしている友人Aに聞く。
《相手の事が気になる》《会いたいと思う》《声を聞きたいと思う》

どうやら、それが彼女の答えらしい。
確かに、共に過ごした一週間は。西条さんの事は気になる存在だった。朝、迎えに来る前は、鏡を見直したりした覚えもある。離れて時間を過ごす事になれば、不安な思いで、彼の背中を見送った。彼の声に、随分と癒やされた。
離れてからは
いつもの時間になると、そろそろ掛かってくるぞ、と携帯電話を気にする。
いつもの電話が遅いと、今日は遅いななんて思ってもみたりする。

これが恋なのか?
ならば、私は、彼に恋をしている……
そうなるんだ。

⏰:09/08/10 00:29 📱:W65T 🆔:AU/RUY7o


#248 [あき]
《相手の事が気になる》《会いたいと思う》《声を聞きたいと思う》

どうやら、それが彼女の答えらしい。
確かに、共に過ごした一週間は。西条さんの事は気になる存在だった。朝、迎えに来る前は、鏡を見直したりした覚えもある。離れて時間を過ごす事になれば、不安な思いで、彼の背中を見送った。彼の声に、随分と癒やされた。
離れてからは
いつもの時間になると、そろそろ掛かってくるぞ、と携帯電話を気にする。
いつもの電話が遅いと、今日は遅いななんて思ってもみたりする。

これが恋なのか?
ならば、私は、彼に恋をしている……
そうなるんだ。

⏰:09/08/10 00:29 📱:W65T 🆔:AU/RUY7o


#249 [あき]
なおちゃんに関しては、そんな感情は消えていた。

彼が、何をしているかなんて、もはや、大体の予想がつく。から気にもならない。特に彼が誰と何をしようが、それは、彼がどこで、何をしていようが、彼が私を裏切る訳がない、私を傷つける訳がないと、妙な安心感があるから?なのかもしれないが、とにかく、既に私は、彼には持ち合わせていなかった。
会いたいと思うかにしてもそうだ。少なくとも昔は持っていた感情だったけれど、今の私達のスタイルは、いつでも会えるという感情にすり変わっていた。唯一あるとするならば、声を気いたら、安心する。その事だけは、昔も今も変わらない。
結果私は、友人Aの話に、混乱しただけだった。

⏰:09/08/10 00:46 📱:W65T 🆔:AU/RUY7o


#250 [あき]
そして、次に、恋愛真っ最中の友人Bに聞く。

《何気ない瞬間に、たまらなく愛おしいと思える》《ずっと傍にいたいと思える》

それが、どうやら恋愛真っ最中の答えらしい。

西条さんに関して言うならば、何気ない瞬間に、愛おしいと思えた事は…残念ながら、まだ無かった。
ただ、傍にいたら幸せになれるんだろうなと、そう思えた人には間違い無かった。

それが、傍にいたいと思える事に繋がるのならば、そうなのである。

⏰:09/08/10 00:58 📱:W65T 🆔:AU/RUY7o


#251 [あき]
反対に、なおちゃんに関してならば。

たまらなく愛おしいと思えた瞬間…

あの沖縄旅行の夜だ。

私の横で眠る彼を見つめ、たまらなく胸が苦しくなり、衝動的に、抱きしめたくなった。
あれが、その感情なんだろう。
彼に関しては、私自身、傍にいたいと思うよりも。彼が、傍にいてくれる。という安心感。が何より強かった。


