微妙な10センチ。〜最終〜
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#202 [あき]
『じゃ…何か、わからない事あったら聞いてね。』
そう締めくくって、全ての書類を、うろたえる彼女に手渡す。
バックからポーチを取り出して、部署をふらりと抜け出し、廊下の隅に追いやられた喫煙ルームのドアを開ける。
カチリと百円ライターで音を鳴らして、大きく吸い込んで、ふわりと煙りを吐き出した。
外は、今日も雨だった。
:09/08/07 03:13
:W65T
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#203 [あき]
仕方がない。
若手が入れば、誰かが追いやられる。私が、この部署に配属になった時だって、誰かの担当が私になったはず。
そう自分に言い聞かす。
社会ってのは、そうゆうもんだ。
と納得する。
クシャリと灰皿に押し付けると、私は、また自分に与えられた職務に戻る。
だけど。
これは、始まりに過ぎなかった―…
:09/08/07 03:18
:W65T
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#204 [あき]
『えっ…?』
まただ。
私なりに気合いの入っていた案件。かなり難しい案件で、何日もかけて下準備したのに。またまだまだ経験不足の後輩へ担当が変わっていた。
『私がっ!?』
もう何年も携わっていない、新人の頃に基本的な案件だからと、何度か担当させてもらった記憶がある。
『…休み…ですか?』
シーズンオフなのも、世間は大不況で仕事がないのも理解はしていた。だけど、私の職務には関係のなかった話。…のハズだった。
:09/08/07 03:28
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#205 [あき]
何かがおかしい。
何年も担当してきた仕事が外され。
難しい案件が後輩に行き。簡単な案件が私に与えられる。
周囲は、忙しそうに、残業、休日出勤と慌ただしいのに、私には与えられた休日。
出社をしても、ごちゃごちゃと書かれている白板。
私の名前の欄は、つねに空白。いわゆるフリーという扱い。出張も、会議も、担当も。何も記されていない。
……まさか。
干されてる…?
そう気付いた時には
完全に、私は蚊帳の外になっていた。
:09/08/07 03:34
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#206 [あき]
干される心当たりなんて到底無かった。
私は、問題児だったのかもしれない。
風雲児だったのかもしれない。
型破りだったのかもしれない。
だけど、与えられた仕事には一生懸命に取り組んできた。
勿論、ミスも沢山してきた。自覚はしている。
だけど…干される程のトラブルを起こした記憶なんてない。
どうして??
なんで??
:09/08/07 03:39
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#207 [あき]
今日もまた、何もする事がなく、喫煙ルームに入っている。二本目の煙草に火をつけようとした時、懐かしい顔が覗かせた。
『…ご無沙汰してますっ〃』
『おーっ!あきぃ。元気っ!?』
彼女は、カチリと火をつけると、にこりと笑った。
『まあまあですかね〃』
目を合わせられず、私も二本目に火をつける。
新人の頃から、面倒かけっぱなしの、私が師匠と崇める大先輩。
彼女は、とうに違う部署へと移動して、なかなか顔を合わせなくなっていた。
:09/08/07 03:44
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#208 [あき]
『相変わらずのハチャメチャかぁ?』
『何言ってんですかっ〃最近は、かなり真面目にやってますよっ。ミスもしてませんってばっ!』
そんな私に、あははと笑うと、彼女は、そっかそっかと頷いた。
『順調っ?』
くりっとした大きな目で、私の小さな目を見つめる。その目は、何もかもを知っている目だった。
『さすがですねっ〃耳に入ってますか?』
悪戯な笑顔で答えてみたけれど。その目に見つめられ、今にも泣き出しそうだった。
:09/08/07 03:49
:W65T
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#209 [あき]
『…なんだか、よくわかんないんですが、私、どうやら、只今、干されちゃってまぁすっ!!』
明るく声を出してみた。
片手を上げて、あははと笑ってみせる。
彼女は、そんな私に、バカだこいつと笑っていた。
『…何でなんですかね…?』
指に挟んだ二本目の煙草が、ジリリと音を立てて、灰皿に落ちた。
彼女は、ふうっと細く白い煙を吐き出すと、灰皿にくしゃりと押し込んだ。
:09/08/07 03:54
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#210 [あき]
『あきぃ?あんたの今の上司厳しい人よ?あの人は、ハッキリしてっからね。』
『わかります。丸か罰の人ですよね。で。私は罰が下された。…でも、身に覚えないです。』
そう答えた私に、彼女は、思いがけない事を言った。
『今、彼氏いる?』
突然の質問に、驚きながら、まさかと、苦笑いをしながら手を横に振った。
『…なら、○○の△△さんに心当たりは?』
(※○○→地方名
※△△→職種 )
:09/08/07 04:01
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#211 [あき]
○○地方の△△って言ったら、当てはまる人を知っている。
『…一人知ってます。』
でも、まさか、会社に知れてるはずはない。
勿論、うちの会社が、取引先の人との恋愛が御法度なのは、もう何年も前から熟知している事だ。
私は、会社絡みの誰一人にさえ、彼との事は話ていない。言えるはずがない。
…だから、知られてるはずはない。
『その人とは、どんな関係?』
『…確かに、プライベートで連絡取ってますけど…どうしてそれを?』
:09/08/07 04:07
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