微妙な10センチ。〜最終〜
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#232 [あき]
だけど、話は終わらなかった。ただ、秘密にしたい。
そう理解を求めようと、必死に伝えた私の思いは、彼の何かに触れた。
それは突然だったー…
《さっきから、黙って聞いてりゃ、困る困るって……じゃ、俺って一体なんなわけ?迷惑なわけ?…なんなんだよっ!》
突然、彼が聞いた事もないような、激しい怒りを露わにして電話口で叫んでいた。突然の事に、体が萎縮する。
《君は、俺の事を一体どう思ってんだっ!!いい加減にしろよ!!俺が、どんなに我慢してんのか、君は気付いてくれてるのかっ!?》
怒りが頂点に達していたのか…
彼は、その後。
私を
私という人間を。
否定し続けたー…
:09/08/07 22:02
:W65T
:pu1DvuhY
#233 [あき]
『…ごめんなさい。』
やっと冷静さを取り戻してくれた西条さん。
無言の電話に向かって、それしか言葉が出てこない。
《…君は俺の気持ちをわかっちゃいない。》
『…ごめんなさい。』
《…ほらな、何を聞いても、何を言っても、わかりません。ごめんなさい。そればっかりだ…》
『…ごめんなさい…』
《…いつまで敬語?》
『………』
《…少しくらい、俺を見てくれよっ…》
最後に、そう言って、電話は切れた―…
:09/08/08 00:03
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:YYIFW1UU
#234 [あき]
切れた携帯電話を、テーブルに置く。ドクンドクンとこめかみが脈打つ。また、いつもの頭痛が始まった。そのままソファーに横になる。ぐったりとした体は、まるで鉛のように重く、自分の意志では自由が利かなかった。
《それはおかしい!》
《普通は…》
《違うっ!!》
《俺を見てくれよ》
何を言っても、どう言っても、否定的な答えしか言ってはくれなかった彼に。
最後に卑怯な言葉を残し、一方的に切られた話に。
この雨に。
私の頭痛は酷くなるばかりだった…
:09/08/08 00:11
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:YYIFW1UU
#235 [あき]
《昨日はごめんね。仕事で疲れててイライラしてたんだ。》
《いえ…》
《会社では何も言わないようにするねっ。》
《うん。お願いします。》
そう言って、また元通り。彼は優しい声で、暖かいなまりで、私に笑いかけた。
だけど。
突然の彼の噴火。
そして私への執着。
これはスタートに過ぎなかった。
少しづつ、私は彼に呑み込まれて行った。
気付かないうちに、じわりじわりと。
:09/08/09 22:24
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:OLCk8BEI
#236 [あき]
相変わらず、私は職場では浮いた存在。
極端に減らされた仕事。
極端に増やされた休日。
もう誰しもが、私を好奇の目で見ているんじゃないかと、体が萎縮するばかり。上辺では、仲の良いふりをして、陰では何を言ってるのかわからない。
そんな毎日。
体力も神経もすり減らす毎日。
そんな毎日を知らない西条さんは、相変わらず、夜になると電話を寄越してきた。
昼も夜も
何事もないように、笑って話す、そんな自分に疲れていた。
:09/08/09 22:31
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#237 [あき]
なおちゃん。
自然と彼からも遠退いた。
昔の私なら、一番に彼の元へと逃げて、泣いて、そして乗り越えてきた。
だけど、今回ばかりは、そうはいかないと、無意識の中でそう知っていたのだろう。恐らく。それは
自分が、彼を裏切ってしまったんじゃないかという、後ろめたさー…
彼を頼ってしまったら
私を想ってくれる西条さんを傷つけてしまうんじゃないかという。
後ろめたさ−…
結局、答えを出せない自分は、自分自身の首を絞め続けただけ。
:09/08/09 22:55
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#238 [あき]
だけど、いつまでもそんな状況は続かなかった。
それは、突然に訪れた。
私の思わぬ所で、動き出したそれを、私には止める事は出来なかった。
またいつものように、夜の電話が鳴る。
いつもの…
―ピッ
『はいっ。お疲れ様ですっ〃』
《来週、そっち行くよっ!!今度は、俺が出張っ!会えるぞっ!〃》
突然の事だった。
:09/08/09 23:01
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#239 [あき]
『出張っ!?西条さんも出張するんですかっ!!』
《あるさっ。〃俺だって、昔は何度もそっち行ってるよっ。》
『いつ!?』
《来週の木曜日から、日曜日までの4日間っ!!あき、嬉しいかっ!?》
『…う…うん…』
正直
困った……
:09/08/09 23:12
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#240 [あき]
『でも会えるかなんて。』
《どおして?》
『…違うから。』
西条さんが、来る地方は、私の隣県。
同じ○○圏には変わらないから、地方の彼にすれば、一緒なのかもしれないが、隣県は隣県だ。
おまけに、私が住む街。
いや、せめて、私が生きてる街まで範囲を広げたとしても、彼が来る隣県からは、車で高速道を三時間。新幹線なら、二駅向こう。空港なら、大型国際空港と、しがない国内空港。
いくら隣県とは言えども、違うのだ。
彼はそう説明する私に、そうかと呟いた。
:09/08/09 23:20
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#241 [あき]
《…あきは、俺に会いたいって思ってはくれんの?》
『いや…そうゆう事じゃなくって。』
またこの流れだ。
うんざりしてきた。
先ほど、彼、が【そうか】と呟いたのは、決して私の説明に納得したからの返事ではない。
私の説明を聞いて、私の気持ちを、勝手に納得しての【そうか】なのだ。
今回ならば、恐らく、彼の思考はこうなった。
せっかくの吉報。
自分は嬉しい。
あきは、喜ばない。
会いたくないのか。
好きじゃないから。
男にまだ未練があるから…
俺はこんなにも好きなのにーっ!!
どうして、お前は俺を見ないんだーっ!!
となっただろう。間違いないっ。
:09/08/09 23:32
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