やっぱり友人Bの話にも、私は混乱を記した。

⏰:09/08/10 01:02 📱:W65T 🆔:AU/RUY7o


#252 [あき]
そして、これが究極の形。結婚という恋愛のゴールテープを切って、夫婦という新しいスタートを切った友人Cに聞いた。

《全てを受け入れ、許せるる人。》
《自分が生きてくうえで必要な存在。》

この一言だった。

そこに、先に聞いた好きという感情。それはあるのかという、更なる私の疑問には

《…わかんないっ〃》

と笑われた。

⏰:09/08/10 01:13 📱:W65T 🆔:AU/RUY7o


#253 [あき]
彼女の話は、深い話だった。
全てを受け入れて、許せる人か。

考えてみても
西条さんにも、勿論、知り合い月日を数ヶ月過ごした中で、彼の言動に、時折見える私自身と合わない所がある。

それが、これから先
私は、受け入れ、許せるんだろうか。と考える。

その点、なおちゃんに関しては、簡単に答えは見つかっていた。

おいっ!!この野郎と思う言動は多々あるが…
深く気にも止めないで来たのだ。
これが許せる事になるのならば、私は彼の全てを受け入れ、許せてる事になる。

⏰:09/08/10 01:23 📱:W65T 🆔:AU/RUY7o


#254 [あき]
自分が生きてくうえで必死な存在。
西条さんがいなくなった時、なおちゃんがいなくなった時、どちらの状況も、私はイメージする。
なんなら妄想する。

そして……

西条さんが消える時。
寂しいと思えた。胸がキュッと縮んだ。
なおちゃんが消える時。
痛いと思った。胸がズキンと鳴った。
結局私は、どちらにも反応したのだ。
結果、友人Cの話は、深かったが。私の混乱に混乱を記した頭を爆発させて、さらにパニック状況に陥らせただけだった…

⏰:09/08/10 01:33 📱:W65T 🆔:AU/RUY7o


#255 [あき]
友人達の話を照合しても。間違いなく、私は、なおちゃんには恋をしていた。
もうこれは、認めざる終えない。
だけど、私も、そろそろ本気で【結婚】というものを考えなければいけない歳になった。
いつまでも一人でいる訳にはいかない。
母親もいい歳だ。
子供達は、皆自立した。
それなのに、いつまでも、あくせく働いている。
孫の世話をしながら余生を暮らす。なんて選択だってあるだろうに。

友人の子供達は、どんどんと成長し、友人達もすっかり母親が板についてきた。

⏰:09/08/10 01:56 📱:W65T 🆔:AU/RUY7o


#256 [あき]
暖かい日差しの中、黄色い通園帽子をかぶっていた私達。


《あきねーっ!!大人になったらなおちゃんと結婚するっ!!》

《ぼくも、大人になったらあきちゃんと結婚するぅ!!》

保育園の帰り道。
母親達の、あらまぁと言った笑い声の中、私達は手を繋いで田んぼ道を歩いた。そんな、子供の些細な約束。

あれから数十年の月日が流れて。
私達は再会をした。

⏰:09/08/10 02:01 📱:W65T 🆔:AU/RUY7o


#257 [あき]
何もかもを失って、廃れて、泥のような生活をしていた頃に。何もかもを失った彼が現れた。
月日を重ねて出した答え。
《なおちゃんが好き。》

《ごめんな。答えてやれない…》

《友達でいようね〃》
《そうしような〃》


笑って言った十代最後の約束。

そして、彼は、私の前から消えた。

⏰:09/08/10 02:07 📱:W65T 🆔:AU/RUY7o


#258 [あき]
新しい恋をしようとした。幾度となく到来したチャンスを、自ら潰してきた。彼がまた現れた頃には
若干お肌の曲がり角。
お手入れ大変です。
なのに
私はやっぱり彼だけが好きだった。

《嫁…くるか?》
《まだ行けない。》
《なら、いい女になれっ!〃》

あの、涙の約束。

あの時、私は間違いなく幸せだった。

⏰:09/08/10 02:14 📱:W65T 🆔:AU/RUY7o


#259 [あき]
それが今になって。もはや、お肌も、ぐにゃぐにゃに曲がりきって。夜の蝶として飛び回っていたのが、嘘のよう。もう取り返しのつかない年齢…。
だからこそ?
気持ちが揺れ動いた。

なおちゃんをこのまま待っていいのか。

西条さんに託して新しい人生を歩くのか。

どちらも、一歩を踏み出す力を私には与えてくれない。こっちに来いよと、引っ張ってはくれないのだ。

どちらを選ぶかの選択肢は私に委ねられているように思えた。


それが、私なりの結論だった。

⏰:09/08/10 02:30 📱:W65T 🆔:AU/RUY7o


#260 [あき]
『…もしもしっ?』

《おうっ。生きてたのかっ。》

『生きてますっ!…今、いい?』

《んんっ?》

『最近どう?』

《特に変化なしっ。》

『私ね……』

⏰:09/08/11 01:23 📱:W65T 🆔:Dy86vzVI


#261 [あき]
《んんっ?》

『…私ね…プロポーズされた……結婚を前提に付き合ってって言われてる人がいるの。……私、どうしたらいい??』



お願い。
少しでいい。
少しだけでいいから…



アナタの気持ちを見せて?

⏰:09/08/11 01:29 📱:W65T 🆔:Dy86vzVI


#262 [あき]
卑怯だと思う。
本当に卑怯だと思う。

こんな事して…
試すような事して…。



だけど。
知りたかった。
アナタの気持ちを知りたかっただけ。

⏰:09/08/11 01:32 📱:W65T 🆔:Dy86vzVI


#263 [あき]
何でもいいから。
アナタの気持ちを見せて欲しかった。

またいつものように
くだらない理由をつけて。

今すぐ来いって…

言って欲しかった。
そしたら、私は救われた。もう迷わなかったのに。

⏰:09/08/11 01:38 📱:W65T 🆔:Dy86vzVI


#264 [あき]
《……良かったじゃんっ。〃》


アナタは笑って、そう言った。


そこには
動揺も、焦りも、怒りも。

何も見せてはくれなかった−…

⏰:09/08/11 01:43 📱:W65T 🆔:Dy86vzVI


#265 [あき]
『…うん。そだねっ…』

《あきもいい歳だし、最後のチャンスだろ。》

『うんっ。…そだねっ…』

《良かったな。》

『うん…』

そうなんだ…。
良かったんだ…。
なのに
どうして胸が痛いんだろう。
どうして、涙が溢れてくるんだろう。
ねぇ。なおちゃん。
どうしてなのかな…。

⏰:09/08/11 01:50 📱:W65T 🆔:Dy86vzVI


#266 [あき]
相変わらず、出勤しても、大した仕事は割り当てられず、唯一割り当てられた初歩的仕事、雑用、雑務を淡々とこなす。こんな日々にはもう慣れた。デスクの上、カレンダーを見る。西条さんが来るのは、二日後からの四日間。
小さくつけた丸印をなぞってみる。
あの後、新事実が発覚。
実質、彼の出張期間は二日間だった。
週末の二日間は、彼は、リフレッシュ公休としてそのまま、留まる予定となっていたのだ。
彼は初めから、この出張を利用して私の住む街に来るつもりだった。
だから、あの時あんなにも怒ったんだと、ようやく理解した。

⏰:09/08/11 02:12 📱:W65T 🆔:Dy86vzVI


#267 [あき]
《仕事の都合つけれそうですからっ。迎えに行きますよ!》

《ほんと?会える?》

《はいっ。〃今度は、私が案内しますね。》

《…よしっ!〃》

こんな私に会いたいと言ってくれる。
無邪気に喜んでくれる。
全身で、ぶつかってきてくれる。
そんな西条さんの気持ちに…答えよう。

私は新しい道を歩く。

⏰:09/08/11 02:17 📱:W65T 🆔:Dy86vzVI


#268 [なすっこ]
この小説だいすき!アゲ

⏰:09/08/13 11:21 📱:SH905i 🆔:xFcgKDn2


#269 [あき]
なすっこさん、ありがとう!
―――――――

行き交う人々を眺めながら、やっとの思いで私はロータリーへと車を着けた。ここまで来るのに三時間以上かかってしまった。既にグッタリである。
もともと、極度の方向音痴なうえに、機械音痴な私には役に立つはずのない備え付けられたカーナビ。
勿論、自慢じゃないが、地図なんて読めるはずもなく。
結果、私は初めての遠出を標識看板と研ぎ澄まされた勘だけで来たのだ。
いや、無事に此処まで来れた事は奇跡に近かった。

⏰:09/08/13 21:50 📱:W65T 🆔:Jv9iWXkM


#270 [あき]
行き交う人々を眺めながら、その時を待つ。
時計を確認すると、彼が乗っているはずの電車はホームに着く頃だ。
慌ただしく人が南出口から出てくる。
おそらく、この中にいる。なんだか急にドキドキしてきた。
必死に、その影を探して。
いたー…

相変わらず、すらりと長身で、このくそ暑いのに、涼しさ漂う出で立ちで、爽やかな匂いを出しながら、その人は南出口から舞い降りてきた。

⏰:09/08/13 21:58 📱:W65T 🆔:Jv9iWXkM


#271 [あき]
南出口。出てすぐに立ち止まる。
少しキョロキョロして、私の車を見つけると、ぱっと顔がほころんだように見えた。
その姿に向かって、私は笑顔で手を振る。
私の姿を確認して、彼も軽く手を挙げると、あの優しい笑顔で、歩いてくる。

『うすっ!!お疲れ様〃』

『お疲れ様でしたっ。乗って下さい〃』

何だか、妙に照れくさい。男性らしい軽い小さなバックを、トランクに入れると、私達は、また久しぶりの。二回目の再会を果たした。

⏰:09/08/13 22:05 📱:W65T 🆔:Jv9iWXkM


#272 [あき]
『じゃっ。どこ行きましょうか?〃っても、私、こっちあまり知らないんですけどねっ。』

『…あきの住んでる街を見てみたい。だめ?』

さらりとそう言った彼に私は、ドキリとした。
私は、首を横に振ると、微笑んで冷静さを保ちつつ車を動かす。

久しぶりだとか、髪型変えたとか、そんな何気ない会話。
大通りを離れて、高速道を目指す。
道中、緊張と、慣れない道で四苦八苦しながら、車を進める私に、横で彼は若干引きつりながら笑っていた。

高速道に乗って西へ向かう事数キロで、彼のお願いを聞き入れ、途中、サービスエリアにて、運転席を変わった。(申し訳ない…)

⏰:09/08/13 23:33 📱:W65T 🆔:Jv9iWXkM


#273 [あき]
『にしても、あきが、この車とは、意外かも?』

『…そうっ…?』

ちらりと右側を見てみる。運転席に座る、西条さん。
すぐに目を逸らした。

箱型普通車。
もう何年も前に生産されて、当時の人気車も、時代の流れと共に、需要が減り今はもうない。
今、同じ車が走っているのは珍しいくらいだ。
それでも、私は大切に乗っている。

『…もう珍しいかもねっ…〃』

快調に流れる左側の景色を見た。
私の右側。この景色に、なおちゃん以外の誰かが座っている。
改めて、実感した。

⏰:09/08/13 23:44 📱:W65T 🆔:Jv9iWXkM


#274 [あき]
『昔、人気あったよね?あきもその時に?』

『私はこれは、自分の車潰しちゃって…友達から、そっくり、もらったのっ。だから、全部、友達の趣味ですよ。』

笑って、流す。
はるか昔、愛車を事故で失った。(※パート1参照)次に乗った愛車は、乗って数年で寿命で失った。(続編参照)続けて二台共に失った私には、新しい愛車を用意する資金なんて残っちゃいなかった。
困り果てた私と、愛車の維持がツラいが、手放したくはないと嘆く友人。
二人の意見が合致して。
そのまま私が譲り受けた。普段は私が愛用しているが、未だに、友人も乗り回している。
今や二人共有と言える代物だった。
ねえ。なおちゃん…

⏰:09/08/13 23:59 📱:W65T 🆔:Jv9iWXkM


#275 [あき]
微妙な空気が車内に流れる。彼自身、その友達が、なおちゃんである事に気づいている様子だ。
これ以上は聞きたくない。そう全身で言っていた。

『…お腹減りましたねっ。私、朝から何も食べてないしっ〃』

『…そだなっ〃何がうまいの?』

私は、身振り手振りで、次から次へと、名物の名前を挙げる。西条さんは、私の言葉に、笑いながら、旨そうだねと答えてくれた。

そう。私は、この人を選ぶんだ。
今、運転席に座るこの笑顔の爽やかな彼を。
私は自分の意志で、選んだんだから…

⏰:09/08/14 00:08 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#276 [あき]
車を走らせて、三時間。
私の住む街に入ってきた。ここからは、さすがに私の出番だろう。高速道を降りて、運転席を変わる。
愛車を駐車場に入れて、二人手を繋ぐ。
私が生きる街。
小さい田舎街だと思ってはいても、他県からすれば、ここは、実は観光地。国宝や世界遺産があったもする街。
私が、西条さんの生きる街に行った時のように。
私も、彼にくるりと街を紹介した。
そんな街に、西条さんは喜んでくれた。
初めて見ると言った国宝の建物にも、立ち寄る。
時間も忘れて、二人ではしゃいだ。
全てを忘れて。私は、はしゃいだ。

⏰:09/08/14 00:26 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#277 [あき]
『やっぱ、本場は違うねっ!〃美味いよ。』

『そう?私は食べ慣れてるけどっ。』

『なんだそれっ!〃』



『は〜…すごいねっ。』

『うん。…実は私も、初めて見た〃』

『おい地元人っ!!〃』

『地元人だから見ないんでしょ?〃』


繋いだ手。

これでいい。
これで、いいんだよっ。

⏰:09/08/14 00:33 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#278 [あき]
彼となら幸せになれる。
彼なら、忘れさせてくれる。彼なら…

この夜。
二度目の私達の夜。
淡い光の中で、初めて彼と向き合った。

私を見つめる目。
私に伸ばす腕。
私を包み込む胸。

全てを彼に託した。
私に触れる体が
とても優しくて、涙が溢れた。

⏰:09/08/14 00:40 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#279 [あき]
朝、目覚めると彼が気持ち良さそうに眠っていた。
起こさないように、腕を伸ばし洋服を探す。
きしむベッドで、彼が目覚めた。そのまま、フワリと腕が伸びて、私を包んだ。そのまま強く引きつけられた腕に、私は体ごと、彼に寄りかかる。その腕は、私をしっかりと抱き寄せ離さない。笑いながら、離してよと言うと、離さないと言った。

離したら、どこかに行ってしまう。

そう言った。行かないからと言うと、彼はフワリと微笑んで、また強く私を抱き寄せた。

⏰:09/08/14 00:55 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#280 [あき]
西条さん来郷二日目。
感動する私を横目に、彼は、ちょちょいとカーナビをセッティング。
暖かい日差しの中、リラックスムードで次の目的地へ移動中。私の携帯電話が鳴った。バックを弄り、着信音がはっきりと聞こえた時、私の手は止まる。携帯電話を見つめて、指が固まった。

『出ないの?』

西条さんは、そう言った。
『え…うん…いいかなって…』

わかるから。この着信音。咄嗟に都合のいい嘘すら出てこなかった。

⏰:09/08/14 01:12 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#281 [あき]
『出れば?…出れん相手?』

西条さんが冷たい空気に変わる。
ビクリと体が固まった。
怖い。
そう感じた。

『じゃ。ごめんなさい』

そう言って、受話ボタンを押した。


これが、私の始まりだった。

⏰:09/08/14 01:22 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#282 [あき]
―ピッ
『はいっ?』

《何してる?》


私が大好きだった声。

聞きたくて、聞きたくて、どうしようもなかった時、聞けなかったのに。
諦めると、こうやって聞かされる。
本当に卑怯だよ。

『出掛けてる。なにっ?』

右側。無言の西条さん。
体の左側がとても痛い。

無意識に冷たい声で返事した。

⏰:09/08/14 02:03 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#283 [あき]
《あっそ。ならいいや。》

なおちゃんは、また、相変わらず一方的に要件をまくし立てた。
私は、相槌を打って適当に返事する。

『わかったから。とにかく、また電話するよっ。』

《おぅ。帰ったら電話して。》

『わかった。』

そう言って、半ば強引に電話を切った。
細くため息をついて、反射的に顔中の筋肉を上に持ち上げる。
にっこり微笑んで、右側。西条さんを見た。

⏰:09/08/14 02:09 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#284 [あき]
『ごめんなさい〃友達が…』

時間にして、5分。
そう言って、西条さんの顔を見た瞬間に、私は、体が萎縮した。
前を見据える西条さんの顔が、怒りに満ちているのがわかり、ハンドルを握る腕に力が込められているのがわかる。

『…また男だろ?』

その声は、まるで地獄の底から響いてくるような。
とても低い声。

『…友達…です…』

体を硬直させながら、私はそう呟いた。

⏰:09/08/14 02:14 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#285 [あき]
『それは男?』

『…うん…』

『なんて?』

『…用事だよ。』

西条さんは、無言で私の言葉を受け入れる。
数秒黙って私の言葉を、噛み砕いた。

『彼氏いるならそう言えよ!!俺を騙してたのか!!』

『違うっ!!彼氏なんていないっ!!』

また彼は噴火した。
あの優しく微笑んでくれる彼はいなかった。

⏰:09/08/14 02:20 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#286 [あき]
荒々しく車は進む。
恐怖で体が固まり、言葉を失った。
それでも、その中で、必死に私は、西条さんの怒りを静めようと言葉を探した。

『友達にしたら、親密な間柄を感じれる会話だったけどねっ!!?』

『だからっ!!それは…仲良いからっ!』

『その彼だろっ?あきが好きな奴はっ!!』

『今は違うっ!ねぇ。怖いって。スピード緩めて…』

⏰:09/08/14 02:24 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#287 [あき]
高速道を、猛スピードで走り抜ける車。
怒りを露わにする西条さんを必死になだめながら、私は、怒りの右側と恐怖の前方を確かめる。

『この先っ!!カメラあるからっ…ねぇっ!!怖いってばっ!』

車は、急ハンドルで高速道、インターチェンジを抜けた。突然の事に、体を支えきれず、なんとかの原理ってやつだろう。いとも簡単に私の体は、ベンチシート横、運転席に座る西条さんにぶつかった。
とっさに起き上がろうとした私の肩を、西条さんは、力一杯に抱き寄せ、その肩に指が食い込んだ。
私は、国道を西に向かう間、力ずくのまま、その胸の中にすっぽりと収まっていた。

⏰:09/08/14 02:35 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#288 [あき]
遥か昔、痛めた腰が、無理な体制を強いられている私をズキズキと打っている。だけど、肩を掴む力が弱まる気配はなく、しばらくこのままで過ごしているしかなかった。
私の視界には肩を掴んだまま、無表情、無言で、車を走らせる西条さんしか見えない。
国道を西に進んで、しばらくすると車が、急に左に折れどこかに入って、止まった。

『降りるよ。』

『…はいっ…』

体を起こして、やっと窓の外を見渡す。
どこだかわからない。
薄暗い地下駐車場。
即座に助手席のドアが開けられ、私は彼に手を引っ張られた。

⏰:09/08/14 02:46 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#289 [あき]
引っ張られるように、車を降りて、その薄暗い場所に立って。ようやく、ここがどこだか理解できた。
理解出来たと同時に、更に西条さんに恐怖を覚える。

『ちょっと…なにっ…やめてよ…』

『いいからっ。』

握った手に強く引かれて私は、そのまま引きずられるように中へと入って行った。

⏰:09/08/14 02:52 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#290 [あき]
部屋に入り、無言のまま強く握られた手を投げ出される。投げ出された私の体は、今度は強く引き寄せられる。苦しくて、もがけばもがく程、彼の力は強くなり、離してと言えば言う程絡まりついた。

腰に回された腕は強く私を抑えつけ、顔を持たれた手は顎を抑える。

必死に顔を背けても、荒々しい彼の唇で抑えつけられた。昨夜のあの優しく包み込んでくれるような暖かさはなかった。
抵抗すればする程、力は強くなる。嫌だと叫ぶと腕をまた掴まれた。

⏰:09/08/14 03:03 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#291 [あき]
掴まれた腕は、そのまま力任せにベッドへと投げられた。自分の体が一瞬宙に舞ったような感覚。
そのままドサリと体がベッドに沈まると、西条さんの体がのしかかる。
荒々しい唇は逃げても逃げても私を捕らえる。
必死に許しをこい、両手足を、ばたつかせて抵抗しても、やはり適わなかった。そして腕を抑えつけられ、頭を抑えつけられた瞬間。

あの恐怖が蘇った。
あの夜。知らない海辺の。あの恐怖が…
蘇ってしまった。

⏰:09/08/14 03:10 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#292 [あき]
『やだ…やだっ…なおちゃん!!』

治まっていた症状。
フラッシュバック−…

パニックになって口走った私。だけど、その言葉に更なるパニックを起こしたのは紛れもなく彼自身だった。

『俺は祐介だっ!』

ドスンと私の真横で、大きな音が鳴った。
彼が怒りに合わせて、ベッドに拳を振り下ろしたのだ。その音と拳でまたビクリと体が固まった。

『…ごめんなさい。あきが悪いからっ…殴らないでっ…』

⏰:09/08/14 03:28 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#293 [あき]
フラッシュバック。
湧き出てくる記憶。

あの浜辺の地獄。
幼少期、父親に殴られ続けた日々。
目の前にいるのは、

怒りに満ちたお父さん?あの時の狂った彼奴?

怖い
怖い
怖い…

力が抜ける。
そんな私の体に、西条さんは荒々しく被さった。
昨日の夜は、優しく包み込むように暖かかく感じたその温もりを。今は、ただただ、人形のように、私は体を委ね続けた。

⏰:09/08/14 03:37 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#294 [あき]
全てが終わり人形だった私は抜け殻になった。
今、私は西条さんに抱きしめられているのか、捕らわれているのか。
それすら、わからなかった。
天井を見つめる。
優しい、なおちゃんの笑顔。暖かい雫が頬を静かに伝った。だけど、それを拭う力さえ残してはいなかった。

西条さんは、黙ったまま時折、私に口づけた。その唇は優しく柔らかいもので、私は微笑み返す。彼は、私を好きだと言って、また私の体を強く抱き締めた。

⏰:09/08/14 04:00 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#295 [あき]
世間は夕刻。
今日はこのまま、ここにいたいと言い出した彼に、私は頷く。
ベッドの上、いつまでも私を離そうとはしない西条さんに、苦笑いをしながら、どこにも行かないよと言った。
シャワーを浴びて、ルームサービスを取り、余り美味しくない夕食を取る。
テレビを付けて、たははと笑う。

『あきは、その…なおちゃんを忘れられる?』

テレビを見つめながら、そう囁く彼。

⏰:09/08/14 04:08 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#296 [あき]
『…西条さんは私の何がいいの…?』

そう、呟いた私に彼は、わからないと笑った。

『ただ…あきが居なくなると、本当に自信無くす。』

『そっか。』

私は微笑むと、彼が望むように、体を彼に傾ける。
肩に頭を乗せると、彼は優しく私を抱き寄せて、髪をポンポンと撫でた。

⏰:09/08/14 04:18 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#297 [あき]
『もう、ただの幼なじみだからっ。』

『好きだったんだろ?』

『昔はねっ…』

『過去に出来る?』

『過去だよ。』

『…本当に?』

『…私は、あなたを選んだの。もっと自信持って、私を信じて?』

『……わかった。』

⏰:09/08/14 04:23 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#298 [あき]
同じ夜、また彼に抱かれた。彼は優しく包み込むように私を抱いた。

なおちゃんを忘れたいが為に、重ねてきた体。
いつも寂しさなんて埋まらなかった。
利用しているようで、利用されている事はわかっていた。
どんなに好きだと囁かれても、肌が感じた。
今、私に回された彼の腕が、彼の背中に回した私の腕が、心地よいと感じるのは私が彼に想われて、私も彼を想う証拠。
そうに違いない。

⏰:09/08/14 04:40 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#299 [あき]
私は幸せになりたいだけなんだ。彼が私を望むのなら、こんなチャンスは二度とないかもしれない。
だったら私は彼の望む私でいればいい。
私は、この日、彼の胸に包まれながらそう誓った。

『なおちゃん以外に、俺に何か隠してる事ない…?』

『…ないよ?どうして?』

『…いやっ。いいっ…おやすみ。』

『おやすみなさい』

あの捨て去った幼少時代も。
あの忌まわしい過去も。
だから、アナタに恐怖を覚えた事も。
私は、一生言わない。
私は仮面を付けた。
未来を掴む為に―…

⏰:09/08/14 04:49 📱:W65T 🆔:0SdBI476


#300 [愛]
仮面をつけてしまったの?仮面を付ける事で、幸せになれるかな?(>_<)
これからも読んでいきます☆
あきさんには幸せになってもらいたい!

⏰:09/08/14 08:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


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